軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

192.説得(?)完了

どこからともなく、わらわらと現れる男たち。あっという間に、僕らは数十人の男たちに囲まれた。ほとんどはチンピラと変わりない実力だと思うけど、中にはそれなりに強そうな人もいるね。とは言っても、勝てないとは思わないけど。

とりあえず、アレンたちをこっそりとポケットから出しておこう。彼等にはちょっとやってもらいたいことがある。

「そこのガキ、何してやがる!」

「いや、大したことじゃないよ。それで、これから一体どうしようっていうの?」

「へっ、決まってるだろ! お前ら全員奴隷に落としてやる! 揉み消すのが面倒だから穏便にことを運んでやってただけなんだぜ? やろうと思えばお前ら全員に首輪をつけるのなんざ、難しくはねえんだよ!」

男の手にはいつの間にか首輪が握られている。隷属の首輪だ。要は、借金奴隷ではなく、違法奴隷として扱う、という脅しなのだろう。まあ、そんなことで怯むような人間は双子も含めて一人もいないのだけど。

望んだ反応が得られなかったからか、男は少し不満そうだ。

「まあ、いい。お前ら、やっちまえ! なるべく殺さないようにな! 特に女は貢ぎ物だ。くれぐれも気をつけろよ!」

男の号令に従い、部下たちが包囲を狭めてくる。

さて、どうしようか。これだけ人数が多いと、殺さないように無力化するのはなかなか難しいんだよね。シュレッディングストームをできるだけ威力を弱めて発動させたら、良い感じに無力化できるかな。さすがに死なないよね……?

あんまり人と戦ったことがないので、その辺りの判断がつかず、躊躇してしまう。そうこうしているうちに、囲いの中から数人が前に出た。周囲のチンピラまがいに比べると、ちょっとだけ強そうな人達だ。

「兄貴、やっちゃってください!」

「まかせとけよぉ!」

なるほど。チンピラで囲んで逃げられないようにして、実力者でこちらをねじ伏せるという布陣みたいだ。そういうことなら、その実力者を返り討ちにしようか。それで戦意喪失するかもしれない。

「この俺様、疾風剣のレオが相手をしてやる。恨むなら自分の軽率さを恨むんだなぁ」

疾風剣の人が、にやついた顔で凄むという器用なことをしている。子供相手だと思っているのか完全に油断しているね。僕たちって、そこそこ良い装備をしているから、ちゃんと見れば実力も測れそうなものなんだけどなぁ。

まあ、いいや。向こうが油断しているからといって、こちらが容赦してあげる必要は無い。呟くような小声でシャドウリープを唱えると、疾風剣の人の後ろへと回り込んだ。

「なっ!? 何処へ行った!?」

僕を見失って慌てふためく男の膝を、後ろから蹴飛ばす。不意をつかれた男は、耐えきれずに体勢を崩した。その隙を見計らって、僕が唱えたのはクリエイトゴーレムだ。対象は床。魔法によって変形した床材は大きな腕となって男を押さえつけた。

「あ、兄貴ぃ!?」

「ど、どうなってやがる! はなしやがれ!」

「元気だなぁ。追加しとこう」

思った以上に激しく暴れる男を拘束しきれるか不安になったので、クリエイトゴーレムで床から生える腕を追加した。これなら、男が暴れても強引に押さえつけられるし、チンピラたちが助けに入ろうとしても、追い払える。

「喰らえ! 烈風閃!」

さて、次に行こうと思ったら向こうからやってきた。今度は烈風閃の人だ。ちなみに、この世界に疾風剣だとか烈風閃だとかの剣技のスキルは存在しないみたい。なので、この人達が勝手に言っているだけだ。もしかしたら、どこかの流派の技としては存在するのかもしれないけど、少なくとも宣言する必要はないはず。

烈風閃の人は素早いし、剣の技も鋭い。なかなかの腕前だとは思う。

でも、こっちはローウェルを見慣れているからね。彼と比べるとどうしても見劣りする。そんな攻撃を喰らうわけも無く、隙を突いて足をかけると、烈風閃の人はあっさりと転んだ。あとは疾風剣の人と同じくゴーレム腕に拘束されて終わりだ。

さらに、稲妻突きの人を相手にしながら、他のメンバーの様子を窺う。

スピラは氷蔦で近づく人を片っ端から拘束しているね。元々、拘束系の能力だけあって、スピラが一番活躍している。

シロルは巨大化したのはいいけど、角が天井にひっかかりそうで思うように動けなかったみたい。また、巨大化倍率が上がったんだよね。仕方なくほどほどのサイズに変化して暴れ回っている。

ハルファはちょっとやりづらそうだ。得意のショックボイスは破壊力がありすぎて人間相手には使えないからね。代わりに天井を破壊している。瓦礫で間接攻撃を狙ったのかな。その試み自体は上手くいってないけど、ハルファを狙っていた男たちは及び腰になっている。

戦況は圧倒的に有利。だけど、敵は意外と優秀だったみたい。

「よくもやってくれたな、お前ら! だが、これで形勢逆転だ!」

「アウラ! キーラ!」

「デムアド!」

「ごめん、デムアド……」

悪人面の男が双子の背後に回りこんでいたんだ。ただの指示役なのかと思ったけど、それだけではなかったみたいだね。

双子の首には既に隷属の首輪がつけられている。だからこそ男は勝ち誇っているんだろう。隷属の首輪は、解除の呪文がわからないと外せないからね。普通は。

「けへへ、こいつらの命が大事なら、大人しく……げはっ!?」

男は僕らに何か指示しようとしていたみたいだけど、残念ながら続きを言葉にすることはできなかった。まあ、僕のせいだけど。シャドウリープで背後に回って、蹴っ飛ばしたんだ。

「おい、お前! 隷属の首輪を知らねえのか! こいつはなぁ……って、何ぃ!?」

男がご丁寧に隷属の首輪について説明しようとしてくれたみたいだけど、特に必要は無い。だって、もうルーンブレイカーで外しちゃったからね。

「ええと……、まだやります?」

「……ま、参りました!」

おそらく切り札であった隷属の首輪が無効化されたことで、悪人面の男も諦めたみたい。どうにか死人を出さずに戦いを終えることができた。建物は……まあ、しょうがないよね。