軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第103話 2人でお出掛け

「リュート様! どうか! どうか! この憐れな弟子もお連れください! お邪魔はしませんから!」

「うん、駄目」

オレはメイヤ邸工房で、自称オレの一番弟子を名乗るメイヤの要求を迷わずはねのける。

彼女は返答を聞くと、怨みがましい瞳でハンカチを噛みしめた。

オレは苦笑しながらも、考えを変えない。

「そんな目をしても駄目だぞ。SVD(ドラグノフ狙撃銃)の試射なんてオレとクリス2人で十分なんだから。メイヤにはその間に他の作業を進めてもらった方が効率的だろう?」

「それはそうですが……」

オレはSVD(ドラグノフ狙撃銃)を入れて金属ケース、 弾薬(カートリッジ) が詰まった弾薬ケースを手に苦笑いを深める。

「それに久しぶりにクリスとの2人っきりの時間なんだ。邪魔しないでくれよ」

「うぐッ!」

さすがにそこまで言われたら、たとえメイヤでも何も言えなくなる。

彼女の矛先は入り口に控えているメイドに向けられた。

「まだわたくしが出した手紙の返信は来ませんの!?」

「はい。まだ来ておりません」

メイドは涼しい顔で告げる。

問題を解決したらオレと結婚してもいい――と、スノーから言質を取ったメイヤは飛行船移動中に手紙を一通書き上げ、竜人大陸に戻ってすぐにメイドに出すよう手渡した。

すでにもう届いている筈なのに、一向に返信がこない。だから、いつまで経っても話が進まなかった。

もし彼女が妻の1人なら『クリスと2人っきりになりたいから連れて行けない』とはさすがに口にするのは憚られる。

だが、現状彼女はオレの妻ではないので、このような事になっている。

メイヤには申し訳ないが、弟子である以上作業を優先してもらう必要があるのだ。

「それじゃ外にクリスを待たせているから行くよ」

「うぅうぅ……分かりました。お気を付けて」

「ああ、メイヤも作業頼むな」

オレは工房にメイヤを残して、外で待たせているクリスの元へと向かう。

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馬車に揺られて約2時間。

オレとクリスは草原と森林の境界側に辿り着く。

馬車にはお昼用のお弁当にSVD(ドラグノフ狙撃銃)、 弾薬(カートリッジ) が詰まった弾薬ケース、他に護身用にとAK47一式とパンツァーファウスト60型1本を持ってきている。

