軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5話  楽園とシャーマン

州都国際空港跡地

人類文明が崩壊した。

この州都も以前は大陸でも1番の隆盛を誇っていた。その大都市は今や見る影もない。生き残った人間はここを残骸都市と名付けた。

世界の終末。

あの日から生き残った人間たちの中でこの残骸都市の郊外に「楽園」を作った奴らがいる。といってもまだ出来てから日が浅い旧国際空港跡地を拠点としているグループ。2百人以上の生き残りの人間たちの集団が四つ集まって「楽園」は出来た。その後も楽園は生き残った人間を受け入れている。

俺もその四つのグループの中にいたんだけど。中心的な人物でもなんでもなくて…… どちらかといえば問題児。ハハハ。

「コナー・ケーヒル」

力に目覚めたのはまぁいいけどな、汚れ仕事が捗るからよ、ハハハ。空港税関だった辺りを歩いていると背の高い褐色肌の男とすれ違う。新入りのアムスの野郎だ。挨拶はせずに済ました顔で顔を逸らし、気付かないフリ。横目でチラッと見る。一瞬目があったが何を考えているかわからねぇ顔してやがった。ふぅむ「俺、お前の先輩で、しかも実力者なんだぜ?」みたいな態度とりたかったんだけど成功してないかも。ま、どうでもいいけどな。hahaha。

アムスの野郎の背中を見るとアムスが歩いてきた方から今度は男女がやって来る。テリーとベアだ。俺からすると目の上のたん瘤その2とその3だな。

「よぉ、アダムにキャロル?」

「テリーとベアトリーチェだぞ、コナー」

「そうだった、そうだった。…嘘嘘、冗談だよ。ところで死体転がしのオッサンどこにいる?」

「うーん分からないな。他を当たってみるといい。」

「そっか、了解」

テリーとベアが去っていく。エデンでもっとも強い奴らのうちの2人。

あの学者のような雰囲気の眼鏡の優男、つっても体つきは俺と並みに筋肉質だが。アイツがエデンで皆の戦闘訓練をしている。みんなの師匠とでもいえばいいか。そして皆の中には無論俺も入っていて…… つまり俺の師匠とも言える。師匠だなんて思ったことなんざねぇがな! hahaha。

実力は悔しいが呆れるほど強い。ジョブはコンバットマスターとか何とか。ベアはなんだっけ。わからんがアイツも馬鹿みたいに強い。

こいつらには目を付けられないようにしとかねーと。くだらねー…… 人の顔色を窺って生きるのは俺らしくねーぜ、トホホ。ま、俺はいい子ちゃんだから問題ないはずだが。

関係者用通路に入る。簡易的な身分証と貢献ポイントのデータが入っているカードをドアマンに見せる。中に入ると飲み屋から食べ物やまで色々営業している区画に出る。ちょっとだけ優秀な奴らだけが入れる空間だ。誰でも出入りできる所よりは色々とマシ。ま、ぶっちゃけ大したことねーが。

行きつけの飲み屋に入ると背は高くはないがガッチリとした体躯の黒い髪を束ねた髭の男。最近仲良くなった奴で

アムスと同時期に楽園に入って来た男。ラテン系で髭面にチェシャ猫のような顔つき。何時も黒いスーツを着ている。

「よう、友よ」

「友よ、いい感じだ。そっちはどうだ?」

声をかけると体ごとこちらを向いてチェシャ猫のような顔で口角を吊り上げて笑って言った。さらにチェシャ猫感が増す。

貴重な俺の飲み仲間。性格が結構合うんだよなぁ。面白いこと好きだしさ。大体優秀で変な奴か、強くて変な奴が好きなんだよな、俺って人間はさ。

奴はいつものバーボンコークを既に飲んでいたので俺も同じものにする。バーテンの男が楽園で出来る限りのクオリティで作ってくれる。こいつも変な奴で興味深いが、面白いことが好きな奴かは疑問だね。仲間にするのは微妙かな。断られそうだし…… などと考えている。

チェシャ猫のような俺の友は仲間にした方がいいと熱心に推薦してくるが。こいつすげぇ無口だし、どうなの? それに俺の事見下してそうな気もするなぁ…… それより掃除屋としての報酬でもまたもらいに行かないと。なんか服とかもさぁ、この俺様に似合うお洒落なスーツとかもらいたいんだがなぁ。

==

コナー

掃除人 レベル2

技能: 対人戦闘補正(小) 対人攻撃UP

テリー

コンバットマスター レベル5

技能:ゾーン(戦闘) 鋼の体 武器の達人 見切り 達人の呼吸 武器錬成

ベアトリーチェ

ヴァンパイアハンター レベル5

技能:天才 直観 猟犬召喚 強化剣術 強化弓術 隠密 吸血回復

==

***

楽園領土 空港跡地

第三会議室

「ヴィクトール・バレンタイン」

ため息をつきながら窓の外を眺めた。稼働しているものは一つも無いが大型旅客機がずらりと並んでいる。

楽園の本部。

空港跡地の防衛事情はあの男が来てから一変した。彼は見るからに力に目覚めた実力者で、しかも私たち幹部と同格の実力者だというのも一目で分かった。戦闘に特化したタイプではないが、あの結界術と土地の聖域化はとてつもない能力だ。聖域化がされて、逆に楽園の人間たちは混乱し説明を求める声が殺到した。事前にそうなると予測し説明したのにだ!

