軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百二十一話 グロい肉塊

「うっぷ」

胃の辺りがムカムカする。

「あー、俺だけでも違うもん食っとくんだった……」

胃の辺りを手で押さえながら小さくつぶやいた俺だった。

現在、野営地だった島を出て、俺たち一行は巨大スイに乗って大海原を進んでいた。

から揚げ連チャンだったというのに、俺以外はみんなケロッとしている。

食いしん坊カルテット&食いしん坊エルフなんて、朝からまた肉を食らっていたしね。

ドラちゃんが朝から『生姜焼きが食いたいな』とか言い出して、フェルとゴン爺とスイもそれに乗っかって『いいな』とか言い出したから、朝から生姜焼き丼を作ってやったよ。

しかも、ガッツリ食いたいとかでキャベツ無しで白飯と肉のみで。

朝から肉っていうのは、フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイの食いしん坊カルテットにとってはいつものことだけど、フェオドラさんまで匂いに釣られたのか、生姜焼き丼に熱い視線を送ってきてさ……。

だけど、さすがに揚げ物連チャンだったから一応体のためにも、朝食は俺用に作ってあるあっさりの方がいいのかなと思ったんだ。

でもだよ、フェルたちに生姜焼き丼を出してやったら、フェオドラさんが「私の分はないの?」って感じで悲しそうな顔で俺を見るんだぜ。

しょうがないからフェオドラさんにも生姜焼き丼を出してやったよ。

そしたら、めっちゃいい笑顔してるんだもん。

元々大食漢でなんでも食うエルフだから朝から肉も平気っぽかったけど、から揚げ連チャンからのこのガッツリ肉飯もいけるとはね……。

食いしん坊カルテットに負けず劣らずの鉄の胃袋の持ち主だよ、ホント。

そんなわけで、食いしん坊カルテット&食いしん坊エルフは、生姜焼き丼を朝から元気いっぱいモリモリ食い倒していたよ。

一方、ガウディーノさんとギディオンさんとシーグヴァルドさんは、俺の朝用あっさり洋食メニューを食っていた。

アルバン印の野菜をたっぷり使ったコンソメスープにスクランブルエッグ、アルバン印の野菜のピクルスにテレーザ特製天然酵母パンのトーストという実に美味いラインナップだ。

このお三方もあっさりメニューとはいえ、おかわりしてモリモリ食っていたから胃は丈夫な方なんだろう。

俺なんて、食欲なくてネットスーパーでこっそり買った野菜ジュースだけだったのに。

俺って神様の加護があるから、状態異常無効なはずなんだけどね~。

この胃のムカムカは、体からっていうより精神面からきてるのかな?

25歳過ぎてからは、体調を気にして、揚げ物連チャンなんてしたことなかったからなぁ。

それが立て続けにから揚げだったしね。

それから、柚子胡椒と味噌のから揚げが美味かったからって、バクバク食い過ぎたのもいけなかった。

何事もほどほどが一番ってことだな。

晴天の下、コバルトブルーに輝く海面を見ながらそう思う俺だった。

「うっぷ」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

シーサーペント戦から5日。

俺たち一行は、巨大スイに乗って順調に大海原を進んでいた。

「ここがダンジョンだってこと忘れそうだよなぁ……」

彼方に広がる海面を見て独り言ちる。

『あるじー、お魚ー』

そう言いながら、スイが触手でつかんだドロップ品の魚の白身を差し出してくる。

これを見ると、否応なくダンジョンなんだって思い出させられるけど。

「ありがとな」

ビッグニードルフィッシュというダツっぽい魚の身だ。

2、3日前からちょいちょい獲れるようになった。

ホイル焼きにしてみたところ、みんなにも好評だったので、こうしてスイに積極的に獲ってもらっている。

これまで、他にもクラーケンが2匹とアスピドケロン3匹と出くわしたが、フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイのいずれかにすぐさま狩られている。

