軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

はじめての依頼

朝、まだ朝日が昇りきらない内に目が覚め、2度寝するのも気が引けたのでボーっとベッドに座っていた。

昨日採ってきた雑草は大量だ、一度に生成したらきっとすごいだろう。

銭湯はお湯を使うし、それはどこに排水するんだろう、川かな? 川でもあれば一気に生成してしまうのに、大量にある雑草を見るともどかしい。

ぐうっとお腹が鳴ったので、昨日残しておいたパンを食べた。パンばかりで飽きそうだ。

受付の女性もまだ起きていないだろうと思いつつ、下に行って様子を見てみたところ、受付のカウンターに突っ伏して寝ていた。まさかあそこが寝床なわけじゃあるまいな……。

部屋に戻ってココルカバンを持つと、部屋に鍵をかけて下におりた。

「すいません」

「んぇ!?あ、どうしました?」

「出かけたいんですけど、鍵を預かってもらえますか?」

「わかりました、今日は早いですね?」

「なんだか目が覚めてしまったので」

「そうですか、では行ってらっしゃいませ」

受付の女性に見送られ、私が向かうのはギルドだ、川のありかを聞きたい。

街の中にたとえ川があったとしても、誰かに見られる可能性が高いので、街の外ならどうだろうかと考えたのだ。

朝早いと行っても人は結構見かけるので、早起きな人が多いのだろう、しかしいつもより歩きやすいので、ギルドにも早めに着いた。朝早いが、開いているだろうか、そんな心配をよそに、入り口のドアは簡単に開いた。

そーっと中を覗くと、鎧を着た人が二人居るだけで静かだ。少し薄暗いが、壁に埋め込まれている石が黄色く光って中を照らしている。

前に訪れた時クリスさんが居た窓口に向かうが、クリスさんは居なかった。しかしクリスさんの代わりにひげもじゃのおじいさんが居たので、話しかける。

「あの、すいません」

「ぬ、どうしたかね?」

見た目とは違って声は元気で、ハキハキとしている。

「街の外に川はありますか?なるべく近くに」

「近くに川か。街の隣に流れる大きな川か、もしくは森に入った小川だね」

街の隣なら私でも行けそうだ。

「ちなみに街の隣の川なら、モンスターは少ないですか?」

「今は暖かくなってきたから、どうだろうね。油断は出来ないよ」

「そうですか」

だめだ行けない、私じゃ死ぬ。

「どうしても街の外の川に行きたいのかね?」

「はい、どうしても、今後の生活にかかわるくらい」

「うぬ、それなら護衛の依頼をしてみてはいかがかな?」

「護衛依頼?」

そうか、ここはギルドだ、やってみてもいいんじゃなかろうか。

「えーと、じゃあ街の隣の川で用事を済ませて、また帰ってくるまでの間、護衛を依頼したいです」

「うぬ」

おじいさんは引き出しから、すでに罫線の引かれた紙を取り出した。

「では名前を伺ってよろしいかな?」

「はい、カエデ・ヤクモです」

「カエデ・ヤクモだね」

おじいさんは私の名前と、今話した内容を紙の上部に書き込み、顔を上げた。

「この内容だと、報酬は安くても50タミルだね、高いほうが依頼を受けてもらい易いが、どうするかね?」

50タミルだと……、今の所持金は47タミルだ、足りない。

「50タミルはちょっと……、でも、現品が報酬とかダメですか?」

「ほう、現品とは?」

「たとえば、ポーション10個とか20個とか」

「うーぬ、それではなあ」

「あ、40タミルとポーション20個で、どうですか?」

「うぬ、よかろう。現品に惹かれぬ者もいるだろうが、待つしかないな」

「ありがとうごさいます。支度してここで待ってます」

「かまわないが、いつになるか分からんのだよ?」

「大丈夫です」

私はダッシュで宿に戻り、ココルカバンにリュックサックを入れて、またギルドに引き返した。もう日が出て時間が経っているようだ。

そうなるといくら朝でもギルドには人が増えてきた。

大人しくテーブルの椅子に座っておく。

どれくらい時間が経ったのか、うとうとしていたせいでわからないが、突然声をかけられた。

「カエデ・ヤクモさん?」

「あ、はい?」

ぱっと顔を上げると、正面に赤い革の鎧を着た女性と、重そうな鎧を着た男性がいて、どうやら女性が声をかけてきたようだ。女性は長い赤髪を一本に縛っていて、男性は短い金髪。

