軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

295.チキンバーガー

「すまない。今、何と言ったんだ?」

レイが眉間を指で押さえながら言った。

あれ、わかりづらかったかな? そんなに複雑なことを言ったつもりはないんだけど。

僕らがキグニルの救援に来たのが、お昼のこと。それから、レイたちは残務処理、僕らはちょっとした実験をして過ごした。そして、夜、再び合流した僕らは、ダンジョン近くの陣幕に設置したマジックハウスでお互いの近況を話し合う……つもりだった。でも、ドルガさんがその前に実験結果について報告しろって言うから、今はそれが終わったところだ。

「ええと、ね。クリーンに抗菌作用を付与する実験をしたんだけど、思った以上に粘銀種には有効だったみたい」

実験は大成功。狙い通り、抗菌作用を付与した状態で銀の異形に触れると浄化させることができた。直接見たわけじゃないけど、純粋な浄化効果はハニワナイト以上じゃないかな。もっとも、クリーンで付与した抗菌作用は永続するものじゃないから、定期的なかけ直しが必要だけどね。

思った以上の成果が得られたので、調子に乗って実験を継続したところ……5階層までの銀の異形を殲滅してしまったってわけ。討伐には、たぶん2時間もかかってない。というのも、空気ゴーレムと抗菌作用付与の相性が良すぎたんだ。

透明で気配の薄い空気ゴーレムは、敵に気づかれることなく近づくことができる。おまけに体の密度を低くして、薄く広く伸びることも可能だ。それにも限界があるんだけど、今回は後から空気を補充できる方式で作ってある。ダンジョン外からどんどん空気を継ぎ足すことによって、広範囲に体を引き延ばし、銀の異形を駆逐していったってわけ。

ちなみに、迷宮の様子は空気ゴーレムがリアルタイムで報告してくれた。彼自身は喋れないけど、プチゴーレムズが翻訳してくれるから意思疎通に問題はない。広域殲滅だけじゃなくて、偵察までこなせるとても便利なゴーレム君なのです。

まあ、空気ゴーレムは直接的な戦闘力がないので、普通の魔物には弱いんだけどね。

「――というわけで、ダンジョンの低階層にいた粘銀種は駆逐できたよ」

さっきよりも丁寧に説明したから、今度こそわかってもらえるはず……なのに、レイの表情は冴えない。いや、彼だけじゃなくて、ミルとサリィもだ。

「あれ……伝わらなかった?」

「いや、ちゃんと意味は伝わっている……と思う」

「そうね。ただ、スケールとかスピード感とかが異常すぎて、すぐには理解できないというか……」

「少し目を離した隙に逆侵攻の橋頭堡ができちゃってるんだもの。私も見たかったなぁ」

伝わってはいるみたい。ただ、驚いている……のかな? どうにも反応が鈍い。どうやら、僕が想定していたよりも強い衝撃を受けているみたいだ。そうえいば、ドルガさんも実験の最中はこんな感じだったね。今は、レイたちを見てニヤニヤ笑ってるけど。

『まあ、すぐに慣れるぞ。トルトはいつもびっくりするようなことをするからな。そうだ! ビックリと言えばアレだな! トルト、レイたちにも食べさせるぞ!』

シロルが騒ぎ出す。アレって言うのは、ロシアンたこ焼きの事だね。本当に、シロルはアレが好きだ。

というわけで、それからは食事タイムになった。たこ焼きだけじゃなくて、カレーやハンバーガーも出したよ。カレーはともかくハンバーガーはキグニルでも有名になっているみたいで、レイたちも食べたことがあるんだって。でも、これはどうかな?

「じゃじゃーん! チキンバーガーです!」

「チキンバーガー? 前に食べたのとは中に挟んでるものが違うな?」

『なんだと! それは僕も食べたことがないぞ!』

「新作だからね!」

ふふふ。このところ浄化の魔道具ばかり作ってたけど、それだけじゃつまらないからね。みんなには内緒で新作メニューを考えていたんだ。時間がないから、ちょこちょこっとできるアレンジを中心に考えた。で、簡単に実現できそうだったのが、このチキンバーガーだ。

ハンバーガーのパティをチキンの竜田揚げに変えるだけ。竜田揚げも、作るのは難しくない。下味をつけたあと片栗粉をまぶして揚げるだけだ。下味は醤油でつけて、揚げた後に甘辛だれをかけた。なかなか美味しく仕上がってると思うけど……

「うわぁ、おいしいよ、これ!」

レイ、ミル、サリィにも好評だったけど、一番喜んだのはハルファだった。ハルファとは結構長い付き合いだけど、まだまだ知らないことがあるね。

いや、長い付き合いって言っても、まだ一年も経ってないのか。いろいろあったから、そんな気がしないや。

「な、なんだ?」

「え、人形!?」

突然、レイとミルが大きな声を上げた。何かと思えば、僕のポケットからいつの間にかプチゴーレムズが抜け出していたみたい。新作バーガーと聞いてじっとしてられなかったのかな。

アレンたちはそれぞれの方向からチキンバーガーにかぶりついている。今は手乗りサイズのボディだから、サイズ比的にとんでもない巨大バーガーを食べていることになるけど、少しも怯んだ様子もない。流石は食いしん坊たちだ。

サリィがそんな彼らをじっと観察している。

「もしかして、この子たちがさっき言っていたゴーレム? 食事もするんだ」

「うん。ごめん、紹介してなかったね。挨拶は……また後にした方がいいかな」

今は食べるのに忙しいみたいだし。まあ、銀の異形の下っ端たちはかなり片付いたし、時間は充分にあるよね。急ぐ必要はないか。

食事会は夜中まで続いた。食事を楽しんでもらえたし、レイたちとローウェル&スピラもかなり打ち解けたと思う。楽しい食事会になって良かった。

さあ、気力も充実したことだし……気合いを入れて銀の異形をやっつけないとね!