軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第188話 飛行船問題

巨人族を深谷の底へ押し流して約1ヶ月――オレ達、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) メンバーは新領主アム・ノルテ・ボーデン・スミスと夕食を摂っていた。

事件解決後から、オレ達は下にも置かない扱いを受けている。

今夜は一通りの後始末の目処がある程度ついたため、アムの口から経過報告を聞くことになっていた。

元ノルテ・ボーデン領主であるトルオ・ノルテ・ボーデン・スミスは、引退後、街を出て遠方にある領地の端で隠居生活を送るらしい。

すでに街を出て向かっている最中とのことだ。

今回の主犯格であるオール・ノルテ・ボーデン・スミスと彼の仲間達は、現在も地下牢に繋がれている。

彼らへの罰は国の法に則っておこなわれる――と、アムが寂しそうに告げた。

オールに金で雇われた冒険者達と、ただ上からの命令と言うことで彼に従っていた衛兵達は、一部悪質な者達を除いて高額な罰金を支払うことで許された。

本来はもっと重い罪に問うべきなのだが、彼らはオレ達と一緒に約100体の巨人族から街を守った立役者だ。

彼らがいなければ住民は避難しきれなかったし、街に侵攻してきた巨人族によって今よりもっと大きな被害があったかもしれない。

その功績を認め、減刑したのだ。

また彼らまで投獄すると牢屋が足りないのに加えて、街の治安悪化に繋がる――という理由もある。

白狼族の件に関しては、新領主であるアムは就任してすぐ街を救ってくれた白狼族に対して、永続的に友好関係を維持する方針を掲げた。

住人達も、白狼族のお陰で地下道へ逃げられ、怪我人はある程度出たが命を落とした者はいない。

また多数の住人達の目の前で、懸賞金を掛けて迫害してきた白狼族が彼らのために命を賭けて奔走していた。その真摯な態度に住人達が心を打たれ、白狼族に対する偏見は今回の一件でほぼ鳴りを潜めてしまった。

むしろ、尊敬へと変わったほどだ。

この調子なら、アムの掲げる白狼族との永続的友好関係は問題なく進めることが出来るだろう。

仮に彼の提案した作戦――白狼族を街中で暴れさせ、人目を付く陽動作戦を展開していたら、住人達とここまで友好的な関係を作り出すのは不可能だった。本当に実行されなくてよかった。

一通り報告をおこなうと、アムが本題に入る。

「今回の件で PEACEMAKER(ピース・メーカー) には、大変世話になった。何度礼を告げても、足りないぐらいだ。この恩を金銭程度であがなえるとは思っていないが、君達が望む報賞額を言ってくれ。要求額を支払おう!」

アムは前髪を弾く。

なぜか光の粒が散り、はじけた気がした。

いや、食事中までやることないだろう。

「報賞額って言ってもな。 冒険者斡旋組合(ギルド) から依頼されたクエストをこなしたわけじゃないし、いくらぐらいが妥当なんだ?」

「いくらでも請求してくれ! 腐っても北大陸最大の領地を持つ上流貴族だ。望む額を支払おう!」

いざ富豪に『望む額を書いてくれ』と小切手を渡されても困るのと同じだ。

オレが腕を組み頭を捻っているとシアが助言してくれる。

「若様、まずは今回の被害額、消耗品代と割り出してはどうでしょうか? 報賞額はその被害額と同程度頂くという物差しにもなるかと」

「それはいいな。それじゃまずは被害額、消耗品代を割り出すか」

シアのお陰でとりあえずは、話が前進する――って、今気付いたが、彼女はなぜ城のメイドに交じって給仕を務めているんだ?

本来、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) メンバーであるシアが、席にいて食事を摂らずオレ達の世話をする給士役を務めていた。

