軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百二十八話 歓迎の宴

「ムコーダのお兄ちゃん、このお肉すっごく美味しい!」

口いっぱいに肉を頬張って噛み締めて味わいゴクンと飲み込んだ後に、ニッコリ笑ってそう叫ぶロッテちゃん。

「そっかそっか。良かった。みんなもいっぱい食えよ~」

子どもファーストでまずはロッテちゃんたちに焼けたステーキを食わせている。

他の子どもたちもニコニコで実に美味そうに分厚い肉にかぶりついている。

ギガントミノタウロスもダンジョン牛の上位種も肉は柔らかい。

子どもでも簡単に噛み切れるからナイフなんて使わずににフォークでぶっ刺してかぶり付きスタイルだ。

ま、一般庶民はそもそも食事にナイフなんて使わないけど。

そんな豪快にガブガブと肉にかぶりつく子どもたちの中で、一口食って固まってしまっている子どもが二人。

新参のニコライ君とカトリーナちゃんだ。

最初はステーキにもなかなか口を付けなくて、最初の一口も俺やロッテちゃんたちに勧められてようやく嚙り付いたくらいだった。

それなのにその一口で固まっている。

「あれ? ニコライ君とカトリーナちゃんの口には合わなかった?」

あちゃー、もしかして二人とも肉が嫌いだったのかな?

そりゃ肉が苦手って子もいるよな。

好き嫌い聞いておけばよかった。

「それがダメなら、リバイアサンを焼くか。いや、でもこれも肉か? 魚の魔物の在庫ってあったかなぁ……」

肉を焼く手は止めないままにアイテムボックスの在庫を思い出す俺。

「おいおいおいおい、なんかスゲェ名前が出てきたんだけど、俺の耳がおかしくなったのか?」

「リ、リバイアサンって聞こえたんだけどよ……。俺の耳もおかしくなったか?」

「い、いや、俺にもそう聞こえた」

「あ、ああ。俺もリバイアサンって聞こえたぜ」

「お、俺もだ」

「お、俺も」

「ちょっとムコーダさん。傭兵さんたちが驚いちまってるだろ。アタシたちにリバイアサンはさすがにやり過ぎだって」

トントンと肩を叩かれて振り向いてみれば呆れた顔のタバサにそう言われる。

「えー、リバイアサン美味いよ。美味い白身魚みたいで。それにリバイアサンの肉はいっぱいあるからさぁ」

実はフェルたちには『リバイアサンは美味いが毎日となると飽きる』って言われちゃって……。

今のところ週一くらいに抑えてるのよ。

リバイアサンってどっちかっていうと魚系のあっさりした味わいだから飽きちゃうらしい。

美味いけどフェルたちの好みとして一番はやっぱり食い応えのある赤い獣系の肉の方なんだって。

まぁ、食いっぷりからしてそうだろうなとは思っていたけどさ。

そっちだったら味を変えて同じ魔物の肉が続いてもまったくもって問題ないんだとか。

ホントに面倒臭い話ではあるんだけど、飯の話になるとうるさいからねぇうちの食いしん坊どもって。

って、そんな話は置いておいて。

「うちの大食いどもがみんなで食ってもまだまだ在庫があるんだよ」

なにせ元が信じられないくらいの巨体だったからね~、リバイアサン。

「いやいや、それにしたって」

「姉貴~、ムコーダさんに俺たちの常識は通じないって」

「そうそう。最初っからそうだったもんな~」

「まぁ、儂らはその恩恵に 与(あずか) れるってわけじゃが、少々やり過ぎなのは否めんのう」

そんなタバサとルークとアーヴィン、バルテルのやり取りを聞いていたペーターとトニ&アイヤ夫妻にアルバン&テレーザ夫妻がウンウンと頷いていた。

「ちょっとちょっと、俺のこと常識がないみたいに言わないでよ。今日は新しく入ってきたみんなの歓迎会みたいなもんだし、ちょっと豪華にしただけだぞ。それに無理してるってわけじゃないしさ」

