軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百六十四話 モソモソ

「ハァ~、やっと帰ってこられた」

朝、この家を出てから怒涛の展開だった。

今日は狩りだと肉食恐竜ばっかりなとんでもない場所に連れていかれて、王都に戻ってきたと思ったら今度は冒険者ギルドに連行されて。

まったくとんでもない一日だったよ。

しかも、その狩りとやらでは、うちのみんながやらかしてくれて、そこにいた肉食恐竜の一種“スーパーサウルス”を絶滅させちゃったし。

その諸悪の根源共はというと……。

『おい、腹が減ったぞ。飯だ』

『うむ。今日は昼飯も摂らずに狩りにふけっていたからのう。さすがに腹が空いたわい』

『だな~。飯だ飯~』

『スイもお腹空いた~』

みんな呑気に腹が減ったから飯だとのたまっている。

みんな、俺が言ったこと忘れているようだな。

まぁいいさ。

「みんな腹が減ったか」

『うむ。今日の狩りは久しぶりの良い運動になったからな』

『そうじゃのう。久々に良い狩りじゃった』

『けっこう動いたもんな! 魔力も使ったし』

『いっぱいビュッビュッてしたの~。だからお腹ペコペコ~』

「そうか。じゃあ飯にするからみんなリビングで待っててよ」

そう言って俺はキッチンへと向かった。

そして……。

「俺は、みんなにはちゃんと罰は受けてもらうからなって言ったのにねぇ」

そうつぶやきながら、俺はおもむろにネットスーパーを開いて、あるものを大量に購入した。

ある意味これは野菜尽くしの飯よりも効くんじゃないかなって思ってな。

そして、届いた段ボール箱の中にぎっしり詰まっているものを取り出した。

スーパーでよく見かける袋に入った5枚入りの食パンだ。

食パンだけなら、ステータスの上昇値も継続時間もそれほどじゃないから問題ないのも分かっているからね。

食パンの袋を次々とビリリッと開いて、フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイの皿に山盛りに盛っていく。

瞬く間に食パンの山ができていった。

「よし、こんなもんでいいな。おっと、俺の分俺の分」

俺の分はというと、焼き立てのままアイテムボックスで保管していたテレーザ特製の田舎パンを切り分けてと。

あとは、俺用にと作り置きしてあるアルバンが丹精込めて作った極旨野菜がたっぷり入った具だくさん野菜スープ。

それから、これも俺用にと作り置きしてあった大豆のトマト煮。

作り方は超簡単。

オリーブオイルでみじん切りのニンニクを炒めて、香りが出たら玉ねぎのみじん切りをしんなりするまで炒めるだろ。そうしたら、ベーコンと水気を切った大豆の水煮を炒め合わせて、ホールトマト缶とざく切りにしたアルバン印の極旨トマトを入れて、塩胡椒を振る。あとは、ホールトマトを潰しながら煮ていくだけだ。水気が半量以下になって煮詰まったら出来上がり。

大豆も入って栄養たっぷりでパンに載せて食うと美味いんだ、これが。

野菜たっぷりで超ヘルシー。

俺的には理想の飯だな、うん。

「さて、俺の分も用意できたし、持って行ってやるか」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「ん? みんな食わないのか?」

俺は自分の分のテレーザ特製の田舎パンに大豆のトマト煮を載せてパクつきながら、シレッとそう言う。

『食わないのかって、お前……』

『いやのう、主殿……』

『いやいやいや、ちょっとこれはよ……』

『あるじ~……』

皿の上に山と積まれた食パンに困惑気味のフェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイの食いしん坊カルテット。

「それがお前らの夕飯だぞ」

『なっ』

『えっ』

『ちょっ』

『いや~』

俺の言葉に愕然とする食いしん坊カルテット。

「お前ら俺の言ったこと、忘れてるんじゃないのか? ちゃんと罰は受けてもらうって言ったよな、俺」

“スーパーサウルス”を絶滅させちゃったこと、チャラになったわけじゃないんだぞ。

『おまっ、本気だったのか?』

『くっ、有耶無耶になったと思っていたのじゃが』

『いつもはなんだかんだ言って、美味い物食わせてくれるのにっ』

『そんなぁ~』

フフン、俺がいつもいつも甘い顔しているとは思うなよ。

「食事抜きにならないだけありがたいと思えよな」

食パンだけとは言え食えないよりはマシでしょ。

「まぁ、食いたくないなら食わなくてもいいけどさ」

一向に食パンを食おうとしない食いしん坊カルテットにそう言い放つ。

「ただまぁ、空きっ腹はきっと堪えるだろうなぁ」

毎食毎食、腹いっぱい食ってるお前らにとってはな~。

それに今日は、みんな狩りに夢中で昼飯も食ってないしねぇ。

俺の言葉に『ぐぬぅ』と唸るフェル、ゴン爺、ドラちゃん。

スイは固まって、漫画だったら背景からズモモモモモ~と擬音が聞こえてきそうなくらいに落ち込んでいる。

ちょっとかわいそうな気もするけれど、心を鬼にして続行。

俺は素っ気ないふりをしながら、自分の分の野菜スープをすすった。

『お、お前が食っているのは、もらえんのか?』

俺がすすっている野菜スープとパンに載せて食っている大豆のトマト煮を見て、フェルが足掻くが、これはなぁ……。

「野菜スープと大豆のトマト煮だぞ。普段お前たちがあんまり食わない野菜がたーっぷり入ったな。というか、ほぼ野菜だけだな」

そう言うと、野菜嫌いのフェルは絶望した顔になった。

「それに俺用に作ってるやつだから、元々そんなに量はない。俺が食っているのと同じ量くらいしか出せないぞ。それでもいいなら出してやる」

続いた俺の言葉に、野菜嫌いというわけではないゴン爺とドラちゃんとスイも絶望した顔になった。

量が絶対的に足りないもんね。

俺が夕飯を食い終える頃に、ようやく諦めたのかフェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイともに食パンをモソモソと食い始めたのだった。

美味しくはないんだろうねぇ。

ジャムでも付いていればまだマシだったんだろうけど、なんにも付いていないただの食パンだもの。

みんな無表情でモソモソとやっている。

口の中の水分が取られるのか、飲み物を要求された。

皿を用意して注いでやったのは、もちろん水だ。

コーラとかサイダーとかの甘いジュースを期待していたのか、これまたみんな絶望した顔をしていたよ。

これは罰なんだから、みんなが嬉しがるようなものは出さないに決まってるでしょ。

飲み物が水だと分かった時のスイの涙声での『あるじ~……』にはグッときてしまったけれど、なんとか耐えたよ。

俺だってやる時はやるんだぞ。

フハハハハハハ~、分かったか下僕共よー。

なんつって。