軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第258話 ランス・メルティアの苦言

アルトリウスが会議室へと向かう。

すでに会議室には、 四志天(ししてん) が集まっている。

「アルト様!」

「シルヴェーヌか、どうしたこんなところで」

すでに会議室に集まっているはずの 四志天(ししてん) の1人、妖精種族黒エルフ族、魔術師A級のシルヴェーヌ・シュゾンが途中の廊下でアルトリウスを出迎える。

彼女は頬を赤く染め、恋する乙女の瞳で告げる。

「敬愛するアルト様に早くお会いしたくて、ここでお待ちしておりました。よろしければ会議室までご同行してもよろしいでしょうか」

「かまわん。好きにしろ」

「はい! ありがとうございます」

アルトリウスの返答に、彼の背後にいた秘書が面白くなさそうに一瞬だけ眉根を寄せる。

そんな彼女にシルヴェーヌが『ふふん』と勝ち誇った表情で、彼の隣に並んだ。

シルヴェーヌは肩が触れ合いそうになるほど距離を詰めながら廊下を歩く。

彼女はまるで祭りを迎えた町娘のように、ウキウキとアルトリウスに色々なことを話しかける。

アルトリウスのため大金を積み上げ古く珍しい酒精ワインを持参したこと、また大粒の宝石が手に入ったため著名な服飾職人にオーダーメイドで衣装を製作したので、是非それを着た自分をアルトリウスに見て欲しいこと――等々、彼女は彼の関心を買おうとアピールする。

しかし、アルトリウスは彼女の話を聞きながら、エルのことを考えていた。

(自分の周りの女性は、シルヴェーヌのように高価な衣服、宝石、菓子などを贈れば喜んでくれるんだが……エル嬢は逆にそういうのを贈ろうとすると恐縮する。彼女にはいったい何を贈れば喜んでくれるのだろうか)

今のところエルに贈って喜ばれたのは大銅貨5枚(5000円)のリバーシだ。

以後は、いくらプレゼントを贈ろうと提案しても、微苦笑を浮かべ流されている。

そのためリバーシ以降、プレゼントを受け取ってもらったことがない。

(どうすれば彼女に受け取ってもらえるのだろうか。あの年頃の女性が欲しいと思うものか……)

アルトリウスは横を見る。

隣にはエルと年頃が近いだろう女性であるシルヴェーヌが居る。

もしかしたら彼女なら、答えを知っているかもしれない。

「シルヴェーヌ」

「なんでしょうか、アルト様」

「突然ですまないが、異性から贈られて嬉しい物はなんだ?」

「異性から贈られて……はっ!? そ、そうですね! あたしとしては宝石や衣服、装飾品などを贈られたら嬉しいですね」

『それはすでに提案した』と胸中でアルトリウスが呟く。

彼女は難しい顔をする彼に気付かず、さらに捲し立てた。

「で、ですが! あたしとしては意中の男性から貰えるならどんなプレゼントでも嬉しいです。例えその辺りに咲いている野花を贈られたとしてもです」

チラチラと赤い顔でシルヴェーヌが隣を歩くアルトリウスを盗み見る。

彼は顎に手を当て、ようやく納得する答えを聞くことができ、シルヴェーヌの視線にまったく気付いていなかった。

「そうか……花か。花があったな……確かに花なら――」

ブツブツと1人、納得し何度も頷く。

想像の中で、エルがアルトリウスの花束を受け取り、満面の笑顔を向けてくれる姿を描く。

心無しかアルトリウスの口元はいつもより弛んでいた。

そんな噛み合わない会話をしながら、2人は会議室前の扉へと辿り着いた。

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会議室に入ると、すでに 四志天(ししてん) 3名が着席し待機していた。

