軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百十七話 賢者の石

ようやく戻ってきたフェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイの食いしん坊カルテット。

その名に相応しく、みんな開口一番に『腹減った』だった。

苦笑いしつつ、すぐさま夕飯にしたよ。

そして、みんなの大好物のから揚げに舌鼓を打ちつつ、今日の狩りの話に。

「そんで今日は何を狩ってきたんだ?」

俺がフェルたちに話を振ると、“ アーク(箱舟) ”の面々も興味津々の様子で耳を傾けている。

『ま、まあ、ここから反対側にあった洞窟にちょっとな』

『そ、そうじゃな』

んん?

フェルもゴン爺もはっきり言わないし、なぁんか歯切れが悪いなぁ。

こういう時は、素直なスイちゃんに聞くとしますか。

「へぇ~、島の反対側まで行ってたんだ。で、スイちゃん、何を狩ったのかなぁ? 教えて~」

『うんとねー、ホネー!』

から揚げを体内に取り込みながら、素直に答えるスイ。

それを見て、スイの隣にいたドラちゃんが、手を頭に乗せてアチャーという仕草をした。

「ホネ?」

『うん、ホネー』

…………。

「ホネって、スケルトンのことか?」

ギディオンさんのヒソヒソ声が聞こえてきた。

スイの念話は聞こえていないものの、俺の「ホネ」という言葉で連想したようだ。

やっぱそうだよねー。

骨の魔物って言ったらスケルトンだよね。

「フェル、ゴン爺、どういうことかな?」

少なくともフェルとゴン爺は、アンデッドがいるって分かって行ってるはずだよな。

俺としては、みんなは肉がドロップしそうな獣系の魔物を狩りに出掛けたと思っていたんだけど。

いったいどういうことなんでしょうねぇ~。

俺から目を逸らして、ひたすらから揚げを食い続けるフェルとゴン爺。

言わないつもりならこっちも奥の手を出すからな。

「明日の飯はどうしようかなぁ~。アルバンからもらった野菜もたくさんあるし、肉少なめで野菜たっぷりの炒め物なんていいかもしれないなぁ~」

『お、おいっ! それは卑怯だぞ!』

『そうじゃ! そんな殺生な仕打ちはひどいぞい、主殿!』

「なぁに言ってんだよー。卑怯でも殺生な仕打ちでもないだろー。俺はただ明日の飯のメニューは、どうしようかなーって考えてただけだしー」

とぼけてそんな風に返すと、フェルもゴン爺も苦々しい顔をしている。

「ホント、明日の飯はなんにしようかなぁ~。あ、そうだ! この際、肉は無しで野菜尽くしっていうのもありかもー」

『ぐぬぅ』

『ふぬぅ』

俺の『肉は無しで野菜尽くし』という言葉を聞いて、呻き声をあげるフェルとゴン爺。

そして、肉無しの野菜尽くしな飯がよっぽど嫌だったのか、フェルとゴン爺がようやく白状したのだった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「いや、話は分かったけど、それならそうと最初っから言えば良いのに」

『だからさっきも言っただろうが。お主に言っても絶対に「行く」とは言わぬだろうが』

「いやまぁ、そうだけどさ」

当たり前じゃん。

アンデッドがいる場所なんて好んで行くわけないし。

『じゃから、主殿が「休みが欲しい」と言ったときに、それに同意したというわけじゃ』

「俺が休みの間にお前らだけで行ってこようって魂胆だったってことだな」

『いやまぁ、間違ってはいないのう』

なにが『間違ってはいないのう』だよ。

最初っから俺に内緒で行く気満々だったってことじゃん。

「フェルやゴン爺、ドラちゃんは心配ないけど、スイはまだ子どもなんだからな。あんまり無茶な所には連れ出すなよな!」

『フン。スイに無茶な所などあるか。実力は折り紙付きだ。お主だってスイの戦いぶりは幾度となく見ているだろうが』

『うむ。儂も、こんなに強いスライムを見たのは初めてじゃ。スイがそうそうやられるはずはないのう』

『ってかよ、お前はスイに対しては心配し過ぎなんだっつーの』

スイが強いっていうのは、そりゃあ分かってるよ。

どんだけ一緒にいると思ってんだよ。

心配し過ぎっていうのも分かってはいるんだし。

でも……。

『あるじー、から揚げ美味しいね~』

キャッキャと嬉しそうにから揚げを食っているスイ。

「スイ~」

その無邪気な可愛さに、思わずスイを抱き上げてギュッと抱きしめる。

やっぱダメ!

心配!

「こんなに可愛いスイに何かあったらって思ったら、心配せずにはいられないだろ!」

そう言いながらプルプルのスイに頬ずりする俺。

『ウフフ。あるじー、くすぐったいよぉ』

「ウフフ、くすぐったいかぁ。じゃあ、もっとしちゃおうっかなぁ。ウリウリ」

イチャつく俺とスイを見て、なぜか溜息を吐いているフェルとゴン爺とドラちゃん。

『親バカめが』

『親バカじゃな』

『親バカ全開だな』

フン、親バカ上等。

親バカでなにが悪いってんだ。

『フン、まぁいい。土産があるぞ』

「土産?」

『うむ。宝箱が出たのじゃ。主殿へと思ってのう。一応持ってきてあるのじゃ。四つほどな』

『ほらよ、こん中に入ってる』

ドラちゃんが渡してきたマジックバッグ。

みんなが狩りに行くっていうんで、今朝持たせたものだ。

中に入っていたものを出していくと……。

「よっこいせと」

最初に出てきた宝箱の中身は、箱から零れ落ちそうなほどに満杯に入った金貨だ。

「おぉ」

「スゲー……」

「あれだけの金貨、めったにお目にかかれないのう」

「眩しい……」

ガッツリ注目していた“アーク”の面々から声が上がった。

そんな驚くことかな?

