軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第45話 小畑会団結!!①

「いっ、痛ててっ……」

「なんで俺らこんな怪我してんだよ……」

ホントだよ。ダンジョンでもあるまいし。

男連中で無事な奴は一人もいない。一人残らずしばき倒して、ミライさんはようやく止まってくれた。

とはいえここまでやる必要はあったのか。まさか探索者になってから初めての怪我が、地上での喧嘩に巻き込まれてになるとは思わなかったわ。

「おふざけはここまでよ。時間が勿体無いわ。いい加減に真面目にやりましょう」

「いや、暴れたのはアンタ――」

「楓太。頼むからもう止めろ。これ以上は守れんぞ」

「すまねぇ。気持ちは分かるが、流石にこれ以上は……」

むぅ。タケさんとトシさんにこうまで止められては、もう何も言えん。

特にあのトシさんがこんなこと言うなら本当に限界なんだろうし。

「本当なら昨日の時点で話し合って大まかな方針も決められたでしょうに。酒盛りに夢中になって何もしてないみたいだからね。少しでも遅れを取り戻さないと」

ミライさんは俺というよりも、タケさん達に言っているようだった。おかげで皆気まずそうに目を逸らしている。

そんな中、マサ君は深く頷いている。

「ホントにそう! ミライさん! このバカ共にもっと言ってやってください!」

我が意を得たり、と言わんばかりだな。この裏切り者のクソガキめ。自分だけうまく逃げようとしやがって!

「東。貴方が居ながら何をやっていたの」

「いやー、申し訳ありません。学生時代のノリを思い出してしまいまして」

流石東さん。分かる。分かるよ。すごく楽しかったよね。

うんうんと頷いていると、ミライさんに鋭い目で睨まれた。怖い。

「楓太君。実際のところ、本当にこんなことやってる場合じゃないのよ? 貴方のスキルはどう考えてもヤバいわ。対策を立てておかないと命を狙われかねない。そこの所、本気で分かってる?」

「いや、その、そりゃ分かってるつもりですよ? 宴会してたのは大変反省しております。でも、ちゃんと俺なりにこれからのことはぼんやりと考えていました」

「へぇ、そうなの? それじゃあどうするつもりだったのか教えてくれる?」

面白がるようにというか、意地悪そうにミライさんは笑う。

出来の悪い生徒をイジめようとしている美人女教師、みたいで滾るな。これ以上ふざけていたら本気で怒られそうだから止めておこう。

「とりあえずレベルを上げてもらおうと思っていました。まずはそこをクリアしないことにはどうにもならないので」

「……あのね、楓太君。これはそんな軽い問題じゃないわよ」

ミライさんは頭痛を堪えるように、眉間を揉みながら続けた。

「レベルを上げなきゃってのは分かるわ。ホムンクルスの質を上げるにも必要だしね。その為に私達が手伝うのも不満はないわ。だけど、それ以前にもっとやることがあるのよ。具体的に言うと根回しね。どこに話を持っていって、どんな取引をするのか。お互いが納得できるラインは? ここをしくじると、本当に殺されてもおかしくないのよ?」

困った子供を相手にするかのように、ミライさんは俺を見ている。一応、本気で心配しているのだろう。タケさん達も難しい顔をしながら何も言わないのは、ミライさんと同じ意見だからだろうな。

だけどこれ、大事なところを勘違いしているな。

「あの、すいません。レベルを上げてもらおうっていうのは、俺達の手伝いをしてほしいって意味じゃないです。皆さんにレベルを上げてもらおうって意味です」

「……ん?」

俺の訂正に、皆が頭に疑問符を浮かべた。

数秒間が空いた後、再度ミライさんが尋ねる。

「ごめんなさい。聞き間違いかしら? 楓太君のじゃなくて、私達のレベルを上げてほしいの?」

「ええ、間違いありません。結局それが一番確実なので」

「待て待て。小畑さん、すまないが詳しく話してくれ。なんでそうなった? そもそも確実って何がだ? 俺にはさっぱり分からん」

世永さんの意見に、だいたいの人が頷いている。

まぁ結論を知らないと唐突過ぎて分からんか。

ここに居る人たちは協力者。俺の頼りになる仲間だ。俺の考えをちゃんと理解してもらう為に、最初から丁寧に話すとしよう。

「【人工生命体創造】のスキルを覚えた夜に、川辺と伊波とで話し合っている時に思ったんですよ。あれ? このスキル、国から規制される可能性がかなり高いんじゃね? って」

