軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百二十八話 手ぐすね引いて待っていた

「ふあぁぁぁ」

リビングのイスに座り大きなあくびをした。

こうやってボーっと過ごす時間、最高だね。

良きかな、良きかな。

俺は、しばらくぶりの平和な休日を過ごしていた。

昨日は、冒険者ギルドに行き、夜にはうちの 奴隷(従業員) たちと“お疲れ様”の宴会だった。

メインはから揚げ。

フェルたち食いしん坊カルテットの希望だったからな。

お前らどんだけから揚げ好きなんだよって感じだけど、酒のつまみにも合うし、子どもも大好きだし、宴会のメニューにピッタリだってことで採用。

先のダンジョン産のスッポンことビッグバイトタートルとシーサーペントのから揚げをしこたま作った。

もちろん酒も大人連中が好きなビールとウイスキーをたっぷり用意してな。

そこにアイヤとテレーザも作った料理を持ち寄って、宴会に相応しい豪華な食卓に。

から揚げに使っているのがビッグバイトタートルという亀の魔物だと聞いて、うちのみんなも最初はビビッていたけど、食ってみればあっさりしつつもしっかりとした旨味のある肉の虜に。

ビビッていたのはなんだったんだってくらいガンガン食ってたよ。

シーサーペントの肉は超高級品だとそれなりに知られているみたいで、特に元冒険者組が「俺ら奴隷になんてものを出すんだ!」って騒いでいたけど、「まぁ、たくさんあるんだから大丈夫だよ」って宥めたら、諦めたように食ってたよ。

ため息ついて「ムコーダさんだからなぁ」なんて言っていたけどさ。

まったくもって失礼だよね。

俺だって本当にダメなのは出さないし食わせないぞ。

ま、そんな感じで和気あいあいと宴会は進んだ。

そこで、俺が留守だった間のことも聞いたんだけど、概ね問題なかったようだ。

ただ、ランベルトさんのとこへ卸している商品の問題がねぇ……。

俺が置いていった在庫は問題ないようだったんだけど、それを移し替える人手がやっぱり足りなかったようだ。

それに専念すると、家の仕事が滞るっていうんで、その辺はランベルトさんとことの折衝を頼んでいるコスティ君がうまいことやってくれたみたいだけど。

コスティ君、グッジョブ。

そんなこんなで宴会も無事終了。

一部大人組が夜中まで酒盛りしていたみたいだけどねぇ。

「ふぁぁぁ~」

再びの大あくび。

しかし、やっぱ 奴隷(従業員) の数、足りないんだな。

一応は俺も増やすことを考えて、風呂の工事を頼んだブルーノさんとこに家の建築を頼んでるんだけどねぇ。

ただ、話では工事が始まるのはもうちょっと先だし……。

まぁ、家が建たないと 奴隷(従業員) を増やせないし、そのことは今は保留だな。

というわけで……。

「そろそろランベルトさんとこに行くとするか~」

『ぬ、あの店に行くのか。我も行こう』

『儂も主殿のお供をしようかのう。暇じゃしな』

『なら俺も~』

『スイも行くー!』

嬉々として一緒に行くと言い始めるフェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイ。

そんなみんなに胡乱げな目を向ける俺。

「お前らはどうせ買い食い狙いだろー」

俺がそう言うと、パッと顔をそむけるフェルとゴン爺とドラちゃん。

スイだけは呑気に『いっぱい食べるー』とピョンピョン飛び跳ねている。

ハァ~っと溜息を吐きつつ、いつものことかと気を取り直す。

「んじゃあ、行くか」

俺はフェルたちを伴い、ランベルトさんの店へと向かった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ランベルトさんの店へ行くと、ちょうど店先に出ていたランベルトさんとマリーさんに出迎えられた。

