軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第223話 魔物大陸、到着

改めて――魔物大陸というのがどういう場所か整理しよう。

この世界は大きく分けて6つの大陸で構成されている。

妖人大陸。

獣人大陸。

竜人大陸。

魔人大陸

北大陸

そして魔物大陸だ。

大昔、6大魔王を5種族勇者が5体まで倒し、封印した。

伝承では最後の一体は、魔物大陸の奥深くに存命しているといわれている。

最後の魔王の影響のせいか、他大陸とは段違いに魔物の数・質とも高い。

他大陸の住人がろくな準備をせずに魔物大陸に行ったら、まず生きて戻れない。それがこの世界の常識だ。

大陸の位置を時計で置き換えると、6時の位置に当たる。

そんな場所に、オレの嫁であるクリス・ガンスミスの父、ダン・ゲート・ブラッド伯爵が奴隷として買われていったので助け出す手伝いをして欲しいと、ギギさんに助けを求められたのだ。

オレ達は一度、獣人大陸にある新・純潔騎士団本部に戻った。

また長期で休んでしまうためその手続きと、行き先が魔物大陸のため装備を十分に整えなければいけないためだ。

また今回の旅で他の嫁達は連れて行くが、ココノは置いていくことになった。

病弱で、戦闘技術もない彼女を魔物大陸なんて危険な場所へ連れて行く訳にはいかないからだ。

これにたいしてココノは、悔しそうに顔を歪めながらも、

「……分かりました。リュート様達のお力になれず残念ですが、 本部(ここ) で皆様の無事を天神様に祈り、お帰りをお待ちしたいと思います」

ココノは我が儘を言わず、大人しく引き下がる。

自分がついていっても、足を引っ張るだけだと理解しているのだろう。

そして、オレ達は準備を終えてレンタルした飛行船に乗り、魔物大陸へと向かった。

先にギギさんが魔物大陸へと向かい準備を整えているはずだ。

まずはギギさんと合流するのが先決だろう。

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オレ達が飛行船で向かった街は、魔物大陸の玄関口である港街の一つ――ハイディングスフェルト。

