軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百五十一話 あっさりバラされた

「いいですか、みなさん……」

ブラムさんをはじめとした冒険者ギルドのお偉いさん方とモイラ様、そして俺たちを前にエルランドさんがリヴァイアサンの解体は無理かもしれない理由を語った。

エルランドさんが言うには、今回のリヴァイアサンの解体の依頼を受けて、所蔵するリヴァイアサン関連の本を王都に向かう途中の道程で寝る間も惜しんで読み込んだそうな。

中でも特に注目して熟読したのが、約400年前に冒険者ギルドに持ちこまれたリヴァイアサンについて書かれた本だった。

ちなみにその本は、とある国の冒険者ギルドで大切に保管されているものだそうだが、当時Cランクだったエルランドさんには見せてもらえずに、こっそりと忍び込んで写本したものなのだという。

なにやってんだよ、エルランドさん……。

そんな余計なことまで言ったから、モイラ様に殴られてたし。

ま、そんなことは置いておいて、その本は、そのリヴァイアサンがどういう風に狩られて、どういう風に解体されたのか、解体されたどの部位がどれくらいの値で売れたのかなど事細かく記載されていたそうだ。

「血の一滴から骨の一片まで、どれもこれも高値で取引されたそうです」

エルランドさんのその言葉に「それは当然じゃ」と頷くお偉いさん方とモイラ様。

「ですから、血の一滴さえ無駄にしないように、考えていた魔道具も作ってきたのです」

エルランドさん曰く、俺が解体を頼んだ 地竜(アースドラゴン) の解体の時から考えていたそうだ。

作業台の上であれば、作業台を少し傾ければ流された血の回収も比較的簡単だが、もし作業台の上にも載らない超大型のドラゴンを解体することになった場合はどうするのか?

俺たちがいるのだからいつかその日が来ると確信して、いろいろと考えていたのだとエルランドさんはドヤ顔だ。

「それで作り上げたのがコレです」

エルランドさんがそう言いながら細長い筒状の物体をアイテムボックスから取り出した。

「魔道具作りも多少かじっておいて良かったですよ。簡単なものなので私にも作製可能でした」

「アタシも手伝わされたけどね」

「ンンッ、魔道具作りに造詣が深いモイラ様にも手伝ってもらって、よっと。全部で14本用意しました」

エルランドさんによると、その魔道具は風魔法を応用した吸引の魔道具ということだった。

「なるほど。その魔道具を使ってリヴァイアサンの血を回収するということじゃな」

「ええ。ブラム様の言うとおりです」

「じゃが、そのように魔道具まで作って周到に準備していたお主が、なぜリヴァイアサンの解体はできぬなどと言うのじゃ?」

そうだよね。

魔道具まで作ってヤル気満々で準備してきたってのに、なにがいけないんだ?

「恐らくこの魔道具を使えば、血の回収はできると思います。血の回収だけならば……」

ここで、エルランドさんが王都に来るまでの道中に熟読したという約400年前に冒険者ギルドに持ちこまれたリヴァイアサンについて書かれた本に話が戻る。

「そのリヴァイアサンというのがですね、この目の前にいるリヴァイアサンとは比較にならないくらいに小さいのですよ」

俺の出したリヴァイアサンを見て確信に変わったそうだが、エルランドさんによると、その約400年前に狩られたリヴァイアサンは恐らく幼体だったのではないかということだった。

「それでですね、その400年前のリヴァイアサンの解体には主にドラゴンソードを使ったとあるんですよ」

なんでも解体作業用にミスリルナイフを用意していたそうだが、それで切れないことはなかったがかなり力がいったことと、そのせいで切り口が粗くなってしまったことが書いてあったそうだ。

