軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第232話 洞窟で作戦会議

「か、勝てるかぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

オレは今夜、野営する洞窟奥の広場で絶叫する。

場所は教室の倍以上広いが、大声は反射し反響した。

スノーがうるさそうに耳をぺたんと倒し、手で押さえる。

その姿に気付き、オレは慌てて謝罪した。

「ご、ごめんスノー、大声出したりして」

「ううん、気にしないで。リュートくんの気持ちも分かるから」

現在、オレ達は旦那様から無事、逃げだし洞窟奥の広場まで戻ってきた。

旦那様もここまで追ってくるつもりはどうやらないようだ。

今日はこの場所で野営することにする。

洞窟は暗いが、魔術光のお陰で明るい。

雨、風の心配も無いため外で寝るより随分と楽だ。

スノー達は野営準備で手を動かしながら、今日の旦那様との戦いを振り返る。

「リュートくんやクリスちゃんから、強い強いとは聞いてたけどまさかあれほどとは思わなかったよ……」

「本当ですよ。手榴弾や対戦車地雷、パンツァーファウストを受けて無傷で、さらに鉄条網まで引き千切るなんて」

「コッファーも壊されてしまいましたし……」

スノーが寝床の準備をしていると、リースの『無限収納』から出してもらった調理器具で料理をするシアの2人が同調する。

『すみません、非常識な父で……』

スノーの寝床作りを手伝うクリスが、ミニ黒板を手に頭を下げる。

「別にクリスが悪い訳じゃないよ。まぁ気持ちは分かるけど……」

オレとメイヤは今回使用した銃器などの整備、点検をおこなっていた。

オレは手を止めず話をする。

「でもお陰で旦那様の防御方法が分かったのはありがたいよ」

「旦那様は莫大な魔力の壁で防いでいるのだろう。違うのか?」

念のため周囲を警戒してもらっているギギさんが、疑問をぶつけてきた。

「あれはただの魔力の壁じゃありません。『爆発反応装甲』と同じ原理で攻撃を防いでいるんですよ」

オレは皆にも分かるように『爆発反応装甲』の原理を説明する。

一通り説明すると、やはり一番最初にメイヤが食い付いてきた。

「あの激戦の最中、冷静に相手の戦力を見極めるなんて! さすがわたくしのリュート様ですわ!」

誰が『わたくしの』だ。

そして夕飯ができあがったので、テーブルに並べる。

椅子やテーブル、食器類、鍋や調理器具など全てリースの『無限収納』から出した。

本当にリースの精霊の力はありがたいな。

夕飯のシチュー&保存食のパン、デザートの果物を食べながら、爆発型反応装甲の防御を考慮にいれた上で『どうやって旦那様を倒すか?』という話をする。

まず最初にメイヤが案を出す。

「相手が爆発型反応装甲のような防御をしているのなら、パンツァーファウストをPG―7VRのような形にするのはどうでしょうか?」

「弾頭の先にもう一つ弾頭を付ける方法か……。でもすぐには難しいと思うぞ。下手に改造してもちゃんと前に飛ぶか分からないし」

『では、銀毒を盛るのはどうでしょう? いくらお父様でもヴァンパイア。銀毒を盛れば弱るはずです』

ヴァンパイア族であるクリスが、提案する。

一応、念のため銀は持ってきていた。

また銀毒に陥った場合として 反銀薬(アンチシルバードラッグ) も用意してある。

確かにクリスの案は現実的だ。

しかし、問題があるとすれば……

「どうやって旦那様を銀毒状態にするかだよな……」

オレの呟きに、皆が肩を落とす。

もしクリスがライフルで旦那様に傷を負わせることが出来るなら、ライフル弾を銀でコーティングすればいい。

しかし、彼女の超人的な技術力を持ってしても、旦那様の魔力の壁を突破して体を傷つけるのは難しいようだ。

「はいはい! なら、ご飯に銀を混ぜて食べてもらうのはどうかな?」

スノーが元気よく挙手して意見を出す。

「そんなあからさまに怪しい物を食べるわけないだろう。たぶん……」

オレは彼女の意見を躊躇いながらも、却下した。

いくら細かいことを気にしない旦那様でも、そんな怪しげな物を食べたりしないよな?

