軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第100話 リースさんの初めての家事・前編

「ふわぁ~、おはよー」

メイヤ邸から、自宅へ。

自宅内はメイヤ邸のメイド達により管理されていたお陰で、埃1つ無い状態だった。

ベッドも太陽の匂いがしてとても寝やすかった。

1階のリビングにはすでに嫁達が起きて朝食の準備に取り掛かっている。

オレが一番寝坊したらしい。

「おはよう、リュートくん」

「お、はよ、う、お兄ちゃ、ん」

「……おはようございます、リュートさん」

1人テンションの低い嫁――リースが落ち込んでいた。

その理由は、床に落ちて割れているカップで分かる。

どうやら人数分のお茶を台所から移動中に落としたらしい。

ドジっ娘な彼女らしいミスだ。

スノー&クリスが励ましながら、床に落ちたカップの破片を拾ったり、雑巾で水分を吸い取っている最中だった。

片付け終えると、スノー&クリスが作った朝食を摂る。

その席でリースが決意を滾らせた瞳で宣言した。

「私もスノーさんやクリスさんのように家事を頑張りたいので、やり方を教えてください!」

まるで今から死地に赴く兵士のような悲壮感で言わなくてもいいと思うんだが……

大体、彼女は元王女。

家事や雑務など全て他者がしてくれていた。

元々似た立場のクリスは、最初は戸惑ったものの飲み込みが早く、スノーに習ってすぐに技術を身に付けた。

しかしリースはさらにドジっ娘属性が加わり、きっと家事全般は壊滅的だろう。

「まだ、今朝カップを割ったこと気にしてるのか? 市場で買った安物だし、そんな大仰に身構えなくても」

「もうリュートくんは女の子の気持ちが分かってないな~」

『お兄ちゃん駄目駄目です』

スノーは食べていたサラダを嚥下し、肩をすくめる。

最近、家族間では言葉を使っているクリスが、ミニ黒板で駄目出しをした。

どうやら妻2人は、リースの心情を察しているらしい。

オレが困惑しているのに気付いたリースは、モジモジと照れながら思いを口にする。

「わ、私もスノーさんやクリスさんと同じ、リュートさんの妻ですから。だから、私もリュートさんのために家事をしてあげたいんです」

「リース……」

あまりに健気な言い方に思わず感極まってしまう。

オレは本当にいい嫁さんを貰った。

オレ達は暫し見つめ合っていたが、リースの方から視線を外しスノー&クリスへと向けられる。

「なのでどうか今日は私に家事のやり方を教えてください!」

「もちろんだよ。同じリュートくんのお嫁さんとして頑張って教えてあげるね」

「コクコク」

スノーは満面の笑顔で、クリスは何度も頷き同意する。

「はいはいはい!」と、オレは和やかな雰囲気になった嫁達の会話に割って入る。

「リースに家事を教えるんだろ、だったらエプロンを買って来ないと!」

「エプロンなら予備があるよ?」

スノー達が首を傾げる。

まったく皆、分かってないな~。

オレは嬉々として持論を展開する。

「予備のエプロンって飾りの無いシンプルな奴だろ? じゃなくて、リースみたいなロリ巨乳には、もっとレースがふんだんに使われたふわふわなお菓子みたいなのが良いと思うんだよ! しかも裸エプロンで! 絶対に似合うよ!」

「…………」

先程まであった空気が停滞する。

あ、あれ? もしかして地雷踏んだか?

「リュートくん、真面目にしようよ。リースちゃんが一生懸命頑張ろうとしているんだから」

「あ、なんかすんません」

さすがに調子に乗りすぎた。

オレは思わず謝罪してしまう。

当の本人であるリースは……

「そ、そういうのは夜になってからしてあげますから……それまで我慢してくださいね」

先程よりさらに赤く頬を染め、たどたどしく告げる。

クリス&スノーも彼女の言葉に賛同した。

『頑張ります』

「わたしも一緒に裸でエプロン着てあげるよ」

ありがとう、ありがとう! マジ、スノー達と結婚してよかったよ!

