軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21

珍しく返事を書く前に婚約者から手紙がきたと思ったら、内容が『側室の条件』だった。

「どうしてそうなった……!?」

両手で顔を覆ってクロードは嘆く。嵐のように雨が降る窓の外を眺めて、キースが投げやりに答えた。

「誤解されたんじゃないですか、セレナお嬢さんのこと。ドートリシュ家だったら間諜とか紛れ込ませてそうだし。それは覚悟のうえでセレナお嬢さんにかまってるんでしょ」

「そうだったとしても、それでどうしてこうなる……!」

「皇妃の器でしょう。クロード様に女の一人や二人できても受け止めるという」

よかったですね、とキースが笑顔で言う。嬉しくない。

「……セドリックの気持ちが分かる」

「ええ? どうなんです、それ」

「ためしたくなるだろう。彼女がどうしたら折れるのか、泣くのか――自分のためにどこまで何を許してくれるのか」

羽根ペンを取る。とりあえず誤解があるなら、とかねばならない。

キースは心配になったのか、声を潜めた。

「ためしちゃダメですよ、捨てられますよ」

「わかっている。……こんなことを書いてくるのは、不安にさせているからだともな」

「え、そうなんです?」

「自分は皇妃にふさわしいという主張の裏返しだ」

役に立つから、どうか二度と踏み潰さないでくれ。無意識だろうが、そういう言動をアイリーンは見せる。セドリックが残した傷は深い。

かっと窓の外で雷が落ちる音がした。身をすくめたキースがため息を返す。

「我が主、ほどほどに。明日から学園祭なんですよ、学生達が可哀想でしょ」

「ああ、すまない。ついかっとなって。……いい加減、落ち着く」

「そうしてください。セレナお嬢さんを、今日も呼び出したんでしょう」

「ああ。――アーモンド」

名前を呼ぶと同時に、ぱちんと指を鳴らした。床に突然穴があき、中からひょっこりアーモンドが顔を出す。

「この手紙をアイリーンに届けてくれ」

「……魔王様、浮気、シテナイ?」

「なんだ、アイリーンが何か言ったのか?」

アーモンドが赤い目を上下左右に動かした。どう答えればいいか考えているらしい。

苦笑いしたクロードは、優しくアーモンドを諭す。

「僕の気持ちはお前達が知っているだろう。アイリーンには、僕を疑うなんていけない妻だと伝えておいてくれ」

「分カッタ! アイリーン、イケナイ妻!」

ぱくっとくちばしで手紙をくわえたアーモンドが、床にあいた穴に飛び込んで消える。もう一度クロードは指を鳴らし、その穴を閉じた。

「市街にいる魔物は全員森へ帰したな」

「ええ、ベルゼビュートさんだけはまた戻ってくる予定ですが」

「ベルはまだ耐えられる。だが他の魔物は市街に近づけさせるな。あの匂いは魔物をおかしくする。――僕の呼びかけに答えない魔物も、見つけ次第保護しろ」

御意とキースが頭を下げる。ため息を吐き、クロードは外を見た。いつの間にか嵐のような雨はやみ、晴れ間が見えている。――自分はひどい男だ。

用が済めば彼女は片付けてしまえばいい。

そう思うことに罪悪感のかけらもなく、晴天を呼びよせるのだから。