「なら銀のナイフはどうだ? あれなら材料さえあれば作り出すのは難しくない。それにナイフなら近接で戦えば傷を与えやすい。そう与えやすいんだ。相手に悟られないように隠すこともできるし……」

提案したギギさんはだんだんとトーンを落としていく。

どうやら前、ダン・ゲート・ブラッド伯爵の奥様であるセラス夫人を刺した後悔が蘇ったのだろう。そして1人、落ち込む。

そんな器用に落ち込まなくても……。

だが、ギギさんのアイデアは悪くない。

彼の言葉でオレは今回もっとも適した武器があることを思い出す。

「銀毒、ナイフで戦うほどの近距離戦……。それなら、あの武器を作ればもしかしたら旦那様を倒すことが出来るかもしれないな……」

「リュートさん、何か思いついたのですか?」

「もしかしたら、この方法なら……」

オレはリースの言葉に頷き、返答する。

そしてオレは思いついたアイデアを皆に聞かせた。

話を聞き終えた皆は、そのアイデアを元に意見を出し合って作戦を立てていった。

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昨日の夕食後、オレは思いついたアイデアを実現するため、メイヤの手を借り早速作業に入る。

深夜遅くに完成し、翌日は性能チェックの確認で潰れてしまう。

さらに次の日は、戦うための色々な準備を皆でおこない消化してしまった。

結局、旦那様との再戦は初戦から3日後の午後からおこなわれた。

「はははっははははあ! 良く来たなリュート! 再び挑むと言うことは我輩を倒す算段を付けてきたということだな?」

旦那様は3日前に戦った踊り場でトレーニングをしていた。

オレ達に気付くと、トレーニングを止めて出迎えてくれる。

階段の踊り場は前回の戦いが嘘みたいに修繕されていた。

旦那様は体躯や性格に似合わず手先が器用だ。

恐らく彼が修繕したのだろう。

オレは腰に手を当て、胸筋を揺らす旦那様に不敵な笑みを返す。

あえて笑みを浮かべたのは、相手の迫力に飲み込まれないようにするためだ。

「はい、お陰様で。今回は負けませんよ」

「はははっはあ! そうか! そうか! どうやって我輩を倒そうとしているのか楽しみにしているぞ!」

旦那様は心底楽しそうに声をあげる。

オレはリースの無限収納から、 戦闘用(コンバット) ショットガン、SAIGA12Kを取り出し受け取る。

そして、1人、旦那様の前へと出た。

「他の者は戦わないのか?」

「はい。今回はオレ1人でやらせていただきます」

初弾を 薬室(チェンバー) へと移動する。

「クリスの旦那として、お 義父(とう) さんには独力で勝ちたいですから」

この発言に旦那様は、今までで一番上機嫌な笑い声をあげた。

「はははははっはあっっははあ! いいぞ、リュート! 男はそうでなくちゃ!」

笑みを浮かべたまま、胸の前で何度も両手の拳を叩く。

「久しぶりだな、リュートと1対1で戦うのは……」

「はい! オレの成長を存分に楽しんでください!」

「ははははは! もちろん! 全力で楽しませてもらうぞ!」

旦那様はオレの言葉に機嫌よさげに声をあげた。

オレも旦那様の笑い声に負けない大声で、『よろしくお願いします!』と張り上げる。

「ギギ! 勝負の合図を頼む!」

「は! 了解いたしました」

ギギさんは審判のようにオレと旦那様との中間地点に立つ。

上から見るとオレ達3人で正三角形を作っている立ち位置になる。

ギギさんの反対側にはスノー、クリス、リース、メイヤ、シアが居てオレを心配そうに見詰めていた。

クリスと目が合う。

「…………」

オレは彼女に『大丈夫』と伝えるように頷く。

クリスは心配そうな表情を浮かべながらも、口元に笑みを作る。

まるでこの時、オレは魔人大陸にあるブラッド家屋敷中庭にいるような懐かしさを覚えた。

あの時もこうしてギギさんが立ち会い、クリスと作戦を立て、旦那様を倒して訓練クリアを目指したな。

旦那様にはやっぱりこんな地下は似合わない。

魔人大陸の屋敷でセラス奥様やメルセさん、ギギさん、メリーさんや他使用人達に囲まれて楽しげに声を上げている方がずっと似合っている。

そんな旦那様を取り戻すためにも、この勝負は絶対に負けられない。

ギギさんがオレと旦那様を交互に一瞥する。

「2人とも準備はいいですか?」

「うむ、いつでもいいぞ」

「はい、大丈夫です」

確認を取るとギギさんは昔の模擬戦のように右手を上げ、

「勝負始め!」と振り下ろし、合図を出す。

合図と同時に旦那様は全身に魔力の壁を展開し構える。

オレはというと――そんな旦那様に背を向け一目散に街の建物群へと逃げ出した。

流石に旦那様も突然の逃走に面食らったのか、オレの背をただ見送る。

旦那様はそんなオレに声をかけた。

「どこに行くつもりだリュート! 勝負を放棄するつもりか!?」

「旦那様が有利な場所でわざわざ戦う必要はありません! 敗北が怖いのならその場から動かないことをお薦めしますよ!」

オレは逃走しながらも、旦那様を作戦の場所に引き摺り込むためわざと挑発的な台詞を叫ぶ。

もちろん旦那様はそれを理解し、楽しげに大笑いした。

「ははははっははあ! なるほど戦略的逃走か! 面白い! なら我輩もあえてその誘いにのってみようですないか!」

旦那様はオレの後をその巨体に似合わない速度で追いかけてくる。

こうしてオレと旦那様の1対1の戦いが数年ぶりに開始した。