軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第152話 トルオ・ノルテ・ボーデン・スミス

北大陸にある港、玄関口の1つである都市――ノルテ・ボーデン。

その都市にある 冒険者斡旋組合(ギルド) へ、飛行船を長期停泊させるための倉庫を借りに顔を出した。

すると 冒険者斡旋組合(ギルド) 内に居た冒険者達全員が目の色をかえてオレ達に襲いかかってきた。

シアの活躍と 特殊音響閃光弾(スタングレネード) が無ければ、こちら側にも怪我人――最悪死者が出ていたかもしれない。

なぜ突然オレ達に襲いかかってきたか、詳細を聞くためこの北大陸、ノルテ・ボーデン 冒険者斡旋組合(ギルド) 支部の責任者である支部長に会うため、個室へと通される。

オレだけがソファーに座り、背後で皆が警備員のように部屋、外を警戒している。

念のため皆に武装させておいた。

スノーはMP5SD。

クリスはSVD(ドラグノフ狙撃銃)。

リースはPKM。

代表者のオレと技術者のメイヤは手ぶら。

シアはなぜかわざわざ、また新しい鞄――MP5Kを内蔵した『コッファー』をリースの無限収納から取り出していた。

室内で使用するかもしれないから、普通にMP5SDを持ってほしいんだが……

要求する前にノック音が部屋に響く。

ノルテ・ボーデン 冒険者斡旋組合(ギルド) 支部を任されている支部長が顔を出す。

「ひぃ……ッ!?」

リースが思わず悲鳴を漏らす。

声をあげたのは彼女だけだが、オレ達も絶句していた。

それもその筈、なぜかまた竜人大陸でいつも担当してくれている受付嬢が居たのだ!

魔人種族(まじんしゅぞく) らしく頭部から羊に似た角がくるりと生え、コウモリのような羽を背負っている。年齢は20台前半。

服装はいつもの民族衣装っぽい衣服に袖を通し、頭に三角巾を結び、白いエプロンの受付嬢服ではない。

エプロンの無い、もっと落ち着いたデザインの衣服に袖を通している。

そのせいかいつもの短大を卒業したばかりの女性社員という風体ではなく、やり手の女性上司といった風格が漂っていた。

オレ達の反応に支部長が怪訝そうな顔をする。

「……何か私が失礼をしてしまったかな?」

「し、失礼も何も! どうして貴女がここに! 竜人大陸や妖人大陸! 獣人大陸の 冒険者斡旋組合(ギルド) に居た筈じゃ!?」

「なるほど……落ち着いてください。その娘達は親戚の娘です。私は彼女達の親戚、オバのような者ですよ」

またこのパターンかよ!?

支部長に話を聞くと、彼女はいつも受け付け担当してくれる女性の親戚――叔母のような人物らしい。

彼女も合わせてこれで4人目だ。

支部長はどこか楽しげに悪戯っぽく微笑む。

「なるほど、あの娘達にも会ったのですね。なら驚くのも無理はないですね。私の娘でも無いのにあの娘達はよく似てて、いつも間違われたりしたんですよ」

「そりゃ間違えられますよ、それだけ似ていたら……ってもうこれを言ったの何回目だよ」

先程、冒険者達に襲われたことも忘れるほどの衝撃を受ける。

本当に彼女達の見た目は瓜二つ。間違い探しが出来ないレベルで似ているのだ。

本気でこの異世界の遺伝子がどうなっているのか気になる。もしくは彼女達だけが特別なのかもしれない。

この異世界の不思議に頭を悩ませたかったが、いったん疑問を脇に置く。

今回、尋ねなければいけないのは、どうしてスノー――白狼族を狙って、冒険者達が襲いかかって来たかだ。

内容によっては一刻も早く北大陸を離れる必要がある。

支部長はまず正面ソファーに座ったまま頭を下げ、謝罪を口にする。そしてなぜ、冒険者達がスノーに襲いかかって来たのか説明した。

「実は約一年半前に、この都市を治めている上流貴族であるトルオ・ノルテ・ボーデン・スミス様が、白狼族に多額の懸賞金をかけたのです」

それは突然のことだった。

北大陸最大の領地を持つ上流貴族、トルオ・ノルテ・ボーデン・スミスが白狼族を捕らえた者に多額の懸賞金を払う、と言い出したのだ。

しかし彼ら一族は、巨人族が徘徊する北大陸内陸部に居る。そして、そこから滅多に出てくることは無い。

元々、白狼族は巨人族と共に生きる種族。言い方が悪いがコバンザメ。巨人族の進行ルートを把握し、一緒に移動することで外敵から身を守っているらしい。

そのためか幸いにも、未だ1人として捕まった白狼族はいない。

だが結果として、懸賞金は高騰し、北大陸では白狼族が『白い宝石』と呼ばれる程の価値となってしまった。

つまり、ブームが加熱している市場へ無警戒にスノー――白狼族が登場したということか。冒険者が目の色を変えて襲ってくる訳だ。ようやく理由に納得がいった。

「……なるほど状況は理解しました。ですが、彼女、スノーは僕の妻です。妖人大陸にある孤児院に赤ん坊の頃、一緒に捨てられ育った幼なじみです。なのに捕らえたら、懸賞金が貰えるんですか?」

