軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第121話 リゼッタの提言

『 洪水を起こす竜(フラッド・ドラゴン) 』が倒れたことにより、その 僕(しもべ) である両生類モンスター達は湖の中へと引き揚げていった。

ロランは戦闘を終えたリリアンヌを迎えるべく、湖の岸辺まで足を運ぶと足元に水色の大きな珠が流れてきた。

(これは……『 洪水を起こす竜(フラッド・ドラゴン) 』の竜核か)

「ロランさーん」

「うわっ。リリィ!?」

ロランが竜核を拾って検分していると、上空からリリアンヌがダイブしてきた。

ロランは慌てて彼女を抱きとめる。

「んふふ。どうですか? 『 洪水を起こす竜(フラッド・ドラゴン) 』を倒しちゃいましたよ」

リリアンヌはロランに 頬(ほお) ずりしてくる。

「ああ。流石だね。『浮遊』の機動力も『雷撃』の威力も凄かった」

ロランが彼女の柔らかい髪をかき撫でると、彼女は気持ち良さげに目をつむった。

エリオ、ハンス、ウィルは遠巻きにその様を見ていた。

「ハハ。凄いや。本当に、一人で『 洪水を起こす竜(フラッド・ドラゴン) 』を倒してしまった」

エリオ感心しながら言った。

「あれが雷撃の魔女か。いや、何というか聞きしに勝る……」

ハンスも半ば呆れたように言った。

「でも、彼女のおかげで少しだけ分かったよ」

ウィルが言った。

「自分に何が足りないのか。そしてAクラスになるというのがどういうことか……」

3人は各々Aクラスへの想いを胸に、自分に必要なものを見つめ直すのであった。

「ロラン。勝利の余韻に浸ってる場合じゃないぜ」

ジェフがロランの方に駆けつけながら言った。

「『竜の熾火』の奴らがすぐそこまで来てる。早く対処しねーと」

「おっと、そうだった。みんな集まってくれ」

ロランは部隊の状態を確認して、回復を済ませるとすぐに移動を開始した。

ロランは部隊を移動させながら、 弓使い(アーチャー) と 盗賊(シーフ) を放って偵察を行なった。

そうして敵の動向を調べていくうちに、『竜の熾火』同盟には交戦する意思がないことが分かってきた。

どうも彼らは採掘場に向かっているようだった。

(この大所帯で採掘場に向かっている。となれば、狙いは鉱石を採取して枯渇させることか。なるほど。自分達で『 湖への道(レイク・ルート) 』の鉱石を採り尽くせば、『精霊の工廠』の供給源を断つことができ、鉱石売買の交渉において優位に立てる、というわけか。作戦を変えてきたな)

敵の狙いが分かったので、ロランは採掘場に先回りすることにした。

大所帯の敵と違い、少数精鋭の『精霊の工廠』は瞬く間に敵を抜き去り、採掘場へと続く細道、その付近の高所を占拠した。

「戦いを挑まないんですか? 冒険者同士の戦闘は認められているんでしょう?」

リリアンヌが聞いてきた。

「うん。起伏の多いこのダンジョンでは、高所を取ることが大事なんだ。それに……」

「皆さん、戦いには前向きになってくれない……といったところですか?」

「そう。この島の冒険者は直接戦闘して消耗するのを避けたがる傾向がある。だから、 俊敏(アジリティ) で優位な場所を取って、防御を固めた方がいいんだ」

「なるほど」

「また、攻撃は君に頼ることになるが、それでいいかい?」

「分かりました」

ロランに高所を取られたことに気づいた『竜の熾火』同盟は、どのように対処するか意見が分かれた。

彼らは鉱石を取得することにだけ専念し、戦闘は避けるようエドガーから言われていた。

行く手を塞ぐ敵を前にして、戦うべきか退くべきか議論を盛んにするが、どれだけ意見を戦わせても結論は出ない。

彼らが態度を決めかねて足踏みしているうちに、ロランは攻撃の準備を進めた。

彼らの中で最もステータスの脆弱な部分を見つけ出し、リリアンヌに攻撃させた(『竜の熾火』は相変わらず各冒険者に最適化された装備を作らなかったため、『竜の熾火』同盟の冒険者達はいたずらにステータスを消耗していた)。

リリアンヌは『浮遊』で彼らの上空まで飛んで行くと『雷撃』を放った。

『竜の熾火』同盟は、一撃雷を受けただけで、一目散に逃げ帰ってしまう。

リリアンヌはあまりの手応えのなさに拍子抜けした。

(おやまぁ。いくら形勢不利とはいえ、こんなに簡単に逃げちゃって。なるほど。これはロランさんでも育てるのに苦労しそうですね)

その後、ロラン達は採掘場で鉱石を採れるだけ採って、街へと帰還した。

『 洪水を起こす竜(フラッド・ドラゴン) 』討伐成功の報に、街の人々は沸き立った。

『精霊の工廠』の信望はいよいよ高まるばかりであった。

一方、敗北の報がもたらされた『竜の熾火』は再び閉塞感に包まれる。

会議室でメデスは怒鳴り散らしていた。

「一体どうなっとるんだ!? 鉱石採取に専念すれば、『精霊の工廠』にも勝てるんじゃなかったのか? それが『精霊の工廠』を干上がらせるどころか、鉱石を一つも持ち帰れなかっただと? こんなバカな話があるから? エドガー! 今回のプロジェクトの責任者はお前だろ。説明せんか!」

「あれぇ? おかしいなぁ。冒険者の奴ら、一体何やってんだか。あれほど戦うなって言っておいたのに」

「冒険者のせいにしとる場合か! 分かっとるのか? これは我がギルド全体の危機なんだぞ! 考えてもみろ。鉱石を一つも持ち帰れなかったということは、それはつまり『精霊の工廠』はいつでもこちらの鉱石供給をシャットアウトできる。そういうことだぞ? 鉱石の調達を『精霊の工廠』に依存せざるを得ない、そんな状況になるやもしれんということだ。そうなれば……、お前ら分かってるんだろうな? 他のギルドに優位を握られている状態で今の高給が維持できると思うなよ。仕事を失ってクビになるってことだぞ?」

そうしてメデスは捲し立てるようにして発破をかけるが、職員達はうなだれ沈鬱な表情をますます曇らせるばかりであった。

(やっぱりダメだったか)

ラウルは悪い予感が当たってうなだれた。

(ロランはこんな小手先の手段が通用するような相手じゃなかったんだ。こんな時こそ、エースの俺がギルドを引っ張らなきゃいけないのに。何も思い浮かばねぇ。一体どうすれば……)

「おい、この責任どう取るつもりだよお前ら。誰かなんとかできる者はおらんのか?」

メデスは口角泡飛ばして捲し立てるが、それに返事できる者はいなかった。

誰もがうなだれて、答えの出ない問題に口をつぐんでいる。

「現実から目を逸らしていても仕方がないでしょう?」

突然、リゼッタが言った。

その場にいる者は全員リゼッタに注目する。

「『精霊の工廠』がここまで躍進した原動力。それは他ならぬS級鑑定士の力があってこそ。違いますか? これを見て下さい」

リゼッタは『精霊の工廠』のパンフレットを取り出して、全員に見えるようにかざした。

「これは?」

「S級鑑定士による育成プログラム?」

「『精霊の工廠』は単なる錬金術ギルドではありません。このように冒険者の育成も手掛けているのです。これが『精霊の工廠』がここまで急速に成長した秘訣と言って良いでしょう。『精霊の工廠』に対抗するために、私は鑑定士による冒険者育成チームを新たに発足することを提案します!」