「まぁー! ムコーダ様、やっと戻ってらしたのね~。さぁさぁ、どうぞこちらに!」

そう言いながら満面の笑みを浮かべるマリーさん。

そして、なかなか強い力で俺の背中を押して店の奥へと誘う。

そんなマリーさんと困惑する俺を、ランベルトさんは苦笑いしながら見ていた。

何度も入ったことのある店の奥にある部屋で、テーブルを挟んでランベルトさんとマリーさんご夫婦と俺が向かい合う。

ちなみにフェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイのお供たちは店の外で待っている。

「卸していただいている石鹸やシャンプーなど、評判が評判を呼び売れに売れていますのよ~」

ニコニコとご機嫌な様子でそう話すマリーさん。

そうでしょうねぇ、今さっきも女性客がわんさか押し寄せていましたし。

「それで、ご相談なのですがぁ~……」

「量を増やすっていうのは、今はちょっと無理ですよ」

マリーさんの言いたいことはなんとなく想像できたから、事前にけん制。

今でも人手が足りないのにそれ以上はどうにもならんよ。

うちはブラックじゃないしー。

「いやいや、そうではないのです。もちろん状況が整えばそうしていただきたいのですが」

ふむ、コスティ君からの話はマリーさんにも伝わっているようだな。

「私がご相談したいのは……」

そう言いながら、マリーさんがテーブルの上に置いてあった細工の施されたキレイな箱に手をかけた。

その箱、なんだろうって気になってたんだよね。

「コレのことです!」

箱から取り出されたのは見覚えのある瓶。

「それは……」

「はいっ! ムコーダ様からいただいた、顔に塗るクリームです!」

キラキラというかギラギラとした目で満面の笑みを浮かべるマリーさん。

「素晴らしいお品でした! ムコーダ様に教わったとおりにお顔を洗ったあとにこれを塗りましたところ、翌朝の肌が、もうもうっ」

マリーさんが、自分の頬に手を当てながらうっとりとした顔をしている。

そんなマリーさんの横にいるランベルトさんが何か諦めたように首を振っているんだけども。

「十代のころ、いえ、そのころと比べても遜色のないツヤッツヤのツルスベ肌になりましたのよーっ! 年々気になっていた小じわもいつの間にかきれいサッパリ無くなってしまい、私、もうこのクリームなしでは生きていけませんわぁ!」

人の奥さんをジロジロ見るのもあれだけど、確かにマリーさんのお肌が前よりもキレイになっている。

「つきましては、是非とも、是非ともっ、このクリームを当商会にお売りいただければ!」

げっ……。

マ、マリーさん、目が、目力がハンパなくなってますってばっ。

その目が、是が非でも逃さないって物語っていますよ!

「ムコーダさん、私からもお願いいたします。マリーの肌を見た、商人の奥様方からの問い合わせが……。そして、そこから伝わったのか貴族の奥様方からも……。特に伯爵様の奥様とお嬢様からは熱心なお問い合わせをいただいておりましてな……」

そう言いながらゲッソリとした顔を見せるランベルトさん。

問い合わせという名の激しい突き上げを食らっているのですね。

わかります。

うーん、卸すのは問題ないんだけど……。

今だって手一杯なのに、これ以上仕事を増やしてもねぇ。

しかし、ここで売れませんなんて言ったってマリーさんが逃してくれなさそうだし……。

よし、ここはとりあえず個数を限定で卸しておこう。

「ええとですね、あれだけのものですので、たくさん用意できる代物ではないんです。ですから、とりあえず100個ならば……」

「キャーッ! 本当ですのっ、ムコーダ様! ありがとうございますっ、ありがとうございますぅぅぅっ!」

マリーさんが壊れた。

なんか、今にも小躍りしそうなほどに喜んでいるんだけど。

「ありがとうございますっ、ムコーダさん」

……ランベルトさん、涙拭きなよ。

俺はお二人の様子に多少顔を引き攣らせながらも、今後についてのことも伝えた。

「あ、あとですね、今後まったく手に入らないというほどではないので、ある程度手に入ったらということで卸させてください」

そう伝えると、またもや喜びの声をあげるマリーさんだった。

ここに来た本題がまだあるっていうのに、激しく疲れたんだけど……。