それで、当時のそのギルドで保有していたミスリルより切れ味が良い刃物がドラゴンソード。

試しに使ってみたところ、驚くほどよく切れたそうだ。

そのことから、リヴァイアサンという破格の魔物の素材を傷めないためにも解体作業にはそのドラゴンソードが使用されたとのことだった。

「そのことは知っておりましたので、私の手持ちのドラゴンソードを持ってきたのです」

腰に装着していた鞘からスッとドラゴンソードを引き抜くエルランドさん。

「どうです? 見事でしょ~。 赤竜(レッドドラゴン) の牙で作った剣! この艶といったらもう!」

エルランドさんが見せびらかすようにドラゴンソードを俺たちの前に差し出す。

今にも頬ずりしそうな感じなのが、エルランドさんらしいっちゃらしい。

どこまでもブレない人だな。

「お主、いつの間にそんなものを手に入れたのじゃ?」

ブラムさんをはじめとしたお偉いさん方がザワついている。

それだけドラゴンソードというのは珍しいというか手に入りにくいものなのだろう。

ゲシッ―――。

「いったぁぁぁっ!」

そう言いながら膝を突くエルランドさん。

ドラゴンソードを落としそうになっていたけど、握りなおして必死に死守している。

落としたってすぐ割れるようなもんじゃないと思うんだけどねぇ。

「い、いきなり蹴るって、どういうことですか! 大事な大事なドラゴンソードを落としそうになったじゃないですかっ、モイラ様ぁーっ!」

「蹴りたくもなるよ! アンタ、ちゃっかりそれを「私の手持ちのドラゴンソード」とか言ってるけど、実際にはアンタだけのもんじゃないだろ! ウゴールから聞いているんだからね! アンタ、ドラゴンの素材をムコーダさんから買ったはいいが加工する金がなくて、冒険者ギルドに借金しているそうじゃないか!」

ギクッとするエルランドさん。

「な、なんでそれをっ?!」

借金までするとか、マジかよ。

モイラ様も呆れて大きなため息ついているよ。

「ウゴールに泣きついたんだろう。泣いてしつこく付きまとわれて困り果てて、出来上がったドラゴンソードを担保にするならってことで、しょうがなく承知したってウゴールが言ってたよ」

「ぐぬっ」

ぐぬって、ホント何やってるんだよ、アンタ……。

「これはアレじゃな。モイラの監視、さらに延長じゃのう」

ブラムさんが呆れながらそう言うと、他のお偉いさん方からも「異議なし」の声が。

「な、なんでですかっ?!」

なんでですかって、公私混同しているアンタが悪いんでしょ。

自業自得だなこりゃ。

「そんなことより話を戻すのじゃ。ドラゴンソードで解体ができるのなら、問題はなかろう」

ブラムさんのその言葉に、他のお偉いさん方もモイラ様も俺も「そうだ」と声をあげる。

「ハァ。ですから、400年前のリヴァイアサンならそれで問題なかったのですよ。400年前の幼体のリヴァイアサンならね……」

そう言いながら、エルランドさんが目の前に横たわる超巨大リヴァイアサンに目をやる。

それにつられてその場にいた俺たちもリヴァイアサンの巨体に目がいった。

「これ、幼体に見えますか?」

「見えるわけないじゃろう」

だよね。

「私の考えが正しければ……。ハァッ!」

エルランドさんが手に持っていたドラゴンソードでリヴァイアサンを斬りつけた。

ガキンッ―――。

「ハッ」

さらに斬りつける。

ガキンッ―――。

「ハッ」

また斬りつける。

ガキンッ―――。

斬りつけて跳ね返されてを5回ほど繰り返したところで、ようやく切れ込みが入り、さらにそこを斬りつけたことで肉まで刃が入ったのだった。

「ハァ、ハァ、ハァ……。こうやって切ったところや、ゴン爺様が付けた傷から、私が作った魔道具で血液の回収だけは可能だと思いますが……。これで解体が進むと思いますか?」

「な、何度も斬りつけなければならぬが、切れたではないかっ」

「ハァ~。これも私だからできたことですよ。寸分違わず同じ場所に斬りつけるなんて芸当、そう何度もできるとお思いですか?」

「そ、それは……」

「それにですね、こんなことを何度も繰り返していたら、私のドラゴンソードもすぐに折れてしまいますよ!」

また「私のドラゴンソード」って言い切ったから一応突っ込むけど、それ借金の担保になっているからね。

「ドラゴンソードを何本も用意できるというのなら、解体もできないこともないでしょうが、そんなことできるのですか?」

「ぐぬぅ……」

ブラムさんが苦悶の表情を浮かべる。

ドラゴンソードを何本もってエルランドさんも無茶言うなぁ。

「私がこのリヴァイアサンの解体は無理かもしれないと言ったのはそういうことですよ。これを解体しようと思ったら、それこそ魔剣でも用意してもらわないと無理でしょうね」

ん、魔剣?

そこで、エルランドさんとバッチリ目が合った。

「ああああぁぁぁーーーっ!!!」

ちょっ、なに俺を指差してんの?!

エルランドさんがダダダッと駆け寄ってきて、血走った目で俺の両肩をつかんだ。

「ムコーダさん、持ってますよね、魔剣っ! ドランの最下層で出た“魔剣カラドボルグ”!!」

ここでそれを言うーーーっ?!

『よし、話は分かった。魔剣があれば解体できるのだな?』

おいフェル、今まで黙ってたくせにここで口を出すのかよ?!

「ハイッ、できます! フェル様!」

『うむ。そうか。そういうことだから、出せ。お主、何本か持っていただろう。全部出せ』

ちょっとちょっとちょっと!

フェルまでなにあっさりバラしてんだよぉぉぉっ!!!