まぁ、どっちも美味いもんね。

イカと高級白身がそこそこ獲れたので、カレーリナのみんなへのいいお土産になった。

今から庭で海鮮BBQなんてのもいいななんて思っていたりする。

フェオドラさんが、クラーケンとアスピドケロンが食事に出るのを期待しているっぽいけど、そこは気づかないふりで通してる。

これはお土産だからね。

死守だよ、死守。

そんな感じで、ちょいちょい魔物は出てくるものの、フェルたちのおかげで概ね平和に進んでいた。

この時までは……。

『ん、来たな』

『うむ』

『お~、なんかいっぱい来たな』

『カメー』

海面に浮かんだたくさんの甲羅がこちらに向かってきていた。

「あれはっ!」

「ゲッ、殺人亀じゃん」

「マーダーシータートルじゃのう」

「厄介だけど、あの甲羅、いいお金になる」

“ アーク(箱舟) ”の面々は知っている魔物のようだ。

殺人亀って言っていたけど、甲羅だけで2メートルくらいありそうだし、凶悪そうな面してるわ。

あれだ、カミツキガメみたいな感じ。

「よし、やるぞ! 俺たちは前に討伐したことがある。落ち着いて対処すれば問題ない。ただ、噛みつきには注意しろ!」

「おうよ! 俺たちはシーサーペントをやったんだ。Bランクの殺人亀なんてどうってことないぜ!」

「うむ! 儂らなら問題ないじゃろう」

「甲羅。いっぱい甲羅取る」

て、え?

みなさん、ヤル気なの?

『しょうがない。あの数だ。我らもやるぞ』

『しょうがないのう』

『手伝ってやるか。ってか、あれって食えんのか?』

『カメ、やっつけるー!』

フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイもヤル気だ。

みんなのヤル気モードに押されて、俺も急いでミスリルの槍を取り出した。

「来るぞ!」

ガウディーノさんのその声とともにエンカウント。

フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイは危なげなく次々と凶暴なウミガメを屠っていく。

“アーク”の面々も抜群のチームワークで次々と撃破していった。

俺はというと……。

「来るなー、こっち来るなよー」

そう願いながら及び腰で、凶悪ウミガメたちの甲羅を見ていた。

しかし、俺の願いは届かず、凶悪ウミガメとバッチリ目が合ってしまった。

俺を捕えようと、スイに上ってこようとする凶悪ウミガメ。

「ギャー、来るなって言っただろう!」

ミスリルの槍を振るうが、凶悪ウミガメはそれを見越したように首を甲羅の中に引っ込める。

「クソッ」

その間もどんどんと距離を縮めてくる凶悪ウミガメ。

「クッソ、こっち来るな!」

俺は、狙いを頭から前足に変えて斬りつけた。

「グオッ」

凶悪ウミガメの前足から赤い血がどくどくと流れ落ちる。

だが、前足の傷だけでは致命傷とはいかず、逆に怒らせてしまったようだ。

激オコな凶悪ウミガメが俺に向かってきた。

「ちょっ、待て待て待てー!」

俺は遮二無二槍を振るった。

その槍がうまい具合に凶悪ウミガメに当たり、海へとドボン。

それを見た俺は、倒すより落とす作戦へと変更した。

落ちた奴らはフェルたちか“アーク”の皆さんがなんとかしてくれる……はず!

俺は、俺に向かってきた凶悪ウミガメを無我夢中で海に落としていったのだった。

………………

…………

……

「ハァ、疲れた……」

『お主、倒してなかっただろう。なぜそれで疲れる』

「グッ」

フェルの鋭い突っ込みに唸る俺。

「しょ、しょうがないだろ! 海に突き落とすので精一杯だったんだから」

『ハァ~、お主というやつは……』

なにヤレヤレってな感じで首振ってるの?

俺は俺のできることをしたんだぞ。

『あるじー、これで最後だよ~』

「お、ありがとな。スイー」

出来上がった甲羅の山。

それを見て“アーク”の面々は満足気だ。

この甲羅、いいお値段になるらしいもんね。

そして、もう一つの山。

甲羅ほどではないが、こちらも結構な量がある。

『あの亀の肉か。美味いのか?』

『あれは儂も食ったことがないからのう。フェルはどうじゃ?』

『我もさすがにあれは食ったことがない。だが、肉が出たということは食えるということじゃないのか』

『まぁ、そうなんじゃろうのう』

『このお肉、美味しいといいねー』

『ということで、主殿、頼むぞい』

『そうだな。こいつに任せておけば大丈夫だろう』

『うむ。美味く料理するのだぞ』

『あるじー、美味しくしてね~』

「おいおい……」

俺任せかよ。

ってか、これ、本当に食えるのか?

なんか、今までにない皮付きの肉塊で、ものすごくグロテスクなんだけど。

足なんか、そのまんまだぞ。

ま、まぁ、今すぐどうこうする必要もないし、保留だな、保留。

わざわざこれ食わなくても、食える肉はアイテムボックスにいっぱいあるしさ。

そんなことを考えながら、引き攣った顔でグロい肉塊をアイテムボックスにぶち込む俺だった。