軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「レイチェル!」

「大丈夫です、背格好も似てますし、そう簡単にばれません。こんなこともあろうかと、ほらかつらも持ってきましたから!」

「そういう問題じゃないでしょう、逆よ! わたくしが残って引きつければいいの、あなたは逃げなきゃ危険だわ! わたくしには聖剣があるからなんとでも」

「アイリーン様は魔物達と合流しなきゃだめです。アイザックさん、お願いします」

そう言ってレイチェルはアイザックを優しい瞳で見た。

アイザックは逆に一切感情をみせない、冷たい瞳で言い切る。

「頼む」

嬉しそうにレイチェルは微笑んだ。

恋情につけ込むその言葉に、アイリーンはかっとなる。

「アイザック! あなた……!」

「あのさ、じゃあ俺、レイチェルの護衛やるよ。一人って変だろ」

オーギュストが手を上げた。続いてカイルも名乗りを上げる。

「もう少しいた方が目くらましになる。俺も行こう」

「じゃあ俺もセットじゃないと疑われるから行くよ。ゼームス、お前は?」

「……。魔物との意思疎通がとれる私もいた方がいいだろう。いっそどこかに潜伏して、皇都の情報を探ってもいい。クロード様のことも気になるしな。それでいいか?」

両腕を組んでゼームスがアイザックに判断をうながす。

アイザックはほんの少しだけうつむいて、頷いた。

「頼むわ。……合流地点は、わかってるよな」

「もちろんだ。ではこちらの方は私に任せてもらおう」

「ちょっと待ちなさい。レイチェル、あなたそれでいいの?」

「いいんです。私、アイザックさんよりアイリーン様が大事ですから」

ごん、と背後で誰かが何かにぶつかった音がした。

「だからまかせるって言ってください」

振り向いて誰に何が起こったのか確かめたりせず、アイリーンはレイチェルの目を見て、大きく息を吐き出し――そして言った。

「まかせるわ」

「はい」

「おいリュック、アイザック坊ちゃんが怪我したぞー診てやれよ。こんな時に若いなぁ」

「アイザック様、診せてください。あー切れてますね、クォーツ」

「……ものすごくしみるやつだが、まあ今回はこれだな」

「ちょっま、いっいてえ痛い痛いマジで、これ普通の塗り薬じゃなくね!?」

「レイチェルさん。これあげますね! ここを相手の体に当ててボタンをこう押すと、魔力がばちっと流れて相手が昏倒するので! 回数制限は五回なので気をつけてください! アイザックさんで試してもいいですよ死にはしないので!」

ドニに物騒な武器を渡されたレイチェルが苦笑している。

アイリーンはレイチェルを守るべく名乗りを上げた全員を見回した。

「オーギュスト、ゼームス、ウォルト、カイル。レイチェルとあなたたちの安全が最優先よ。わかっているわね」

全員が頷く。ウォルトが上空を見上げた。

「じゃあ早速行こうか。シュガー、案内頼むよ。ほら、好物のシュガークッキー……あ」

「バラバラ! オノレ、無能ナ人間共メ……!」

「シュガー、頼む。お前の力が必要なんだ」

カイルの真摯な願いに、シュガーはふんと顔をそらしたあと大きく羽ばたく。

「ツイテクルガヨイ! 我、突撃ス! 人間共、我ニ続ケ!」

「きゅいっ」

「駄目だ、リボン。私は仕事だ」

竜の上から飛び出そうとしたフェンリルの子どもを制して、ゼームスが魔物化する。そして問答無用でオーギュストの首根っこをつかみ、レイチェルを小脇に抱えて飛んだ。レイチェルが慌てて金髪のかつらをかぶる。

遠目では金髪の女性が魔物に抱えられているように見えた。魔王の護衛で有名な二人が先陣切ってやってきて、さらに魔物が金髪の女性を抱えて頭上を飛んでいけば、騎馬隊の目はそちらに向くだろう。

「……。アイリーン、行こう」

小さくなる背を見送ったアイリーンの肩を、クォーツがそっと叩く。アイリーンは頷き返し、先に乗ったリュック達に引っ張り上げられながら竜の背に乗った。

誰が何を命じるでもなく、竜が翼を動かす。

地上が離れていく。できれば姿を隠したかったが、間の悪いことに雲一つなく、朝日が昇り始めて周囲が明るくなってきていた。

「まっすぐ合流地点に向かうのは危険じゃ――っ」

ぐん、と重力が斜めにかかって振り落とされそうになった。突然大きく傾いだ竜の翼の横を電光に似た魔力が走って行く。

上だ。

「――エレファス! どうしてここが」

「俺が渡した魔石を壊したでしょう? 一応感知能力をつけておいて正解でした」

はるか上空でマントをなびかせながら、エレファスがアイリーン達を見下ろす。

「さあ、こちらに来て頂きましょうか、アイリーン様」

ぱりぱりと魔力が火花のように鳴って、そのまま複数の矢に変わった。

瞳を険しくしたアイリーンは両手を前に突き出し聖剣をそのまま防御壁に変化させる。魔をはじくその薄い壁は、皆の頭上に降る魔力の矢を弾いた。

「やったか!?」

「防いだだけよ、聖剣は人間にはきかな――ッ!」

下から首をつかまれ、足が宙に浮く。エレファスが聖剣の壁をすり抜けてきたのだ。

「全員、動かないでくださいね。墜落死したくなければ」

エレファスは右手でアイリーンの首をつかみ上げ、左手を自分が立っている竜の背にこれ見よがしに指し示す。リボンが唸るが、誰も動けない。

「アイリーン様。おとなしくついてきて頂ければ、他は見逃しますよ」

「……優しい、わね。魔物を、見逃していいの?」

「ええ。クロード様がこちらの手に落ちた以上、魔物はあとからどうにでもなる。だがあなたはそうはいかない」

視界が歪む。強制転移だ。

「さあ、俺と一緒に皇城へ戻りましょう。クロード様もお待ちです」

皆の叫びが遠くなる。

(このまま皇城に戻っても、なんの解決にもならない。せめて、何か糸口を――!!)

かっと胸の内側から光があふれ出る。初めてエレファスの顔が歪んだ。

「聖剣か! くそっ――!」

首を締め上げるエレファスの手をつかみ返す。

ぐにゃりと、世界が逆方向に回転した。