軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第15話 ひとまず休戦しよう

領主……じゃなくてディルクさんとの昼食のあと、妙に体が重いなあと思って眠った。

次に起きた時にはまだお日様が出ていてアレって思ったら、丸一日寝ていたとサリアさんに教えられてびっくりしたものだ。

「精霊の加護が薄い場で魔力を多く使ったせいかもしれないと領主様がおっしゃったのです。だから起こさずにおりましたが……もう少しでお医者様を呼ぶところでした」

確かに対ワイバーンでもいつもと同じように魔法を使っていた。精霊の助力が魔力の消費量に関わってくるから、いつも通りだと思っていても魔力が足りてなかったのだろう。

領主様って魔法や魔力に詳しいんだなあと思いつつ、ベッドに身を起こした私はのびをする。

すると洗顔の品を持ってきてくれたサリアさんが、硬い顔で立っている。

「どうかした?」

「私を聖女様付きのままにするよう願われたと聞きました。害そうとした取るに足らない身分の私を、なぜ?」

「でも処分は受けたんでしょ」

こくりと頷いたサリアさんは、それでも納得がいかない、と顔に書いてある。

まあ、明かして特に困る理由でもないからな。と私は答えることにした。

「サリアさんなら私に怯えないでしょ?」

「はい?」

理解ができないって顔になるサリアさんに私は王宮時代のことを思い出す。

戦から帰って王宮に留まると、メイドさんにお世話をして貰うことになる。

毎回良い人に当たれば良いんだけども、平民出身の聖女を良く思わない人も一定数いたのだ。

「王宮では表面上はちゃんと仕事してます、尊敬する聖女様を丁重に扱いますって態度をとっていても、心はそうじゃない人ばかりだったよ。支度の時にわざと痛く髪を梳かれたり、コルセットを必要以上に締められたり、疎い私でもわかるくらい絶対似合わないドレスを勧められたりもしたな」

「なんですかその使用人の風上にも置けない輩は! ロストークでは即刻首ですよ!」

素直に怒るサリアさんの健全な精神に私は新鮮な気持ちになった。

そんな風に言える人だから、嫌がらせが「ロストークの名物を教える」になったんだなあ。

「うんうん、でも下手に手を出すと、私が悪者にされる上に怖がられるんだよ。それはそれで居心地が悪いんだよね。領主様が釘を刺した以上、このロストークでもこれから怖がられるだろうね。でもサリアさんなら肝っ玉太いし大丈夫だろうって。それが理由」

その証拠に、次に私に無礼を働けば処罰は重くなるとわかっているだろうに、震えも怯えもなく仕事をしてくれている。

これはなかなかできることじゃないよ。

とはいえ、サリアさんが仕事をしたくないほど嫌いって言うのなら、考え直すけども。

私が様子を窺っていると、サリアさんは洗面用具を置くなり、その場に両膝を突いて頭を下げたのだ。

「このたびは私の思い込みで大変な無礼を働き、申し訳ございませんでした」

心からの思いが籠もった謝罪だった。

私が何も言えないでいると、サリアさんはすぐに顔をあげた。

「これからは私の目で確かめたく思います。ロストークは独立独歩と自主性を尊びますので」

王宮では、どころか他の家でも不遜だと即刻クビを言い渡されそうな物言いだ。

自分が認められない主なら従わないって言っているようなものなんだから。

でも、私はこれくらいわかりやすいほうが助かった。

「よろしくサリアさん。私はルベルって呼んで」

「私に敬称は不要ですが……かしこまりました。ではお召し物を改めましょう。ルベル様が眠られている間にいくつかご用意いたしましたが――」

「ロストークの服はある!?」

私が食い気味に問いかけると、サリアはなんとも言えない顔でため息を吐いた。

「……意地を張っていたのがばからしくなってきた……」

「サリア?」

「いえ、ございますよ。ご自身で着られますか?」

「着る!」

さっとだしてくれたのは、昨日着せてもらったのとはまた違うロストークのシャツとワンピースとズボンのセットだ。やった!

私は喜々として服を貰って着替えはじめる。サリアは手を出してこず、礼儀正しく後ろを向いてくれている。

うん、これも嬉しい。

「ルベル様は高貴な方のような対応は望まれないとお見受けします。しばらく確認をさせていただくのはご了解ください」

「うんわかった。……着替え終わったよ!」

私が返事をして、振り返ったサリアは据わった目をしていた。

えっ。

「とはいえ、まずは身の回りの品をそろえましょう。ルベル様は最低限の生活の品すらないのです。予算は領主様よりいただいておりますのでご心配なく!」

「えっはい!」

あまりの迫力に私はびしっと最敬礼で答えるしかなかった。

そんなこんなで服を一式そろえるのに丸一日かかった。すごく大変だった。

調度品まで好みの物に変えて良いって言われたけど、めんどくさ過ぎて今のままがいいとお断りしたくらいだ。

でも、魔獣退治や戦争で忙しかった時よりは、嫌じゃなかったのが不思議だった。