しかも、なぜか城のメイド達を押しのけて、彼女が今回の食事会を取り仕切っている。メイド達もその指示に素直に従っていた。

どうやらシアはいつのまにか人様のメイド達に溶け込み、仕切る立場にまで上り詰めていたらしい。

無駄にスペックが高いメイドだな……。

スノーが食事の手を止め告げる。

「被害額といえば、一番大きいのはメイヤちゃんの飛行船だよね。まずはあれを直してもらわないと帰れないよ」

北大陸到着初日の深夜。

オールの秘密兵士隊によって、オレ達は襲撃を受け飛行船を破壊された。

「ああ、アレか……一応、オレとメイヤで保管されていた飛行船をチェックしたけど、ほぼ全損だったし、修理するより買った方が早いって結論になったんだよ。な、メイヤ?」

「はい、魔石循環機関部分が大きく欠損し、全部取り替えないといけませんから。あれを含めて修理するとなると1年ぐらいかかると思いますわ」

「1年は流石に長いですね」

リースが流石に溜息を漏らす。

クリスがミニ黒板を掲げた。

『それじゃ私達はどうやって帰るの? 直るまで北大陸にいるのですか?』

「いや、レンタル飛行船を借りて帰るつもり。さすがに1年近くも北大陸に足止めされる訳にはいかないからな」

ただでさえ予定を超過している。

その上で約1年も足止めはさすがに出来ない。

「……そうか、飛行船か……」

オレはふと、今までの話の流れで思いつく。

今までずっと移動に使っていた飛行船は、メイヤの好意から彼女の私物船を使っていた。アムにはもちろん破壊された飛行船代を請求するが、今回の報酬でいっそのこと PEACEMAKER(ピース・メーカー) 専用の飛行船を造ってはどうだろうか?

新しく造る飛行船には、思いつく限りのオリジナル要素をつぎ込み設計、製作したい。そのため結構いい金額がかかる。

真っ当に造ろうと思えば、現在のオレ達では確実に資金不足だ。

その問題を今回の報酬で穴埋めすればいい。

思いつきの割りには意外といい落としどころだ。

オレは早速、アムに提案すると、

「もちろん問題無しだ! ぼくの名において全ての資金を出そうじゃないか! 安心したまえ、こう見えても北大陸最大の領地を抱える上流貴族だからね! 君達への恩返しと思えば安い物だよ!」

アムは自信満々に歯を光らせる。

おお! 言ってみるもんだな!

今ならアムの歯が光る姿も、オレの目に格好良く映るぞ!

「リュート様がお作りになる飛行船! 魔術道具開発だけではなく、その才能を飛行船にまで発揮なさろうというなんて! 『才人は現場を選ばない』という言葉がありますが、大天才であるリュート様にとって魔術道具開発も、飛行船開発も同じということですわね! このメイヤ・ドラグーン! リュート様の世界を覆い尽くさんばかりの溢れ出る才気に溺れてしまいそうですわ!」

メイヤもアムに負けず劣らず食事の席だというのにぶれない。ぶれなさすぎだろ。

他、嫁達の反応も悪くなかった。

「リュートくんが設計する飛行船かぁ。どんなのか楽しみだよ」

『お兄ちゃんが手がけのなら、とっても立派な物になりますね』

「ですね、きっとただの飛行船にはなりませんね。ある時は飛行船になったり、ある時は船になったりするんじゃないでしょうか?」

スノー、クリス、リースが楽しげに会話を交わす。

皆、期待してくれるのは嬉しいが、期待しすぎのような……。

リースに至って変形合体する勢いの期待感だ。

食事会が進み、つつがなく終わる。

皆の前には食後の 香茶(かおりちゃ) が置かれる。

話の内容はスノー両親に移った。

一部の白狼族はノルテ・ボーデンに残っているが、他の者達は北大陸奥地にある村へと戻っている。

スノー両親も現在は村に居る。

2人は大国メルティアに狙われているため、一応安全を考えて奥地の村へ居住場所を移したのだ。

現在もまだ、2人の身柄拘束と指輪の引き渡しをメルティアが求めているという話は生きている。

領主が変わったと言うことで、メルティアの使者が堂々とアムに接触を図って来ていた。

アムは使者に対して一蹴。追い返してしまう。

だが彼らも子供の使いではない。また日を改めるとその場は引き下がった。

このまま反発するのもいいが、メルティアは大国だ。北大陸とは離れているとはいえ、影響力が完全に無いわけでは無い。

メルティアはスノー両親と指輪を手に入れるまで、どこまでも追い続けるだろう。

「ねぇ、リュートくん、どうにかならないかな?」

スノーが眉根を寄せ、オレの袖を引っ張ってくる。

もちろん、嫁であるスノーの両親の安全に関することだ。オレも今後のことをしっかりと考えていた。

「大丈夫、ちゃんと考えてあるよ。生きている限り、どこまで行こうと死ぬまで追いかけてくるなら――僕達で殺しちゃえばいいのさ」

オレの提案に皆が目を剥く。

オレはかまわず悪戯っ子のような、妖しい笑みを浮かべた。