軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

118.資金提供します

第十階層探索の予定が決まった。割と急な日程なのはラーチェさんの予定だ。なにせ、僕らが伝える前から書類仕事を前倒しして準備するくらいの念の入れようだからね。僕らとしては第十五階層までの探索を終えたばかりだから、もうちょっとのんびり過ごすつもりだったんだけど。まあ、探索中もマジックハウスのおかげで疲れが残ってない。街での用事も多くはないから、長期休暇だと暇を持て余してたかもね。

さてと、予定も決まったので他の用事も片付けていこう。次に向かうのはダンジョン研究所だ。目的はもちろん、パンドラギフトを確保できたかどうか確認するため。前回訪問してから、ゴールデンスライム狩りにベッドのオーダーメイド、それからダンジョン探索とそれなりの時間が経っている。だいたい一ヶ月弱だね。ダンジョン中の外れアイテムが集まる研究会なら、一個くらい手に入れてるんじゃないかな。

例のごとく無人の受付をスルーして、研究室に進む。研究員たちはあいかわらずで、ドアが開いたことに気がついていないようだ。

さて、誰に聞けばいいんだろう。ヴァルさんがいればいいんだけど。

周囲を見回したところ、目についたのは妙な格好をした人物。頭には変なかぶり物をしているし、ジャラジャラと統一性のない装飾品を身につけている。その人物は何かをばらばらと宙に放り投げた。あれは物探し棒かな。どうやら実験中みたいだ。

「おお、同士トルトではないですか!」

遠巻きに見ていたら、妙な格好の人物が不意に振り返った。その声には聞き覚えがある。

「あっ! もしかしてヴァルさんですか?」

「ん? ……ああ! そうですそうです! この格好ではわかりませんね」

はっはっはっと朗らかに笑うヴァルさん。怪鳥のマスクをしているので、ちょっと不気味だ。

「どうして、そんな格好を?」

「それはもちろん、幸運値を上げるためですよ」

怪しげな装備の数々は幸運を上げるアイテムだったみたい。もっとも際だって怪しいのは鳥面のマスクだけで、その他のアイテムは単体で見ればそこまでおかしくはないけどね。

「効果はありそうですか?」

「多少はありそうですな。装備品による底上げ、そしてポーションによる一時強化を重ねてようやくというところですが」

「そうですか」

ヴァルさんによると、100本近く投げたときに5本程度が探索対象の方角を指し示すようになったみたい。

まだちょっと発動率が悪いね。実験では探索対象がどこにあるかわかってるから、100本中5本が正解だと認識できる。けど、探索対象の方向がわからない状態で判断するには心許ないかな。まあ、二度三度と繰り返せば確度はあがるから使えなくもないと思う。ポーションまで使うから気軽には使えないけどね

それにしても、ここまでガチガチに補正を重ねても、発動率ってそんなもんなんだね。僕の発動率は50%くらいあるのに。僕の幸運値は平均的な人の10倍以上あるとはいえ、数値以上に発動率が高い気がするよね。たぶん、スキルとかの影響だと思うけど。まあ、そのあたりを聞かれると面倒なので、早々に本題に入った方がよさそうだ。

「ところで、パンドラギフトって手に入りましたか?」

「ええ、確保してありますとも! こちらです」

ヴァルさんがそのままの格好で案内してくれる。アイテムを管理する倉庫のような部屋があるみたい。倉庫を管理してる人が、ヴァルさんを見てぎょっとしていたけどお構いなしだ。

「今のところ確保できたのはこれだけですな」

「おお!」

ヴァルさんが指し示した先にあるのは待ち望んだパンドラギフトだ。しかも、二箱ある。

「二つとも貰っていいんですか?」

「ええ、もちろんです! 同士トルトには研究資金やアイデアの提供を受けていますからね。この程度のことでしたら構いませんとも。それに今ホットなのは、幸運値がアイテムに与える影響の研究ですから」

なるほど。それでパンドラギフト関連の研究は下火になっているのかな。パンドラギフトも幸運値は大いに関係があるとは思うけど……、実験するには危険が大きすぎるか。

是非とも、今後もその路線で研究を進めて、パンドラギフトを僕に譲って欲しい。そんな願いを込めて、追加の研究資金と僕が作った幸運を一時強化するポーションを提供しておいた。

用事を済ませたので、宿……の中に設置してあるマジックハウスに戻る。さて、これで必要な用事はすませたかな。

パンドラギフトはすぐに使いたいところだけど、ひとまず保留。ランクCの魔石が貯まってるから、ステータス向上薬を優先したいんだよね。パンドラギフトの開封とステータス向上薬の作成は、どちらも【運命神の微笑み】による即死回避が必要だから並行して処理できないんだ。

それに、もしかしたら運命神様からの干渉があるかもしれないからね。とはいえ、ハルファの方にも神託がないんだ。どうなってるんだろう? ゴールデンスライムの特殊個体とか、ガルナラーヴァ関連の厄介ごとだと思うんだけどなぁ。特に、ダンジョン研究会からの帰り際、気になる話を聞いたんだ。

ヴァルさんは言っていた。

同志ゴドフィーが戻ってきたかも知れない、と。