そんな先月エデンに加入し注目の的となっている男。アムスと軽く会話。褐色肌で背が高い男、スラリとして手足も長い。黒いコートを着ている。真面目そうだが力んでいる感じも無く、自然体で柔らかく落ち着いた男だった。

「それで、同志アムスよ。困っていることや、私に出来ることはあるだろうか?」

「いや、今の所は無いな。良くしてもらっている。ただ……」

「どうぞ」

「…ヒエラルキー社会とかは苦手でね。あまり気にしない質だから、礼儀とかも。一部の人間には良い顔はされていない気がする」

「それについては気にしなくていい。私の周りはそこまでかしこまっている奴は少ないよ。それと…」

別に大した話はしなかった調子はどうかとかそんなもの。

アムスが出て行って直ぐに入れ替わるようにテリーとベアがドアをノックして入ってきた。5人の幹部の内の2人に総長補佐のアマンダが声をかける。

楽園の総長であるこのヴィクトールとアマンダとテリーとベアそしてレオン。この5人が楽園の幹部であり、今日次第ではアムスを入れて6人になる。そして結果はほぼ決まっているようなものであった。

今日中に楽園の幹部会でアムスの役割や待遇などを決めることになる。まだ守備隊長のレオンが来ていないので彼を待ちながら他の面々と談笑。アマンダが皆の飲み物を入れてくれているタイミングでレオンが到着。

会議を始める。

楽園最高幹部会

総長 ヴィクトール

総長補佐 アマンダ

守備隊長 レオン

遊撃隊長 テリー

ベアトリーチェ

「さて、分かってると思うけど議題は同志アムスの最高幹部昇格についてだ」

「えーと、彼は今は何の役職だっけ?」

テリーからの質問にアマンダが答える。

「エデン防衛隊特別構成員よ」

「特別構成員ってなんだっけ、あれか危険な任務を誰かが彼に振らないようにするための役職?」

その通り。彼のような人材は失うにはあまりにも貴重。しかし能力重視で能力さえあればすぐに特別扱いするのにも懸念があった。

「とりあえずの適当な役職よ」

「それでもう約束の一月はたったと。では彼はこれからは?」

テリーの問いに私が答えた。

「同志アムスには相応しい待遇を用意して改めて迎え入れる」

「同志ヴィクトール、僕は文句ないよ」

「私もありません。」

ベア、その他もそれに続く。

会議の争点はアムスを誰かの預かりとするのか、もしくは独立した役職を作って与えるのかだった。彼にはここに是が非でもいてほしい。当たり前だ。あんな能力失えるわけがない。

彼の技能でエデンが聖域化された。聖域化は貴重なスキル。今では魔物が1週間に1匹ほどしか入り込まないし。そのうえ自分から率先して出ていく。特にアムスに近い場所ほど聖域が濃くなるようだった。

守備隊長のレオンがアムスを欲しがったが、私とアマンダが反対。レオンは面倒見はいいがアムスを飼い殺す可能性がある。それにどのような理由でレオンがアムスの上につくのだ。アムスが了承する理由が何もない。嫌がったアムスがここを出ていくなどとことはあってはならなかった。アムスを誰かに預ける理由も必要性も無い。

結局他二人は中立で最終的にはアムスには独立した役職「シャーマン」を与えることになった。今度からはこの会議にも出席してもらうことになる旨をあとで伝えに行く。

アムス自身は品行方正で人柄も良く幹部全員が好印象を持っていたので会議はすんなり終わった。テリーとベアは本来はもう少し疑い深い方だがアムスにとの関係は最初から悪くなかった。人としての相性が最初からいい。

後のことをアマンダに任せ自分の部屋に向かう。

総長室に入り胡桃色のデスクに腰を降ろした。ほっと一息ついて窓の外を眺める。エデンの領土も随分と変わった。

空港を拠点としていた俺とアマンダとテリーで楽園を結成。近くの町でグループ作り生き延びていたレオンと合流して現在の楽園が出来上がった。

我らがシャーマンが現れてからはエデンは空港を中心に10㎢ほどの領土から一気に39㎢まで拡大できた。

4倍だ。生活はサバイバルから完全に脱し始めている。

この空港の北の保護区も既に領有。次は北西にある山とその麓の町を手に入れたい。偵察は元々していて領有できそうではあったがあまりにも防衛範囲が広くなるために今までは躊躇していた地域に手が届くようになった。

アムスがいれば気にせずに制圧、維持できる。

私の統治者レベルも上がった。いいことづくめだが。アムスに嫉妬するやつも出てくるかもしれない。

このまま何事もなければいいが。

「今は素直に喜ぼう」