軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54.酔いどれファイター

失敗したという自覚があるのか、受付のお兄さんはちょっと涙目だ。なんだか周囲の視線が集まっている気がする。

違いますよ!

僕が泣かせたんじゃないんですよ!

不要に情報を垂れ流したのはちょっと問題だと思うけど、冒険者ランクなんて冒険者票を見ればすぐにわかるんだし、すでに達成した依頼の内容が知られても僕としてはそこまで困らない。だから、涙目になるほどのことでもないと思うんだけど……。

お兄さんは顔を青くしているし、僕もどう対応していいかわからずちょっと気まずい。そんなとき、微妙な空気を吹き飛ばすような大きな声が響いた。

「へぇ、あいつらやるじゃねえか。まさか、Cランクとはな。月光鈴蘭とゴルドディラといえば、なかなかお目にかかれないレアものだし、ちゃんと実績も積んでそうだな」

声の主はゼフィルさんだ。ローウェルと話をしているにしては、声が大きい。もしかして、わざと聞かせてるのかな?

「採取だけで実績を積んだわけじゃなさそうだぞ。キグニルではダンジョン探索をしていたらしいからな。しばらく行動をともにしたが、戦いの方もランク相応の実力だった」

そして、今度はローウェルの声。やけに説明的だし、やっぱり、周囲の冒険者たちに聞こえるようにわざと大きな声で話しているみたいだ。

これは牽制……かな?

僕たちみたいな子供がCランクだと嫉まれたりしそうだもんね。もしくは、不正に昇格したと勘ぐられたりするかもしれない。しかも、そんな子供が珍しい植物を納品してお金も持っている。性根の悪い冒険者たちに絡まれそうな条件が揃っている状態だ。

だけど、ローウェルが僕たちの実力をランク相応だと保証し、ゼフィルさんもそれに対して納得を示した。ガロンドで活動する二人が僕たちを認めることで、 質(たち) の悪い冒険者たちに絡まれないように牽制してくれているんだと思う。

そんなことを理解しているのか、していないのか。ハルファは褒められてニッコリと微笑んでいるし、シロルはぶんぶんと尻尾を大きく振っている。二人ともご機嫌だね。

どういうわけか受付のお兄さんもほっとした様子だ。もしかしたら、お兄さんも僕たちがトラブルに巻き込まれることを心配していたのかな。だとしたら、余計な心配を掛けてしまったかもしれない。

あれ?

いやいや、もとはといえばお兄さんが失言したことが原因だった。僕たちは何も悪くない。

とにかく、依頼達成と言うことで金貨6枚の報酬を得た。あとは――

「ゴルドディラって、複数納品することって出来ますか?」

「え? ええ。貴重な薬草類は常設で依頼が出てますから、受付は可能ですが……。もしかして、まだお持ちなんですか!?」

お兄さんはかなり驚いている。思った以上に、貴重なものみたいだ。ちらりとローウェルに視線を向けると、その目が自重しておけと主張していた。やっぱり、全部放出するのはまずいみたい。

「えっと、それじゃあ、10株納品で」

「ええぇぇ!?」

納品数を告げた瞬間、受付のお兄さんがとんでもない大声で絶叫した。

……そんなに驚かなくても。

そう思ったんだけど、ローウェルを見たら頭を抱えていた。10株でもやり過ぎだったみたい。それはちょっと困ったな。あと90株弱あるんだけど、これはどうしたらいいんだろう。

「くははっ! トルト、お前面白い奴だなっ! まさか、レア素材を抱え込みすぎて困ってる奴なんて初めて見たぞ」

ゼフィルのご機嫌な声が酒場に響く。ここは、いわゆる冒険者の酒場だ。主にCランク前後の冒険者たちがよく利用している場所。冒険者ギルドで納品依頼を済ませた後、ゼフィルに誘われてくることになったんだ。ゼフィルもCランク冒険者で、よくここを利用しているんだって。ちなみに、ゼフィルも敬語は不要というので、言葉は崩させて貰った。

僕たちとローウェル、そしてゼフィルでテーブルを囲んでいる。スピラを放っておいていいのかとローウェルに聞いたら、家にはスピラの面倒を見てくれる人がいるみたいだ。それはそうか。いつもスピラを連れていくわけにはいかないもんね。

さて、ここは酒場。とはいえ、僕たち子供組はお酒を飲んでいないし、ローウェルもあまり飲まないタイプらしく、始めに少し飲んだ程度だ。ただ一人、ゼフィルだけがガンガン飲んでいる。

「おい、ゼフィル。その話はもう四度目だぞ」

良い感じにできあがったゼフィルはさっきから同じ話を繰り返している。ローウェルの指摘通り、ゴルドディラの話はすでに四度目だ。

『なあ、ゼフィルはどうしたんだ? 顔も赤いしおかしいぞ。病気か?』

「あれはお酒のせいだよ。お酒を飲んだら、あんな風になっちゃうんだって」

『そ、そうなのか! だから、ハルファもトルトもお酒は飲まないんだな。興味はあるけど、僕も飲まないようにするぞ!』

ハルファとシロルがこそこそと話をしている。どうやらゼフィルが反面教師になってくれているようだ。ただ、シロルの怯えようからすると、一時的な影響だってことがわかってない気がするね。まあ、申し訳ないけど、このまま誤解しておいてもらおうかな。

それにしても、シロルってお酒のことをよく知らないのかな。よく考えれば、食いしん坊なのに食べ物についてもよく知らないんだよね。ダンジョンや魔物のことについては、色々と知識があるのに不思議。

さて、ゼフィルはべろんべろんに酔っ払ってしまっているけど、大丈夫なんだろうか。実はゼフィルにゴブリン討伐の依頼を一緒に受けないかと誘われているんだ。メンバーは僕たちとローウェル、そしてゼフィルのパーティー。一応、受けるつもりでいるけど、ゼフィルがこの状態だからどうなることやら。

そもそも、ゼフィルはパーティーメンバーにも相談してないんじゃないかな。その上、お酒を飲み出してから出た話だから、明日ちゃんと覚えているかも怪しい。

僕が考えていることがわかったのか、ローウェルはため息をついて言った。

「明日出発ということはないな。また改めて話をした方がいいだろう」

だよね!