軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第98話 ロランVSロド

「何? 錬金術ギルドが同盟を主導しているだと?」

盗賊ギルド『白狼』のアジトで、ジャミルは部下からもたらされた報告に眉をひそめた。

「錬金術ギルドに冒険者を率いることなんてできんのかよ」

「一体どこのギルドだ? そんなバカなことやってんのは?」

「『精霊の工廠』というギルドらしいです」

「『精霊の工廠』? 聞かねー名だな」

「とはいえ、結構な数のギルドが集まってるらしいですよ。ギルドの数は10以上、冒険者は50名以上参加しているようです」

「ほお」

「それはちょっと放っておけないな」

「襲うか?」

「そうだな。とはいえ、俺は今、出られない」

ジャミルは自分の身につけている装備をかえりみた。

今、彼は剣も鎧も身につけていない。

彼の装備は今、『竜の熾火』に預けられている。

ユガンとの戦闘で損耗したためだ。

また、市場での『 炎を弾く鉱石(ファイアレスト) 』の不足も相まって修復には時間がかかると言われていた。

(どうしたものか)

「俺がいくぜ」

ロドが言った。

「俺の『竜笛』は無傷だ。外部から来た冒険者もいないようだし。あり合わせの部隊だけでも楽勝だろ」

「……そうだな。ここはお前に任せるか」

「よし。それじゃ、装備に余裕があるやつは付いて来い」

ロドは損耗の軽い者だけを連れてダンジョンの方に向かっていった。

ジャミルは難しい顔をしながら、出発するロドを見送った。

「どうしたよ。ジャミル。何か気になることでもあるのか?」

「いや……」

(『 炎を弾く鉱石(ファイアレスト) 』の不足したこのタイミングで同盟の発足……。たまたまか? それとも狙って……?)

「ふっ。まさかな。考えすぎか」

長らく外部の冒険者に依存することに慣れきったこの島の冒険者に、そんな果断な者がいるとは思えなかった。

ジャミルは考えるのをやめてソファに深く身を沈めるのであった。

隊伍を組んで火山を登っていく『精霊の工廠』同盟に、また『 火竜(ファフニール) 』が襲いかかってきた。

ジェフは素早くエリオとの位置を確認しながら、射撃ポジションを取る。

(とにかく、矢を当てて『 火竜(ファフニール) 』を引きつける)

ジェフの放った矢は見事『 火竜(ファフニール) 』の胴体に刺さった。

「ギィアアアアア」

『 火竜(ファフニール) 』は雄叫びをあげながら、急速に接近してきた。

「こっちだ。こっちに来い」

ジェフは身を翻して走り、『 火竜(ファフニール) 』を引き寄せる。

おかげでエリオは『 火竜(ファフニール) 』の死角に走り込むことができた。

(よし。いいぞ。ジェフ)

エリオは『 火竜(ファフニール) 』の懐に走り込んで、その頭部にスキル『盾突撃』を決める。

昏倒した『 火竜(ファフニール) 』にレオンとセシルが斬り込んで倒す。

『暁の盾』の連携はより深まりつつあった。

ジェフの『弓射撃』から囮になる動きと、エリオの『盾突撃』、レオンとセシルの追撃。

「エリオ。今の囮の動きどうだった?」

「バッチリだよ、ジェフ。すごく飛び込みやすかった」

「よし。次も同じやり方でいくぞ」

(ハンス達に比べて俺の『弓射撃』は後れを取ってるんだ。その分、 盾使い(エリオ) との連携を磨いて討伐数を稼いでいくぜ)

「いい感じじゃないか。ジェフ」

ロランが寄ってきて言った。

「ああ、お前の授けてくれた戦術のおかげで、『 火竜(ファフニール) 』の討伐3体目だ」

「この調子で頼むよ」

「おお、任せとけ」

ジェフはロランとの会話を短く終えると再びスキル『遠視』で索敵に入る。

(さあ、来るなら来いよ『 火竜(ファフニール) 』。いつでも相手になってやるぜ)

