軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

80.頼まれなくても

外れアイテムのダンジョンは崩壊しちゃったのか。惜しいような、惜しくないような、複雑な気分だ。パンドラギフトを狙うには悪くないダンジョンだった気もするけど、その他のアイテムが微妙すぎて楽しくはないんだよね。

そんな気分が態度に出ているのか、ミルダスさんが不思議そうな顔で僕を見ている。

「いったい、どうしたんだね?」

「あ、いえ……パンドラギフトを稼ぐ場所としてはもったいなかったかなぁと……」

僕の返答にミルダスさんは何とも言い難い表情を浮かべた。例えるなら、なんだコイツという蔑みを無理矢理押しとどめたような表情だ。あ、いや、そのままかもしれない。

もしかして、マドルスさんからパンドラギフトのことを聞いてないのかな? 自分で言うのもなんだけど、僕の行動でおかしなところというとパンドラギフトを躊躇なく開封していくところだと思うんだけど。

一応、説明しておかないと変な人だと思われてしまうので、僕のスキルについて説明する。

「なんと、そうだったのか。そういうことなら、一つで良ければ用意できる。と言っても、そのダンジョンを探索した冒険者たちに押しつけられた物だがね」

やっぱり、外れアイテムのダンジョンではパンドラギフトが手に入りやすいみたいだ。そうなるとますます崩壊しちゃったのが惜しくなる。いや、一つだけでも手に入るんなら良かったと思わないと。後で買い取らせて貰おう。

そんなことを考えていると、執務室のドアがノックされた。やってきたのは案内役の職員さんとハルファとシロル。どうやら、急ぎで伝えないといけないことがあると無理を言って連れてきて貰ったみたい。

「一体どうしたの?」

「神様から連絡があったの! 地下水路のダンジョンが大変みたい!」

どうやら、また運命神様から神託があったようだ。それで、慌てて伝えにきたみたいだけど……。ちょうど地下水路のダンジョンについて話していたタイミングだ。なんか嫌な予感がするね。

ハルファの話によると、地下水路にできたダンジョンから邪気が漏れて地下水路全体を侵食しているみたい。普通はそんなこと起きないそうだけど、今回はガルナラーヴァを信奉する邪教徒が暗躍しているらしい。各地に作られているダンジョンも、邪教徒の仕業だって話だ。おそらく、本命の地下水路から目を反らすための囮だったのだろう。そのせいで、運命神様も気付くのが遅れてしまったみたいだ。

「このままじゃ、やばいんじゃないのか?」

「そうだな。どういう思惑かわからないが阻止しなければ碌なことにはならないだろう」

ゼフィルとローウェルが顔を合わせた。地下水路のダンジョン化を阻止するために動くつもりみたい。地下水路のダンジョン化は王都住人にとっては人ごとではないからね。それにここで王都に混乱が起きれば、料理コンテストどころではなくなる。スピラのためにも、どうにか問題を解決しないといけない。

問題はその手段だけど――

『トルト! この辺り、パンドラギフトがあるらしいぞ! ラムヤーダス様から届け物があるから、探して開けるんだ!』

さすが、運命神様!

すでに対策はとってあるみたいだ。

シロルの思念はミルダスさんにも届いていたみたいで、ギルド内に保管されていたパンドラギフトを持ってくるように指示が出された。状況がわからないだろうに、職員は疑問を口にすることもなく指示に従い、すぐにパンドラギフトが届けられた。

「事態解決につながるなら使ってくれ。しかし、一体なにが……?」

「わからないですけど、運命神様なら何か有用なアイテムを用意してくれているはずです」

ミルダスさんの許可を得て、さっそくパンドラギフトを開封する。箱は消え、出てきたのは二つ折りの紙切れと不思議な……なんだこれ? 円柱のような何かが現れた。

紙切れは前回と同じく運命神様からの手紙みたい。最初の一文は『ごめん。巫女を助けてあげて』だった。何についての謝罪なのかよくわかないけど、ハルファを助けることに異存はない。というか、ダンジョンのことは他人事ではないので、頼まれなくても関わるつもりだ。

私信みたいなのはその一文だけで、残りはアイテムの説明だった。どうやら『邪気転換炉』というアイテムらしい。設置した場所の邪気を吸い込み、無害化したマナへと転換する効果があるみたい。これをダンジョンの核がある深部に設置すれば、ダンジョンの生み出す邪気をすぐにマナへと変換することができる。邪気はダンジョンの魔物の源なので、即座にマナへと変換すれば邪気不足で魔物が発生しなくなるみたい。それだけに留まらず、ダンジョンそのものから邪気を抜くこともできるんだって。それによって、ダンジョンを自然な形で消滅させることができるみたい。

「それならば、最悪の事態は避けられそうだ。運命神様には感謝せねばな」

ミルダスさんは安心したように息を吐いた。でも、安心するにはまだ早い。ガルナラーヴァの邪教徒が絡んでるからね。簡単にはいかないだろう。

すぐにダンジョン攻略のための人員を集める。といっても、時間がないので僕たち『栄光の階』とゼフィルとエイナ、そして連絡がついたBランク冒険者のパーティーで先行することになった。僕たちは深層を優先的に目指す。ただ、核を壊すわけじゃないからダンジョンの魔物たちはそのままになる。それを後発部隊が倒すという形だ。

王都の危機なのにBランク冒険者パーティーが一組しかいない理由なんだけど、そもそも王都にいる上級冒険者の数が少ないんだよね。王都のギルドには情報が集まるけど、周辺に脅威となる魔物は少ない。だから、上級冒険者は王都で情報を集めて、その情報を元に強力な魔物がいる地域や上級冒険者向けの依頼がある地域に移動するんだって。だから王都に長く滞在することがあまりないんだ。

というわけで、今集められる戦力はこんなもの。まあ、ダンジョンという狭い空間で行動するわけだから、人数が多すぎると動きが制限されてしまう。そういう意味ではちょうどいい人数かもしれない。

さあ、急がないと!

邪教徒がまた何かやらかす前に急いで深部を制圧しよう!