ドン! ――とはるか遠くの 冒険者斡旋組合(ギルド) 方向から『壁ドン!』したような音が聞こえた気がした。

きっと気のせいだろう。

こうして朝食後、リースの家事練習――花嫁修業が開始する。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

まずは掃除から。

最初は寝室。

ガルガルの尻尾を加工したはたきで、上に溜まった埃を落とす。そして箒とちりとりでゴミを集めて捨てる。

「それじゃオレが台を押さえているから、リースは落ちないよう気を付けてはたきで埃を落としてくれ」

「わ、分かりました」

シンプルなエプロンを来たリースがはたきを手に、台となる椅子の上に立ち天蓋ベッドの上から埃を落とす。

彼女の身長はクリスより少々大きい程度、椅子の上で爪先立ちしないと奥まで届かないようだ。

「頑張ってリースちゃん」

「お、ちついて、ゆっく、り」

スノーとクリスが体を支え、リースの作業を補助する。

お陰で危険な場面も無く見事、埃を落としきることが出来た。

椅子からリースが下り、彼女は一息つく。

「1月に1回ぐらいの割合で家具を動かして後ろまで掃除するけど、今日は簡単で問題ないから」

いくらスノーが魔術師で、肉体強化術を使えるからと言っても掃除の度、家具を移動して影を掃除するのは手間だ。

移動した際、家具を一時置くスペースも必要になる。

だが、リースは何気ない口調で提案した。

「そうなんですか? でも、私の精霊の加護『無限収納』なら、手間無く天蓋ベッドぐらいしまえますけど……」

『!?』

言われて気付く、確かにリースの『無限収納』なら移動の手間も、スペースも気にしなくていい!

早速、お願いして収納してもらう。

彼女は天蓋付きベッドに手を触れ、意識を集中する。

ベッドはまるで最初からそこになかったように消失した。

『おぉぉぉぉ!』

オレ達は思わず拍手と歓声を送った。

ハイエルフ族は100歳で、魔術師の才能の有無に拘わらず精霊の加護という力を得る。

リースの力は無生物をほぼ無限に収納できる『無限収納』だ。

ハイエルフ族内部では逆レア――つまり、物を出し入れするだけのつまらない能力と蔑まれてきた。

リースを除いて、歴史上1人所持者が居たが周囲に馬鹿にされ過ごしたらしい。

しかしこの力は使い方によってこんなに便利だとは!

「凄いよ、リース。わざわざ移動させなくても普段隠れている場所を苦もなく掃除出来るなんて」

「自分でも驚きです。まさか私の力がこれほど家事向きだったとは」

リースは自分の力をあまり良くは思っていない。

だからこうして力を役立てて本当に嬉しそうだった。

彼女は箒を手に掃き掃除を続ける。

ちりとりにゴミを移し捨てる。

掃除が終われば家具は再び元通りの位置に苦もなく並べることが出来る。

次は洗濯だ。

風呂場の大手洗には、お湯と一緒に洗濯物が入れられていた。

スノーが説明する。

「下着とか、生地の繊細な衣類は手もみで洗うけど、普通の洋服はこうして一度に全部洗うんだよ。お湯を入れて、専用の魔術洗剤を入れて、足で踏めば汚れは落ちるから。簡単でしょ?」

確かにこれはオレでも出来そうだ。

リースはスノーから手渡された魔術洗剤を指示に従い適量入れる。

魔術洗剤は割と高価だが、その分効果は抜群だ。

足で踏む度、前世の世界で使われている洗剤以上に汚れを落とす。

油、土、草の汁、食べ汚し、垢――どんな汚れも綺麗に落ちる。

何という便利グッズだろう。

さらに素晴らしいのが、

「うんしょ、うんしょ……結構、足で踏むだけでも大変ですね」

「でも、良い運動になるし、手で1つずつ洗うよりずっと楽だよ」

『ですね。それに皆で足踏みしているとなんだか子供遊びみたいで楽しいです』

スノー達は裾を捲り、大手洗に皆で入って衣類を足踏みする。

そのたびにスノー&リースの大きなおっぱいがぷるんぷるん揺れ、クリスの太股に飛び散ったお湯や泡がついて落ちたりする。

金貨1枚を払っても眺めたいほど眼福な光景だ。

思わず手を叩いてしまう。

「エクセレント、ビバ、エクセレント……ッ」

「どうしたのリュートくん、突然?」

「リュートさん、胸や足にご執心していると思ったら……」

リースが声を出す。

ヤバ、ばれていたのかよ。

「ふふふ、野外では困りますが、ここは家の中。私達は逃げたりしませんから、そんな飢えた獣のような目をしなくても大丈夫ですよ」

リースは照れながら笑顔で告げてくる。

その意見にスノー、クリスも賛同らしく反対の声は上がらなかった。

いや! 本当に素晴らしい嫁達をもらったよ、オレは!

ドン! ドン! ドン! ――と再び、 冒険者斡旋組合(ギルド) 方向から『壁ドン!』したような音が聞こえた気がした。

うん、きっと気のせいに違いない。

こうして衣類を無事に洗うことが出来た。