そこには以前、エリオの足を引っ張ったり、高価な鉱石に目移りしたりしていた頃の面影はない。

今の彼は自分のなすべき役割を全うしていた。

ロランはジェフのそんな姿を見て満足する。

(目標ができたらそれに向かってまっすぐ進む。熱いヤツだなジェフは)

ロランの要請を受け、『暁の盾』と『天馬の矢』以外の冒険者達もどのように貢献できるか自分達の頭で考え始めた。

『 火竜(ファフニール) 』の攻撃をしばらくの間、受け止めることができるのか、囮役として『 火竜(ファフニール) 』を引き寄せることができるのか、もしくは他のギルドに任せるしかないため後方支援や『 火竜(ファフニール) 』以外のモンスターの排除に努めるのか。

それぞれ自分達のスキルとステータスを考慮した上で考え、ロランに報告する。

「あと一人盾使いがいれば、『 火竜(ファフニール) 』の攻撃を持ち堪えられるんだが……」

「よし。それじゃあ、『鉱石の守人』と組んでくれ。あそこには優秀な盾使いが複数いる」

「こっちは 治癒師(ヒーラー) が足りない」

「わかった。それじゃあ『銀鷲同盟』から 治癒師(ヒーラー) を回そう」

「私達は防御力が低いので『 火竜(ファフニール) 』以外の敵に徹したいと思うのですが……」

「分かった。それじゃあ、同じく防御力の低い『山猫』と一緒に鬼族や狼族に当たる班として行動してくれ」

彼らの力を試す機会はすぐに訪れた。

『メタル・ライン』に到達した同盟の前に『 火竜(ファフニール) 』が三体と『 大鬼(オーク) 』、『 武装したゴブリン(ホブゴブリン) 』、『 爪の大きな狼(クロウウルフ) 』の混成部隊が襲いかかってきたのだ。

『暁の盾』と『天馬の矢』は何も言わなくとも、左右からくる『 火竜(ファフニール) 』に当たった。

ロランは彼ら以外の班を指揮する。

「囮班と防御班は『 火竜(ファフニール) 』を引き付けてくれ。それ以外は『 大鬼(オーク) 』と『 武装したゴブリン(ホブゴブリン) 』、『 爪の大きな狼(クロウウルフ) 』の攻撃に備えて展開!」

部隊は半歩遅れながらも動き出す。

囮班は『 火竜(ファフニール) 』に矢を当てることに手こずりながらもどうにか自分達に引き寄せることに成功する。

防御班はもたつきながらも『 火竜(ファフニール) 』の前に立って、盾を構えしばらく攻撃を耐え忍ぶ。

やがて、『暁の盾』と『天馬の矢』が『 火竜(ファフニール) 』を片付けて、加勢に駆けつける。

残った『 火竜(ファフニール) 』および鬼族・狼族は瞬く間に撃退された。

ウェインとパトはロランの采配を見て驚いていた。

(こいつ、何やってんだ? まさかダンジョンを探索しながら冒険者を育ててんのか?)

(それだけじゃない。育てながら……戦術も構築している)

ハンス達も『 火竜(ファフニール) 』を倒しながら、ロランの指揮ぶりに感心していた。

「へえ。あいつ、部隊の指揮もできるんだ。やるじゃない」

アリスが言った。

「まだぎこちないながらも、寄せ集めだった同盟が機能しつつあるわね。指揮官が有能なだけでこんなに戦いやすいなんて……」

クレアが言った。

「ふっ、ロランのやつ、また僕達に魔法をかけたようだね」

(錬金術ギルドの経営だけでなく、部隊の指揮までこなしてしまうとは。まったく。底知れない男だな)

ロランは指揮しながら彼らの働きぶりを確かめるのも忘れなかった。

使えるギルドと使えないギルドを選別していく。

「モニカ。鉱石の採掘場まではあとどのくらい?」

ロランが聞いた。

「はい。このペースでいけば、明日には一つ目の採掘場につくかと思われます」

モニカが『 鷹の目(ホークアイ) 』で確認しながら言った。

「よし。それじゃあ、今日はこの辺で野営するか。モニカ、君も休んでいいよ。お疲れさま」

「はい」

(やっぱりロランさんが指揮すると安心して探索できるなぁ。素敵)