♦ ♦

そう。あれは確か、だいぶ酔いが回って時間も日付が変わる頃じゃったか。

酔いに任せて、俺達は人体の神秘について熱く語り続けていたそうな……。

「やっぱりでかい胸と尻が至高ですわ! 男にはない物があるからこそ惹かれる訳ですよ!」

「いやいや、やっぱりロリよ! 未成熟な体に漂うエロスが男を狂わせる!」

「ないものって言ったらそれこそケモ耳尻尾だろう! 人にない要素があるからこそ惹かれるのだよ!」

いつもなら意見がぶつかりどちらが正しいかの議論が始まるところだが、ホムンクルスが手に入るという余裕のせいか、アピールするだけで争いが起きることがない、平和な時間だった。ゲスだが。

しかし、とある気づきが俺達を一瞬で酔いから覚ますことになった。

「たぶんサキュバスを狩れるようになれば、理想のハーレム生活は出来るようになると思うんだ。その頃にはいろんな種類の魔物も刈れるだろうし、材料には事欠かない。しかし俺はそれだけじゃ満足できないわけ。分かる?」

「分かる。正直、見てくれだけでも不満はないし、自慢できる。でも有能な美女をモノにしているっていう征服感は得られない」

「自分より有能な女が、他の男を差し置いて自分だけに好意を向けてくれる。この時の優越感と自尊心、より捗るね」

「そう、それなんだよ! 有能な美女! これが大事! だから俺はハイスペックなホムンクルスを作る! 見かけは絶世な美女! なのに戦ってみたら超一流の探索者! 〝最低でも一般人には絶対負けない戦闘力を保持しつつ、それぞれが仲間内で得意分野では誰にも負けないスペシャリスト集団〟! これをコンセプトにしたホムンクルス美女ハーレムを俺は作りたい!」

「TUEEEEEEEEEE!! カッケェエエエエエエ!! ロマンがありすぎる!! こんなん男なら誰だって欲しいだろ!! それでいて実態はより取り見取りのハーレムだからな!!」

「ああ、本当に夢が広がるねぇ! その時が楽しみだよ! でもあれだね、そこまでのホムンクルスを作れて何十人も侍らせていたとしたら、それはもう私兵と変わらないね!」

「あははははっ! 確かにそうだな! ただハーレムを作りたいだけなのに、実質的には私兵とかやばっ――――ん?」

……あれ? もしかしてこれ、マジでまずいんじゃね?

♦ ♦

「実際、僕が国側の人間だったら、ホムンクルスには必ず規制を掛けますね。所持数の制限だったり、性能の制限だったり」

皆の前で、伊波が言った。

「もちろん、そんなホムンクルスを作れるようになれるのはしばらく先の話でしょう。ですが、十階~二十階層のダンジョン素材を使えば、レベル10~20くらいの探索者と同等のホムンクルスは作れるんじゃないでしょうか? そこまで行かずとも、駆け出しを抜けるレベルのホムンクルスが量産できるとすれば、国としては警戒しないわけにはいかないでしょう?」

ただでさえ、各国の探索者に対する警戒は厳しくなりつつある。

日本はまだ大きな事件が公になっていないが、中には探索者によるクーデターが起きている国もあるくらいだ。

それだけ高レベルの探索者は恐ろしい。低レベルの探索者でさえ、一般人では勝てなくなる戦闘力を持つ。そんな中で、それを量産できる俺の存在が知られたら?

