軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

170.爪楊枝職人

グレイトバスターズの人たちを救出してから二週間が経過した。あの件、特に依頼とかではなくラーチェさんの頼み事として引き受けたので、本来ならギルドへの貢献ポイントは貯まらないはずなんだけど、何故か僕らはBランクに昇格した。

「アタシが書類仕事をこなす代わりに、お前たちの昇格をバッフィーに認めさせたニャ! 感謝してほしいニャ!」

ラーチェさんはそんなことを言っていたけど、たぶんそれは貯まっていた仕事を処理するように言われただけだと思う。

アイングルナの冒険者ギルドとしてもAランク冒険者を失うのは損失が大きい。だから、ラーチェさんの頼み事を引き受けた時にバッフィーさんが緊急の救助依頼として処理していたというのが実情らしい。本来ならBランクだと試験的なものが必要なんだけど、臨時とはいえギルドマスターのラーチェさんの前でBランクの魔物を討伐したので、それが実践試験扱いとなったみたいだ。

依頼前の時点でスピラはDランクだったけど、彼女もCを飛ばしてBランクだ。これに関しては本当にラーチェさんのごり押しがあったみたい。まあ精霊であるスピラは僕らの中でも戦闘力は高い。Bランクになっても無理なく活躍できると思ったので、ありがたく昇格を受け入れた。

さて、そんな僕らは最近アイングルナで活動していた。具体的に言えば、僕は爪楊枝に邪気浄化用のクリーンをエンチャントする日々だ。毎日毎日エンチャントしてる。もう何本の付与魔道具を作ったかわからないくらいだ。マナが続く限り……というかマナが切れそうになったらマナ回復ポーションを使ってでも作り続けている。

マジックハウスで一人延々と単純作業をするのは……飽きる! でも仕方がない。自分で提案したことだし、エンチャントスキルが使えるのは僕だけだからね。でもまさかここまで忙しくなるとは思わなかったんだ。

「トルト! また爪楊枝がなくなりそうだって!」

「ええ? もうなの!?」

マジックハウスにハルファが飛び込んできた。たしか、一時間前にも100本くらい持っていったはずなのに。

この付与魔道具はグルナ戦士団の人たちが運営する筋肉焼きの屋台で商品を提供するときに使うものだ。筋肉焼きなんて言っているけど、原型はたこ焼きなんだけどね。タコは仕入れが大変だから入れる具材は別のものにしているみたいだけど。

屋台で爪楊枝型の付与魔道具を使う目的はもちろん邪気の声に憑かれた人を浄化することだ。

魔道具は、魔法を使う意志と発動キーワードの発生をトリガーとして効果が発動するのが一般的。だけどこれは絶対条件ではなくて、魔法を使う意志だけで発動するように作ることもできる。ただ、発動条件を緩くしてしまうと意図せぬ発動が起きかねないので、普通はあえて少し条件を厳しくするんだ。

僕の特製爪楊枝は手に触れた状態で『熱い』と思えば発動するようになっている。発動対象は発動者自身だ。熱々のたこ焼き……筋肉焼きをこの爪楊枝で食べれば高確率で発動することだろう。条件は少し緩いけど、誤発動しても自分にクリーンがかかるだけだから危険は少ない。

「とりあえず、できてる分持って行くね?」

「ちょっと待って! さすがにこのペースで作り続けるのは限界だよ。作戦を変えよう。こっちの爪楊枝は初見の人だけに渡して、リピーターの人には普通の爪楊枝を使って」

「あ、うん。言いにくいんだけど……ちょっと前からそうしてるよ?」

「……え?」

当初の予定としては、6個入り筋肉焼き一つにつき特製爪楊枝を一つつける計画だった。アイングルナの人たちには馴染みのない食べ物だし、そこまで爆発的に売れるとは思わなかったからそれで十分だと判断したんだ。事実、最初の数日はそんな感じだった。それがいつの間にか段々とお客が増え始めて、今では新規のお客さんに配るだけでも特製爪楊枝が不足するような事態になっているみたいだ。

「戦士団の人たちがはりきっちゃって。最初はお店がひとつだったけど、今だと……10個くらいあるのかも?」

「そ、そんなに!?」

そりゃあ、爪楊枝も足りなくなるはずだ! 僕がマジックハウスに籠もって延々とエンチャントしている間にそんなことになっているとは!

「お店ごとに入れる具材が違うから、色々と食べるのが楽しみになってるみたい。シロルが面白がって色々と教えてたよ」

「シロルぅ……!」

シロルが喋れることは戦士団の人たちには知れ渡っている。まあ、マッソさんには口止めしてなかったしね。マッソさんが平然と受け入れているからか、戦士団の人たちもそんなものかと受けいれられているからそれはいい。

だけど、食いしん坊のシロルとノリがいい戦士団の組み合わせはちょっとまずいよ。このままどんどんと新商品を開発されたら僕のエンチャントが間に合わない。というかすでに間に合ってないけど。

「とりあえず、ここにある分は貰っていくね?」

そう言うと、ハルファは作ったばかりの特製爪楊枝を持ち去ってしまった。