軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第112話 話し合い②

『 狼剣(ウルフ・ソード) 』に指定を受けたレストラン――『レッド・ミリオン』店内はそこまで広くなかった。

教室1つ分ぐらいの広さで、席数も少ない。

だが、そのお陰で夜にも拘わらず店は十分照らされ、隅々まで見回すことが出来る。

「良く来てくれたな、いつまでも入り口に立っていないで座れ」

店の中央には大きなテーブルが置かれていた。

周囲のテーブルが端に寄せられている。

今日のために設置したのだろう。

そのテーブルにはすでに1人の男が座っていた。

禿頭で顔には古傷が×印に刻まれている。体格は座ってても分かるほどの偉丈夫。筋肉を誇示する服装をしており、腕など女性の胴回りほどはあるだろう。金属の胸当て下にある筋肉もはち切れんばかりに発達している。

もし腕相撲で純粋な腕力勝負をしたら、オレが3人居たとしても勝てないだろう。

そんな男の背後、左右、店の奥には 軍団(レギオン) メンバーが散っている。数は全部で15人。

総勢35人の『 狼剣(ウルフ・ソード) 』。

他の20人がどこに居るのかは聞かないのが礼儀なのだろうな。

オレは言われたとおり、男の正面に腰掛ける。

シアは他の男達のように、オレのすぐ後ろに立つ。

「それでは失礼して。……初めまして、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 代表の人種族、リュート・ガンスミスです」

「俺様は 狼剣(ウルフ・ソード) 代表の人種族、ゴウラだ。招待に応じてくれて改めて礼を言おう、ガンスミス士爵」

オレは貴族の位を名乗っていなかったのに、目の前の男――ゴウラは『士爵』を付けてきた。どうやらある程度、こちらのことを調べているようだ。

「そんな怖い顔するな。交渉相手のことを調べておくのは当然だろ? それにガンスミス卿は最近話題の、新進気鋭の 軍団(レギオン) 創設者だ。ツインドラゴンの撃破、双子魔術師の生け捕り、そしてハイエルフ王国の危機を救い『名誉士爵』を手に入れた。まさに女子供が好きな物語のような功績。知らない方がどうかしているってもんだ」

『士爵』や『卿』を付けるが、そこに敬意はない。

悪意はなく、近所の悪ガキがからかってくる感じだ。

しかし、どうやら本当にオレ達の名前は、多くの冒険者達などに知られているらしい。

「そんなあんた達を呼んだのは他でもない。面倒な話が好きじゃないから、単刀直入に言うが――俺様達と手を結ばないか?」

やはりそういう話か。

ゴウラは続ける。

「あんた達が純潔乙女騎士団に請われて協力をしているのは知っている。その話を蹴って是非、うちと手を組んで欲しいんだ。 狼剣(ウルフ・ソード) と PEACEMAKER(ピース・メーカー) でこのココリ街を純潔乙女騎士団に代わって守護しないか?」

つまり、純潔乙女騎士団を裏切り、 狼剣(ウルフ・ソード) と PEACEMAKER(ピース・メーカー) で魔術師殺しを捕らえる。

そして、街の守護する代わりに収められる税収権利を分け合おうというものだ。

「けど、すでに 冒険者斡旋組合(ギルド) を通してクエストを受注していますから。今更断る訳にはいきませんよ」

「クエスト失敗なんて冒険者をしていたら日常茶飯事。 冒険者斡旋組合(ギルド) や相手だってうるさく言ってはこれないさ」

確かに実際、オレは前に冒険者レベルアップのクエストで失敗しているが、大した問題は起きなかった。 軍団(レギオン) ならばなおさらだろう。

さらにゴウラは力説する。

「純潔乙女騎士団は完全な落ち目だ。あいつらと手を組んでも何も良い事なんてない。もし俺様達と手を組んでくれるなら、 軍団(レギオン) の運営方法や 冒険者斡旋組合(ギルド) に収める税収の誤魔化し方なんかを教えてやるよ。それに将来的には 狼剣(ウルフ・ソード) と PEACEMAKER(ピース・メーカー) を統合して新しい 軍団(レギオン) を立てるのもありだ。俺様とガンスミスなら上手くやっていけると思うんだが、どうだ?」

将来的に2つの 軍団(レギオン) を統合するのはありえない。

どうせゴウラが代表権を主張してくるだろうし。

だが、そこは日本人の生まれ変わり、直接的な表現は避け返答する。

何か起こるとは思いたくはないが、相手に囲まれたこの状況で交渉相手を無駄に刺激するのは避けたい。

「すぐには即答しかねるので、案件を持ち帰って精査した上でご返答させて頂ければと思います」

「随分持って回った言い方だが……まぁいい! 前向きに考えてくれよ! それじゃ前祝いに飲み明かそうじゃないか兄弟!」

「いや、今日の所はこのへんで。妻達が夕食を作って待っていますので」

「あ~、1人でも大変なのに、妻が3人も居たんじゃそりゃ逆らえないわな。後ろのメイドさんももしかしてお目付役かなんかか?」

「そうですね。似たようなもんですね」

肩をすくめて見せると、相手は笑いながら席を立つ。

そしてオレは話し合いを終え、レストランを後にする。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

翌日の夜。

今度は 百合薔薇(リリ・ローズ) の 軍団(レギオン) との顔合わせだ。

昨夜に続き、シアがメイド服に旅行鞄姿で同行する。

百合薔薇(リリ・ローズ) が指定した場所は、 狼剣(ウルフ・ソード) と同じ南の外れ。

彼らと違うのはレストランではなく、地下室のバーだった。

扉を潜る。

地下室のため換気が難しく、匂いが篭もっている気がした。扉を開けた瞬間から、鼻を香水の匂いがくすぐる。

狼剣(ウルフ・ソード) が使っていたレストランとは正反対で、店内は薄暗い。

ギリギリ向かい合ったテーブルの相手を視認出来るレベルだ。

「ようこそ、ガンスミス卿。 百合薔薇(リリ・ローズ) の代表を務めております魔人種族、悪魔種族のラヴィオラと申します。本日はわざわざご足労頂き本当に感謝しております」

まるで家に帰ってきた亭主を迎えるように、 百合薔薇(リリ・ローズ) の代表――妙齢の美人であるラヴィオラが、腰から曲げて頭を下げる。

悪魔種族というだけあり、背中からは蝙蝠のような羽が生えている。それ以外は人と変わらない。

彼女は背丈が高く、スタイルも抜群だ。

着ているドレスも嫌味なほど似合っている。

しかもそのドレスの胸元は大きく開いている。まるで見てくださいと主張するようにだ。

そのせいで、豊満な胸の谷間に視線が釘付けになってしまう。

「…………」

背後からの視線!

振り返るとシアが、鋭い針のような突き刺さる眼で見てくる。

仕方ないじゃん! 男の子は誰しもおっぱいの谷間が好きなの! 妻達が居てもついつい視線がいっちゃうんだよ!

さすがにそんな言い訳を公衆の面前で口にする訳にはいかず、咳払いをして自己紹介する。

「ご丁寧にありがとうございます。僕は PEACEMAKER(ピース・メーカー) 代表の人種族、リュート・ガンスミスです」

「お噂はかねがね。ささ、立ち話もなんですから、どうぞ中にお入り下さい」

ラヴィオラは 軍団(レギオン) の代表者というより、高級旅館の女将か、銀座バーのマダムのような態度で中へと促す。

オレは後ろから未だに突き刺さる視線に気付かないふりをしながら、シアと共に店内へと足を踏み入れた。