軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第218話 メイヤ説得、準備段階

結局、準備を終えメイヤの後を追えたのは、彼女が出て行って1日以上経った後だった。

竜人大陸へ行くのはオレ、スノー、クリス、リース、ココノ、シアの合計6人だ。

最初はオレだけメイヤの後を追おうと思っていたが、竜人大陸にある借家を整理し、引き払うため嫁達にも付いて来てもらった。

シアは皆の世話をするため同行する。

新・純潔乙女騎士団の仕事はカレン達が居るため安心して任せられる。

またミューアには諜報を専門にする部隊設立を一任しておいた。設立の際、必要な資金・物資は無条件で使用していいと許可を与えている。

引き続き PEACEMAKER(ピース・メーカー) の外交部門を同時並行で担当することになるが、彼女なら問題なくこなすだろう。

そしてオレ達は飛行船をレンタルし、竜人大陸を目指す。

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竜人大陸へ辿り着くとまずやったことは、メイヤ邸へ向かう――ではなく、オレ達の自宅近所への挨拶まわりだ。

嫁達はいつのまにか獣人大陸土産をご近所分用意して、挨拶まわりの準備を終えていた。

大勢で押しかけるのも迷惑なので、リース&ココノの2人に挨拶まわりを任せる。

リースは愛想とトークスキルが高い。

ココノは新妻のため周囲に紹介する意味がある。

その間にスノー、クリス、シアは 自宅(ウチ) の点検&買い出しだ。

掃除はメイヤ邸のメイド達が定期的にやってくれているため問題なし。

念のため問題がないか確認するのと、夕飯の材料や足りない消耗品の補充をする。

できればすぐにメイヤ邸に向かって、彼女と話し合いをしたい。

しかし、立ち話や短い時間で済む内容ではないため、まずやるべき手続きを終えなければならないのだ。

オレも嫁達が忙しそうに動くのをただ眺めているだけではない。

これから 冒険者斡旋組合(ギルド) へ行って、オレ達が竜人大陸に一時移動したことを知らせなければならないのだ。

指名やいざというときの緊急クエスト依頼が入る可能性がある。

そのため一般的に 軍団(レギオン) は、どこに居るのか 冒険者斡旋組合(ギルド) へ報告しておかなければならない。

報告しなくても別段、ペナルティーがあるわけではない。

軍団(レギオン) の性質上、報告しない・出来ないのもいるからだ。

処刑人(シーカー) などその典型だ。

だから、面倒なら別に報告しなくても問題はない。しかしこの街は あの(・・) 受付嬢が居る 冒険者斡旋組合(ギルド) である。

下手に報告をせず、後から『なぜ 冒険者斡旋組合(ギルド) へ報告にこなかったのか?』と彼女に迫られても怖い。

そのためオレは渋々、 冒険者斡旋組合(ギルド) へ報告に行くのだ。

そんなオレにスノーが心配そうに声をかけてくる。

「ねぇリュートくん、やっぱりわたしも一緒に付いて行こうか?」

「スノー……ッ!」

彼女の言葉に思わず縋りそうになる。

オレは数年振りにあの受付嬢さんに会いにいくのだ。

彼女が結婚してくれていたらいいが、もししていなかったら……。

想像するだけで冷や汗が流れ落ちる。

しかもオレは彼女の会わない間に、さらに左腕の腕輪を増やしている。

恐らく彼女は 冒険者斡旋組合(ギルド) ホールへ入った瞬間に気付くだろう。

その後、どういう反応を示すか、想像すらできない。

これならまだ単身で、『 処刑人(シーカー) と戦え!』と言われた方がマシだ。

だが、そんな危険な場所に愛するスノーを、妻達を連れて行くわけにはいかない!

オレはそっとスノーの頭を撫でる。

「いや、オレ1人で行くよ。大丈夫、竜人大陸に戻ってきたと一言告げるだけさ。すぐに戻ってくるから」

「リュートくん……」

スノーは赤ん坊の頃から付き合いのある幼馴染み。

オレの心情を察して、涙を浮かべる。

彼女を安心させるようにさらに頭を撫でた。

いくら相手があの受付嬢さんでも、 冒険者斡旋組合(ギルド) で何かやらかす筈がない……多分。

それに今日は休みかもしれないじゃないか!

オレは覚悟を決め、妻達を自宅に残し 冒険者斡旋組合(ギルド) へと向かう。

「それじゃ行ってくるよ。後の雑務は任せた」

『リュートお兄ちゃん……』

「リュートさん……」

クリスとリースも、まるで戦場へ向かう夫を見守る妻のような表情を浮かべる。

ココノは受付嬢さんのことは話でしか聞いていないため、いまいち危機感が足りず彼女達の態度にやや首を傾げていた。

オレはそんな彼女達に声をかける。

「スノーにも言ったが大丈夫、必ず戻ってくるよ。そして、一通り雑務が終わったら明日、メイヤを迎えに行こうぜ」

それだけ告げ、オレは1人歩き出した!

