軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

104.金ぴかスライム再戦……!

ラーチェさんに連れられて、僕たちは再び街の外の畑まで戻ってきた。周辺に変わった様子はない。逃げた金ぴかスライムによる被害もないみたいだ。ひょっとしたら手出しをしなければ害はないのかもしれないけど……さすがにそれは楽観がすぎるかな。ダンジョンの魔物って、基本的に好戦的だから。

「それで、どうやって例のスライムを探すんですか?」

「それはトルトにおまかせニャ! 前回呼び出した方法で試してみるニャ!」

「いや、でも『引き寄せの札』はランダムで魔物を引き寄せるアイテムですよ?」

「んー、とりあえずやってみるニャ。なんとなくそれで上手くいく気がするニャ」

そんな馬鹿な……と言いたいところだけど、何となく僕もどうにかできる気はしてるんだよね。ハルファもうんうんと頷いているし、他のメンバーもそれなりに勝算はあると考えていそうだ。ランダムとはいったい……。

というわけで、適当に『引き寄せの札』を使ってみることになった。さすがに一度目で引き寄せることはできなかったんだけど、それでも気にせずに場所を変えて試す。引き寄せる範囲に金ぴかスライムがいなかったら、どうにもならないからね。

そして、四度目の引き寄せ。

「来た!」

「ニャア、こいつは間違いなくゴールデンスライムだニャ! 何がでるかニャ~!」

前回と同じく、ピカリと輝きを放って奴は現れた。

ラーチェさんがニヤリと笑って戦闘態勢に入る。両手に鉤爪をつけた格闘家スタイルだ。冒険者としては珍しいと思う。

彼女の言葉を信じるならば、こいつはゴールデンスライムで間違いないみたいだ。魔物に厄介な特殊能力が付与される。しかも、そんな魔物が第一階層に出現する。望ましくない事態のはずなんだけど、ラーチェさんの興味はドロップアイテムに向いているみたいだ。いや、まあ、倒してしまえば脅威は消えると思っているのかもしれないけど。

ちなみに周囲で農作業をしていた人たちは、『引き寄せの札』を使う前に、一時的に移動して貰っている。臨時とはいえ、ラーチェさんがギルドマスターであることは知っているみたいで、協力を要請すると快く聞き入れてくれた。

「わふっ!」

前回と同じく先制攻撃を仕掛けたのはシロルだ。しかし、やはりシロルの攻撃はスライムに届かない。続くハルファの攻撃も同様だった。

「うニャ~。たしかに、変わった能力を持ってるみたいだニャ?」

「気をつけてください! 黒い矢を飛ばす攻撃もしてきますから!」

「そうだったニャ。お、さっそくかニャ?」

ラーチェさんに警戒を促したタイミングで金ぴかスライムの身体が膨張した。影矢を放つ前兆だ。間を置かずに生成された矢は真っ直ぐに僕らの方に向かってくる。僕らというか、これ僕の方だ!

「わかってたら大したスピードじゃないのニャ」

僕はわりと必死に避けてるんだけど、ラーチェさんからすればそんな評価みたいだ。それにして、なんでまた僕が狙われてるの? まあ、ハルファやスピラが狙われるよりはいいんだけどね。彼女たちだと避けられない可能性がある。

まあ、影矢対策はもう確立しているから特に問題はない。『引き寄せの札』でノーマルスライムを引き寄せて盾にすればいいんだ。

だけど、スライムを引き寄せたところで、ラーチェさんから待ったがかかった。

「ちょっと試してみたいことがあるニャ! スライムはもうちょっと待つニャ!」

そう言うと、ラーチェさんはしゃがみ込んで鉤爪を土に突き刺した。そして、戻ってくる影矢に向かって土を跳ね上げる。 土塊(つちくれ) が壁となり影矢の行く手を塞ぎ――だけど、影矢は障害など何もないかのようにすり抜けていった。

「うわぁ!」

タイミングを逸して、僕はスライムを抱えたまま転がるようにして影矢を避ける。ラーチェさんは物理的な障害で影矢が防げるかどうか確認したみたいだけど、土塊程度ではスピードを緩めることもできなかった。それどころか、物理的な壁をすり抜けてしまうのかもしれない。

「ニャ? 壁は透過するのかニャ? 思った以上に厄介だニャ! トルト、もういいニャ!」

「わかりました!」

今度こそ、影矢に向かってスライムを投げつける。スライムと影矢は相打つように消えていった。これでひと安心だ。

「あの矢は面倒だニャ~。さっさとスライムを始末した方が良さそうニャ」

非生物を透過しながら標的を追跡する矢はラーチェさんにとっても対処が難しいようだ。威力によってはダメージを許容して無視するという戦法も考えられるけど、影矢を受けたスライムがぐずぐずと崩れ落ちた様を見ると試してみるにはリスクが大きすぎる。やっぱり、『引き寄せ札』で囮をたくさん呼び出しておくのが一番簡単な対処策かな。

前回の反省もあって、影矢が放たれたあとも狙われたメンバー以外は攻撃の手を休めていない。そのおかげか、金ぴかスライムも逃げられずにいるみたいだ。相変わらず、障壁と素早い回避で有効打を与えられてはいないけどね。

とはいえ、Aランク冒険者が攻め手に加われば状況も変わる。どうやら、ラーチェさんの攻撃も障壁に阻まれることはないようだ。金ぴかスライムは鉤爪の一撃を躱すけれど、ラーチェさんの攻撃はそこで終わらない。待ち伏せていたかのように、左手の追撃が奴の逃げた先に迫る。

「ニャァ!」

ガキンと大きな音を立てながら、鉤爪が金ぴかボディを切り裂く。はっきりとした傷跡がボディに刻まれたけれど、傷の周囲が波打つように蠢きすぐに塞いでしまった。

「耐久性は普通のゴールデンスライムと変わらないニャ! ガンガン攻めればそのうち萎んで消滅するニャ!」

再生能力持ちなのかと思ったけれど、どうやらそういうわけじゃないみたいだ。そう言われてみれば、さきほどよりも金ぴかスライムの大きさが縮んでいるような気がする。

あとは確実にダメージを蓄積していけば勝ちは揺るがない。攻撃はローウェルとスピラ、そしてラーチェさんが担い、ハルファが歌唱魔法で支援する。僕は囮のスライムを用意して、影矢にぶつける係だ。シロルも近場からスライムを見つけ出しては僕の足下まで咥えて連れてきてくれる。

どういうわけか、スライムは執拗に僕を狙ってくる。それ以外に狙われるのはハルファとシロル。障壁で攻撃が防がれてしまう三人だ。どういうことなんだろう。僕を狙う分にはスライムをぶつけやすいから助かるんだけど。

金ぴかスライムはしぶとく抵抗を続けていたけど、それでも三人の猛攻には耐えられない。徐々にボディが削られていく。勝負を決めたのは、やっぱりラーチェさんの一撃だった。右手の鉤爪が黄金色のボディに深々と食い込んだところで、金ぴかスライムは黒い靄のようになり、溶けるように消えていった。

これで事態は解決したかな?

第一階層で特殊個体が出現する原因がわかってないから根本的な解決にはならないけど、そっちは時間をかけて調査でもしないとどうにもならないだろうし。

「ひとまずギルドに戻りま……、ラーチェさん?」

ラーチェさんに声をかけてギルドに戻ろうと思ったんだけど、そのラーチェさんの様子がおかしい。視線が定まらず、虚空を見つめているんだ。

「お前、何なのニャ? うるさいニャ!」

しかも、誰もいない方向に向かって怒鳴り始めた。

いったい、ラーチェさんに何が起きたの?