アルトリウスの姿を確認すると、彼らは一斉に立ち上がる。

「なんだ、シルヴェーヌの姿がどこにもないと思ったら、また大将に引っ付いていたのか。相変わらず執念深い女だな! がはははっはは!」

最初に口を開いたのは獣人種族 牛族(ぎゅうぞく) 、魔術師A級のアゲラダ・ケルナーチだ。

牛族の名前通り、顔は牛で体は人のミノタウロスである。身長も高く3m近くはあるだろう。

体格通り腕力に優れ、さらに魔術師としてもA級の実力を持つ。

始原(01) 内で単純な戦闘能力・火力だけなら、随一の実力者だ。

『うるさいわね馬鹿牛! アンタには関係ないでしょ!』とシルヴェーヌに怒鳴られても、彼は気にした風でもなく笑って受け流す。

次に口を開いたのは、魔人種族 蛇族(じゃぞく) 、魔術師Aプラス級のヴァイパー・ズミュットだ。

コブラのように広がった顔に、口からチロチロと赤い舌が出入りする。

上半身は鎧を身につけた人の形をしており、下半身は蛇の姿をしていた。

彼は座っていた席から立つと、深々と礼儀正しく挨拶をする。

「オヨビイタダキはせサンジましタ。ダンチョウにイタリマシテはゴソウケン、うれしくオモイマス」

顎の形か種族的問題かは未だ分からないが、ヴァイパーの言葉は擦過音が交じりとても聞き取り辛い。

しかし、その分を補おうとしているためか、見た目に反して礼儀を尽くす人物だった。

最後は竜人種族、魔術師Aマイナス級、テン・ロンだ。

こちらも席を立ち、深々と臣下の礼をする。

「お久しぶりです団長。我々を呼ぶほどの重大案件と聞きましたが、いったい何があったのですか?」

目が糸のように細く、黒い髪を背中まで伸ばしている。

着ているのは、ゆったりとした中国の軍師が着ているような特徴的な衣服だ。

戦闘能力はこの部屋にいる者達より劣るが、ある特異魔術により竜人大陸支部のトップに収まっている。

「テン、それは今から話をする。まずは待たせて済まなかった。早速だが会議を始めよう」

アルトリウスが上座に座ると、 四志天(ししてん) 3名は再度着席し、シルヴェーヌも空いている椅子に座る。

「まず現在の状況を把握してもらう。資料を」

「かしこまりました」

アルトリウスの背後に控えていた秘書が、全員分の資料を各自の前へと置く。

魔王に関する話のため、彼&彼女達しか部屋にはいない。

そのためメイドを入れることができず、秘書が雑務を担当しなければならないのだ。

資料を配り終えると、アルトリウスが直々にページを捲りながら、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) と戦った感想も含めて状況を説明した。

女魔王の復活。

PEACEMAKER(ピース・メーカー) に情報を知られてしまったこと。

彼らを出来るなら、手の内に入れたいこと。

現在、彼らの恩師を賓客として 始原(01) 本部へ連れてきたこと――などだ。

『彼らの恩師を~』のあたりで、シルヴェーヌが鼻で笑う。

気にはなったが、尋ねる理由もないためアルトリウスは流した。

一通り説明を終えると、 牛族(ぎゅうぞく) のアゲラダが青筋を立て叫んだ。

「弱小 軍団(レギオン) にあのダン・ゲート・ブラッドが居るとは、本当ですか大将!?」

「うるさいわね! そんな叫ぶ必要ないでしょ!」

シルヴェーヌの批難も無視して、暑苦しい鼻息を漏らす。

まるで赤いマントで煽られている闘牛のようだった。

「所属はしていないが、調べた所 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 団長に1人娘が嫁いでいる。ダン・ゲート・ブラッドは行方不明だったが、最近見付かって同船していたようだ。それに弱小 軍団(レギオン) と侮るな。彼らは十分強い。油断していると足下をすくわれるぞ」

「つまり! 今度の戦にも奴が出てくるってことですね! おおおおぉ! 燃えてきた! 今度こそ奴を叩きつぶしてやりますぜ!」

「……随分、燃えているようだが、このダン・ゲート・ブラッドと何かあったのか?」

アルトリウスの疑問に、アゲラダは意味あり気な笑みを浮かべる。

「はい、昔、まだ大将に拾われる前冒険者をしていた時に少々――まさかこうして再び相まみえるとは!」

アゲラダは蒸気機関車のように鼻息を上げまくる。

そんな彼にアルトリウスが水を差す。

「まだ PEACEMAKER(ピース・メーカー) と争うとは決まっていない。まずは話し合い、出来ればこちらに引き込みたい。そのための会議だ」

「団長がすでに一戦交えたようですが、その戦力差から従順になる可能性はありませんか?」

「……正直に言えば分からない」

「シンジツがヒロマッテハオソいです。スグニしまつするベキカト」

「魔術道具の完成度も高く、人材も良質だった。始末はいつでも出来るのだから、ただ切り捨てるのは勿体ない。それに 静音暗殺(サイレント・ワーカー) の穴埋めも出来るならしておく方が今後のためになる」

「ならばアルト様との一戦が鮮明のうちに会合を持ち、互いの妥協点を探るべきだと思います。そのために――」

テン、ヴァイパー、シルヴェーヌ、そして時折アゲラダが意見を出し、今後の PEACEMAKER(ピース・メーカー) との対応を話し合っていく。

そして長い話し合いの時間の中で、アルトリウスは彼らの意見を参考にしつつ、自身の考えをまとめていった。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

始原(01) 本部貴賓室で、エルと大国メルティア次期国王、人種族魔術師Aプラス級、ランス・メルティアが向き合う。

金髪を背中まで伸ばしたランスはソファーから立ち上がり、挨拶をする。

「突然の来訪、申し訳ありません。ノックをしても返事がなかったため、勝手に入らせていただきました。ご容赦を。僕は人種族・魔術師Aプラス級、ランス・メルティアと申します」

