軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12.いい仕事してますねぇ

宝箱の中にデンと居座っていたのは、キラキラして綺麗な硝子細工の……なんだろう水差しかな? とにかく、そんなアイテムだった。僕は美術品の審美眼なんて持っていないけど、素人目にもわかる。これはいい仕事してますねぇ。

とはいえ、だ!

違うんだなぁ。僕が欲しかったのはワクワクなんだ!

ダンジョンの宝箱なんだから、もっと武器とか魔法の道具とか入ってて欲しかった。それらを分け合って少しずつ戦力アップ。そして、次のお宝を探す。ワクワクする冒険ってそういうもんじゃないの?

いや、わかってるんだけどね。僕のわがままだってことは。そもそも、多くの冒険者がダンジョンに潜るのはお金のため。そういう意味では、このお宝も当たりの部類には入るはずだ。実際に僕以外のメンバーは喜んでいるみたいだし。

「これ、銀装飾か。しかも、かなりいい細工だな。この細やかな装飾は並の職人だと真似できないんじゃないか」

「いや、それよりもこの硝子でしょ? こんな風に加工できる職人はいないわよ。青い色合いが緩やかに変化していくのがとても綺麗ね。ダンジョン産ならではじゃないの?」

「そうだね。それにこのタイプの美術品は見たことがないよ。たぶん一点ものだね」

うん。喜んではいるようだけど、思ってたのと違う。あれ、冒険者って美術品に関してそんなに詳しいのが普通なの? 僕の冒険者のイメージだと「なんだかわからないが、金になりそうだ。がはは」なんだけどな。それなのに、なんで彼らは目利きみたいに論評してるの?

レイたち、思ってた以上に裕福な出自みたいだね。大商人か、そうでなければ貴族出身じゃないかな。まあ、いいか。冒険者をやる上で出自なんてあんまり関係ないし、必要があれば教えてくれるでしょう。

「まあ、これは売り払って金に変える、でいいな? このままじゃ四等分するわけにもいかないからな」

しげしげと水差しらしきものを眺めたあと、レイがそう言った。四等分ということは、レイ、ミル、サリイに……、もしかして僕?

「え? 僕も貰えるの?」

「それはそうだろ。同じパーティーなんだから。報酬は等分。何か個人的に欲しいものがあれば、買い取りって方針だ」

宝箱を見つけたのは僕が加入する前だったし、解錠はパーティーに加入する交換条件のつもりだったから、今回の取り分は無くても文句はなかったけど。もちろん、貰えるんならもちろん貰っておくよ。さっきはワクワクしないと文句をつけたけど、お金は重要だからね。

出会って間もないけれど、レイが真っすぐな性格をしているのはよくわかる。レイだけじゃなくてミルもサリィもね。みんな真っすぐで、お互いに信頼していることが、やり取りを見ていてわかるんだ。

僕は彼らのパーティーに入れてもらえたけど、本当の仲間になるためには少しずつ信頼関係を構築していかないと駄目なんだと思う。

だから。

なるべく隠し事はしたくない、よね。

「そうだ。せっかくだから、鑑定してみようか」

僕は収納リングから鑑定ルーペを取り出した。一瞬前まで何もなかった僕の手のひらの上に、突然ルーペが現れるんだから不思議な現象だね。そして、こんな見せ方をすれば、当然、レイたちも収納リングの存在に気が付くはず。

一番に反応したのは、サリィだった。どちらかといえば物静かなイメージだったけど、今は少し興奮気味だ。一気にテンションが上がった気がする。

「えっ、それはどこから出てきたの? もしかして、収納系のアイテムを持ってるの?」

「うん」

そう言いながら収納リングに巻き付けたボロ布を外してみせた。

「うわー、凄い! これが収納リングなんだ。マジックバッグと違って触れて収納したいと考えるだけでいいんだよね。リングの許容量に収まる範囲だったら収納できるサイズに制限もないんでしょ? 便利だよね」

マジックバッグは収納リングと同系統のアイテムだ。基本的に鞄の口に入らないものは収納できないという制約があるので、あまり大きいものは入らない。そのため、収納リングと比べると利便性が少し落ちる。

それにしても、サリィの食いつきは予想外だった。今も僕の腕に縋りつくようにして、収納リングを観察している。レイやミルは苦笑いを浮かべているものの、驚いた様子はない。ということは、わりといつものことなのかな?

「ごめんね。サリィはマジックアイテムとか、そういうものへの興味が強いのよ。収納リングなんてなかなか見る機会がないからすっかり舞い上ってるみたいね」

「そんなに珍しいんだ、収納リングって」

「そうみたいだぞ。マジックバッグは少数とはいえ作れる魔道具師がいるが、収納リングは今のところ作れないらしい」

ダンジョン産しかないとなると、確実に手に入れる方法はない。利便性も高いとなると、マジックバッグと比べてもかなり貴重なアイテムということになるね。レイたち以外の前では引き続きバレないように使おう。

「そういえば、鑑定ルーペも持ってるんだよね? 見せて、見せて!」

「ああ、うん。これだよ」

「ありがとう! これで覗けば鑑定できるんだよね。凄いなぁ」

さっきから、サリィがウキウキではしゃいでる。よっぽど、魔道具が好きなんだね。気持ちはわかるけど。僕も前世では新しい家電を見るとワクワクするタイプだった! ……ちょっと違うかな?

微笑ましい気持ちで見守っていると、水差しをルーペで覗いていたサリィが「わぁ」と声を上げた。

「みんな、この水差しも魔道具みたいだよ!」

ふわぁ!?

ただの水差しじゃなかった!

「本当か! だったら価値が一段上がるな。もしかしたら、金貨10枚を超える可能性も……」

き、金貨10枚……!?

ふわぁ……!