断じて俺は常識のないヤツじゃあないんだからな。

「俺たちは食ってみたいぞ。リバイアサン」

「ああ。大歓迎だ」

「そうね。まだ食べたことないけど、前に美味しいって聞いたことあるものね」

「あ、それって先々々々々代が言ってた気がする。海岸近くの村に行った時に、ものすごく自慢されて悔しかったって」

ハイエルフのみなさんは案外食には貪欲なのでノリノリだ。

ってそれはいいとして……。

「ニコライ君とカトリーナちゃん、そのお肉が口に合わないようだったらもっとあっさりした魚みたいなのにする?」

未だに固まっている二人にそう声を掛ける。

ちょっと、そこで「リバイアサンは魚じゃねぇだろ……」って呟いてる髭面のおっさん、君は黙っていなさい。

「あ、あの、え、えっと、美味しい、ですっ。すごく!」

ニコライ君がつっかえながらもそう言う。

それに同意するようにカトリーナちゃんも何度も首を縦に振っている。

二人は肉が嫌いなのかと思ったけどそうではないようだ。

「良かった~。まだまだあるから君たちもいっぱい食えよ~」

おっと、第二陣のステーキがもうそろそろいいかな。

『よし、次は我らだな』

『うむ』

『よっしゃ肉~!』

『お肉ー!』

ズズイッと圧を伴って前に出てくるうちの食いしん坊カルテット。

しかし……。

「ダメダメ。お前らのじゃないよ」

『な、なんだとっ?!』

「なんだとってこれは歓迎の宴なんだから新しく入った人たちが先に決まってるだろ」

呆れながら俺がそう言うと、食いしん坊カルテットは次こそは肉にありつけると思っていたのか呆然としている。

「ほら邪魔邪魔。お前らは向こうでもうちょっと待ってなさいよ」

シッシとトングを持った手を振るが微動だにしない食いしん坊カルテット。

「も~、まったく……。お前らのは最後だけど、その分特大の分厚い肉を焼いてやるからちょっと我慢しな」

そう言うと食いしん坊どもがクワッと目を見開いて俺を見た。

『本当だな?』

『特大の……』

『分厚い……』

『お肉ーーーっ!』

ちょっ、お前ら目が怖いからね。

肉至上主義者たちのギンギンの目力にちょっと引き気味の俺。

しかも、スイは興奮からかフェルの頭の上で高速でブルブル震えてるし。

というかそんな状態のスイを頭に載せていて動じないフェルはさすがだな。

「あ、あぁ。と、特大の分厚い肉、な。だからもうちょっと待ってろ。焼けたら、呼ぶし」

『うむ。期待しているぞ』

『特大の』

『分厚い』

『お肉っ!』

「お、おぅ……」

BBQコンロの前を陣取っていたフェルたちが去っていくのを見送った。

「ふぅ、行ったか」

しかし、プレッシャーだわ~。

どんだけ期待してんだよ。

ま、まぁいいわ。

次だ次。

「ささ、ヴィクトルさんネリーナさんどうぞ」

オロオロしている二人に持たせた皿にイイ感じに焼き上がった炭火焼きステーキを載せていく。

「え、いや、あの……」

二人とも困惑したように皿のステーキと俺の顔を交互に見ている。

「どうぞどうぞ。冷めないうちに」

笑顔の俺に勧められておそるおそるステーキを口にする二人。

「美味い……」

「ホント。こんなに美味しい肉、初めて……」

思わずといった感じで漏れた言葉に俺も嬉しくなる。

「ギガントミノタウロスとダンジョン牛の上位種の肉です。なかなかに美味いでしょ」

「え……」

「ミノ、タウロス……」

ボトリとフォークが刺さった肉が皿に落ちる。

「ちょっ! 皿の上でよかったぁ~」

そう言うと、ハッとした二人が「奴隷の分際ですみませんすみません」と何度も謝ってきて終には膝を付こうとまでする。

「いやいやいやいやいやっ、そこまでしなくていいですから! 落ちたらまた焼けば済むことですけど、もったいないでしょ? それだけだから」

焦りながら二人を制止してそう言う。

「ミノタウロスだって庶民からしたら高級肉だぜ。それがギガントミノタウロスにダンジョン牛の上位種だからなぁ。どっちもお貴族様でもなかなか食えない超が付くほどの高級な肉だぜ」

だから髭面のおっさんは黙っててってよ~。

余計にややこしくなるでしょうに。

「まぁ、感覚がマヒしてくるけど、ムコーダさんだからなぁ」

「そうそう。こうやって俺たちに振舞ってくれる時っていつもSランクとかのイイ肉食わしてくれるもんな」

「うむ。しかも美味い酒付きでじゃ。最高の主じゃわい。儂はもうずっとここで世話になるつもりじゃ」

ルークとアーヴィン、バルテルがそう言うとうちの 奴隷(従業員) とハイエルフさんたちが頷いたり「だな~」なんて言っている。

「ムコーダさん、私らの毎日の食事のためにだってオークやコカトリスの肉をたんまり支給してくれるからねぇ」

「オークもコカトリスも私たちにとっては特別な日に食べるようなお肉のはずなのですが、ムコーダさんがたくさん支給してくださるので今では食卓に上らない日はないですものね」

「卵も毎日食べられるから嬉しい」

コラコラ、テレーザもアイヤもセリヤちゃんも参加しないの。

ま、まぁ、とにかく、みんなうちで不満はなさそうだね。

ヨカッタヨカッタ。

「俺は手持ちにあるもの出してるだけだし。それにどうせ食うなら美味いもの食いたいじゃんってことだからさ、そこら辺は気にしないで食ってよ」

結局はそうなんだよね。

うちはこうだしここは慣れてもらうしかない。

っていうことで……。

「次はアンドレイさんたちね」

そう言って新入りの髭面のおっさんたちに次々にステーキを配っていく俺だった。