軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百三十四話 いざ王都へ!

いよいよ明日には王都に向かう。

その前にと、俺は一人とある準備にとりかかっていた。

伯爵様と王様への献上品の用意である。

「こういうのはフェルたちに聞いてもまったく参考にならないからなぁ~」

ということで、フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイが寝静まった後、この間手に入れたばかりのお茶を飲みつつ作業に取りかかる。

ちなみに、選んだお茶はエルマン王国のグラナドス産のお茶だ。

茶葉に乾燥した果実が入ったフレーバーティーは、モモに似た甘い香りがして心安らぐ。

それにしても……。

「マジで美味いわ、このお茶」

一口ゴクリと飲んでホッと一息ついた。

「さてと、まずは伯爵様への献上品だな」

ランベルトさんのアドバイスのとおりに既に物は準備してある。

いつもの育毛剤を3本に、育毛シャンプーも3本。

それから、奥様とお嬢様用にシャンプーとトリートメント、ヘアパックをそれぞれ3本ずつ。

ローズの香りの高級石鹸を6個。

そして忘れちゃいけないオールインワンジェルを4個。

その他にスイ特製ポーションを下級3本と中級と上級は1本ずつ。

これを……。

「アイテムボックスを漁ってて見つけたこの宝箱を入れ物にしてと」

この宝箱は、確かドランのダンジョンのドロップ品だったはず。

ミミックから出たような覚えがあるな。

多分だけど。

それなりに宝石もついていて見栄えもいいから、これにしてみた。

これにイイ感じに詰めてと。

「よし、こんなもんでいいだろう」

これで伯爵様への献上品は準備OK。

次は王様への献上品なんだけど……。

「事前にギルドマスターに相談しとけばよかったな」

まぁ、でも今更だからな。

適当に選んじゃおうっと。

やっぱ宝石類がいいのかも。

なんとなくだけど。

ということで、この間のダンジョン産の宝石と、手付かず状態で溜まっている宝石類をとりあえず出してみた。

「うむ。多いな……」

こんなにあったのかと自分でもビックリ。

「王様への献上品だから、小粒、中粒の類は除けてと……」

それに宝飾品も大粒のものが付いたもの以外は除けていく。

「大分少なくはなったけども。ふむ、どれにしようか」

この間のダンジョン産のやつは見栄えがいいから入れておいた方がいいだろう。

ということで、カリブディスのドロップ品のティアラだな。

サファイアとダイヤモンド、そして真珠がこれでもかというくらい、ふんだんに使われたティアラは見栄えも素晴らしい。

聞いた話では、上流階級女性たちの間で奪い合いが発生しているくらいだから価値も高いしいいだろう。

シーグヴァルドさんが「戦の原因にも……」なんて言ってたからビビッてアイテムボックスで永久保存だーとか思ってたけど、鑑定してみたら別に曰くつきでもなんでもなかったし。

やっぱり大袈裟に言ってただけなんだよ、きっと。

ということで、いい厄介ばら…………、ゲフンゲフン。

しかし、そういう理由ならこれもどうにかしたいところだけど……。

そう思いながら宝石にしてはずっしりとした重みのあるそれを手に持った。

「これこそ曰く付きなんだよねぇ……」

ブリクストのダンジョンで手に入れた曰く付きのブルーダイヤモンド。

小国を攻め滅ぼしてまで手に入れた逸話がある、なんて鑑定に出ちゃってるんだもんなぁ。

逸話とはいえ、知っていて「何てものを!」なんてイチャモンつけられても面倒だし、とりあえずは保留にしておいたほうが無難かな。

少々残念に思いながらアイテムボックスにしまった。

えーと、あとは……。

「これがいいかな」

フェルたちがダンジョンの洞窟から持ってきた宝箱に入っていた短剣だ。

これでもかと宝石が装飾された豪華な短剣。

実用に耐えうるかというと疑問だけど、これも見栄えだけは格別だからね。

あとは同じくフェルたちが洞窟から持ってきた宝箱に入っていた大粒のダイヤモンドだな。

その他には、どこのドロップ品だったかは忘れたけど比較的見栄えのいいルビーの指輪と宝石がちりばめられたブレスレットと黄金のゴブレットをチョイス。

「まぁ、こんなもんでいいでしょ」

直接会いに行くのだからとちょっと多めに献上品も選んだし、大丈夫なはず。

「はぁ~、しかし、王都か……」

面倒くさそうだから避けていたんだけどなぁ。

ま、行くと決まったんだからしょうがない。

イヤなことを終えたら、王都観光を楽しもう。

俺は、美味いお茶を飲みながら、気持ちを切り替えて明日に備えて床に就いたのだった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