ランスと名乗った青年は、整った顔に笑顔を浮かべて告げる。

「初めましてエルさん、ずっと、お会いしたかったです」

「こ、こちらこそ初めまして、獣人種族、魔術師Bプラス級のエルと申します」

エルも慌てて立ち上がり、挨拶をする。

二人は挨拶を済ませると、ソファーに座り直す。

まずはランスが笑顔で切り出した。

「改めて突然の来訪、申し訳ありませんでした。 始原(01) 本部に所用があり折角だから、アルトが入れ込んでいるという噂のエルさんに一目お会いしたく伺ったのです。……ですが、何度ノックしても反応がなかったので、もしかしたら部屋で倒れているのではないかと心配して入ってしまいました。本当に申し訳ありません」

「いえ、こちらこそ気付かずすみませんでした。少々ぼんやりしてしまって……。それにアルトリウスが入れ込んでいるなんてデマですよ。ただこちらの生活にまだ慣れない私を気遣ってくれているだけです」

ランスの視線が頬へと向けられる。

「なるほど……ちなみにぼんやりとしていた原因は頬の傷に関係が?」

「ッ!?」

エルはランスの登場に混乱し、頬の傷のことをすっかり頭から抜け落ちていた。

慌てて隠すがもう襲い。

彼女は珍しく誤魔化すため、嘘をつく。

「こ、この傷はその……部屋の中でころんでしまって」

「頬だけじゃありませんよね? ……先程、立ち上がる際、お腹を庇う動きをしてました。そちらも転んだ時に?」

「え、えっと、その……は、はい、そうです。転んだ時に一緒に痛めてしまったんです」

エルは嘘に慣れていないせいか、目は泳ぎ、どもり、声音が不自然に高くなっている。まったく誤魔化せていない。

しかしランスはそれを指摘するほど野暮ではなく、気付かないふりをする。

「なるほどそれは運の悪い。よければ僕が魔術で治癒させて頂いてもよろしいですか?」

「えっと……よろしいのですか?」

「もちろんですよ! 美しい女性の傷ほど、見るに堪えないものはありませんから」

ランスは自然な動作で立ち上がり、エルの隣へと座る。

エルの頬に手をかざし、

「――手に灯れ癒しの光よ、 治癒なる灯(ヒール) 」

あっさりと頬の傷を癒す。

同様にシルヴェーヌに蹴られ、内出血したお腹も治癒魔術であっさりと治す。

エルは笑顔でお礼を告げた。

「ありがとうございます」

「いえいえ、僕は大したことをしてませんから」

「それでその…………さらに図々しいお願いなんですが、私の傷のことを誰にも言わないで頂けないでしょうか」

「アルトにもですか?」

「はい。お願いします」

「それは構いませんが、今後の安全のためにもアルトには教えておいた方がいいんじゃないんですか?」

ランスは遠回しに、『転んでついた傷』ではなく『誰かの悪意によって付けられた傷なら自衛するためにもアルトへ進言しては?』と尋ねる。

エルはその事に気付かず、建前の言葉を述べた。

「心配をかけたくないんです」

実際はシルヴェーヌを庇っているのだ。

自分がアルトリウスに彼女のことを告げれば、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) に『安全は保証する』と宣言した手前、シルヴェーヌは処罰されるだろう。

しかし、彼女は自分とアルトリウスの間を誤解して嫉妬に駆られてしまっただけ。

同じ女性として感情は理解できるため、出来れば知られたくなかったのだ。

本来、自分自身で治癒すればよかったが、魔術防止首輪のせいで魔術は使えない。

だが、ランスのお陰で傷痕が残ることなく綺麗に治ったため、わざわざシルヴェーヌを貶めるようなマネをしたくない――というのがエルの本音である。

「…………」

ランスはエルの感情を概ね把握していた。

その上で彼女を評価する。

「貴女はお強いんですね」

「? いえ、戦闘はあまり得意ではありません。どちからというと治癒に特化した魔術師ですので」

「いや、そういう意味ではなく……」

エルの天然発言に思わずランスは苦笑してしまう。

この返答に、ランスは彼女の評価をさらに一段上げた。

彼女は敵陣である 始原(01) 本部に居るのに、まったくぶれていない。芯の強さがある。

いくら善人でも、敵陣に居たら怯え、萎縮し部屋に篭もるのが普通だ。

親しい人間関係をその中で新たに築くのは、ほぼ不可能と言っていいだろう。

なのに彼女はあっさりと親しい人間関係を構築してしまった。

さらに本来敵意、よくて無関心を向けられる筈の 始原(01) 本部内で、彼女は自身を中心に以前より明るい雰囲気を作り出している。

悪意を持って接して来た相手に対しても、決して変わらない善性により処罰を与えず助けようとしている。

エルは困っている人がいれば助けずにはいられないのだろう。例えそれが自分を傷つけた敵だろうと。

こういう人物は気が付くと、自身の周りには多くの味方が付いているものだ。

そして彼女のような大きな器の持ち主は……とてもじゃないがアルトリウスには扱えない、とランスは判断する。

(あいつは世間知らずな坊ちゃんなところがあるからな。何もかも自分の思う通りになると信じている。強引な手段をとればとるほど、エルさんの心は離れると知らずに……。残念だが、彼とエルさんでは相性が悪いな)