モニカは休みながら改めてロランに熱い眼差しを送るのであった。

翌日、同盟は鉱石採掘場の目前までたどり着く。

「ロランさん、あの丘陵を越えればいよいよ採掘場にたどり着きます」

「よし。それじゃ入る順番だけど、まずは『精霊の工廠』のメンバーから。それと『暁の盾』、『天馬の矢』。そのあとは『鉱石の守人』、『銀鷲同盟』、『山猫』の順で入っていこう。そのほかのギルドは一番最後だ」

それを聞いて冒険者達は焦った。

明らかに貢献度の高いギルドから順番に採掘場に入っている。

指揮官は 殊(こと) の外冒険者達の働きぶりをしっかり見ている。

それも自分の命令に忠実な者を優先的に取り立てている。

彼らは同盟に貢献しなければ、あるいはロランに仕事ぶりをアピールしなければとより強く考えるのであった。

一番最初に採掘場に辿り着いた『暁の盾』と『天馬の矢』は、『 炎を弾く鉱石(ファイアレスト) 』を最優先に採取していく。

一方で自分達の武器を強化する素材も探し求める。

ジェフは自分の武器を軽くする素材を探してエリオと一緒に採掘場を歩き回った。

「軽い素材?」

「ああ、今回の探索で分かったが、エリオの『盾突撃』を活かすには、俺が囮役をきっちりこなさなければならないからな」

ジェフが言った。

「俺に必要なのは威力よりも、攻撃を当てたあと素早く逃げる敏捷性だ。そうなるとやっぱ、軽い素材だと思う」

「なるほど。確かに」

「で、なんかいい素材はないかと思ってさ」

「うーん。どうだろう。アイナの『 外装強化(コーティング) 』でどうにかなるかな? とりあえずロランに相談してみないと分からないな」

二人はとりあえず新しい方針を見つけたことでよしとし、その場は『 炎を弾く鉱石(ファイアレスト) 』の採取に専念するのであった。

「銀製の 短剣(ダガー) を作りたいんだけれどどうにかならないかしら」

セシルがアイナに相談した。

「うーん。今、『精霊の工廠』には銀細工師が不足していますからね。ただ、分かりました。ロランさんに希望だけは伝えておきます」

ニコラは 竪琴(ハープ) の弦になりそうな素材を見つけた。

「パト。この素材はどうかな?」

「どれ。貸してみてください」

パトはスキル『 調律(チューニング) 』を使いながら、軽く石を叩いてみる。

キーンと小気味好い音が鳴った。

(これは……)

「ニコラさん。これ、いい素材かもしれません。『竜音』の強化に繋がるかも。持って帰って検討してみましょう」

別の場所ではウィルが魔石を発見していた。

「ラナ。見てごらん」

「これは……」

「『大地の魔石』だ。君の『地殻魔法』の効力をより高めてくれるかもしれない」

「わー。しかも大粒じゃありませんか。流石です。お兄様」

「ウェイン。どう思う?」

「あー? 何がだよ?」

ウェインはめんどくさそうに返事した。

「何って。魔石を削るのは君の仕事なんだろう?この魔石で新しく装備を作ろうと思うんだけど、君はどう思うのかって聞いているんだ」

「あー。いいんじゃねそれで」

ウィルは顔をしかめる。

(なんだこいつ? 横柄だな)

ロランが最後尾のギルドを引き連れて、採掘場に入るとアイナが鉱石採取状況と冒険者の希望について報告に来た。

「なるほど銀製の 短剣(ダガー) か」

「はい。どうにかならないかと言われまして」

(そろそろ支部にも銀細工師が必要か)

「わかった。とりあえず銀の備蓄だけしておこう。余裕があれば銀を採取しておいて」

「はい」

こうして、ロラン達は次の採掘場も同じ方法で探索していった。

貢献度の高いギルドから順番に採掘場への入場を許可する。

『 炎を弾く鉱石(ファイアレスト) 』を最優先に採取し、余裕があれば武器の強化素材を採取する。

そうして、ロランは着々と部隊を掌握していった。

『メタル・ライン』に残されたほとんど全ての『 炎を弾く鉱石(ファイアレスト) 』は回収されていった。

あとはこれを街まで無事に持ち帰れるかどうかである。

帰り道にはロド率いる『白狼』が待ち構えていた。

ロラン達が採掘場を後にしたところを狙って、すかさず『白狼』が仕掛けてきた。

「!! 右側から『 火竜(ファフニール) 』三体来ます。左からは 弓使い(アーチャー) の部隊が。『白狼』です!」

モニカが叫んだ。

(やはり、潜んでいたか)

