軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

265.効率よく卵を集めるには

この街のダンジョンはとても賑やかだ。何と言っても、普通の冒険者だけじゃなくて、農家みたいな食料生産者もダンジョンに潜るからね。だから、普通のダンジョンと様子も違う。特に第一階層は街の延長みたいなものだ。そのうち屋台とか立ちそうな気がする。

家族でダンジョン中央に向かう農家の人たちを見送りながら、僕らは素材集めの相談を始めた。

『それで、何を集めるんだ? 何を作るんだ?』

「そうだね。まずは足りない材料を確保したいかな」

ワクワクと僕を見上げるシロルを撫でながら答える。このダンジョンには色々な食材が採れるんだ。教団対策にお店を出していた関係で、収納リングに蓄えていた食材もかなり放出してしまった。できれば補充しておきたい。

とは言ったものの、僕はこの第一階層について詳しくないんだよね。パンドラギフトを確保するために専ら最下層に繰り返し挑戦していたから。

「アレンたちは、どこで何が採れるか、知ってる?」

「任せてください!」

僕の問いに、アレンがニコリと頷く。どうやら自信があるみたいだね。

プチゴーレムズには一時期、ダンジョンの出口で探索者たちにクリーンをかける作業をしてもらっていた。そのときに、色々と話を聞いたみたいだ。

「まずは、何から確保します?」

「そうだね……卵にしようかな」

欲しいものは色々あるけど、まずはハルファたちも欲しがっていた卵にしよう。お菓子作りに卵は欠かせないし、他にも色んな料理に使えるからね。

それに大規模な畜産業をやっている地域じゃないと大量確保は難しい。ダンジョンでとれるなら本当に助かる。

「卵、いいね!」

「私たちも欲しい!」

案の定、ハルファとスピラも喜んでいる。

「卵ですか。ええと……」

「確か、あっちだよ。ね、シャラ?」

「うん。そう」

アレンは咄嗟に場所が思い浮かばなかったようだけど、ミリィとシャラが教えてくれた。

彼女たちが示したのは探索者があまり向かわない方向だ。一階層の魔物は全体的に弱いけど、それでも場所によって強さが異なる。基本的に中央付近には弱い種類の魔物が多くて、端に行くほど強い魔物が出るみたい。だから、農家探索者たちはそっちには向かわないんだって。

『卵、卵、おいしいお菓子が食べたいぞ♪』

「なぁにができるかな~♪」

シロルとピノがうたう奇妙な歌を聴きながら、目的の場所へと向かう。そこはちょっとした森のようになっていた。

「あ、たぶん、あれだよ!」

ミリィが指さしたのは見たことのない木だ。高さは3mくらい。葉っぱが生い茂っているので立派に見えるね。食べられるかはわからないけど、幾つもの白い実をつけている。

「……あれ? あれは木だよね?」

おかしいな。僕らが探しているのは卵だったはず。木は関係ないよね。

「もしかして、鳥が巣でも作ってるの?」

「そうじゃない。あれはエッグトレント。倒すと卵をドロップする。投げてくる卵を受け止めてもよし」

首をゆっくりと横に振りながら、シャラが淡々とした口調で告げた。

本当に、あの木から卵が採れるみたい。ってことは、あの白い実が卵ってことかな。それって、本当に卵って呼んで良いの? 植物から卵が採れるって言われても違和感しかないけど。前世ではエッグプラントっていう植物もあったけど、あれはナスだし。

まあ、確保してから考えればいいか。重要なのは食材として使えるかどうかだよね。

「トレントってことは魔物なんだ。強さはどんなものなのかな?」

「倒すのは簡単だけど、卵を大量に確保するのは難しい」

僕の疑問にシャラが答えてくれる。情報を集めてくれていたみたいだ。

彼女の話によると、エッグトレントを倒しても得られるのは卵数個。大量に確保するなら、投げてくる卵をキャッチするのが良いらしい。とはいえ、卵なので壊れやすい。素材を確保するという点では旨味が少なく、冒険者たちからも人気がないようだ。

もったいないなぁ。効率よく確保できれば、街にも卵が出回ると思うんだけど。

「布きれを使って、うまく衝撃を吸収できないかな?」

「できなくはないと思いますが、やはり効率が。ここのダンジョンなら、もっと良い稼ぎ場があるので」

アレンが首を振る。

それはそうか。中心部から外れているのもちょっとマイナス要素だ。収納リングがないと運搬にも手間がかかるもんね。

「でも、トルトならたくさん集められるよね!」

「そうだよね!」

ハルファとスピラが期待の目を向けてくる。

まあ、確かに。自分たちの分を確保するくらいならどうとでもなる……かな?

「じゃあ、回収用のゴーレムを作ろうか」

普通のゴーレムに飛んでくる卵をキャッチさせるのは難しい。アレンジが必要だね。

ベースにするのは、体を特別に柔らかくしたマッドゴーレム。ぶつかる瞬間に包み込むようにして衝撃を分散させれば卵も割れないはず。あとは、体内に呑み込んで、下部から吐き出すようにしようかな。コロコロ転がると面倒だから、ついでにパック詰めもしてもらおう。

完成したゴーレムは妖怪の“ぬりかべ”のようなのっぺりとした姿になった。被弾面積を増やすため、横幅は広めだ。手足はなく、バランスを取るために下部はずっしりとしている。ゲル状で、動く度に体がぷるんと波打つのが特徴的だ。

「いけ! ゲルゴーレム!」

びちゃっと音を立てて頷くと、ゲルゴーレムがエッグトレントへと向かった。足がないので這って移動する形だ。僕らはその背後からついていく。

ある程度近づいたところで、ひゅんと何かが飛んでくる音がした。ゲルゴーレムに視界を塞がれているのでわからないけど、きっと卵だ。

「どうかな?」

「きっと大丈夫だよ!」

少し不安な僕よりも、何故かハルファが自信満々だ。でも、判断に間違いはなかったみたい。ゲルゴーレムの背面の土台部分には取りだし口がついてるんだけど、そこにパック詰めされた卵がポコンと排出されたんだ。見た限り、一つも割れてない。

よし!

これなら卵の自動採取ができそうだ!