作品タイトル不明
第133話 人材確保?
去り際、 軍団(レギオン) 始原(01) の交渉を担当しているセラフィンから――
「機会があれば一度、わたくしの上司とお会い頂ければと。 PEACEMAKER(ピース・メーカー) とは今後とも友好関係を築いていきたいと思っておりますので」
「ありがとうございます。その際は是非」
握手を交わし、セラフィンを見送る。
やれやれ……大して長い時間話していた訳ではないのに、妙に疲れた。
顔に出ていたのか、受付嬢が微苦笑で『お疲れ様でした』と労ってくれた。こういうさりげない気遣いが嬉しい。
オレは 冒険者斡旋組合(ギルド) を後にして、純潔乙女騎士団本部へと向かう。
途中、ココリ街の住人達に声をかけられた。
皆、友好的で、露天商達からは次々品物を無料で差し出されてくる。商人でもない一般の住人からも色々渡されそうになった。
全部、受け取ったら持ちきれないし、1つ受け取ったら他を断り辛くなる。結局は丁寧な口調で気遣いつつ、全て断った。
別に人徳やアイドル的人気がある訳ではない。
ココリ街でずっと悩まされていた『魔術師殺し事件』を PEACEMAKER(ピース・メーカー) が解決した。そのお礼を言葉だけではなく、行動で示したいのだろう。
もちろん商人側は、将来的に PEACEMAKER(ピース・メーカー) がココリ街の守護を任された時、友好的な関係を作っておけば色々旨味がある――と思ってよくしてくれているのかもしれない。
さすがに疑い過ぎか?
オレは住人達の善意を申し訳なさそうに断り、なんとか純潔乙女騎士団本部へと帰って来ることが出来た。
純潔乙女騎士団本部に与えられている自室へと入る。
部屋にはオレの帰りを待っていた嫁達+αが優雅に 香茶(かおりちゃ) を飲んでいた。
スノー達に 冒険者斡旋組合(ギルド) に呼び出された用件を聞かせる。
軍団(レギオン) のトップ、 神鉄(オリハルコン) の 始原(01) 。
魔王復活を願い動いている魔王崇拝組織、『黒』。
一通り話を聞くと、リースが神妙な顔で質問してきた。
「事前の説明もなく、いきなり 始原(01) の担当者と会議とは……大変でしたね」
「ああ、呼び出す前に言ってくれれば、心の準備ぐらい出来たんだけど」
「……あの、ところで、その担当者さんは女性なんですよね?」
「そうだけど?」
リースはモジモジと落ち着かない仕草で太股を擦り合わせる。
頬を染めながら、聞き辛そうな表情をしていたが、彼女は意を決して口を開く。
「その方は、その……美人でしたか?」
「えっ?」
意外な質問にその場に居るスノー、クリス、メイヤ、シアも目を点にしてリースを凝視した。
彼女は質問したことが恥ずかしくなったのか、耳の先まで赤くして俯いてしまう。
どうやらオレが、女性と2人っきり密室で長時間話をしたのが気になったらしい。特に状況を説明する際、相手の容姿や交渉術などを褒めたのが気になったようだ。つまり、リースは嫉妬しているのだ。
「ぷく、くくくッ……」
「リュートさん?」
リースがオレの堪えきれなくなった笑い声に、首を傾げる。
だって、嫉妬する嫁リースがあまりに可愛かったんだ。仕方ないじゃないか。
「ごめん、ごめん。んんッ! とりあえず交渉相手のセラフィンさんは一般的に言って美人だよ。けど、リースの方が断然美人だし、可愛いし、オレの好みだよ」
「あぅ……あ、ありがとうございます」
リースは正面からの賛辞に、先程以上に赤くなって俯いてしまう。
顔は確認出来ないが、口元が『によによ』しているのは見なくても分かる。
そんなやりとりを眺めていたスノー達も尋ねてきた。
「リュートくん! リュートくん! わたしは!」
「もちろん、スノーの方が圧倒的に美人だし、可愛いよ。本当に」
『お兄ちゃん、私はどうですか?』
「もちろん! クリスの方がセラフィンさんより美人で可愛いし、将来性も圧倒的にあるよ」
「リュート様! わたくしとその方を比べてどうでしょうか!」
「あーうん、まぁーメイヤノホウガビジンデスヨ」
なんだろう、素直にメイヤを褒める気にならないこの感情は。
だが、メイヤはオレの棒台詞でも褒められたのが嬉しくて、立ち上がり歓喜からクルクルとその場で踊り出す。
埃がたつから止めて欲しいんだが。
そんな感じでオレの報告が終わると、今度はスノー達から話を聞いた。
「リュートくんが 冒険者斡旋組合(ギルド) へ行っている間に、ラヤラちゃんが来たんだ」
「ラヤラが?」
どうやら純潔乙女騎士団代表として、部屋を尋ねて来たらしい。
