軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22.仲間になりたそうにこちらを見ている

ハルファを解放した功績もあって、パンドラギフトに関する説教は軽いお小言で済んだ。やったね!

さすがに僕の部屋で話をするのは窮屈だから、もう一度食堂に移動する。何度も申し訳ないけど、レイラさんもブラスさんも快く場所を貸してくれた。今度、何かお礼をしないと。

「えっと……みんな、助けてくれてありがとう」

突然泣き出しちゃったのが恥ずかしいみたいで、ハルファはさっきからもじもじとしている。

違法奴隷から解放されたんだ。感極まって泣き出してもおかしくはない。恥ずかしがることなんて、全然ないのにね。

それからハルファのことを色々と聞かせてもらった。

ハルファは僕と同い年の12歳。やっぱり翼人だったみたい。しかも、レイによると、白い翼を持つ翼人は種族内でも特別視されている氏族なんだとか。当のハルファはピンときてなかったから、ハルファがその氏族の一員かどうかはよくわからなかったけど。

違法奴隷になった経緯だけど、彼女は無法者による奴隷狩りの被害にあったみたいだ。ある日、氏族が生活する郷から出たときに、見知らぬ男達に拉致されてしまったらしい。それから、多くの奴隷たちと一緒に移動させられ、気がつけばキグニルにいたんだって。

「大変だったのね」

ミルがハルファを抱きしめて、よしよしと頭を撫でている。奴隷としての生活はやっぱり辛かったんだろう。話の途中から、ハルファはまたポロポロと涙が止まらなくなってしまった。けれど、ミルがああして慰めてくれているから、今ではずいぶんと落ち着いている。

どうにかして、家族のもとに帰してあげられたらいいけど。

「翼人が住むと言われている場所はいくつかあるが、正確な位置を知る者はほとんどいないはずだ。それほどまでに、翼人は他種族との交流を断っている」

「ハルファちゃんが場所を把握していればいいけど、話を聞く限りちょっと難しそうだよね……。結構、距離も移動したみたいだし」

レイ、そしてサリィの言葉通り、現状ではハルファをすぐに元の場所に帰してあげるのは難しい。もちろん、都市に出る翼人が皆無ではないから、そんな人たちと接触を持てればどうにかできるとは思う。

それでも当座の生活をどうするか、考えないといけない。レイの家で、何かお手伝いとして雇って貰えれば、どうにかなりそうだけど。

「ハルファはどうしたい?」

落ち着いたところで、ハルファに尋ねてみた。彼女はちょこんと首を傾げてから、僕を見て言った。

「お兄ちゃんはどうしてるの?」

「うへぇあ!?」

ビックリして変な声が出ちゃった。

お兄ちゃん? 僕のこと?

ハルファはというと、顔を真っ赤にして体の前で両手をワタワタと振っている。

「ち、違う! トルト! トルトはどうしてるの?」

ははぁ。これは、あれだね。学校の先生をお母さんって言っちゃうやつ。

あの恥ずかしさは体験した者にしかわからない! 僕にはわかってしまうので、ここはスルーしてあげよう。

「僕はレイたちとパーティーを組んで、冒険者をやってるよ。宿はこの山猫亭だね。ご飯も美味しいし、いい宿だよ」

「じゃあ、私も冒険者やる! 山猫亭に泊まる!」

ハルファは両の拳を握りしめてガッツポーズだ。迫力はまるでないけど、やる気は伝わってくる。

「山猫亭はともかく、冒険者? 危ない仕事だよ? 魔物と戦ったりもするんだ」

正式に冒険者になってから危ないと感じたことは特にないけど、それでも一歩間違えれば命を落としかねない仕事だ。自分のことは棚に上げて言うけど、人にオススメできる仕事ではない。

だけど、ハルファもこの程度では怯まないようだ。

「大丈夫だよ。私、弓矢でヒョイって狙うの得意だよ! それに私の歌は特別なんだって」

「弓矢はともかく、歌?」

「そうだよ。私の歌を聞くと、元気が出たり、力が湧いたりするんだって!」

そんなこと、あるんだろうか?

詳しそうなサリィに視線をやると、目をキラキラと輝かせていた。うん、興味津々って感じだね。

「それって、歌唱魔法だよね! 限られた種族だけが使えるって聞いてたけど、翼人も使えるんだね~」

「うーん。みんなが使えるわけじゃないよ。でも、私のお母さんも使えるよ」

「そうなんだ! それじゃあ――」

ウキウキで話し始めたサリィは置いといて。

どうやら、ハルファには歌唱魔法という力があるみたい。自己申告ながら、弓矢も使える、と。

ソロ向きじゃあないけど、確かに冒険者でもやっていけそうな気がする。少なくとも、ギルドで講習を受ける前の僕よりは、よほど冒険者に向いた能力を持っているね。

レイに視線をやると、彼はフッと笑って頷いた。

「俺はいいと思うぞ。ハルファの故郷を探すにしても、一所に留まっていては限界がある。都市間を移動するにあたって、本人が戦えるようになっておくことは悪いことじゃない」

確かにそうかも。冒険者にならなくても、危険はあるんだよね。だったら、冒険者として実力を身につけたほうが安全か。栄光の階はいいパーティーだしね。無理せずに経験を積むにはこの上ない環境だ。

「心配ならトルトが守ってあげればいいのよ! お兄ちゃん、でしょ?」

ミルがからかうように言ってくるけど、それは僕じゃなくハルファに効くやつだよ。

案の定、聞いていたらしいハルファが顔を赤くして「違うから」を連発している。でも、雰囲気は悪くない。

これが新しい『栄光の階』ってことかな。まあ、活動を始めるにはもうちょっと準備が必要だけど。まずは、ハルファの冒険者登録をしないとね。