飛行船はその発着場へと辿り着く。

魔物大陸にある街だけあり、城壁が北大陸のノルテのように分厚く・堅牢そうだ。

こういう街から大陸奥地へと物資を運んでいるらしい。

借りた飛行船を返却し、改めてハイディングスフェルトを観察する。

魔物大陸に行ったら生きては帰れない――そう言われている割りに街も大きく、人も多数存在した。

普通に賑わっている港街といった感じだ。

魔物大陸の主な輸出品は魔物の素材だ。

他大陸と違って質・数共に、高く、大量に素材が手に入る。

他にも鉱物、魔物大陸でしかとれない薬草類などが、他の大陸へと運ばれている。

しかし、その程度の資源で危険度の高い場所で、これほど街が栄えるはずがない。

魔物大陸にある街は他大陸と違って、各国から援助金が支払われているのだ。

なぜ援助金が支払われているかというと――魔物大陸は魔物が強すぎて未だに全容が把握できていない。

その上言い伝えでは、各国にとって潜在的脅威である『魔王』が存命しているらしい。

故に魔物大陸の調査をするため、各国が資金を出し合っているのだ。

金が集まれば人も集まる。

危険を承知で名声をあげるため、金に目が眩み集まった命知らずな冒険者達。

商売の匂いを嗅ぎつけた商人。

奴隷に堕ちて、連れてこられた人々。

各国からの人材支援という名目で送られてきた貴族の三男、四男坊やその他様々な人。

――様々な理由で人々が絶え間なく集まる。

そのせいで街は一目見ただけで多種多様な種族が集まった人種の坩堝だ。

「さて、立ち止まっていてもしかたない。ギギさんと合流するか」

オレの掛け声でスノー達も歩き出す。

向かう先は一件の宿屋だ。

名前は『サリ』という宿屋だ。

以前、ギギさんが泊まっていた宿屋らしく、今回もここに滞在する予定である。ギギさんが描いてくれた地図を片手に移動する。

宿屋サリは、大通りに面した一角に建っていた。

がっちりとした建物で、質実剛健を絵に描いたようである。

中に入り、ギギさんの特徴を告げ泊まっていないか確認したが――宿泊客の情報はあかせないと頭を下げられた。

とりあえずまずは落ち着こうということで、部屋を取る。

部屋はオレ、スノー、クリス、リースで一部屋。

シア、メイヤがそれぞれ一部屋ずつ取る。

部屋は過度な装飾品を好まず、シンプルな家具だけで揃えられていた。

良い言い方をすればシンプルで機能的な部屋。

悪い言い方をすれば味気ない部屋だ。

しかし、オレとしては前者で、またギギさんが好んで泊まりそうだな――と1人納得する。

時間は昼。

食事を摂るのと、街の観光がてら外へ出ることになった。

宿屋を出るとちょうどギギさんと顔を合わせた。

ギギさんもちょうどお昼を食べるらしく、そのまま飯屋に移動することになった。

皆、テーブルに着くがやっぱりシアだけは席を立ち、給仕に専念する。

こんな場所でもわざわざやらなくても……。

しかし、彼女は意見を曲げないため、こちらが折れるしかない。

そして食事を摂りながら、ギギさんと簡単に今後の流れを確認する。

「まずリュート、来てくれてありがとう、感謝する」

「何言ってるんですか、ギギさん。旦那様を助けるためなら当然ですよ」

ギギさんが律儀に頭を下げてくるので、オレはやんわりと返答する。

「そう言ってもらえると助かる。早速だが、この街からまずアルバータへ移動してもらう」

アルバータは、今オレ達が居る港街ハイディングスフェルトより、大陸奥にある街である。

獣人大陸のココリ街のように、大陸奥地へ物資を運ぶ中継街のようなものだ。

その街からさらに馬で約一ヶ月以上移動した場所に旦那様が居るらしい。

「とりあえず次の街アルバータには、6日後、商隊と一緒に向かう手筈を整えておいた。だいたい10日の旅になる」

「なんでまた商隊と一緒なんですか?」

オレの質問にギギさんは、淡々と答えてくれる。

「魔物大陸の魔物は知っての通り、他大陸と比べて強い。数も多いため、魔物と戦う頻度が異常に多いんだ。だからこの大陸では、ある一定人数以上で街間を移動するのが常識だ。一部隊を戦わせている間に、他部隊が休む。複数の部隊で交代で戦うことで疲労を調整するんだ」

もちろん人数が多いのは保険の意味もあるらしい。

安全マージンを取るのは普通だが、魔物大陸ではより一層気をつけているようだ。

オレはシチューに大麦パンを浸して柔らかくしてから食べる。

飲み込んだ後、疑問を皆に聞かせた。

「魔物大陸は本当に物騒ですね。商隊の出発が6日後なら、一度この辺りの魔物と戦ってみて感触を掴んでおいたほうがいいかもしれないな。皆はどう思う?」

「確かにリュートくんの言う通りかも。いきなり『本番!』よりは練習がてら戦ってみたいかな?」

『ですね。私もリュートお兄ちゃんの意見に賛成です』

「私としても賛成ですが、今日すぐにというのは反対ですね。旅の疲れも残っていますし無理をして怪我などしたら大変ですから」

リースの意見はもっともだ。

まだ出発までに6日ある。

今日すぐやる理由はない。

「確かに。なら実際にこの辺りの魔物と戦うのは決定として、クエストを受けるのは疲れを取るため2日後ということで異存はないか?」

「賛成ですわ。でも、折角なのでこの後、 冒険者斡旋組合(ギルド) の場所とどんなクエストがあるのか確認するぐらいしておいた方がよろしいと思いますわ。2日後になってどたばたするより、場所の確認とどのクエストを受けるかの目星を付けておいた方が当日スマートに動けるのではないかと思いますわよ」

メイヤの意見にはもちろん納得する。

しかし、彼女の台詞にギギさんを除いた皆が顔を強張らせた。

いつもの展開なら、受付嬢さんの親戚が居る流れだ。

まさかとは思うが今回もそっくりさんがいたりするのかな……。

ギギさんが首を傾げる。

「どうした? 冒険者斡旋組合(ギルド) の場所なら俺が知っているから食事が終わったら案内するぞ」

ギギさんの反応から見て、受付嬢さんのそっくりさんが居る可能性は低い。

しかし、北大陸では 冒険者斡旋組合(ギルド) の支部長を務めている例もある。そのため奥に引っ込んでいてギギさんが顔を見ていない可能性がある。

今まで沈黙を保っていたシアが口を開く。

「……若様、コッファー(大)の準備をしておきますか?」

コッファー(大)は通常のコッファーと比べて旅行鞄のように大きい。

大きくなった分、9mm(9ミリ・パラベラム弾)だけではなく、反対側から40mmグレネード弾を発砲でき、ボタン操作で側面から刃も飛び出るギミックが施されている。

通常のコッファーと比べて、火力が増大している代物だ。

いやいや、100人単位の冒険者と戦いに行く訳じゃないんだから。

それにあの受付嬢さんと違って、他大陸であう親戚の方々は友好的な人達しかいない。

だから、コッファー(大)を取り出す程ではない……ないよな?

