軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百二十六話 ようやくカレーリナへ

地上に出た俺たちに、太陽の光が燦々と降り注いだ。

「ク~、ようやく戻ってきた! 天然の日光、最高!」

『お前は大袈裟だな』

「フェルは大袈裟って言うけどな、あの過酷なダンジョンを潜り抜けてきたんだぞ。そりゃあ浮かれもするわっ」

『はて、過酷だったかのう?』

『いや。めっちゃ楽しかったぜ!』

『楽しかったー!』

そりゃあお前たちは楽しかっただろうさ。

ダンジョンを満喫してたもんな。

でもな……。

「生きて、生きて帰ってこれた……」

「ああ。死ななくて良かった。本当に良かったな……」

「とんでもないダンジョンじゃったわい……」

「生きてるって素晴らしい」

ベテラン冒険者然とした“ アーク(箱舟) ”の面々が、静かに涙を流して地上に戻ってきたことを喜んでいた。

その気持ち、分かるわぁ。

めちゃくちゃ分かる。

このダンジョン、人には過酷過ぎるんだよ。

俺たちは、フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイがいたからなんとかなったってだけだし。

これ普通の冒険者だったら、探索するのだってほぼ入り口付近だけしか無理だろ。

広すぎて1階の湿地帯を踏破するだけで途轍もない時間と労力がかかるぞ。

というか、下手に進んだら後にも引けなくなってヤバいことになる予感しかしない。

それでも運良く1階を踏破したとしてだ、2階がアレだぞ。

やっとの思いで1階を踏破して進んだ先があの海じゃあ、絶望を通り越して笑うしかないと思うよ。

なんにしろ、うちのカルテット級の仲間がいないと進むことすらままならないダンジョンだよ。

正に鬼畜ダンジョンとしか言いようがないね。

ま、それはさておき。

「ロンカイネンの街に戻りましょう」

俺のその言葉に大きく頷く“アーク”の面々。

フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイは名残惜しそうにしていたけど、とっととこんな所とはおさらばしたいっていうのが正直なところだった。

そんなわけで、来た時と同じようにみんなで大きくなったゴン爺に乗り、一路帰還の途についたのだった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

空の旅を終え、ゴン爺が、飛び立った時と同じロンカイネンの街の郊外に着地する。

みんな次々とゴン爺の背から飛び降りる。

行きの時とは違い、ギディオンさんと、シーグヴァルドさんも落ち着いていた。

ギディオンさん曰く「ダンジョンでは空を飛ぶよりも恐ろしいことの連続だったからな……」とのこと。

シーグヴァルドさんも「今更こんなことでは動じないわ」とのこと。

二人ともそう言ったときは遠い目をしていたよ。

「それじゃあ街へ戻りますか」

『なんでもいいが、まずは飯だ』

『うむ。腹が減ったのう』

『だな~』

『スイもお腹減ったー』

「もうそんな時間かー。借りてた家に戻って……って、ダンジョンに行く前に家は返しちゃったんだった。また借りるのも面倒だし……」

そもそも、ロンカイネンの街にもう用もないし。

『おい、それならここで飯にしたらどうだ?』

「フェルの言う通り、それでもいいか。食い終わったら、そのままカレーリナに帰ってもいいし。うん、そうしようか」

なんて俺たちの間ではまとまりかけていたのだが、横から突っ込みが。

「いやいやいや、ダメだよムコーダさん。まずは冒険者ギルドに寄ってダンジョンの報告しないと。なぁ、リーダー」

「ああ。ギディオンの言う通りだろうな」

「ロンカイネンの管轄でもないし、国外のダンジョンなのにですか?」

「そうだ」

ガウディーノさんの話では、冒険者が未発見のダンジョンを発見した場合は冒険者ギルドへの報告が義務付けられているそうなのだ。

今回のダンジョンは小国群にあり、傭兵たちの間には知っているものもいるらしいことから、まったくの未発見のダンジョンとは言い難いが(恐らく冒険者ギルドでもその存在は把握しているだろうとのこと。ただ、小国群には傭兵ギルドというのがあってそちらの方が幅を利かせているために今まで手付かずになっていたのではないかというのがガウディーノさんの予想だ)、踏破をした以上は報告は免れないだろうとのことだった。

ガウディーノさんに話を聞いて、ガックリと肩を落とす。

ハァ、これはまたロンカイネンに家を借りないとダメかな……。

報告なんてしないで、このままカレーリナに帰りたい。

正直に言うと、踏破の報告って面倒なんだよね。

今までもドラン、エイヴリング、ブリクストと、俺たちが初踏破したダンジョンについては、いろいろと報告させてもらったけど、時間もかかるしいろいろと質問されるしで大変なんだよ。

質問されたことにも、思い出してできるだけ細かく答えないといけないし。

まぁ、それでも今まで踏破したダンジョンは、ダンジョン都市にあったからちゃんと報告はしていたけどさぁ。

今回は、ダンジョン都市にあるダンジョンでもないし、それこそ国外の誰も住んでいないような場所にあるダンジョンなんだよ。

そういう面倒なことはしなくても大丈夫だって思ってたのに……。

でも、踏破しちゃったんだからしょうがないのか。

…………あ。

踏破って、そういや俺たちだけが踏破したんじゃないよな。

“アーク”の面々も一緒に踏破したじゃないか。

「ガウディーノさん。えーっと、その報告って、俺がしないといけないものなんですか?」

「それはどういう意味だ?」

「いやですね、ダンジョンを踏破したっていうなら“アーク”のみなさんもだよなと思ってですね」

「ああ、そういうことなら俺たちも一応は踏破したってことになるだろうな」

「ですよね! そこで、相談なんですが、ダンジョンの報告は“アーク”のみなさんにお願いできないかと……」

俺がそう言うと、ガウディーノさんは少しの間思案する。

そして……。

「引き受けよう」

「本当ですか! ありがとうございます! そうだ、それならば……」

俺は預かっていたシーサーペントのドロップ品などを、例の宝箱から出たマジックバッグに詰めて渡した。

「中に預かっていたドロップ品を入れておきました。マジックバッグは、報告を引き受けてくださったことの報酬ですのでぜひ使ってください」

「いやいや、報告の報酬っていったってもらい過ぎだろ」

「いやいや、是非とも!」

「いやいやいや、ムコーダさん」

「いやいやいや、ガウディーノさん」

多少の押し問答はあったものの、なんとかガウディーノさんにマジックバッグを押し付けて、もとい貰ってもらうことができた。

「それじゃあ、また」

「ムコーダさん、世話になったな!」

「また美味い酒を飲ましてくれよ、ムコーダさん!」

「また美味しいご飯食べさせて」

ロンカイネンの街に向かう“アーク”の面々が、俺に次々と声をかける。

「ええ。美味い酒も美味い飯もご用意しますよ! みなさん、是非カレーリナへいらしてくださいね!」

そう言いながら手を振り、“アーク”の面々と別れた。

『行ったか』

「ああ」

『よし、なら飯だ』

「も~、フェルはすぐそれなんだから! ちょっとしんみりしてたってのに」

『腹が減っているんだからしょうがないだろっ』

『主殿、儂も腹が減ったのう』

『俺もー』

『スイもー!』

『ほれ、みんな腹が減っているのだ。早く用意しろ』

「ハイハイ、分かりましたよー!」

みんなに急かされて、アイテムボックスにあったステーキサンドの作り置きを出した。

そして、ステーキサンドを腹いっぱいに堪能した俺たち一行は、ようやくカレーリナへの帰路についたのだった。