軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

202.リズミカルに叩く!

「あれがゴーレムだ。盾にして襲いかかってくる虫だけを相手にしろ!」

向かってきた甲虫を斬りつけながらローウェルが指示を出す。味方であると理解した冒険者たちも、すぐに気持ちを切り替えて防戦態勢をとった。

シロルとゴーレムが盾になっているとはいえ、敵の数は膨大。隙間を抜けて襲いかかってくる虫たちへと対応しきれなければ、待っているのは死だ。冒険者たちもそのことはよく理解している。

運が良いのか悪いのか。クロムビートルたちはベルヘスに向かわずに僕らに殺到してくる。幸運なことに、こいつらはデカいものを優先して攻撃するみたい。ゴーレムが囮として上手く機能している。ただ、ゴーレムの次に大きなシロルへの攻撃優先度も高いみたいなので、そちらも何とかしたい。

囮を増やすためにも、マナ回復ポーションを 呷(あお) ってから、クリエイトゴーレムを発動。新たに二体のゴーレムを追加した。

ゴーレムは巨腕を振り回し、虫たちを叩きつぶそうとするけれど……なかなか攻撃が当たらないね。攻撃の勢いは凄いんだけど、虫たちはするりと避けてしまう。まあ、ゴーレムの役割は囮だ。仕事は十分に果たしている。

「ははは、あいかわらずぶっ飛んでるな、トルト! だが、おかげで戦いやすくなったぜ!」

ゼフィルが飛んで来た巨大カブトムシを大剣で打ち返しながら笑う。その隣ではマールがメイスでクワガタをボコボコにしている。小柄な体格から繰り出されているとは思えないほどメイスが轟音を響かせている。

「うーん、Bランクって凄いね。私たちが試験を受けても昇格できるの?」

「大丈夫だろう。トルトが少し普通じゃないだけだからな」

「いや、ローウェル。あなたもだけどね?」

また僕だけ普通じゃない扱いにしようとしたローウェルが、マールから突っ込まれている。まあ、瞬く間に甲虫三体をバラバラに切り捨てながら言った言葉に説得力は無いよね。

「女の子二人も大活躍しているし。普通というにはちょっと無理があるかな」

リックが苦笑いを浮かべながら言った。

ハルファとスピラはコンビを組んで虫たちを倒している。スピラがゴーレムに集る虫たちを氷の蔦で絡め取り凍てつかせ、それをハルファがショックボイスで粉砕するんだ。撃破数で言えば、二人がトップかもしれない。

まあ、そういうリックもあんまり人のことは言えない気がするけど。

彼は周囲の様子を把握して、飛んでいる虫たちの羽の付け根部分を的確に攻撃しているんだ。クロムビートルの殻を射貫くのが難しいとみて、飛行能力を削ることに専念しているんだろう。だからといって、簡単にやれる技ではないはずだ。

『ぬぅ……、あとはゴーレムに任せるぞ!』

ここで巨大化していたシロルが小さくなって戻ってきた。もうすでに代わりの囮役が三体いるしね。虫たちに集られて鬱陶しそうだったから、小さい方が攻撃に転じやすいと思ったのかもしれない。

ゴーレム三体が虫たちを引きつけてくれるおかげで、戦いは安定している。とはいえ、このまま殲滅とはいかなかった。

「ヘラクレスが突撃してくる! ゴーレムの術者を守れ!」

リーダーが警告を発する。

ゴーレムを攻撃をしても埒があかないと判断したのか、ヘラクレスが狙いを変えたんだ。幾らかの手下を引き連れて、こちらに突撃してくる。しかも、偶然なのか、それとも意図してなのかはわからないけど、狙いは僕みたい。もし、僕がゴーレムを作ったと知って襲ってきたのなら、他の虫たちと違って明確な知恵を持ってそうだね。

まあ、あのゴーレムたちは自律的に動いてるから、僕を襲ったところで止まったり消えたりしないんだけど。それに、向こうからやってきてくれるなら都合が良い。こういう強い個体が、他の虫たちに紛れて奇襲してくると厄介だからね。ここで確実に潰しておきたいところだ。

「おらぁぁ……よっ!」

高速で飛来してくるヘラクレスをゼフィルが横合いから大剣で殴る。ガンと大きな音を響いたものの、ヘラクレスに大きなダメージはなさそうだ。だけど、バランスを崩したことによって飛んでいられなくなったのか、一度着地して体勢を立て直そうとしている。

「はっ! ……さすがに斬れんか」

その隙を逃さずに斬撃を放ったのはローウェル。強烈な一撃は大角に鋭い傷跡を残したけれど、切断するには到らない。

とはいえ、ヘラクレスを怒らせるには十分だったみたい。奴の狙いが僕からローウェルに切り替わったようだ。再び飛び上がり、ローウェルに向けて突進しようとする動きを見せる。

だけど、それが実現することはなかった。

「捕まえた!」

突進攻撃直前、その進路上にスピラが氷の茨を生成。突っ込んできたヘラクレスの身体を這うように氷の結晶が侵食していく。

ヘラクレスがもがくたびに、氷の結晶がパキパキと音を立てて剥がれる。だけど、破壊と生成の速度が拮抗しているせいで、ヘラクレスに自由は訪れない。

こうなれば攻撃の絶好のチャンス。とはいえ、ヘラクレスの殻は他のクロムビートルに比べてもひときわ硬いみたいだから、生半可な攻撃じゃあ意味を成さないだろう。

「みんな離れて!」

というわけで、ゴーレムの出番だ。大振りの攻撃は飛び回る虫たちとは相性が悪いけど、拘束された状態なら関係ない。三体のゴーレムがヘラクレスを取り囲んで、リズムよく拳を叩き込んでいく。

「うわぁ……これは酷い」

「なんだか、哀れに見えてきたぜ」

一部の冒険者が何か言っているけど、気にしてはいられない。ローウェルの斬撃に耐えたことを思えば、かなり硬い相手だ。効率よくダメージを与えないと。

さすがのヘラクレスもこの攻撃には耐えられなかったようで、幾度か殴りつけたところで動かなくなった。

「よし、ヘラクレスは仕留めたな! あとは残りを狩るだけだ! ベルヘスの方向以外に逃げる奴はとりあえず放っておいていい! 最後まで気を抜くなよ」

状況を見たリーダーが指示を飛ばす。

ヘラクレスを倒したせいか、虫たちの行動が変化したみたい。さっきまでは一丸となって突撃してきたのに、一部に逃げ出すような個体が出てきたみたい。

ここまでくれば、それほど危険もない。ゴーレムは依然として囮としての役割を果たしているからね。

数が数だけに時間は掛かったものの、ギルドからの応援とも合流したことによって、どうにかクロムビートルの群れを撃退することができた。