「今あなたの依頼を受注してきたの、依頼主が待ってるって聞いて驚いたわ」

「あ、そうですか?どうしても行きたかったので、はは……」

女性の隣にいる男性が怖い。

「私はセリー、ランク5よ、よろしく」

「オレはランジ、ランク4だ」

「改めて、カエデ・ヤクモです。今回はよろしくお願いします」

「ええ、じゃあさっそく行きましょう?」

「はい」

3人でギルドを出て、太陽が真上近くにあるのに少し驚いた。西門に向かうと、門は大きな構えで、馬車2台が余裕ですれ違っていた。門の脇に居る門番に身分証を見せ、簡単に外へ出てしまった。

そして外の風景に感動した、ずっと向こうまで続く大地と、大地を囲む山、左を見ると向こうに森があり、右を見るとかなり向こうに大きな橋が架かっている、そこを馬車や人がちらほら行き交っている。

「ほら、川は向こうよ」

「はい!」

橋のある方を指差され、セリーさんの隣を歩いて川を目指す。

「ところで、川に行って何をするの?楽そうな依頼だから引き受けたけど、なんだか気になっちゃって」

「ああ、ポーションをいっぺんに作りたくて、街の中だと気が引けるし」

「ポーション? 詳しくないけど、川で作れるの?あれって調合師が薬草をどうにかして作るんだと思ってたわ」

「え、まあ、それぞれのやり方があるんじゃないでしょうか?」

私は冷や汗をかいた、まさかそんな、ポーションは普通そうやって作るの? なら私の作り方って見られたらまずいのか?

