軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

139.思わぬ反応

物探し棒で転移扉の鍵を探すとなると、問題がひとつ。どうやったって、僕の持つ鍵に反応しちゃうんだよね。ただ、これは収納リングに収めておけば問題がないはず。収納リングの中は別空間だって話だからね。つまり、鍵の所持者が同じように収納アイテムにしまっていたら探せないわけだけど。

まあ、上手くいかなくても困るわけじゃない。軽い気持ちで物探し棒を放り投げると――

「あっ!」

「反応があるね……」

「何を探そうとしたの?」

「例の鍵、なんだけど……」

ハルファに返す言葉はどうしても歯切れが悪くなってしまう。明らかに一方向を指し示す物探し棒。その先には、のんびりとひなたぼっこをしているお婆さんがいるんだ。

『なんだ? お婆さんが鍵を持ってるのか?』

「んー……いや、まさかね?」

物探し棒が示してくれるのは方向だけだから、目標物との中間にたまたまおばあさんがいただけの可能性は高い。

気を取り直して、少し離れた場所でもう一度物探し棒で鍵を探してみる。指し示した方向にお婆さんはいない。その結果にちょっとほっとした。でも、よく考えたら、安心もできない結果だ。

「あれ?」

「どうしたの、スピラちゃん?」

「さっきの方向と、今回の方向だと、線が交わらないよね?」

「……本当だ!」

スピラが気付いたように、二回の結果から鍵の在処が絞れないんだ。ぱっと思いつく可能性は二つかな。一つは鍵の所持者が動き回っている可能性。前回と今回では指し示された方向が全然違うから、その場合には鍵の所持者は結構な速さで動き回っていることになる。でも、無くはない、かな。もう一つの可能性は……ひとまずは保留にしておこう。

「別の場所でも試してみよう」

「そうだな」

ローウェルが渋い顔で頷いた。たぶん、僕も同じ表情をしてるね。

それから、場所を変えて何度か物探し棒を試してみた。どの場所でも、反応はあるんだけど、示される方向はてんでバラバラ。さすがに、一人の所持者が動き回っているにしては移動範囲が広すぎるし不規則すぎる。

「これはまずい状況だな」

「お兄、これってもしかして……」

「おそらく想像している通りだ。アイングルナには鍵の所持者が複数潜んでいる」

「やっぱり!?」

ローウェルとスピラが話しているのは、僕が考えていたもう一つの可能性だ。おそらく、アイングルナの住人の中に鍵の所持者が紛れ込んでいる。しかも、今回の結果から判断すると一人や二人じゃない。その全員がガルナラーヴァの声に洗脳されているかどうかはわからないけど、あんまり楽観できる状況じゃなさそうだ。

「さすがに、俺たちだけでは手に負えない。ひとまずギルドに報告しよう」

ローウェルの意見に異論は無い。ちょっとだけ考えていることはあるけど、まずは報告してからかな。

冒険者ギルドでは、死んだ魚のような目をしたラーチェさんが受付に座って仕事をしていた。その隣ではバッフィさんが大勢の冒険者たちを捌いている。もはや定番の配置だ。

「おお、トルトたちニャ! なんだか深刻そうな顔してるニャ~? 緊急事態かニャ?」

僕らを見つけた瞬間、ラーチェさんの顔がぱっと輝いた。明らかに声も弾んでいる。言葉と態度が激しいね。緊急事態にかこつけて書類仕事をさぼろういう気持ちが隠せてない。僕にもすぐわかるくらいだから、バッフィさんが気付かないはずがないよね。

「ラーチェさんはギルドでお仕事ですからね!」

「そんニャ~……」

即座に釘を刺されてがっくりと肩を落とすラーチェさん。定番のやり取りに、冒険者たちからも笑いが漏れる。和やかな雰囲気だ。だけど、僕らの表情から固さを取り去ることはできなかったみたい。僕らの様子を見たラーチェさんも顔を引き締めた。

「思った以上に深刻みたいだニャ~? とりあえず、場所を変えるニャ」

「あっ、私も行きます!」

「了解ニャ。執務室で話をするニャ」

ラーチェさんの案内でギルドマスターの執務室に移動する。少し遅れてバッフィさんもやってきたところで、ラーチェさんが口を開いた。

「で、どうしたのニャ?」

「実は――」

物探し棒で転移扉の鍵を探した結果について伝えると、ラーチェさんは眉根を寄せて渋面をつくり、バッフィさんの顔は真っ青になった。

「その……それは本当なんですか?」

「おそらく、としか。実際に鍵を持っているところをみたわけじゃないですし、問いただして刺激するのもまずいと思ったので……」

「その対応で問題ないニャ。一人二人ならともかく、大勢で暴れられたら対応できないニャ~……」

そうなんだよね。アイングルナに潜んでいるのが何人かわからないけど、相当数いるのは間違いない。何処の誰が洗脳されているか分からない状態で一斉蜂起されると困ったことになる。

「おかしな言動の人間が増えているという報告はないのか?」

「んー、あたしは知らないニャ。バッフィ、どうなのニャ?」

「いえ、そのような報告はありませんね」

「それはおかしいニャ。あの声を聞いて平静でいられるとは思えないニャ」

ローウェルからの指摘に、ラーチェさんが首を捻る。神の洗脳だ。無意識に抵抗できるとも思えない。ラーチェさんでさえ声を荒げて抗っていたくらいだからね。もしかしたら、抵抗する間もなく洗脳されてしまったのかもしれないけど。

「ともかく、何か手を打たないと駄目ニャ! とはいえ、どうすればいいんニャ~……?」

「それなんですけど、ちょっと試してみたいことがあるんです」

「さすがトルトだニャ~! 任せるニャ!」

ラーチェさんにも打開策が思い浮かばないみたい。それなら、僕の考えている方法を試してみようかなと思って切り出したんだけど……話す前に任されてしまった。

えっと……とりあえず、話していいのかな?