軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百七十九話 酔っぱらいドラゴン

さてと、もうそろそろ行くかな。

午前中はゆっくりと過ごして、昼過ぎに 奴隷(従業員) たちの家に向かうことにした。

今日は母屋の掃除もサッとだけしてもらって、早めに帰したし、庭の手入れも行き届いているから、適当に帰っていいよって言ってあるから、みんなもう家にいるだろう。

「ちょっと王都のお土産を渡しに行ってくるから」

グッスリ昼寝をしているみんなだけど、耳の良いフェルには聞こえるだろう。

『うむ。何か美味い物を食うということになったら呼ぶのだぞ』

薄目を開けたフェルからそう答えが返ってきた。

ハハ、ちゃっかりしてんな。

俺は苦笑しつつ母屋を後にする。

そして、母屋の裏手に回ると……。

アルバンの畑で、アルバン一家、トニ一家、そして手の空いている冒険者組総出で楽しそうに畑仕事をしていた。

「みんな総出で何やってんの?」

「あ、ムコーダさん……」

声を掛けると、みんなが手を止めて俺を見ていたのだった。

それで、みんなが言うには……。

「明るいうちは仕事をしていないと手持無沙汰で……」

「何もしないのはソワソワしてしまって……」

「ゆっくりと言っても、どう過ごしたらいいのかわからなくて……」

等々だった。

えー……。

時間があるんだから、家でゆっくり休めばいいじゃん。

今日は天気もいいし、それこそ昼寝とか最高よ。

そう言ったら「昼間っから寝る?」って意味が分からないみたいな感じでみんなに見られちゃったよ。

昼寝最高なのに。

フェルたちなんて、家に居る時は、朝飯食って昼飯食ってその度に寝てるぞ。

畑仕事に参加しているタバサにバルテル、ペーター(ちなみに双子は今の時間帯が門番担当とのこと)の冒険者組にも聞いてみると……。

「アタシたちもだけど、元々がここでの仕事は楽なもんなんだよ」

「暇を持て余すっちゅうかなぁ」

「うん」

え゛…………。

みんな大変だと思ったから、 奴隷(従業員) を増やそうと思っているところなんだけど。

というか、そうだよ。

その増やそうと思った原因のせっけんやらシャンプー&トリートメントの詰め替え作業や、 育毛剤(神薬 毛髪パワー) 作りはどうしたのよ?

ランベルトさんとこでも売れに売れているからって、家を出る前にけっこうな量を置いていったはずなんだけど?

それを聞いたら、なんとすでに全部作業が終わっているとのこと。

よくよく聞いてみたら、俺が 奴隷(従業員) を増やそうとしていることに、実は俺がみんなの働きに不満を持っているんじゃないかとかいろいろと思う所があったらしく、ここはがんばらないとと 奴隷(従業員) 一同マッハで作業を終わらせたらしい。

「いや、そういうことじゃないんだけどなぁ。みんなそうやって根を詰めて仕事するから、もう少し人数増やした方が余裕も出ると思ったんだけど……」

あくまでホワイトな職場を目指してだったんだけどなぁ。

まぁとにかくだ、せっけんやらシャンプー&トリートメント、育毛剤の卸は増えていくのは間違いないから、 奴隷(従業員) の増員はしなきゃいけないことだからさ。

俺は、 奴隷(従業員) たちに、みんなの働きに不満があるとかそういうのじゃなくて人手不足になるのは必至だから人員を増やすだけなんだってことを懇々と説明したのだった。

