軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

110.弾ける歌声

その辺りにいた一般スライム相手に、さっそくシャドウリープのスクロールを使ってみた。木陰に入った状態で、スライムの影を意識しながらスクロールを使うと、一瞬視界が真っ黒になったあと、周囲の景色が微妙に変わっていることに気付く。でも、肝心のスライムが見当たらない。

「トルト、後ろだよ!」

「ん? ああ、本当だ」

ハルファの声に振り返ると、スライムがのそのそと僕に向かって体当たりしようとしているところだった。きっと、攻撃動作なんだと思う。たぶん。

「んー。魔法を使う前と身体の向きが変わらないってことかな?」

「おそらく、そうだろう。それと、俺から見ると、消えてから現れるまで一瞬間があったように見えたな」

スライムは放置したまま魔法について考えていると、ローウェルから思わぬ指摘を受けた。そういえば、ほんの短い間だけど、視界が暗転した瞬間があったね。もしかしたら、影を移動している時間なのかもしれないね。

ちなみに、魔法は例のごとく一発で覚えられた。これで使い放題だね。さらなるゴールデンスライムを探しながら、シャドウリープを試してみる。

うん、これはかなり有用な魔法だ!

目視できる範囲に限られるけど、距離に左右されずにほぼ一瞬で移動できるんだ。影限定のショートワープと言ってもいいかもしれない。マナの消費がそこそこ大きいから乱発はできないけどね。敵の影にワープすれば奇襲攻撃に使えそう。【影討ち】スキルと相性がいいんじゃないかな。

影から影という説明だったけど、基本的に足下には自分の影があるから、移動先の影さえ目視できれば条件は満たせるみたい。また、影の面積はある程度小さくても転移できるようだ。スライムサイズの影があれば問題なく魔法が発動した。さすがに小石程度のポツンとした影だと転移に失敗するけど、その程度の影を遠くから目視するのがそもそも難しいので実用上はほとんど問題がない。

「そろそろ二匹目も見つかりそうだね」

シャドウリープの検証をしているうちに、物探し棒の示す方向がずれ始めた。そろそろ、引き寄せられそうだね。

「今度は僕がシャドウリープを使ってみるから、ちょっとだけ攻撃は控えてね」

『おお、魔法か。了解だぞ』

ゴールデンスライム相手に、シャドウリープからの奇襲を試してみるつもりだ。みんなから承諾を貰ってから、引き寄せの札を使う。

うん、狙い通りゴールデンスライムを引き寄せることができた。すかさず、呪文を詠唱し、シャドウリープを発動。このとき、位置関係を把握しておくのが重要だ。転移後即座に身体をひねり標的を視界に捉えると、すかさず光刃の短剣を突き立てた。奇襲成功で【影討ち】スキルが発動したのがわかる――けど、浅い! メタルボディには貫通力が強化されたミスリル製の短剣でも深く突き刺すことはできないみたいだ。

だけど、まだ終わらないよ!

短剣に魔力を流し、刃先に光の刃を生成する。光刃の輝きに身体を貫かれ、ゴールデンスライムはビクンと痙攣した。魔法攻撃を弾くメタルボディも、内部で生成された魔法攻撃には対処できないみたいだ。非常に効果的みたいで、瞬きするくらいの時間でゴールデンスライムは消滅した。

「ふぅ。さすがに奇襲だけじゃダメージが足りないかぁ」

できれば光刃なしで一撃キルできればよかったんだけどね。さすがに考えが甘かったか。とはいえ、光刃込みなら一撃だから、さくっと倒せるようにはなったね。

「いや、見事だった。しかし、魔法を弾くのは表面だけなのか。それなら、俺も同じようなことができるかもしれんな」

それはたしかに。ローウェルの魔法剣はゴールデンスライムにぶつかった時点で無効化されるみたいだけど、切りつけたあとに発動すれば、同じように仕留めることができそうだ。

まあ、それはともかく。ドロップアイテムを見てみよう。今回手に入ったのは、魔石と本、そして、金塊だった。

金塊はだいたい拳くらいの大きさがある。純度も高いから、かなりの価値があるのは間違いない。これ、ゴールデンスライムのポップ率によっては、単位時間あたりの稼ぎが恐ろしいことになりそうだね。いや、前回ドロップしなかったから、ドロップ率は低めなのかも。

「魔石は普通だね」

スピラが天に翳した魔石は、薄らと透き通る青色だ。最初に手に入れた魔石とは違う。やっぱり、あれは特殊な魔石だったんだろうね。

「この本は?」

「ちょっと待ってね……。あ、これスキルの書だ!」

鑑定の結果、ハルファが手にした本はスキルの書とよばれる特殊なアイテムだとわかった。使うと本に応じたスキルを取得できるというレアアイテムだ。

「何のスキルなの?」

「うーん、ショックボイスだって。一応、歌唱魔法の分類みたいだね」

歌唱魔法は魔法なのにスクロールじゃないんだね。まあ、鎮めのうたも、ダンジョンの碑文から覚えていたから、ちょっと特殊なのかもしれない。

歌唱魔法ということで、ハルファに使って貰う。スキルの書なら誰が使っても取得できるんだけど、まあ一からスキルレベルを鍛えるよりは効率的だからね。

ショックボイスは歌唱魔法だけど、歌と言うよりは声を震わせて生み出す衝撃波みたいなものみたい。分類としては攻撃系の魔法ってことだね。試しにスライムに使って貰ったところ、スライムが一瞬で弾け飛んだ。それどころか、近くに転がっていた大きめの石も粉々だ。思ったよりも威力が大きい。

「速い上に見えない。これを避けるのは難しそうだな……」

「使うときは合図を決めとかないと、うっかり巻き込まれたら大変かもね……」

「わかったよ! 使うときはちゃんと言うね!」

僕とローウェルは予想外の破壊力に少し顔が青ざめているけど、ハルファはニコニコ顔だ。強力な攻撃手段が手に入って嬉しいみたいだね。彼女の基本スタイルは歌唱魔法と弓だから、今まではどうしても他メンバーの支援がメインだった。それが不満というわけじゃないだろうけど、性格的に物足りなく感じていたのかもしれないね。