アルトリウスがエルを手に入れるため強引な手に出る。

彼女の心まで全てを手に入れようと――。

しかし、そのたびにエルの気持ちはアルトリウスから離れてしまう。

単純な暴力や権力では、意志の強いエルを心変わりさせるのは不可能だ。

その行いで彼を嫌うならまだマシだ。

だが、エルはアルトリウスを許し、どうにかして間違いを正そうと親身に説得するだろう。

その態度がさらにアルトリウスをエルに縛り付ける鎖となってしまうのだ。

ある側面から見るとエルは聖女のようだ。自分に敵意を向ける相手すら許し、正しい道へ導こうとする。

しかし別の視点から見ると、逃れない麻薬のような甘美さを持つ毒婦とも言える。

エルという存在は、男にとって――特に孤独な権力者ほど、溺れる底なしの沼のような存在である。その魅力に取り付かれたら逃れるのは難しい。

エルは下手な魔術師や 軍団(レギオン) より厄介な人物だとランスは断定する。

(だが、今日はエルさんをこの目で見て、直接話ができて本当によかった。彼女がこの異世界でのリュート――堀田くんの実質的育ての親か)

親の影響を受けない子供はいない。

リュートが PEACEMAKER(ピース・メーカー) という『困っている人や、救助を求める人を助ける 軍団(レギオン) 』を創設したのに、エルの影響が0ということはありえないだろう。

その事実を自分の目で確認できたことにランスは満足する。

その後、ランスはすぐにエルの貴賓室を後にした。

彼女の魅力に自身が絡め取られないため、早々に離席を選んだ。

廊下を歩いていると、アルトリウスと顔を会わす。

彼はいつもの秘書を連れず、1人の共も連れずに歩いていた。

アルトリウスはランスに気付くと、首を捻り声をかける。

「なんだランス、来ているなら声をかけてくれればいいものを」

「今日は大切な会議の日だろう。僕の用事は終わったから、邪魔をしないようにと思ってさ。アルトはこれからエルさんのところかい?」

ランスがエルのことを知っていたことに眉根を寄せるが、すぐに納得する。

彼の耳の早さはアルトが認めている。それにエルに関しては秘匿している訳ではない。

「……彼女が体調を崩したと聞いてな。会議がちょうど一時休憩に入ったので、様子を見に行く途中だ」

「ふ~ん……見舞いね」

「なにか問題でもあるのか?」

ランスの態度にアルトリウスは不快そうに眉根を寄せる。

彼は気にせず苦言を呈する。

「友人として言わせてもらうなら、エルさんに深入りするのは止めた方がいい。アレはヤバイ」

この発言に本気でアルトリウスは不機嫌そうに顔を顰めた。

構わずランスは続ける。

「君は他者が自分の思う通りに動くと信じ切っている。坊ちゃん気質だから、先の未来予想を甘く見積もりすぎる。それはアルトの悪癖だ。――問題は君に実際、力と権力、金、カリスマがあり、ある程度は未来を動かせることだ。さらに頭もキレるから謀略、策略、根回しまで出来てしまう。結果、一度も失敗せずここまで来てしまった。それが問題なんだよ。分かるかい?」

「何が言いたい。第一、それならランス自身が我と同じではないか」

「確かにある意味で僕自身、君同様欲しいものは何でも手に入れることができる。けど僕自身は 知っている(、、、、、) 。底が見えないほどの絶望も、地獄のような屈辱的日々も。……だから君のようにはならない」

ランスが続ける。

「エルさんを望むのはもう止めろ。あの人は決して君のものにはならない。望めば望むほど自身の首を絞める結果になる。執着すればするほど手に入らなかったときとの落差を生む。……初めての体験だろう、君にとって。それは致命傷になる。確実だ。だからこれ以上、彼女に傾倒するのは止めた方が良い。最悪、命を落とすことになるぞ?」

アルトリウスが殺意にも似た敵意を瞳に込めて、ランスを睨み付ける。

しかし彼は飄々と微笑みを浮かべて受け流す。

先にアルトリウスが負けて、黙り込んでランスの脇を通り抜けエルの部屋と再び向かう。

その背にランスが再度、声をかけた。

「忠告はしたからな」

だが、アルトリウスは返事もせず、一度も振り返ることなく廊下の角に消えてしまった。