そして、なんとかみんなに納得してもらったところで、王都のお土産を渡した。

女性陣には、ちょっと肌寒い時などに便利なストールを。

店員さんイチオシの王都で人気の花柄デザインをチョイスした。

男性陣には、王都のオシャレさんたちの間で流行りだしているというループタイを。

こちらも店員さんの見立てで、派手過ぎず地味過ぎずなイイ感じのものを選んだつもりだ。

オーバル型の緑鮮やかなヒスイが目について、ついつい俺も1本買っちゃったよ。

みんな嬉しそうにしているのでホッとした。

前のがま口財布はちょっと失敗だったから、ほどほどにを心掛けて選んだのが功を奏した。

ロッテちゃんなんて跳び上がって喜んでいる。

アイヤやテレーザ、セリヤちゃんは早速肩に掛けている。

タバサもイイ仲になっているというペーターに「アタシに似合うかな?」なんて顔を赤らめながら聞いているし。

このリア充めが。

男性陣は女性陣ほど嬉しさを表には出していないけど、男ならこんなもんかな。

それでもコスティ君やオリバー君、エーリク君はめっちゃ笑顔になってるし。

「あ、そうだ。みんなで畑仕事して、今日は何が収穫出来たんだ?」

ついでだから少し分けてもらおうと聞いてみる。

「今日はタマネギとジャガイモとブロッコリーですね」

「そういや家を出る少し前にブロッコリーの種も渡してたんだっけ」

「ハイ。それがようやく」

見せてもらうと、それはそれは立派なブロッコリー。

タマネギ、ジャガイモ、ブロッコリーと美味そうな野菜がたくさん、みんなもそろっているし……。

留守を任せていたみんなへの労いも兼ねて、ここはやっぱアレしかないかな。

「今日はみんなでBBQでもするか」

俺がそう言うと「ワァーッ」と歓声が上がるのだった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

女性陣に手伝ってもらい、野菜や肉の仕込みを超特急で終わらせて、いざBBQ開始!

さすがに肉を漬け込む時間はなかったから、肉は下味なしで、市販の焼き肉のタレを付けていただくことに。

それでも炭火で焼かれた肉は格別だ。

ちなみに、用意した肉はダンジョン牛とダンジョン豚。

みんな炭火で焼かれた香ばしい肉を美味そうに頬張っている。

俺はというと、肉はほどほどにして、野菜をメインに食っていた。

焼き上がったタマネギに焼き肉のタレを付けて頬張る。

口の中でとろけて、焼き肉のタレに負けないタマネギの甘さが広がった。

「やっぱアルバンの野菜は美味いなぁ~。最高」

「お父さんの野菜は街一番だよね!」

「ロッテちゃん、違うぞ。街一番どころか世界一だ」

「すごーい! お父さん、世界一だって!」

「いや、それは言い過ぎというか……」

「いいじゃないのアンタ。ムコーダさんがそう言ってくれるくらい美味しいってことなんだから」

「そうですよ。アルバンさんの美味しい野菜は、毎日食べても飽きないですし」

「ああ。本当に美味しい。子どもたちも喜んで食べてくれるのが嬉しいですね」

「でも、やっぱりロッテはお肉が好きかな~!」

おいおい、ロッテちゃんその一言で台無しだぞ。

ロッテちゃんの一言に、苦笑いする俺、アルバン、テレーザ、トニ、アイヤだった。

『おい、おかわりだ!』

『儂もいただけるかのう』

『俺も!』

『スイもー!』

当然、食いしん坊カルテットもBBQに参加していた。

香ばしく焼かれた肉を遠慮なくガツガツ食っているよ。

「ハイハイ」

そう言いながら焼けた肉を追加で皿に盛ってやる。

「みんなもこいつ等に食い尽くされる前にしっかり食いなよ~」

そう声を掛けると、肉に殺到する 奴隷(従業員) たちだった。

「こっちももうそろそろいいかな」

そう言いながら、スキレットの中を覗き込む。

一緒に準備したアヒージョだ。

ダンジョン産のジャイアントスカラップの貝柱がアイテムボックスにあったので、それとマッシュルームにアルバンの極旨ブロッコリーを使ったアヒージョだ。

スキレットにオリーブオイルを注いだらにんにくのみじん切りと輪切りにした鷹の爪、それから塩を入れてBBQコンロの上に。

フツフツしてニンニクの香りがしてきたところで、適当に切った貝柱と小さめの房に分けたブロッコリー、半分に切ったマッシュルームを入れていた。

「火も通った感じだな。そうしたらここに……」

ミル付きの容器に入った黒胡椒をガリガリ。

「よし、アヒージョが出来たぞ~。酒のつまみに最高なヤツだ」

酒のつまみと言ったところで、酒大好きな酒飲みども、バルテルを筆頭に、全員参加のBBQということで今の時間帯は門番担当のはずだったルークとアーヴィンも集まってくる。

