軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

200.プチゴーレムズの成長

「うげぇ……すげえ数だな。どっから湧いて出たんだ?」

「さあね。東の岩が主な生息地だって話だけど」

ゼフィルとリックが視線を向けているのは、ベルヘスの東に位置する平野。地平線を埋め尽くすかのように無数の黒い存在が蠢いている。距離が離れているせいで、豆粒のようにしか見えないそれらは、全てクロムビートルという甲虫タイプの魔物らしい。ランクとしてはC~B。クロムビートルには亜種が幾つかいて、カブトムシタイプとクワガタタイプはBランクに相当する強さなんだって。

「よし、全パーティーいるな? 事前の説明の通り、ある程度は足並みを揃えるが基本的にはパーティー単位で動く。これだけの人数がいれば問題ないと思うが、万一撤退する場合には笛を鳴らす。一応、気をつけておいてくれ」

一人の冒険者が声を張り上げた。彼は、今回の作戦のリーダー役。ベルヘスを主な活動場所とするBランク冒険者だ。クロムビートルの討伐経験も豊富みたいだし、妥当な人選だと思う。

今回のクロムビートル掃討作戦に参加するのは僕やゼフィルのパーティーを含めて約二十組。全員がCランク以上の冒険者たちだ。魔物の数が多いので、Cランク以上の冒険者には要請という形で話がいったみたい。

強制ではなく要請なのは、ベルヘスの街に差し迫った危険がないからだね。クロムビートルは縄張りへの侵入者には激しく襲いかかってくるけど、その縄張りを出て積極的に人に襲いかかってくるわけじゃないから。とはいえ、街からそれほど離れていない場所に、大量発生した魔物を放置するわけにもいかないから、要請という形で討伐依頼が回ってきたわけだね。

参加する冒険者の士気はそれなりに高い。もうじき始まる闘技大会を楽しむためにも、面倒ごとはさっさと片付けておきたいってことらしいね。

各パーティーが十分に戦えるくらいの間隔をあけた上で進む。クロムビートルの姿がはっきりと視認できるようになったくらいで、気の早い虫たちがこちらに向かって飛んできた。

「全員、戦闘態勢に入れ! 油断するなよ!」

リーダーのかけ声が響く。言われるまでもなく、ほとんどの冒険者は身構えているけどね。もちろん、僕たちも準備はばっちりだ。数が多いということだったから、アレンたちも等身大ボディで行動している。

僕らの方にも四体の巨大な甲虫が迫っている。四体とも丸っこい虫だ。カブトムシやクワガタのような強敵はいないね。

「とりあえず、二体ずつ受け持ちでいいな?」

「わかったよ」

隣を歩いていたゼフィルからの提案で、半分ずつ受け持つことにした。

というわけで、飛んでくる甲虫の近い方から二体にファイアボールを投射する。ちょっと距離があったので、避けられてしまったけど、その二体の注意を引くことはできたみたい。残りの二体にはリックが矢を射かけている。上手い具合に、二体ずつにばらけさせることができた。

「わっ!」

ある程度近づいてきたところで、ハルファがショックボイスを放った。直撃したはずだけど、二体は多少バランスを崩した程度。飛翔速度は少し落ちたけど、変わらずこちらに飛んでくる。

「意外とタフだね」

「たしかにそうだな」

Cランクの魔物にしては防御が硬い。多少距離があったとはいえ、ショックボイスを受けて平然と向かってくるとはちょっとだけ意外だった。

「まあ、斬れはするだろう。一体は俺が相手をしよう」

ローウェルが宣言する。

たしかに、ローウェルなら一人でも十分に対処できるだろう。じゃあ、残り一体はどうしようかと考えたところで、アレンたちが声を上げた。

「ご主人! もう一体は我々が!」

「え? アレンたちが? 大丈夫なの?」

「任せてください!」

どうやら、残り一匹のクロムビートルの相手をするつもりみたい。しかも、武器を構えているところを見ると、僕の与えた付与魔道具抜きで。

アレンたちはゴーレムだけど……強いかと言われるとちょっと微妙だと思う。動きは埴輪のころに比べて格段に良くなっているけどね。アレンたちを鑑定してもステータスを見ることはできないから、強さが未知数なんだ。もし、ゴーレムにレベルやスキルなどの概念がないとなると、戦闘は厳しいかもしれない。

とはいえ、本人たちはやる気だ。クロムビートルもすぐ近くまで迫っているので問答をしている場合じゃない。

「わかったよ。じゃあお願い」

危なくなったら、手伝いに入るつもりで許可すると、アレンたちはにやりと笑って甲虫に向かっていった。

まずは、ローウェルと巨大カナブンの戦い。といっても、決着はすぐについた。飛びかかってくるカナブンとすれ違いながら、ローウェルが剣を振るう。ただ、それだけ。それだけで、カナブンの体は真っ二つに切り裂かれた。上下が切り分けられたカナブンは慣性に従い、しばらく進んだところで地面に撃墜。ぴくりとも動かなくなった。

スキルの【刃通し】を使ったみたい。アイングルナで手に入れたスキルの書で取得したスキルだ。スキルレベル上昇に従い、硬い物を斬りやすくなるという効果がある。習得して間もないので、スキルレベルはそれほどでもないはずだけど、元々の技量と相まってとんでもない威力を発揮したみたい。

アレンたちはというと、こちらも意外に善戦している。アレンが盾でテントウムシの突進をガードし、その横合いからミリィがハンマーを打ち付ける。それに遅れて、ピノも鈍器で追撃をする。

驚いたのが、シャラの攻撃だ。

「〈ファイアボール〉」

怯んだテントウムシに手のひらを向けて、呪文を詠唱。手の先から生じた炎弾が甲虫を焼いた。

威力はそれほどでもなかったみたいだけど、シャラがつかったのは紛れもなく火魔法。それを、僕の付与魔道具なしで使ったんだ。

いったい、いつの間に、そんなことができるようになったの!?

結局、アレンたちは危なげなく立ち回り、見事クロムビートルを倒した。僕の知らないうちに成長してたみたいだ。ゴーレムでも成長するんだねぇ。