……しかし、最後の台詞はなんだか死亡フラグっぽくなったな。

第六感が警報を鳴らし、背中を冷たい汗が流れた。

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懐かしの 冒険者斡旋組合(ギルド) に辿り着く。

冒険者斡旋組合(ギルド) の建物は、3階建ての木造だ。

体育館ほどの大きさで、冒険者らしき人達がひっきりなしに出入りしている。

昔とまったく変わっていない。

オレは用心して、懐に入れてあるUSPの安全装置を解除。

初弾をすでに 薬室(チェンバー) へと入れている。

弾薬(カートリッジ) はハンドガン用の徹甲弾『KTW弾』だ。

もし戦いになったら迷わず 引鉄(トリガー) を絞ろう。

家にはオレの帰りを待つ愛する妻達が待っているのだから……!

覚悟を決めて久しぶりに扉をくぐった。

右手は懐のUSPを握り締め、左手でいつものように番号が焼き印された木札を受け取る。

番号が呼ばれると個室カウンターへと座った。

「いらっしゃいませ、今日はどういったご用件でしょうか?」

カウンターの反対側にあの受付嬢が座っていた。

魔人種族(まじんしゅぞく) らしく頭部から羊に似た角がくるりと生え、コウモリのような羽を背負っている。

年齢はいまだになぜか20台前半っぽく、昔と比べてもまったく老けた様子がない。

本当に 冒険者斡旋組合(ギルド) 服がよく似合っている。

しかし今更だが、彼女がオレの担当になる確率が異常に高いのは何か運命的なものが絡んでいるのだろうか?

「って、リュートさんじゃありませんか! お久しぶりですね」

受付嬢さんはオレの顔を思い出し、驚いた後、懐かしそうな声音で挨拶をしてくる。

オレは懐のUSPを握り締めたまま、挨拶をした。

「お久しぶりです。実は今、所用で PEACEMAKER(ピース・メーカー) メンバーの一部と一緒に竜人大陸に来ていて。今日はその報告です」

「なるほど、ご報告ありがとうございます。では、手続きをしますね」

オレが書類を提出すると受付嬢さんは朗らかに受け取り、手際よく作業を開始する。

「それにしてもまたお嫁さんを増やしたんですか?」

作業をしながら、受付嬢さんは左腕に視線を投げかけた。

その声音に呆れはあっても妬み、嫉み、憎悪の悪感情は見受けられない。

「えっ、はい、そのちょっと縁がありまして……」

「おめでとうございます。でも、あんまり女の子を増やすと奥さん達から恨まれますよ」

「いえ、嫁達もちゃんと納得済みなので……」

受付嬢さんはまるで年上の頼れるお姉さんのようにチクリと叱ってくる。

それが逆に怖い! 凄く怖い!

まだ露骨な嫉妬心で呪詛を吐いてくれた方が対処がしやすい。

悪い物でも食べたのだろうか?

それともモテなさすぎて悟りの境地に至ったのだろうか?

「もうそんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。昔のように毒突いたりなんてしませんよ」

心情を読まれたのが受付嬢さんは微苦笑を浮かべ答える。

彼女は恥ずかしそうに近情を教えてくれた。

「実は3ヶ月前に友人の紹介で知り合って、竜人種族の彼氏ができたんです。今日も仕事が終わったらデートの約束をしているんですよ」

「ほ、本当ですか!? おめでとうございます!」

驚きすぎて声が大きくなってしまったが、オレは祝福の言葉を贈る。もしここが 冒険者斡旋組合(ギルド) 店内でなければ、手が痛くなるまで拍手をしていただろう。

いや、本当によかった!

ようやく受付嬢さんにも春が来たんだな!

「もし知っていたらお祝品を持ってきたのに! いえ、この後、すぐに買って来ますね!」

「いいえ、お気になさらないでください。でも、もし機会が合ったら彼との結婚式を開く際は、是非出席してくださいね」

竜人大陸では、他4種族とは違って結婚式を開く。

その結婚式も派手であればあるほど、花嫁が幸せになれるという伝統があるらしい。

昔、メイヤに聞かされた。

メイヤ曰く、『わたくしは愛する人から結婚腕輪さえ頂ければ、天にも昇る幸せですけど!』とチラチラこちらに視線を向けてきたからスルーしたが。

受付嬢さんは魔人種族だが、お相手の竜人種族の彼氏に合わせるつもりなのだろう。

健気な人だ。

本当にこの人は性格もいいし、顔立ちも美人、スタイルもよく、働き者なのに縁がなくて可哀相だったが、ようやく報われる訳か。

「もちろんです! どんなクエストや用事が入ろうとも出席し、祝わせてもらいますよ!」

その程度で彼女が幸せになってくれるなら、喜んでクエストの違約金を払ってでも途中で棄権し結婚式に参加するよ!

こうして上機嫌な受付嬢さんに応対してもらい、 冒険者斡旋組合(ギルド) への報告義務を終わらせる。

他に獣人大陸や北大陸で出会った親類の話をしたかったが、さすがにオレ1人いつまでも場所を占領しているわけにはいかず席を離れた。

オレはこのビッグニュースを引き下げ、嫁達が待つ自宅へと向かう。

きっとスノー達も話を聞いたら腰を抜かすほど驚くだろうな。

そして、これで一通りの雑務も終わり、いよいよ明日メイヤ邸へと顔を出すことができる。

彼女はちゃんと話を聞いてくれるだろうか?

オレは胸にやや不安を抱えながら、足早に自宅へと戻った。