軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

239.食いしん坊の血が騒ぐ

ウォーキングダイコーンは散歩するくらいの速度で歩いてくる。ホッピングニンジーンはぴょんぴょん跳びはねているけど、こちらに向かう速度はダイコーンと変わらない。ゆっくりと余裕を持って待ち受けることができた。ちなみに、ノーフマッドマンは後方で、ダイコーンたちに何か喚き散らしている。

『全然、強そうじゃないぞ!』

『実際強くはない』

シロルたちのお喋りを聞きながら、近づいてきたダイコーンを一刺ししてみた。ナイフはあっさりと、ダイコーンの体を貫く。

「ダイコーン!!」

「うわっ、何?」

ナイフの一撃でダイコーンは絶命したみたいだけど、光となって消える直前に甲高い声で叫んだ。声量は……まあ、ほどほど。びっくりしたけど、ただそれだけだ。

『一応、マンドレイクの特殊個体じゃからな。死の間際にああして叫ぶのじゃ』

マンドレイクは死の直前に不気味な叫び声を上げる魔物なんだ。その叫びは死の魔法の一種らしくて、間近で聞くと死んでしまうこともあるとか。でも、マンドレイクは「マンドレイク!」とは叫ばないんだけどね。

「えい!」

「やっ!」

「「ニンジーン!!」」

すぐ近くで、ハルファとスピラがニンジーンを倒している。そっちもダイコーンと大差ない強さみたい。ぴょんぴょん飛び跳ねて攻撃を当てにくい分、ダイコーンよりはちょっと強いかも知れないけど、ゴブリンより強いって事はないと思う。まあ、第一階層だし、そんなもんだろうけど。

「一気に狩るとうるさいな……」

残りのダイコーンたちはローウェルが片付けた。ちょっと、顔をしかめているのは、複数体の断末魔を間近で聞いたからだね。密集しているところを剣で横薙ぎにすると一気に倒せるんだけど、その分、最後の絶叫がうるさいみたい。

「ドロップは……まあ、予想していたけど」

ダイコーンとニンジーンのドロップアイテムは大根と人参だった。どうも確定でドロップするみたい。代わりに魔石は見つからなかった。

『なんか見たことがあるぞ?』

「うん、そうだね」

トコトコと歩いてきたシロルが大根をてしてし叩きながら聞いてきた。名前は違うけど似たような野菜は普通に売られているからね。僕も料理に使ったことがある。それを覚えたんだろう。

「グェ、グエェェ!」

「あ、ノーフマッドマンか。忘れてた」

最後に残ったノーフマッドマンが地団駄を踏んで悔しがっている。アイツは人間と同じくらいの大きさで、鍬まで持っているから、ちょっとだけ手強そうだ。僕らにとっては敵じゃないだろうけど、はじめてダンジョンに潜る人たちにとっては強敵かもしれない。だけど――……

「あれ、帰って行ったよ?」

「本当だ」

ハルファの言ったとおり、ノーフマッドマンはしばらくの間何か喚き散らしたあと、すぐそばの建物に入っていった。何か起こるのかと思ってしばらく待ってみたけど――何もない。

解説を求めてガルナを見ると、彼女は軽く頷いて説明をはじめた。

『ノーフマッドマンはダンジョンの魔物にしては珍しく直接的な戦闘をしかけてこないタイプじゃ。もちろん、こちらから攻撃すれば自衛はするんじゃが』

つまり、ただ逃げただけってこと?

まあ、危険がないのなら放置でもいいけど、気になるのはドロップアイテムだ。

「倒したら何かドロップするの?」

『“豊かな土”を落とす。作物を育てるには良い土じゃが……まあ、食料が大量にドロップするこの階層であえて狙う意味があるかは……』

ああ、うん。農家の人だったら、欲しがるかもしれないけど、冒険者がわざわざ持ち帰るかといえば……微妙だね。ノーフマッドマンは放置でいいかな。

「ねえねえ、トルトはこれで何を作るの?」

『美味しいものだよな? 何だろうな!』

ダイコーンたちのドロップアイテムを拾っていると、ハルファがわくわくと目を輝かせて聞いてきた。シロルも料理を作る前提で話をしているみたい。

まあ、せっかくの食材なんだし、作るのは全然構わないんだけどね。

「さすがに、これだけじゃどうにもならないよ」

「うーん、そっか。それじゃ、他の食材も探さないとね!」

『僕は肉が食べたいぞ! 肉を探すんだ!』

というわけで、ダンジョン探索を続行。この階層は、どうも食料が大量に手に入る階層みたい。ガルナ曰く『豊穣の神でもあるアーシェラスカの影響が大きい』とのこと。神様の力のバランスをとるみたいな話はどうなったのかなと思ったけど……まあ食料が手に入るのはいいことだしね。

農村エリアでは、大根と人参の他にも、様々な農作物が手に入る。キュウリとなすびに四本足が生えたような魔物がいたし、麦なんかは普通に生えてた。嬉しいのは、それに混じって蕎麦や稲まであったことかな。ツルツルのお蕎麦やお米がみんなに受け入れられるかどうかはわからないけど、ちょっと楽しみが増えたね。

その他のエリアでは獣系の魔物が多い。獣系の魔物は素早い印象があるんだけど、ここのダンジョンではかなりのんびりとしている。ゲームだったら、ノンアクティブっていうのかな。一度攻撃するまで、こちらに対して敵対行動をとらないので、駆け出し冒険者にも倒しやすいはずだ。ドロップアイテムはもちろん、各種肉だった。

「これでシロルも満足だね」

『そうだな! あ、でも、タコも欲しいぞ! タコはいないのか?』

「大地神様の影響が強いみたいだから、海の生き物はいないんじゃない?」

『そうなのかぁ……』

いくら豊穣を司る側面があるとはいえ、海洋生物は対象外なんじゃないかな。大地神様なんだし。と、思ったんだけどね。

『タコか。ランドクラーケンならばおるが』

『おお、すごいぞ、このダンジョンは!』

ガルナがポツリと漏らした言葉にシロルは大盛り上がりだ。

もう、何でもありだね。