ビールとウイスキーを出していたから、みんな既にイイ感じのほろ酔い加減だ。

アヒージョをつまみにして、俺も含めてさらに酒が進む。

ゴン爺も飲むというので器に注いでやると、ビールをゴクゴク飲んでいた。

「大ドラゴン様はなかなかに酒もいけるようじゃのう」

「よっ、大ドラゴン様、良い飲みっぷり!」

「ささっ、どうぞどうぞ大ドラゴン様!」

酔いが回って気が大きくなっているのかバルテル、ルーク、アーヴィンがゴン爺に話しかけている。

ルークなんてお酌までしてるし。

というか、“ 大(おお) ドラゴン様”?

みんなの間ではゴン爺ってそう呼ばれてるのかよ。

バルテル、ルーク、アーヴィンもゴン爺に普段ならこんなに気安く話しかけないだろうに、酒の力はすごいね。

なんだか面白くて黙って見ていたら、ビールを飲み干したゴン爺の皿に、バルテルが「こっちの酒の方が美味いぞい。飲んでみい」とウイスキーを一瓶丸々注いでしまった。

「ちょっ、待てっ!」

止める間もなく『どれ』と言って口を付けてゴクゴク飲んでしまうゴン爺。

『ク~、確かに美味いのう!』

「じゃろう! このウイスキーっちゅう酒は最高じゃ!」

『よし、おかわりじゃ』

すかさずおかわりを催促するゴン爺。

「って、待て待て待て待て。その酒、酒精が強いんだぞ。ゴン爺、大丈夫か?」

『儂がこのくらいで酔うものか。大丈夫じゃて』

「ならいいけど、ほどほどにしろよ」

それからしばらくして……。

アルミホイルとキッチンペーパーに包んで焼いた極旨ジャガイモにバターを載せたジャガバターを〆にして、みんな満腹になってBBQはお開きとなった。

酒飲みどもを除いて。

「お前ら、酒飲むのもいいけどほどほどになぁ~。ゴン爺、俺たちは先に帰るから、お前も適当に帰ってこいよー」

「分かってるって、ムコーダさ~ん」

「そうじゃぞ~。宴はこれからじゃわ~い」

『承知したぞ~い、主殿~』

翌朝―――。

「ふぁ~。良く寝た」

『あるじー、おはよぉ~』

「おはよースイ」

『ふあ~あ、はよ~。昨日は腹いっぱい食ったからよく寝られたぜ~』

「ドラちゃんもおはよ~」

「フェルは起きたかー?」

そう言いながらフェルを見ると大欠伸をしている。

あれ?

いつもフェルの隣で寝ているゴン爺がいない。

「ゴン爺は?」

『昨日は帰ってこなかったぞ』

「ええっ」

ってことは、アイツら夜通し飲んでたのか?

「ちょっと待ってて。様子を見てくる」

母屋の裏へと様子を見に行くと……。

地面の上で大の字になって寝ているバルテル、ルーク、アーヴィンの姿が。

そして……。

「おいおいおい。酔っぱらって爆睡中かよ。というか、無防備に腹見せて寝ているドラゴンって……」

呆れたことに腹丸出しでグゴ~ッといびきをかいて寝ているゴン爺の姿が。

ウイスキーをあんなにパカパカ空けるからだよ。

ったくしょうがないヤツだなぁ。

『このだらしのない姿が 古竜(エンシェントドラゴン) とは聞いて呆れるぞ』

『ドラゴンにあるまじき姿だな』

『ゴン爺お腹出して寝てる~』

いつの間にか来ていたフェルとドラちゃんとスイ。

フェルとドラちゃんはゴン爺をジト目で見ている。

スイは、ゴン爺の腹の上に登ってポヨンポヨン飛び跳ねていた。

「ったく飲み過ぎなんだよ。酔っぱらいは放っておいて、俺たちは朝飯にするか」

『そうだな』

『そうしよ、そうしよ』

『ご飯~』

酔って爆睡中のゴン爺は放っておいて、朝飯にする俺たちだった。