「ニコラ。『竜音』だ。盾持ちの 戦士(ウォーリアー) は左側に展開! 戦線を敷け」

ロランの指揮によって、同盟は滑らかに配置を変え、『白狼』の攻撃に対応する。

ニコラは右側に移動して、『竜音』を奏でて『 火竜(ファフニール) 』の動きを止める。

盾持ちは左側に移動して、盾を構え飛んで来る矢の雨を受け止めた。

(流石はロランさん。流れるような用兵と指揮。でも、問題はここからですよ)

モニカは唇をぎゅっと噛み締めながら戦いを見守る。

敵の矢が途切れたところで、ロランは再び指示を出した。

「 弓使い(アーチャー) は威嚇射撃。その後白兵戦部隊は突撃だ!」

弓使い(アーチャー) は高所にいる敵に向かって矢を放った。

高所にいる敵は目に見えて浮き足立つ。

突撃する絶好のチャンスだった。

しかし、盾持ちや剣士は動かない。

「どうした? なぜ、突撃しない?」

ロランが叱咤したが、やはり彼らは動かない。

(なるほどな。これがモニカの言っていたことか。鉱石を手に入れたからにはこれ以上消耗したくない。ゆえに戦闘に消極的になるというわけか)

こちらが攻めてこないことを見て取った盗賊達は落ち着きを取り戻して、再び矢を浴びせてくる。

同盟の盾隊はジリジリと後退していった。

(マズイな。このままじゃジワジワ削られて、いずれは崩壊する)

ロランは右側の『 火竜(ファフニール) 』の方をかえりみた。

『 火竜(ファフニール) 』は先程からどっち付かずの態度をとって、同じところをグルグル回っている。

こちらを攻撃してくるとも、してこないとも取れない。

盗賊の『竜音』とニコラの『竜音』、どちらに従うか迷っているようだった。

とはいえ、このまま何もせずにいればいずれジリ貧に陥るだろう。

(どうする?)

戸惑いを覚えているのは『白狼』の方でも同じだった。

(『 火竜(ファフニール) 』が敵を攻撃しない? なんで?)

ロドが『竜笛』をいくら吹けども『 火竜(ファフニール) 』は敵を見失ったように空をグルグルと回っている。

(まさか! 敵にも俺と同じように『竜音』を使う人間が?)

「チッ」

(参ったな。計算外だぜ。『 火竜(ファフニール) 』が使えないとは。こうなったら正攻法で敵を破るしかないか)

ロドは『竜音』を吹くのを継続しつつも、剣士部隊に突撃準備をさせるのであった。

ニコラは『 火竜(ファフニール) 』が退くよう懸命に 竪琴(ハープ) で『竜音』を奏でていたが、やはり『 火竜(ファフニール) 』達はどっち付かずの態度を示し続けた。

(くっ。やはり完全に言うことを聞いてはくれませんか。通常の竜と違い、他の『竜音』に支配された竜を操るのは一筋縄ではいきませんね)

ニコラは苦しい表情をロランに向けた。

ロランもニコラが一杯一杯であることを察する。

(やはりニコラといえども敵の支配下にある『 火竜(ファフニール) 』を完全に操ることはできないか。となれば、剣と弓で敵を撃退するしかない)

