軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

163.クリーンの付与魔道具、売ります

リルの件で邪気浄化クリーンの有用性が認識できたので、ちょっと頑張って特性クリーンの付与魔道具を幾つか作った。もしこの魔道具が出回れば、邪神の声に囚われている人たちを助けることができるんじゃないかなと思って。

無料で配布してもいいんだけど……そうするとスクロールを販売している魔術師ギルドの不興を買っちゃうかもしれない。なので、商業ギルドのケプナーさんに相談してみることにした。ガルナラーヴァの声についても知っているので話が通しやすいからね。

「これはいい商品だね! 是非、僕の方で扱わせて欲しい!」

リルの件で何度もお礼を言われたあと、魔道具を見せると、ケプナーさんはわかりやすく食いついてきた。うん、悪くない反応だね。

だけど、量産について話が進むと少しだけ顔が曇った。

「トルト君はこの魔道具を広めたいと思っているようだけど、それはちょっと難しいかな。まず、問題は値段。トルト君も懸念していたけど、安く販売すると魔術師ギルドの反発は大きいと思う。必然的に高級品にしないと駄目だろうね」

スクロールは魔法が習得できるというメリットがあるから、もしかしたら問題ないかなと思ったけど。やっぱり駄目みたい。

あれ、付与魔道具はどうなんだろう?

繰り返し使っていたら、魔法を覚えることができるとしたらかなりメリットが大きい。それこそ魔術師ギルドに睨まれちゃうよ。もし習得可能だとしても、その場合、僕のアレンジ魔法になるのか、それともベースとなった魔法なのか。もうちょっと検証しておいた方が良かったかも。今のところ、付与魔道具で新しく魔法を覚えたって話は聞いてないけど。まあ、

実際に習得者が出てから考えればいいか。

それはそれとして。

「これを高級品として売るんですか……?」

ちょっと戸惑いを覚える。だって、魔道具だなんて言ってるけど、見た目はただの木の棒だよ。レイレに渡した杖と同じサイズだから、爪楊枝サイズなんだよね。高級品になるなら、もうちょっと良い素材にエンチャントしたのに……。いやまあ、僕が作ったら結局、大差ないものができあがるだけかもしれないけど。

「あはは、大丈夫だよ。こちらの方で高級品に相応しい見た目に仕上げるからね」

僕の懸念はケプナーさんに軽く笑い飛ばされた。さすがにこのまま販売するわけないか。見た目よりも中身が大事とは言え、高いお金を払って買った商品が木の棒だとがっかりしちゃうもんね。その辺はプロであるケプナーさんに任せればいいか。

「おっと、話が逸れたね。他の問題は普及率……かな。クリーンは便利な魔法だし、スクロールも比較的安いから習得している人は結構いるんだよね。その人たちが高い魔道具をわざわざ買うことはない。通常のクリーンとの違いが目に見えないと売れ行きは伸びないだろうね」

クリーンは便利だから、冒険者パーティーでも一人は使い手がいる。いなくても、スクロールを使って習得を試みている場合がほとんどだ。高級な魔道具となると、冒険者で買う人はいないかもしれないなぁ。

邪神を浄化できるという売り文句を使えば売り上げは上がるかも知れないけど、信じて貰えるかどうかはわからないし、できれば邪神側に気付かれないようにこっそりやりたいんだよね。

うーん、魔道具で邪神をお掃除する計画……さっそく頓挫の兆しがあるね。名案だと思っただけにちょっぴりガッカリだ。

「トルト君の目的のためなら、魔道具の普及にこだわる必要はないんじゃないかな? クリーンを無料でかけてあげるサービスとか、そっちで考えてみたらいいよ」

落胆が顔に出ていたのか、ケプナーさんが励ますようにそう言った。

たしかに、諦めるのはまだ早いよね。魔道具を広めるんじゃなくて、無料で使える機会をつくる、か。ちょっと考えてみようかな。

ケプナーさんとの商談を終えたあと、みんなと合流して冒険者ギルドへと向かう。これといった目的があるわけじゃないけど、面白そうな依頼があれば受けてみようかと思って。特になければ第二十階層付近で魔物退治かな。ステータス向上薬の魔石はたくさんあって困らないからね。妖精界でゴルドディラをそれなりに確保できたし。

それにラーチェさんの様子が気になる。彼女の仲間がどうなったのか。それを確かめたい。

ギルドの入り口をくぐると、いきなりラーチェさんと目があった。この前のような上の空ではないみたい。とはいえ、いつも通りとも違う。何か変な気迫のようなものを感じる。

彼女はギラギラと光る目に僕を捉えるやいなや、カウンターをぴょいと飛び越えた。びっくりするほどの早さで近づいてくると、僕の肩を掴み、ぐわんぐわんと揺さぶる。

「やっぱり待っているだけニャんて 性(しょう) に合わないニャ! トルト、頼むニャ! アタシを三十階層に連れて行って欲しいニャ!」

「ちょ、ちょっと落ち着いてください! 話は聞きますから!」

「もう全部話したニャ!」

逸るラーチェさんをどうにか落ち着かせて事情を聞くと、やはり彼女の仲間『グレイトバスターズ』がまだ戻っていないらしい。ギルドで心配したまま待つ状況にしびれを切らしたラーチェさんがついにキレたという状況みたいだ。