「そ、それはそうと、どうしてこんな依頼受けたんですか? 報酬は安いですし」

「さっき言った通り、楽そうだったからよ、実はこの依頼を成功させたら私のランク上がるの!」

「おめでとうごさいます」

「ありがとう」

雑談をしてる内に川に着いたが、ランジさんは一言も喋らなかった、無口な人だな。

橋からは遠く離れた場所で川に近づき、ココルカバンからリュックサックを出した。リュックサックから両手一杯に雑草を出し、それでまず生成してみる。

「生成」

雑草とわずかな面積の水が光ると、ポーションが出来た。

「ええ!? ポーションできたの!?」

セリーさんが驚いているが、そこでランジさんが口を開いた。

「うるさいぞセリー、さっきそれぞれのやり方があると言われただろう。それがその子のやり方なだけだ」

「そうね、ごめんなさいねカエデさん」

「いえ」

出来たポーションは17個、それをココルカバンに入れ、次はもっと多く雑草を出した。

「生成」

また光り、今度は32個。いい調子だ、雑草はまだまだある。

次々作り、セリーさんは楽しそうにそれを眺めていた。ランジさんも興味はありそうだ。

「おわったー」

「お疲れ様!」

途中で数えるのを止めたので、正確にいくつあるかは分からないが、確実に100以上はあった。リュックサックの中をばさばさ振って綺麗にし、報酬分の20個だけ別にした。

「じゃあ戻りましょう」

大量のポーションが入って重たいだろうと思いながらココルカバンを持ち上げたが、少し重量が増しただけで重くは無かった。

ギルドでセリーさんが依頼完了の報告をしたあと、すぐに報酬を渡した。

「40タミルとポーション20個です。今日はありがとうごさいました」

「お礼なんていいわ、こっちも面白いものが見れたし、ねえランジ?」

「ああ」

「また機会があったらお願いします」

「もちろんよ、またね」

二人に別れを告げ、私が真っ先に向かったのはいつもの薬屋だ。大量のポーションはいくつまで買い取ってもらえるのか。

ちりんとドアベルを鳴らして店に入ると、おじさんは接客中なようだ。

「なあおっさん、なんとかならないか? どうしても50個必要なんだよ」

「バカいうな、ポーション50個もお前に売ったら他の人が買えなくなるだろ」

ポーションを50個買いたいらしい軽装備のお兄さんは、困ったように眉尻を下げていた。

「けど……」

おじさんの目がこちらに向いた。

「ちょうどいい時に来たなじょうちゃん、今日はいくつだ?」

「沢山です、50個以上は確実にあります」

「本当!?」

私の言葉にお兄さんは喜んだようで、輝く瞳を向けられる。

「ならこいつに売ってやってくれないか?」

「じゃあ一つ10タミルで」

「もちろんだよ!」

財布と思わしき袋から、すぐさま小銀貨5枚を出して寄こした。

私もココルカバンからポーションを数えながら出して、それをお兄さんは自分のカバンに入れていく。

「これで50個です」

「本当に助かったよ、ありがとう!」

「いえいえ」

お兄さんはにこりと笑った、イケメンだったらときめいていたかもしれない。

だーっと走って店を出て行ったお兄さんを見送り、おじさんを見た。

「さて、今日はいくつだ?」

「わかりません、沢山です」

「そんなにか?」

私も分からないので、おじさんにココルカバンの中身を見せた。

「こりゃ、確かに沢山だな。ならとりあえず30個買い取るか」

「ありがとうございます」

数えながら、カウンタ-に30個出して並べると、おじさんはいつものようにすぐお金をくれた。

「ほれ、240タミルだ。こんなにあるなら、今度自分で露店を開いてみたらどうだ?」

「露店ですか?」

お金をしまいながら聞く。

「ああ、自分で売値を設定してな。ポーションは毎日沢山売れるからいいんじゃないか?」

「でも、許可はいらないんですか?」

「許可?」

「はい」

お金をきちんとしまい、おじさんを見る。

「露店は許可がいらないんだ、だから露店を開いてる奴は沢山いるだろう」

確かに、ここの通りは露店専用なのかと聞きたくなるような場所もあった。ああいった所でなら浮かずに商売が出来るかも知れない。

「やってみようと思います。露店を開いてはいけない場所ってあるんですか?」

「そうだな、ここで商売するなと言われない限り、いいんじゃないか?」

なんて、アバウトなんだ、ならギルドの近くで商売したら儲かりそうじゃないか? でもギルドの近くで露店開いてる人は見たことが無い、何か理由があるんだろうか。

それを聞いてみると、理由は簡単だった。

「ギルドが露店開く奴を片っ端から追い払うから、あの辺は自然と露店商売をやらなくなったんだよ」

「えー、ポーションだからギルドの近くでやったらいいかと思ったんですけどね」

「残念だったな、なんなら交渉してみたらいいさ」

そんな勇気はない。

一気に手持ちを増やして宿に帰った。

床に並べたポーションを見てふうっと息をついた、残ったポーションはそれでも67個あったのだ。そして手持ちは747タミル、これを元手に、また川までの護衛を依頼してポーションを増やすのもいい、しかし露店を開いて先に今あるポーションを売るべきだろう。そうしてお金が増えたら清め石を買い……、いや、このペースでポーションを作って売れるなら、ハイポーションは作らなくていいじゃん。ポーション一筋でいいじゃん。

床に広げたポーションをココルカバンに戻して、ベッドに寝そべる。

そしてまた考える、ハイポーションは必要か否か、否。

雑草と水でぽんと作れるポーションがいいに決まってる、窓から見える空は夕暮れで、計画を立てたことだし寝てしまおう。

そして、明日露店を開こう、そう決意して眠りについた。