「はい、白狼族なら老若男女問わず、というのが条件ですから」

「たとえ彼女を捕らえても、この地の白狼族について知っていることは、世間一般と同じですよ。それでもですか?」

支部長は頷く。

意味が分からない。

この都市のトップは白狼族に親でも殺されたのか? 一族との繋がりが無いスノーですらOKなんて、頭がどうかしてるんじゃないか?

それとも何かオレ達では分からない狙い、目的、利益があるのかもしれないが……。

「この地に自分達が来たのは、スノーの両親を捜す手がかりや彼女の出生、ルーツを調べるためです。この地の冒険者達とことを構えるために来た訳ではありません。さらにスノーはハイエルフ王国エノール、ハイエルフ族国王から名誉士爵を授与されたリュート・ガンスミスの妻です。それを知った上で、これ以上こちらに手を出そうというのなら自衛のために、こちらも容赦しません。次は手加減しません、と冒険者の皆さんに警告しておいてください」

オレの言葉に背後にいたスノー達が、銃器音を鳴らし威嚇する。

支部長はそれを見て、分かりやすいほど顔の色を変える。

ちなみに先程の冒険者達は現在、現場に居なかった 冒険者斡旋組合(ギルド) と懇意にしている魔術師達によって治癒を受けている。怪我人は多数出たが、死者は1人もいない。

もちろんオレ達が手加減したからだ。

皆殺しにしろと言うなら、手榴弾を山ほど投げ込むか、PKMの掃射、外からパンツァーファウストの連べ撃ち等しているところだ。

支部長は流れる汗を拭いながら頷く。

「ガンスミス卿のお話は十分理解いたしました。しかし、あくまで懸賞金をかけているのはこの地を治める上流貴族、トルオ様です。そのため 冒険者斡旋組合(ギルド) が勝手に懸賞金を取り下げることは、難しくて……」

これが権力というものか。

「つまり、妻への襲撃を正式に抑えたいなら、 冒険者斡旋組合(ギルド) ではなくこの都市を治めるトップ、懸賞金をかけている本人と交渉してくれということですね?」

「はい……大変恐縮ではありますが」

オレはソファーの背もたれに溜息と共に体を預ける。

確かにそれが一番手っ取り早いだろうな。

冒険者を抑えても、この都市の兵士に誤解されて襲われる可能性もあるわけだし。

それになぜ白狼族に懸賞金をかけているのか事情を知りたくもある。もし不当な理由なら取り消させるべきだろうしな。

「……分かりました。それでは紹介状を書いてもらってもいいですか?」

「いえ、もしガンスミス卿がご迷惑でなければ、私が一緒に同行してトルオ様に直接ご紹介させて頂ければと思うのですが」

それはありがたい。

紹介状を書いてもらうより確実だし、いざというとき人質にも出来る……かもしれない。まあ最悪の場合であり、さらにそれが有効かどうかは不明だが、どちらにしてもオレ達だけが雁首揃えて行くよりはマシだろう。

オレは一瞬考え、そして同意する。

「わざわざ、支部長にご足労頂き誠にありがとうございます。それでは是非、ご同行の方宜しくお願いいたします」

「こちらこそ。それではもう遅い時間のため、明日の朝遅い時間でも問題無いでしょうか?」

「分かりました。それでは明日の朝、 冒険者斡旋組合(ギルド) へ足を運ばせて頂きます」

その後、宿の紹介、飛行船倉庫のツテなどを紹介されそうになったが固辞した。

無いとは思うが、それが支部長の罠で油断した所を襲撃される可能性もある。だから、今夜だけは飛行船で夜を明かすことにした。

こうして明日、 冒険者斡旋組合(ギルド) の支部長と一緒に北大陸最大の都市ノルテ・ボーデンを治める上流貴族、トルオ・ノルテ・ボーデン・スミスと会うことになった。

その席でスノーを襲わないと約束させ、白狼族の懸賞金も取り下げさせてやる、とオレは1人意気込んだ。