軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第139話 人材の分配

13週間の間行われた PEACEMAKER(ピース・メーカー) 下部 軍団(レギオン) 、新・純潔乙女騎士団入団訓練がついに終わった。

前世のアメリカ海兵隊では新兵訓練終了後、すぐに戦場へ派遣される訳ではない。

専門分野の知識や技術を学ぶため 軍事術科学校(MOS) へと行く。たとえばカリフォルニアにあるルジューン基地の歩兵学校で52日間の専門教育を受けるのだ。

アメリカ海兵隊では、記章授与式後、すぐに 軍事術科学校(MOS) へと向かう。海兵隊となったからには、時間を有効的に使わなければならない。

だが、さすがにオレ達は翌日すぐ――と言う訳にはいかない。

この13週間に及ぶ訓練は彼女達にとっても辛かっただろうが、オレ達にとっても初めての経験で色々大変だった。

すぐに行動するほどの元気はない。

そのため彼女達の私物を返却し、1週間後、それぞれ進む専門分野に配属すると宣言。つまり、この1週間は彼女達にとっても、オレ達にとっても久方ぶりの休日ということだ。

記章授与式後の夜。

純潔乙女騎士団時代から与えられていた客室をオレ達は自室として使い続けている。

今夜は少女達の門出の祝いとそれぞれの配属先について、軽く話し合う予定だった。

30人も居るから、『人数が多すぎて配属先に割り振るのが大変だろうな』と考えていたが――オレの認識が甘かったとすぐに理解する。

シアがメイド服姿で相変わらず給仕を務める。ソファーにくつろぐオレ達に酒精や料理を運んだりしている。

だからといって、彼女は自身の主張は決して曲げない。

「私的な欲望を優先して要求している訳ではありません。今後、皆様の安全を確保するためにも警護として最低10人は護衛メイド候補者を頂けなければ困ります」

唐揚げを皿に確保しているスノーも負けじと主張する。

「メイドさん候補に10人も取られたら、歩兵部隊の人数が2チームしか作れなくなっちゃうよ。今回は先送りするべきじゃない?」

この主張にクリスが挙手する。

『前回の立て籠もり事件で、周囲を監視するスナイパーライフル部隊の人材がまったくいませんでした。今後、このような事件が起きた時、対処出来るようにするためわたしにも10人ほどは融通して頂けないと困ります』

確かにあの時はクリスしか 狙撃手(スナイパー) がおらず、不意の事態に対処出来るとは到底言えなかった。ラヤラは観測手として確定。後、他9人をクリスが要求してくる。

さらにリースが主張する。

「私もスノーさんの意見に賛成です。ですが、歩兵候補の中から 汎用機関銃(ジェネラル・パーパス・マシンガン) を扱う人材を融通してくださいね? 2分隊作るなら最低4人、いざという時に交替出来る要員もできれば作りたいので8人は融通して頂けるとありがたいです」

嫁とメイドの意見を最大限尊重すると確実に団員数が足りない。

多すぎて配属先を悩むと思っていたが、少なすぎて悩むことになるとは想像していなかった。

団員達の門出を祝う場が、人材の取り合いの場になってしまう。

幸い、嫁やメイド達は難しい顔で睨み合っているが、険悪という雰囲気ではないのが救いだ。

オレは唯一、人材確保に乗り出していないメイヤに話題を振った。

「メイヤは人材を欲しがらないのか? 武器防具の製造開発で手は足りてないだろ?」

「もちろんわたくしとしても使える人材は欲しいですが、今回の人員は魔術液体金属を扱える方はほぼいませんから。無理に主張するつもりはありませんわ」

なるほど、とオレは納得する。

今回の新・純潔乙女騎士団に魔術師は1人もいない。

オレやクリスのように、訓練すれば短時間ながら使える人材は居る。しかし魔力量が低すぎて、製造開発者に仕込む時間や労力を考えると割に合わない。

唯一、ラヤラは才能を持っているが、呪われている身だ。

彼女に製造開発をさせてみるか? でも、AK47の分解の時も1人もたついていた。あまり手先が器用ではないし、向いているとは思えないんだよな……。

オレがそんなことを考えていると、さらにメイヤが続けた。

「それにリュート様と2人っきりで製作する場にお邪魔虫を入れるなんて我慢できませんわ! そんな者を入れるぐらいなら、わたくしが頑張って徹夜だろうが、2徹、3徹でもしてやりますわ! リュート様と甘い2人の世界を維持するためなら、このメイヤ・ドラグーン睡眠欲すら捨て去る所存です!」