内容はもちろん純潔乙女騎士団を、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) の下部 軍団(レギオン) に加えて欲しい。そして、『純潔乙女騎士団』の名前だけでも残して欲しいというものだった。
どうやらオレへの直訴だけではなく、周囲から固めようとしてきたらしい。
「リュートくん、なんとかしてあげられないかな……」
スノーが犬耳をぺたんと垂らして告げる。
ラヤラや純潔乙女騎士団団員達に同情してしまったのだろう。嫁にこんな顔をされたら、さすがに無視する訳にはいかない。
それにココリ街を守護した場合の定期的な収入は捨てがたい。
またそろそろ 軍団(レギオン) だけに、人数を増やす部隊を作る実験をしたいとは思っていた。
無条件で全員を引き取ることは出来ないが、入団試験を設けて使えそうな人材をピックアップするのは悪くないかも……。
上手く行けば――将来的に団員数を増やし、彼女達だけにココリ街の守護を任す。そしてその指導を行うことによって、一部定期収入が PEACEMAKER(ピース・メーカー) へと振り込まれる。
労せず、安定した収入を確保することが出来る。
手を出すのには悪くない条件だよな……。
オレは腕を組み考え込む。
「……そうだな。乗りかかった船だし、なんとか対応出来ないか考えてみるよ」
オレの言葉に嫁達が安堵の溜息を漏らす。
さて、そうなってくるともう一度、ガルマと話をする必要があるな……。
オレは今後の対応を思案する。
その場で思いついた事を口にして、嫁達にも意見を求めた。
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翌日、昼前。
純潔乙女騎士団のグラウンドらしき運動場に、団員達を集める。
その数は30人以上だ。
事前に顧問であるガルマを通して、今日話す内容は伝えてある。
純潔乙女騎士団を PEACEMAKER(ピース・メーカー) の下部 軍団(レギオン) に組み込む――という話だ。
もちろんガルマも出席している。
2列に並ぶ純潔乙女騎士団団員達の前に、オレ達 PEACEMAKER(ピース・メーカー) が横一列に並ぶ。
団員達に視線を向けると、皆緊張した表情をしていた。
オレは列から一歩前へ出る。
「皆さんお忙しい中集まって頂き誠にありがとうございます。 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 代表のリュート・ガンスミスです」
定型の挨拶&自己紹介。
この場にオレを知らない人物はいないが、大事な話を始める前には形も大切だ。
「すでにガルマ顧問からお話を聞いているとは思いますが、改めてお伝えします。この度、我ら PEACEMAKER(ピース・メーカー) は、純潔乙女騎士団を組織の一員として迎えたいと思います」
一度区切って話を再開する。
「純潔乙女騎士団を取り込む訳ではなく、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) の下に付く 軍団(レギオン) という形になります。なので伝統ある『純潔乙女騎士団』の名が消えることはありません」
この説明に団員達から少なくない安堵の溜息が漏れる。
ラヤラもそうだったが、彼女達にとってやはり『純潔乙女騎士団』の名はそれだけ特別なのだろう。
ざわつきが収まるまで待ってから、話を続ける。
ある意味、ここからが本番だ。
「純潔乙女騎士団の名前、 軍団(レギオン) は残ります。だからと言って皆さん全員を無条件で受け入れる訳にはいきません」
『!?』
ガルマが話し聞かせていたのは、純潔乙女騎士団が PEACEMAKER(ピース・メーカー) に付くという所まで。
そのためオレの宣告を聞いた団員達はあからさまに動揺した。
「皆さんもご存知の通り、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) の扱う魔術道具はかなり特殊です。なので残留を希望する方には、自分達が用意した軍事訓練を受けてもらいます。その訓練から脱落した方には、残念ながら退団して頂きます」
厳しいようだが仕方ない。
脱落した人材にはある程度の救済処置を施すつもりではいるが、戦力にならない人材を抱え続けるほど、自分達に余裕もない。
団員達の動揺が落ち着くのを見計らって声高に告げる。
「3日後、皆さんの希望をお聞きします。それまでに答えを決めておいてください」
団員達は大きな声で返事をした。
こうして PEACEMAKER(ピース・メーカー) 初の入団試験――リュート・ブートキャンプが始まる!
<第7章 終>
次回
第8章 少年期 人材育成編―開幕―