ロランは改めて自軍の白兵戦部隊を見据える。

彼らはやはり突撃命令に従わず、敵の攻勢に対してジリジリと後ろに下がるばかりだった。

ロランはエリオに呼びかける。

「エリオ。あの高所が見えるかい?」

ロランは突き出た場所を示して言った。

矢が降りしきる中、盾に身を隠しながらの指示である。

ロランの指し示した場所は敵に占拠された他の高所とは違い、独立しており、連絡の取れない場所だった。

平らな部分も狭いため配置できる人数も限られている。

つまり敵が占拠している高所の中では最も弱い部位に当たる。

「うん」

「あそこを占拠している敵を追い払い、陣を敷きたい。やれるか?」

「分かった。やってみる」

エリオはロランの指示した高所に向かって『盾突撃』を仕掛ける。

弓使い(アーチャー) 達による支援射撃の下、瞬く間に坂を駆け上がり、そこに陣取っていた5人の 弓使い(アーチャー) を駆逐し、占拠した。

『白狼』の方でも負けじと高所の奪還を試みるが、ラナの『地殻魔法』によって防御を固める方が速かった。

盗賊達の高所への攻撃はことごとく跳ね返された。

逆にハンス達がその場所に陣取ることができたため、敵陣に直接矢を撃ち込むことができるようになる。

一方で『白狼』側は上からの攻撃を恐れて白兵戦を仕掛けづらくなった。

互いに高所から物陰に隠れて、撃ち合う射撃戦となる。

結局、その日は勝負がつかなかったため、盗賊達は日暮れと共に退却した。

翌朝になった。

ロランはまだ空が白み始める前から冒険者達を起こすと急行軍で山を降らせた。

(敵を撃破できない以上、敵よりも先に有利な場所を占拠して防御に徹するしかない!)

ロランは部隊を走らせるだけ走らせ、防御に適した場所にたどり着くと、昼頃には辺りの高所という高所を占拠し、道という道に兵を配置して塞ぎ、どこからも攻められないようにした。

ロランの動きに気づいたロドは慌てて追いかけたが、その時にはすでに同盟は四方を完全に固め、防備を万全にして待ち構えていた。

止むを得ずロドは攻撃を諦め、次の日に賭けることにした。

ロランは次の日も同じように急行軍で山を駆け下りていった。

アップダウンの激しい山道を息せき切って走り抜ける。

その日はロドも自軍を早めに起こして、走らせたが、やはりロランの方が要所を抑えるのが早かった。

ロドは同盟の陣地を見て歯噛みする。

(くそっ。なんでだよ。こっちは 弓使い(アーチャー) と 盗賊(シーフ) 主体の軽装部隊なのに。なんで重装備でしかもアイテムを大量に持ってるあいつらの方が速く動けるんだよ)

ロランはモニカに『 鷹の目(ホークアイ) 』であらかじめ防御に適した場所を探し出させて、モンスターの少ない道を見極めて通っているため、身重にもかかわらず素早く移動することができた。

また、地元の冒険者達も早く街に戻って戦果を確定させたいため、やたらと協力的であった。

このように消極的な作戦、『金色の鷹』でやろうものなら顰蹙を買うこと必至である。

次の日も、また次の日も同じ展開が続いた。

同盟は順調に街へと近づいて行き、やがて街が眼下に見渡せる場所まで辿り着く。

痺れを切らしたロドは、ロランの陣地を強襲した。

しかし、攻撃はあっさりと跳ね返され、それどころか逆に反撃を受けることになり、『白狼』は敗走を余儀なくされる。

ロランは追撃しようとしたが、盗賊達の逃げ足は非常に早く、捕まえることができなかった。

(なるほど。部隊単位でヒットアンドアウェイができるのか。 俊敏(アジリティ) を活かした戦い方。よく考えられている。局地的な勝利をおさめても決定打を与えることができない。これは厄介だな)

ロランは追撃を諦め、むしろまた陣地を移し、部隊を街へと近づけた。

裾野の森に布陣して、街まではもう目と鼻の先である。

『白狼』の方も壊滅的ダメージを受けたわけではないため、部隊を再編して再度ロランに挑もうとしたが、ロドは部隊の立て直しに手こずった。

ロランはその隙を見逃さず、裾野の森を一気に駆け抜けて、街へと生還する。

部隊の陣容を保ったままの堂々たる帰還だった。

街の人々は目を丸くした。

冒険者達がボロボロになって帰ってくるのを見慣れた彼らは、「珍しいこともあるものだ」と口々に言い合って、首を傾げるのであった。