パンツァーファウスト60型はやり過ぎかとも思ったが、またツインドラゴンなどと遭遇して手も足も出ない状況になるのはごめんだ。

馬車を止め、オレとクリスはまず角馬に水と塩をなめさせる。

杭を立てそこに紐を通し、角馬がどこへも行けないようにした。

一通りの準備を終えると、荷台からSVD(ドラグノフ狙撃銃)、 弾薬(カートリッジ) が詰まった弾薬ケース、護身用のAK一式、メモ帳を取り出し場所を移動する。

「今日は晴れて良かった。絶好の試射日和だな」

『はい! それにお兄ちゃんと2人でお出かけなのも嬉しいです』

クリスは本当に嬉しいらしく、極上のお菓子を食べたように機嫌がいい。

今日、彼女は厳めしい野戦服ではなく、私服――竜人種族の女性が着る伝統衣装ドラゴン・ドレス姿だった。

金髪の長い髪も纏めてお団子にし、歩く度に細い太股、足首がスリットからのぞく。

今はオレしか側にいないため、人目を気にする必要もない。

昨日、夕食時にクリスと街外れの草原で試射するとスノー&リースに話をした。

2人はならば――と、気を遣ったのかそれぞれの用事を済ませると言い出した。

スノーは食材や必要品の買い出し。

リースはルナ&シアの様子を見にメイヤ邸へ向かっている。

本当にオレにはもったいないぐらいの良妻達だ。

馬車から約100m離れた草原。

的は約300m先の幹だ。

クリスにケースから取り出したSVD(ドラグノフ狙撃銃)、 弾薬(カートリッジ) を手渡す。

彼女は特に迷わず準備をする。

弾倉を取り出し、 弾薬(カートリッジ) を入れていく。

弾倉を戻し、安全装置を解除。

コッキングハンドルを引き、 薬室(チェンバー) にまず弾を1発移動させる。

チャイナドレス姿で、SVD(ドラグノフ狙撃銃)を持つクリスの姿はちょっと異様だ。

オレもクリスと一緒に準備に取り掛かっていた。

まずシートを地面に敷き、四方を留める。

そして持って来ていた袋に土を入れ土嚢を作った。

依託射撃(いたくしゃげき) の場所を作っているのだ。

スナイパーライフルの射撃姿勢は色々あるが、尤も安定が得られるのは銃を手で支えるのを止めて、何か安定した依託物を支えに使うことだ。

その場合、砂袋がもっとも適している。

金属やブロック、木材等の硬い物は、発射時の衝撃による振動で銃本体を動かしてしまうので依託物としては不適切だ。

また気を付ける事としては―― 銃身(バレル) に何も触れないようにしなければならない。なぜならば、 銃身(バレル) は、 機関部(レシーバー) と密着しており、発砲時毎回同じ振動を起こすことによって命中精度への影響を排除している(同じ弾・火薬であれば同じ振動になる)。なのに 銃身(バレル) が依託物に直接乗せられたりしていれば、銃が発砲する度に振動が変わり、さらには 銃身(バレル) に重みがかかり歪みが出て命中精度に影響が出る(人が扱っている以上、全く同じ部分を依託物に接し続けることは難しい)。

「こっちの準備は出来たぞ」

「あ、りがとう、ございます、お兄ちゃ、ん」

ぎこちなく声を出し、クリスは微笑む。

うん、可愛らしい。

彼女は草原の草を千切り、パラパラと落とす。

風を読んでいるのだ。

約300mという射程距離は前世の世界、一般の兵士がスコープ無しでも目標にヒットさせることができる距離だ。

しかし風が強く吹いていれば流されて目標から逸れてしまうこともあり得る。

だからクリスは草を千切り落とすことで風速を測っているのだ。

おおよそであり正確な風速は出ないが――草を落としたり線香等の煙を使用すれば、煙が流された距離・時間を計ることによって風速を割り出すことが出来る。

煙であれば1秒間に流れている距離を測ることによって風速が割り出せるし(1秒間で1mであれば風速1m/秒)、草であれば地面に落下するまでに1秒かかる場所から落とし、その際移動する距離で風速を測る(理論的には、地面まで1秒かかる距離から落下させて1m動いていれば1m/秒。実際は草の形で数値は変化するので感覚で判断)。

距離300m程で風速が8m/秒あれば、7.62mm×51mm弾の初速を初速830m/sとすれば、ずれは約45cmにもなる(弾道計算classic2000での計算より。弾道係数0.4と仮定)。

現在は風がややあり、風速は約3~4m/秒はある。

だが、クリスの腕前なら問題無いだろう。

彼女は準備した砂袋にSVD(ドラグノフ狙撃銃)の 銃床(ストック) を乗せる。

クリスはシートに腹ばいになり、足は肩幅に広げる。

体の正中線と銃の銃軸線が平行になるよう整える。

左手を 銃床(ストック) のトウを軽く摘んで床尾( 銃床(ストック) の肩に当たる部分)を肩に宛がう。

右手でグリップを握らず 引鉄(トリガー) に指をかける。

この時、 引鉄(トリガー) を親指&人差し指で挟み発砲する精密射撃テクニックも存在するが、クリスは遣らずに人差し指だけをかける。

「すぅー」

息を吸い、

「はぁー」

吐き出し――発砲。

『ダ――ンッ』と7.62mm×54Rが発射され、約300m先の幹へ着弾する。

セミオートマチックのSVD(ドラグノフ狙撃銃)は、発砲してすぐ内部の機関部が動き第2弾を迅速に送り込む。

クリスは続けて発砲。

ダ――ンッ!

ダ――ンッ!

ダ――ンッ!

連続して発砲音が響く。

一応、発砲音に惹かれて魔物が来ないか周囲を警戒するが、見晴らしのいい草原にそれらしい影は見あたらない。

オレは肩に掛けているAK47を担ぎ直す。

クリスは弾倉に入れられていた10発を全て撃ち切る。

「どうだ、調子は?」

彼女は体を起こすと、手元のミニ黒板に指を走らせる。

『上々ですが、セミオートマチックはやはり発砲時に内部で部品が動くせいか、いつもとは癖が違うので、もう少し撃って癖を覚えたいんですがいいですか?』

「もちろんだよ。弾はまだあるから好きなだけ撃ってくれ」

「あり、がとうござ、います」

クリスは笑顔でお礼を告げる。

やっぱり可愛いな。

そして、彼女は弾倉を外して再度 弾薬(カートリッジ) を詰め込む。

再び 依託射撃(いたくしゃげき) を開始。

オレは彼女の後方で、その姿を見守る。

嫁は真剣にSVD(ドラグノフ狙撃銃)の具合を確かめている。

「………」

今日は割と風がある。

必然、うつぶせに 依託射撃(いたくしゃげき) しているクリスのドラゴン・ドレスの裾がめくれる。

クリスは集中しているのもあるが、ここには人目はオレしかいない。

だから、あまり気にしていないのだ。

風が吹くたび、裾がめくれ奥に隠れている太股の付け根、下着が見え隠れする。

今日の下着の色は白か。

うん、可愛らしいクリスにぴったり似合っている。

何気ない仕草で屈み、覗きこむ。

一見セクハラのようだが、嫁だから問題なし!