「いや、無理せず寝ろ。てか寝てくれ頼むから……!」

オレはメイヤの間違った方向性の努力に震えながらツッコミを入れる。

そんなオレの態度に業を煮やしたのか、スノー達が話を振ってくる。

「リュートくんはどう思ってるの? もちろん基本的な部隊を整えるためにも歩兵部隊を編成するんだよね?」

『スナイパーライフル部隊を編成するためにも人が欲しいです』

「リュートさんなら空間を制圧する 汎用機関銃(ジェネラル・パーパス・マシンガン) の重要性はよくご存知ですよね?」

「若様の英断に期待しております」

嫁+メイドが迫ってくる。

彼女達に迫力に押されながらも、オレは自分自身の意見を主張した。

「お、オレとしては今回人数も増えたし、ようやく完成した『迫撃砲』を運用する専門の部隊、迫撃砲部隊を作りたいと思っていたんだけど……」

『はくげきほう?』

首を傾げるスノー達に、メイヤと一緒に製作した『迫撃砲』について説明した。

もちろん彼女達に説明できる部分とできない部分に分けてだ。

前世の地球、第一次世界大戦では数多くの兵器が誕生した。

迫撃砲も、その1つだ。

当時、 機関銃(マシンガン) が開発され、兵士達はなんとか接近しようと夜襲をかけたり、壕を掘ったりして接近戦に持ち込んで戦うことが多くなった。

俗に言う『塹壕戦』だ。

そのため敵味方とも塹壕に篭もるせいでライフルや大砲では有効打を与えることが難しかった。そこで敵陣地に手榴弾を投げ入れる『擲弾兵』が登場するが、鉄条網や 機関銃(マシンガン) に阻まれ近づくことが出来なかった。

さらに互いに擲弾兵や突入を警戒して、相手から100m以上距離を取るようになる。もう手で手榴弾を投げてどうこう出来る距離ではない。

その結果、自然な流れで手榴弾を手で投げる以外の方法で、飛距離を伸ばす戦法が発生したのだ。

最初に出来た方法がライフルの先から手榴弾を打ち出す『 小銃擲弾(ライフルグレネード) 』だ。

前にも説明したがライフルに専用アタッチメントを取り付け、空砲を使って弾体を発射する方法だ。

しかしこの方法では、銃口にグレネード発射用のアタッチメントを装着する必要があり、その間は射撃が出来ない――という欠点があった。

さらに『 小銃擲弾(ライフルグレネード) 』を大型化した迫撃砲(擲弾発射器)が誕生する。

大型化――イメージとして中世などで使う大砲を想像すればいい。

実際、フランス軍は中世時代に使用された臼砲を持ち出し、塹壕戦に投入したという。冶金技術の低い時代に作られた年代物のため、耐久力に問題があったようだが。

そして、1915年。

イギリス軍が、筒を斜めに傾けただけのようなストーク型迫撃砲を開発する。

各国が様々な迫撃砲を試行錯誤するが、ストーク型迫撃砲が標準的兵器となった。

構造は至って単純。

砲身(バレル) 、 台座(ベースプレート) 、調整ハンドルが付いた 脚(バイポッド) 、以上だ。

迫撃砲の利点は『大量の炸薬を入れることができるため破壊力、殺傷力が高い』『構造が簡単なため持ち運びやすく、取り扱いが楽』『ライフリングを付ける必要が無いため製作コストが安い』『上空から落下するため、より破片がばらまかれ殺傷能力が高い』。

逆にデメリットは『迫撃砲は砲弾を撃ち上げて垂直に近い角度で落下する兵器のため、弾速が遅く横風の影響を受けやすい』『砲弾が落ちる時の音で敵に攻撃を感知されやすい』などだ。

迫撃砲には以上のように欠点も多い。

決して万能な兵器ではないのだ。

そんな迫撃砲を製作したので、支援部隊を作ろうと考えていたのだが……。

「リュートくんまでそんなこと考えてたんだ。それじゃ人数足りないね。どうしようか……」

「今すぐ新たに他団員を募集しましょうか?」

「ですが姫様、またすぐ13週間も教育に時間を取られるのは厳しいかと」

皆がそれぞれ意見を出し合う。

決して自分から譲ろうとしないが……。

オレは膝を叩き決断する。

「こうなったら団員達、全員にそれぞれの技能を学んでもらおう!」

『全員にですか?』

クリスが困惑気味にミニ黒板を出す。

オレは頷いた。

「そう全部だ。迫撃砲の操作は基本的に分隊の歩兵が担当するものだし、 狙撃手(スナイパー) も、分隊支援火器手も、分隊に入れるつもりだからいっそのこと全部覚えさせてしまえばいいんだよ。『若いうちの苦労は買ってでもしろ』ってね。技能を身に付けておいて損は無いわけだし」

妻達や弟子がオレの意見に賛同してくれる。

中小の会社だと事務、営業など関係無く何でもやらなきゃいけないみたいな感じか。

こうして入団した団員達の分配が決まる。

最終的には専門歩兵――20人。

護衛メイド候補として10人。

ココリ街の守護はオレ達含めた全員で担当する決まりになった。

護衛メイド10人は、最後までシアが譲らなかったためオレがギブアップした形だ。

譲歩としては室内制圧、重要人物警護、人質救出のスペシャリストとしても育てることで合意。もちろん迫撃砲、 狙撃手(スナイパー) 、分隊支援火器手の技術も仕込むつもりだ。

むしろそのことにシアは喜々としていた。

さらに彼女からメイド服用の代金まで強請られる。

なんだ、メイド1人なのがよっぽっど大変だったのか?

彼女には何時も世話になっているから、それぐらいの我が儘は許した。

<第8章 終>

次回

第9章 少年期 日常編2―開幕―