「と、とりあえずメイヤの言う通り一度 冒険者斡旋組合(ギルド) の場所と後日受けるクエストの内容を確認しておこう。ギギさん、案内お願いしてもいいですか?」

「ああ、もちろんだ。任せておけ」

ギギさんの了解を取り、食事をしながら他の商隊移動に必要な細々とした話をする。

そしてオレ達は食事を終えると、 冒険者斡旋組合(ギルド) へと向かった。

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冒険者関係の施設が集まった区画に 冒険者斡旋組合(ギルド) は建っていた。

木造で、他大陸とそれほど差はない。

魔王を倒して5種族勇者のように名声を上げようとする冒険者、他大陸より魔物が多く資金を稼ぐために来た者達などで活気づいていた。

一度に全員(7人)で建物内に入ると邪魔になるため、代表してオレとギギさん2人で中に入る。

建物内もいつもと変わらない 冒険者斡旋組合(ギルド) だ。

壁の一角にはクエスト依頼が張ってある。

やはりというべきか、薬草採取や建物の修理など雑務より、魔物討伐の依頼が多い印象だ。

「ギギさん、この辺で一番強いのはどの魔物になりますかね」

「この『ヘビーロック』だな」

ギギさんは迷わず壁の一角に貼られた依頼を指さす。

ヘビーロックという魔物は体長が2m以上あり、全身を硬い岩で鎧のように覆われた魔物だ。そのため剣や槍で倒すのが難しく、魔術や斧、大鎚で倒すのが一般的らしい。

トロールやオークが頑強な鎧を着ているようなもので、さらに厄介なのはヘビーロックは常に群れで移動していることだ。

さらに好戦的で、例え冒険者側の人数が多くても関係なく襲ってくるとか。

腕に自信のある冒険者でも、集団で取り囲まれて襲われ原型を留めないほどぐちゃぐちゃに殺害されることもしばしばらしい。

「なるほど……なら、明後日受けるクエストはこの『ヘビーロック討伐』かな」

「……リュート達なら大丈夫だと思うが、油断はするなよ」

「こちらのクエストをお受けするのですか?」

ギギさんの心配そうな声を聞いていると、オレ達の会話に 冒険者斡旋組合(ギルド) 職員が割って入ってくる。

相手は人種族の男性職員で、人の良さそうな笑顔を浮かべている。

「今日ついたばかりでクエスト内容を確認しに来ただけなんです。まだ旅の疲れが抜けなくて。明後日、改めて受けさせて頂ければと」

「なるほどでしたら無理をなさらないほうがいいですね。疲れを取るのも冒険者にとって重要な仕事ですから」

男性職員は柔和な顔で頷き、一礼して離れようとする。

オレは慌てて彼を引き止め、小声であることを問いかけた。

「失礼ながらちょっとお尋ねしたいことがあるのですが……」

「はぁ、なんでしょうか?」

突然、シリアスな表情に切り替え周囲の目を気にして小声で話しかけてきたオレに、男性職員が身構える。

何か重要な案件、問題でもあるのかと。

「……この 冒険者斡旋組合(ギルド) に 魔人種族(まじんしゅぞく) の頭部から角が生えた受付嬢さんって居ますか?」

「受付嬢ですか?」

男性職員はどこか拍子抜けした表情を浮かべる。

「いえ、居ませんよ。魔物大陸は危険度が他大陸とは違うのであまり女性はいらっしゃいませんから。ここの 冒険者斡旋組合(ギルド) も人種族の受付嬢以外は全員男性職員しかいませんね。それがどうかしましたか?」

おお! これは珍しいパターンだ!

他大陸に移動して 冒険者斡旋組合(ギルド) を訪ねて、受付嬢さんorその親戚筋の人がいないなんて!

「すみません、ごく個人的に気になることがあって。ありがとうございました」

「そうですか。それでは私はこの辺で」

男性職員にお礼を言うと、彼は再び業務へと戻った。

オレはそんな彼の後ろ背中を見送ると、不意に胸中にすきま風が吹いた気がした。

いつもなら他大陸の 冒険者斡旋組合(ギルド) を訪ねると受付嬢さんの親戚筋が居た。最初の頃はそりゃ驚いていたが、居ないと分かったらなんだか物足りなさを感じてしまう。

人間というのはなんて我が儘な生き物なんだろう。

ギギさんはそんなオレの哀愁を何と勘違いしたのか……

「魔人種族の受付嬢とは、あの竜人大陸の受付嬢さんのことか?」

「えっと、そうです。行く先々で彼女の親戚の方とよく会っていたので」

「リュートとは本当に彼女を姉のように慕っているのだな」

どうやらギギさんの目から、オレが慕っている親戚筋の受付嬢さんが居なくて寂しがっていると勘違いしているようだ。

今ここでオレ達がどれほどあの受付嬢さんに恐怖を抱いているのか、そしてギギさんの勘違いを訂正するのは難しくない。

しかしオレは後が怖くて……

「ソウデスネ。僕ハ受付嬢サンヲ尊敬シテイマス」と明後日の方角を見詰めながら口を機械のように動かす。

すみません、ギギさん。

あの受付嬢さんの怨みを買えるほど自分は強い人間じゃないんです。

こうしてオレは 冒険者斡旋組合(ギルド) の場所とクエストを確認して、外で待つ嫁達と合流した。