さらに肉体強化術で目を補助! これで下着の皺まで確認出来るぜ!

クリスの肌は生まれたての赤ん坊よりすべすべで、触り心地がいい。

下着もやや食い込んで小ぶりのお尻肉がちょっと覗いているのが色っぽい。

昨夜も3人がかりで奉仕してもらったのに、体が熱くなる。

これが若さか。

しかし、クリスのお尻は可愛らしいな。

今すぐ顔を埋めたいくらいだ。

クリスのお尻に顔を埋めて匂いを嗅げたら、肺どころか、脳みそ、全細胞が活性化して健康に凄く良くなると思うんだよ。

オレは周辺警戒も忘れて、ついクリスの可愛らしいお尻に釘付けになってしまう。

「…………」

「はっ!?」

気付けば、SVDの具合を確かめていたクリスが、じーっとでこちらを見ていた。

オレは咳払いをして、何気ない様子で立ち上がる。

「こほん、あー、どうやら弾丸もちゃんと狙い通りに飛んでるみたいでよかったよ」

オレは背後から飛び出す弾丸を確認していたという言動で誤魔化しに走る。

しかしあまり効果はないようだ。

クリスがミニ黒板に指を走らせる。

『もうお兄ちゃんったら、背後で突然、魔力を使われたら何事かって思うじゃないですか』

「すんませんでした」

オレは素直に謝罪する。

そりゃそうだ。

突然、周囲を警戒するパートナーが魔力を使いだしたら、襲撃があるのかと勘違いしてしまう。もし別の理由で使うなら、一声かけるのが常識だ。

クリスは少しだけ怒った顔から一転、頬と言わず、耳まで赤くしてミニ黒板を差し出す。

『私はリュートお兄ちゃんの妻だから……恥ずかしいけど、もし我慢出来ないなら……がんばります』

彼女は頭から湯気が昇りそうなほどさらに顔を赤くする。

「クリス……」

「おに、い、ちゃん……」

クリスの小さな唇が、オレの名前を呼ぶ。

お互いの唇が近づいて、そして――

ぐぅ~、と、クリスのお腹が鳴る。

「…………」

恥ずかしそうに俯くクリス。

オレは真っ赤になったその可愛らしい表情を見て、苦笑いをして彼女の頭を撫でる。

「そういえばそろそろお昼の時間だったな。持ってきたお弁当食べようか」

『……はい、お兄ちゃん』

クリスがミニ黒板を持ち、小さく微笑んで頷く。

そして持ってきた弁当を入れた籠を持ち、草の上にシートを敷き、弁当を広げる。

『お兄ちゃんが作ってくれたお弁当、すごく美味しそうです』

クリスが嬉しそうに微笑んでくれる。

今日のメニューはオレが作ったサンドイッチ。具は似た魚で作ったツナサンドもどき、卵サンド、そして焼いた肉にタレをかけて作った照り焼きサンドだ。そしてデザート代わりにもなる果物とクリームを使った甘いフルーツサンドを持ってきている。

『このフルーツサンド、すごく美味しいです。お兄ちゃんが執事時代に作ってくれた、プリンと同じ、優しい甘さです』

「喜んでくれて嬉しいです、お嬢様」

かしこまった感じで大げさに礼をする。

クリスはその様子を見て、オレが執事をしていた頃を思い出したのだろう。懐かしそうに瞳を細める。

『お兄ちゃんが、あの時うちに来てくれて、本当に良かったです。お兄ちゃんのお陰で、こうして外に出て、色んな事に触れることが出来るんです。お兄ちゃんと一緒だから、どこまででも行ける、そんな気持ちになるんです』

「クリス。オレもだよ。クリスと一緒だから、頑張ろうっていう気持ちになるんだ」

『お兄ちゃんが、私の運命だったんだな、って今は思うんです。ずっとついていきます、どこまでも。お兄ちゃんの行きたいところが、クリスの行きたいところだから』

「……クリス」

クリームを頬につけているクリスの顔を拭う。

嬉しそうにクリスは微笑み、お礼に頬にキスをしてくる。

彼女の頭に手を置き、柔らかなその髪を指で撫でる。

クリスにはいつも助けられている。そしてオレを信頼して、オレのやりたいことについてきてくれている。スノーもリースもそうだ。

そんな大切な彼女達を絶対に守らなくてはいけないな、と心の中でオレは呟く。

「それじゃ、食べ終わったらもう少し撃って、それから帰ろうか」

『はい、お兄ちゃん。SVD、すごくいい銃です。ありがとうございます』

「気に入ってくれて嬉しいよ。改良したい所とか、使いづらい点があったらすぐ言ってくれ、調整するから」

『はい、解りました』

そしてオレ達は食事を終えると、再びSVDの試射に戻る。

それから正午を少し過ぎたぐらいに試射を終え、再び皆が待つ家へと、帰路についた。