まぁ確実に制限を加えるし、なんだったら消すよね。危険だもん。

っていうかなんだったら、一般人レベルのホムンクルスでもいいんだよな。命令に逆らわないホムンクルスを千体くらい量産すれば、テロもあちこちで自由に起こせるから。

こうして聞くとやべぇな。俺、超危険人物じゃん。

「……小畑さん達、結構考えてたんですね」

「いや、マサ君。流石に失礼すぎんか?」

どんだけ俺を低く見積もっていたのやら。

「まぁ、楓太ならそれくらいは思いつくよな」

「ああ。当然だな。だからこそ俺たちは何らかの案があるだろうと、あえて黙っていた訳だが」

「はぁ!? いや、アンタら昨日は――!」

流石タケさんにトシさん。俺を正しく評価してくれている。その点、マサ君は減点かな。ちょっと舐めすぎだ。しばらく彼の注文は後回しにしてやろう。

まぁ、冗談は置いておくとして。

「実際はそれに思い至るまで、まるで考えてなかったですけどね。どうしたらホムンクルスを作れるか。どんなホムンクルスを作りたいかってばかりで」

ところが、いざ危険性について考えてみたらそれどころじゃないってことに気づいてしまった。これは何らかの対策をしないと詰む、と。

なるほど、と。話を聞いていたミライさんは静かに頷いた。

「楓太君が最低限、自分の危険性を自覚しているなら何よりだわ。それで、何で私達にレベル上げをしてもらおうっていう発想になったの?」

「初めはさっきミライさんが言ったように、しかるべき相手に話を持って行って根回しをする、って考えてたんですよ。その為に皆さんの伝手も使ってもらおうって。でもそれって、どのみち規制を受け入れる方向性じゃないですか」

三人で話し合っているうちに、思っちゃったんだよな。

それ受け入れちゃったら、ハーレム作れんくね? って。

ホムンクルスの所持が許されるとして、何体まで持てる? 五体? 十体はもう多いと思われるよな?

お気に入りのホムンクルスを侍らせて、何だったら日本各地に拠点作って気分で旅行。そこの管理はホムンクルスハーレムに現地妻感覚で任せる。そんな密かな野望を持っている俺に、たかだか数体の所持で我慢しろ?

――冗談じゃねぇし。

「そもそも、なんで俺が手に入れた力を好きに使っちゃいけないんですか? しかもまだ何もやってないのに、疑わしきは罰するとばかりに縛られるんですよ? ただ好き勝手にホムンクルス美女で遊びたいだけの善良な市民ですよ俺は。こんなの納得できるわけないじゃないですか」

「小畑さん……それ、国から一番警戒されるタイプの探索者の思考なんだわ」

「通報しました」

世永さんの言いたいことは分かるけど、それって暴れたいとかそういう思考の人でしょ? 俺は美女とイチャコラすることしか考えてないから当てはまらんのだわ。天城さんは無視。

っていうか、マジでハイスペックのホムンクルスの製造を無制限に許してくれるならさ、治安維持にも協力するよ俺は。ただでさえ探索者は少ないのに、その探索者を抑え込めるような人材を用意するのは大変じゃん? そのくらいの理解はあるよ俺だって。

もういっそのこと、日本の平和は俺に任せればいいんだよ!

まぁ流石にこれは冗談だが。面倒だからやりたくねぇし。出来そうではあるけどね。

「で、どうにかして規制を受けずに、好き勝手ホムンクルスを作る方法はないか。あれこれと考えて、こちらの伊波君が思いついてくれました」

「――そうだ! 国から指図をされたくないなら、国が手を出せなくなるくらい強くなってしまえばいいんだ! 絶対的な強さを持つ探索者集団を作って、口煩い奴らを黙らそう! やはり暴力……! 暴力は全てを解決する……!」

――ゴンッ!!

握りこぶしを作って伊波が力強くそう唱えた瞬間、なにやら凄まじい音が聞こえた。

座っていた東さんが、テーブルに頭を突っ伏していた。