軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

252.潜入工作員を捕まえた

マジックハウスでのんびりとしていたら、プチゴーレムズのミリィが駆け込んできた。

「ご主人、ご主人! いたよ、例の教団関係者! 浄化かけてたら、何か銀色のヤツがでろっと出た!」

「ジェスターさんが言ってたあの人かな。ちゃんと対処できた?」

「うん! 銀のヤツはピノが浄化した。関係者の方は生きてたから、アレンが捕まえたよ」

「ありがとう。それじゃすぐ行くよ」

「お願いね!」

必要なやりとりをしたら、ミリィは忙しなく出て行った。ちょっと落ち着きがないね。

「何を考えてるのか大体わかるが、トルトが変に落ち着きすぎてるだけだぞ」

「え?」

何も言っていないのに、ローウェルが心を読んだようにそんなことを言ってくる。顔に出てたかな?

「でも、潜入先で呑気にカレー食べてるような人だよ」

顔をぐにぐに揉みほぐしながら言い訳する。

いや、最初は少しだけ警戒したんだよ。ゴーレムによるリレー形式の伝達システムで、怪しげな人物が街の外壁付近に現れたとは聞いてたからね。でも、よくよく聞いてみると工作員にしては迂闊だし、呑気にカレーをおかわりまでしてる。だから、工作員だとしても、あんまり優秀じゃないのかなと思ったんだよね。

「油断させるための演技かもしれないだろ」

「そうかな?」

本当に優秀なら、正体がばれないようにした方がいいと思うけどなぁ。まあ、何にしろ上手く対処できたので問題なしだ。

教団関係者が潜入したら、間違いなくダンジョンは調査するはず。そう予想していたから、プチゴーレムズをダンジョンの入り口に配置してたんだ。表向きは、ダンジョンの汚れを落とすためのサービスとして。でも、本当は銀の異形対策なんだ。

彼らに渡していたのは、銀の力を浄化できる特殊な杖。大地神様の眷属であるゼウブロスから銀の異形を引き剥がした例のクリーンを僕が付与魔導具にしたヤツだ。しかも効果永続版。すっごいマナが必要になるから作るの大変だったけど。

もちろん、教団員全てが銀の異形に憑かれているわけではないと思う。でも、ダンジョンを作った教団員は体のあちこちが銀化していたって話だったから、調査にも幹部級の人が来ると予想してたんだよね。下っ端なんて捕まえても意味が無いし、狙い通り銀の異形に憑かれた教団員が確保できて良かったよ。

『何をのんびりしておる。さっさと行くぞ』

飲みかけのお茶を飲んでから……と思っていたら、ガルナに急かされちゃった。仕方ない、飲みながら向かおう。

一応、何が起こるかわからないってことで、フルメンバーでダンジョンの入り口に向かった。

「あ、ご主人! コイツです」

フロアに足を踏み入れると、すぐにアレンが声をかけてきた。彼が指さすのは、ぐるぐる巻きにされた男性。本当に容赦なく簀巻きにされてる。それでもどうにか逃れようとしているのか、体をうねうねと動かしているね。その動きが面白いのかピノがつんつん突いて、それを見たミリィとシャラがきゃっきゃっと笑っている。なんだかちょっと可哀想になってきた。

「思ったよりも元気だな」

「本当だね、お兄。あの聖獣は右の前足が溶けちゃったのに」

ローウェルとスピラは簀巻きを冷静に観察してる。そう言われれば確かにそうだ。

銀の異形は体を蝕む。聖獣であるゼウブロスでさえ、侵蝕を受けていたのに、この人は何で無事なんだろう。まあ、聞いてみたらわかるかな。

ピノたちにはどいてもらって、簀巻きの男を見下ろす。早速話を聞こうと思ったら、布が噛ませてあった。これじゃあ喋れないね。

「これは自決防止のため?」

「いや違います。べらべらうるさかったので噛ませました。たぶん、取っても平気です」

アレンに聞いたらそんな返事だったので、猿ぐつわを外す。すると、途端に男が喋り始めた。

「アンタたち、こんなことをしてもいいと思っているのか? 俺は人畜無害な一般冒険者だ。ギルドの許可だって貰っている。その俺を訳のわからない理由で拘束するとは常軌を逸した行いだ。こんな無体、ギルドが黙っちゃいないぞ? 今なら、許してやる。さっさと縄をほどけ」

わぁ、本当にうるさい。というか、まだ、そんな言い逃れができると思ってるのかな?

「ええと、エルド・カルディア教団の人ですよね?」

「……何の話だ?」

お、本当に訝しげな顔をしてる。なかなかの演技だね。でも、口数は減ったかな。

「さきほど、あなたの体から出た銀の異形は、教団幹部に共通する特徴ですよね。幹部はかなりの割合で侵蝕を受けているとジェスターさんから聞いてますよ。それが動かぬ証拠です」

「い、異形? 侵蝕? アンタは何を……」

さっきよりも戸惑いが大きいね。というか、本気で動揺してる気配がある。もしかして、銀の異形について知らされてないのかな? 幹部級なら知ってると思ったのに。

「ええと、ラウヤさん、でしたっけ?」

「な、なんで俺の名前を? ギルドでは別の名前で登録したのに!」

「あれ、そうなんですか? デンデさんにそう聞いたんですけど」

「気づかれてたのか!?」

驚いている風だけど、何故かニヤニヤと笑顔が浮かんでいる。

「そうか、気づかれていたのか。いやあ、参ったな……俺も有名になったものだ」

参ったな、なんて言ってるけど、顔は相変わらずニヤニヤだ。名が知られるってことはある意味では名誉なことなのかもしれないけど……潜入工作員がそれって大丈夫なのかな?