軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14.暗殺者育成おじさん

その後は何事もなく、僕達はキグニルまで戻った。

「せっかく、パーティーを結成したんだ。打ち上げでもしたいところだが……」

街の門をくぐったところで、レイが気まずげにそう言った。チラリとミル、サリィに視線を向けている。それに対して、サリィは首を横に振り、ミルはため息を吐いた。

「だめだよ~。初日はまっすぐに帰るように言われてるよね?」

「そうそう。いきなり約束を破ったりしたら、今後の活動に障るわよ」

なんとなく三人の関係が見えてくるね。たぶん、ミルとサリィはレイの御目付役だ。レイの家の人は冒険者活動に反対か、そうでなくても心配しているんだろうね。それで、ミルとサリィにレイをフォローするように頼んでいるんだろう。【解錠】スキルもないのに宝箱を開けようとしていたことを考えると、その判断は正しかったんだと思う。

「わかってるよ。だから、打ち上げは後日だ。そう言おうとしてたんだよ!」

レイが不貞腐れた顔で言うので、少し笑ってしまった。遅れて、ミルとサリィも笑いだし、最後にはレイも含めて全員で笑った。こういうのって、なんかいいよね。

ともかく、本日はこれで解散。明日の合流は二の鐘がなる頃にギルド前ということになった。キグニルは朝から夜までに鐘が七回鳴る。僕の感覚だと朝の六時から夜の六時まで二時間ごとに鳴ってる感じ。だから、二の鐘は朝八時の鐘だね。あくまで、僕の感覚でいえば、だけど。

硝子の水差しは、人目につかないところでこっそりとレイに渡した。なるべく高値がつくといいけど。ゴブリンの魔石だけだと収入としては少し厳しい。

ちなみに、今日得た魔石とかは分配しないことになった。明日以降はパーティーで等分だ。

さて、これからどうしようか。山猫亭に戻ってもいいけど、夕食にはまだ早い。早めに帰ってもやることはないしね。

ちょっとギルドを覗いてみようかな。ギルド講習の情報も集めておきたい。罠探知みたいなスキルがあるかもしれないしね。

受付を見ると、今日はニーナさんがいないようだ。お休みかな? 代わりに【短剣】講習の講師をやっているドルガさんがいた。

「ドルガさん、こんにちは」

「トルトか。無事に帰ってきたみたいだな。初ダンジョンだったんだろう? どうだった?」

ドルガさんは何故かニヤニヤ笑っている。なんでだろう? 上手くいかなかったと予想して笑いものにするため? でも、ソロでも浅い階層ならやっていけると言ってくれたのはドルガさんだ。そんなことをするとは思えないけど。

「特に問題なかったです。ゴブリンを三体同時に相手にしたときはちょっと大変でしたけど」

「くくっ……! ゴブリン三体をソロで相手にして問題ないと言えるか。駆け出しにしては上等じゃないか」

ドルガさんはご機嫌だ。褒めてくれてるし、師匠ポジとして弟子の成長を喜んでるとか、そんな感じかな?

「まあ、それもドルガさんのおかげです。戦い方がどうにも暗殺者っぽくなるんですよね。どうにかなりませんか?」

「それは仕方がない。俺が教えられるのは暗殺者の戦い方だからな」

「えぇ……?」

なに、勝手に暗殺技術を仕込もうとしてるんだ、この人は! 僕が知りたいのは【短剣】スキルであって、暗殺技術じゃないんですけど! ていうか、ドルガさんって暗殺稼業の人なの? なんで、ギルドで講師なんかやってるんだよぅ。

「おい、なんか誤解してるだろう? あくまで加護の話だぞ? もし、本当に暗殺稼業だったとしても、ギルドでそんなことを話すわけ無いだろう?」

ああ、加護の話か。【解錠】スキルを習得するために盗賊の加護を授かるっていう話はレイたちに聞いたし、それと同じか。

冒険者が授かる加護として認知されているっていうなら、暗殺者スタイルの戦い方でも白い目でみられることはないかな。ちょっと安心。

「今日実感したと思うが、お前には一撃必殺を狙う暗殺技能に適性がある。暗殺技能には器用さも必要だがそれだけじゃ足りない。急所を的確に見極めて捉えるセンスが必要なのさ。お前には間違いなくそれがある!」

ドルガさんがなにやら熱く語っている。ゲーム的に解釈するなら、暗殺技能はクリティカル狙いの攻撃で要求ステータスは器用値。だけど、そこに加えてもセンスも必要だよってことだね。

で、そのセンスのことだけど。僕の場合、幸運値でごり押してるだけだと思う。だって、別に狙ってるやってるわけじゃないから。ゴブリンと戦っているときだって、首は狙ったけど一撃で仕留めようだなんて意識はなかったし。

逆に言えば、狙いもせずそうなってるわけだ。そう考えると、僕と暗殺技能とは相性がいいんだろうね。暗殺技能に限らず、幸運値に依存する技能は習得しても損はないかも。他には何があるかな。ゲーム的に考えると、付与確率とかで幸運が関わりそうな状態異常とかかな?

状態異常……毒……暗殺……!

駄目だ。暗殺者ルートから逃れることができない!

まあ、魔物相手ならば後ろ指差されることはなさそうだし、暗殺者スタイルでも問題無いけどね。

「さて、お前、特に用事がないんだよな? だったら、今から講習やるぞ」

「え、今日は予定入れてませんけど?」

「気にするな。ああ、講習費用は貰うぞ。特定の個人を優遇すると、ギルドがうるさいからなぁ」

あ、いや、僕の意見は?

まあ、強くなるためだから、講習を受けるのは別にいいんだけどね。でも、ちょっと面倒な人に目をつけられた気がするよ……。