そして、王都へと向かう当日―――。

やってきたのはお馴染みの冒険者ギルド。

まずは、頼んでいた肉を引き取りにヨハンのおっさんのところへ。

「こんちは~。肉、引き取りに来ましたー」

「おー、出来てるぜ」

そう言って、解体済みのコカトリス他の肉を次々と出してくるヨハンのおっさん。

それをアイテムボックスにしまいつつ世間話を。

「王都でも狩りに行くのか?」

「いや~……」

『行くぞ』

『うむ』

『街中ばかりじゃ飽きるからな』

『狩り、行く~!』

「……行く、みたいです」

王都なら冒険者もそれなりにいるだろうし、塩漬け案件なんてものもないだろうから、面倒事さえ済めば少しはゆっくりできるかもなんて思ってたけど、ダメみたいね。

トホホ……。

「王都周辺じゃ、大物はそうそういないかもしれねぇけどよ、なんか獲れたらこっちにも回してくれや」

「ハハ、あんまり期待しないでくださいね」

王都じゃ近場は冒険者に獲り尽くされてそうだもんね。

『期待しているがいい。我らなら少々足を延ばしたとて造作もないことだからな』

え、なに自信満々そうに言ってんのフェル。

「遠出なんてしないよ」

『まぁまぁ。儂がいるんじゃから少々の場所なら余裕で日帰りできる。主殿、心配せんでも大丈夫じゃ』

ちょっと、ゴン爺までなに言ってんの?

「いや、だから、遠出なんてしないって。なんで王都くんだりまで行って、狩りに遠出しなきゃなんないの」

「クク、お前も大変だなぁ。ま、期待して待ってるからよ!」

いや、期待しなくていいですからっ。

『王都での狩りは、遠出すんだってよ。なにが獲れるかな? 楽しみだぜ~』

『おいしいお肉だといいね~』

ドラちゃんもスイも乗っからないの!

遠出なんてしないからね!

ってか、ヨハンのおっさん、そんな気軽に「期待してる」なんて言ってると、こいつら本当にとんでもないもの獲ってきますからね!

自重するなんて考えはないんですから!

まったくもう。

王都で狩りに行くときは、注意してないとダメだなこりゃ。

ヨハンのおっさんと別れて、窓口へ。

ギルドマスターを呼んでもらうと、すぐにやってきた。

「待たせたな」

「いえ、俺たちも今来たところなので」

ギルドマスターは、ちょっと古びた肩掛けカバンを下げただけの姿だった。

「マジックバッグですか?」

「おう。冒険者時代から愛用してるな」

なんでもマルベール王国のダンジョンで見つけたものだそうだ。

古びてはいるけど、割としっかりした造りのマジックバッグだ。

こういうタイプのもあるんだな。

フェルたちに持たせるにしても、こういうのの方がいいかもしれない。

ちょい欲しいかも。

「それじゃあ行きますか」

「おう」

俺、フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイ、そしてギルドマスターの一行は、まずは街の外へと向かった。

街を出て、ちょっと行ったところにあるいつもの草原地帯。

ここはゴン爺の離着陸に最適な場所なんだよね。

「それじゃあゴン爺、お願い」

『あい分かったのじゃ』

そう言って、ゴン爺が大きくなった。

それを見て、ギルドマスターが息をのんだ。

「お、おい、本当に、乗るのか? 古竜(エンシェントドラゴン) に……」

「今更何を言ってるんですか。乗るって言ったでしょうに。ギルドとしても、近隣の街にも知らせたんですよね?」

「いや、まぁ。それはな……。いきなりドラゴンが現れたんじゃ、大騒ぎになるから、通知は出したが……」

「それなら、早く乗っちゃってください」

「ちょちょっ、ちょっと待て!」

「もう、なんですかぁ~」

『おい、なにをもたもたしている』

「ほら、フェルが焦れてるじゃないですか」

フェルとドラちゃんとスイは既にゴン爺の背に乗って準備万端だ。

「いやな、ほれ、心の準備というものが……」

そんな強面な顔をして、そんな弱気なこと言わないでくださいよ。

「大丈夫ですって。俺も最初はビビりましたけど、背中の真ん中あたりに乗って、下さえ見なければいけます」

何度も乗ってる俺が言うんだから間違いない。

遥か下を見て高所にいることを自覚するから怖くなるんだ。

下さえ見なければなんとかなる。

「はいはい、乗った乗った」

ギルドマスターの背中を押して、ゴン爺にさっさと乗せた。

「ゴン爺、みんな乗ったぞ」

ゴン爺の背中をポンポンと叩きながらそう知らせる。

『うむ。では、出発じゃ』

そう言うと、ゴン爺が悠然と飛び立った。

どんどんと高度を上げていくゴン爺。

そして……。

「ヒィィィィィッ、わ、儂は降りる! 降りるぞーっ!!」

地面を離れ浮遊する感覚に顔を青くするギルドマスター。

「ちょっ! 暴れないでくださいって、ギルドマスター!!!」

暴れるギルドマスターの巨体を押さえる俺。

座っていればいいものを、立ち上がって暴れていたギルドマスターが遥か下にある街並みをまともに見てしまった。

「ヒィィィィッ……」

バタン―――。

「あ、白目むいて倒れた」

『フン、情けないのう』

「まぁ、最初はね。俺だってようやく慣れてきたんだから」

悠然と大空をはばたくゴン爺は、俺、フェル、ドラちゃん、スイ、そして気絶したギルドマスターを乗せて一路王都へと向かったのだった。