ダンジョンの宝箱に金貨って、けっこうあるあるだろ。

ってか、今までもけっこう宝箱が出たから、ダンジョン産の金貨は俺のアイテムボックスの中にたくさんあるし。

二つめに取り出した宝箱。

その中身は……。

「短剣か」

ゴテゴテと宝石が装飾された短剣が出てきた。

これは実用というよりは、飾り物だな。

「ゴクリ。すごいものだな……」

「見ろよ、あの宝石の大きさ……」

「正に贅の限りを尽くした短剣じゃわい……」

「あれ、ミスリル……」

これ、見た目は豪華だけど、多分使えないよ。

だって、柄にもこんなに宝石が付いてるんだから、握り難いしギュッと握ったら痛そうだもん。

刃はミスリル製みたいだけど、使えないんじゃあねぇ。

これは買い取りに出す物件かな。

次、三つ目の宝箱だ。

中に入っていたのは……。

「ダイヤモンドか」

大粒のダイヤモンドが10個ほど入っていた。

これも買い取りに出す物件だね。

「ダイヤモンド……」

「あんな大粒なのあるもんなんだな……」

「ダイヤモンドといやぁ人気の宝石だわい。すぐにでも買い手がつくぞ」

「キラキラ……」

羨ましそうに見てくる“アーク”の面々。

「しかし、どれもこれもすごいお宝じゃのう」

「ああ。どんなのを倒したらあんなのが出てくるんだろうな」

「それ、俺も思った。すっげぇ興味ある」

シーグヴァルドさん、ガウディーノさん、ギディオンさんが宝箱を凝視しつつそんなことを話している。

フェオドラさんも興味があるのか、しきりに頷いているよ。

『む、これを落とした相手か? スケルトンキングだぞ』

“アーク”の面々の話を聞いていたフェルがそう答える。

『うむ。人語を解し、しゃべっていたから、もう少しやりよるかと思ったが、たいしたことなかったのう』

フェルに続いてゴン爺がそう言った。

というか、人語を解してしゃべる魔物?

たいしたことなかったとか言ってるけど、本当はヤバめのヤツなんじゃないのか?

『うん、しゃべるホネをやっつけたんだよー』

『みんな一回ずつ戦ってみたけど、みんな一発で倒してたよなー』

ドラちゃんが、みんな一発で倒したって言ってるけど、やっぱりたいしたことないのか?

よく分からんな。

「いやいやいや、スケルトンキングだぞ。リッチと並んでアンデッド最高峰のSランクの魔物だぞ」

「スケルトンキングっていやぁ、昔、万の軍隊が討伐に動いたけど全滅したって逸話が残ってるよなぁ」

「スケルトンキングなぞ相手にして、生き残れる未来が浮かばんわい」

「スケルトンキング……」

スケルトンキングと聞いて、目を剥く“アーク”の面々。

はい、たいしたことありました。

Sランクのヤバめの魔物でした。

いや、それを一発で倒す食いしん坊カルテットの方がヤバめなのだろうか……?

それは考えないようにしよう、うん。

次だ次。

最後、四つめの宝箱。

中身は……。

「ん? なんだろう、この赤い石……」

『それはのう、この間の件についての儂とフェルへのデミウルゴス様からの報酬じゃそうじゃ』

「この間の件のデミウルゴス様からの報酬? ………………ああ!」

ルバノフ教のことねー。

デミウルゴス様も律儀だなぁ。

『“賢者の石”というそうだぞ』

「賢者の石?」

『うむ。この“賢者の石”を使うと、普通の鉄がミスリルやらオリハルコンやらヒヒイロカネに変わるらしい』

…………は?

フェルさんや、今サラッと言ったけど、ものすごいこと言ってませんでした?

ゴクリと喉を鳴らしながら、恐る恐る“賢者の石”とやらを鑑定してみる。

【 賢者の石 】

錬金術師たちが追い求める至高かつ伝説の石。この石を媒介にして鉄に魔力を流すと、その魔力量により鉄がミスリル、オリハルコン、ヒヒイロカネに変化する。

「……ふぁっ?!」

マ、マジだ。

鉄がミスリル、オリハルコン、ヒヒイロカネに変化するって……。

というかだ、めっちゃ気になっていることがある。

「ミスリルは、少量だけど流通してるよな」

俺も某所で見つけたミスリルで、スイに作ってもらった剣と槍を持っているし、高ランク冒険者なら持っている者もいる。

でもさ……。

「オリハルコンとかヒヒイロカネって、あるの?」

聞いたことがないんだけど。

それは、シーグヴァルドさんが答えてくれた。

「オリハルコンもヒヒイロカネも、かつては現存していた記録が残っとる。だが、今はない。大昔に製錬方法も加工方法も失われた、伝説の金属と言われておるわい。だがのう、ドワーフの鍛冶師の中には未だ追い求めている者が数多くいると聞く」

ゴクリ……。

「も、もしですよ、オリハルコンとかヒヒイロカネの現物が出回ったとしたら?」

「……血を見ることになるじゃろうのう」

ヒェ~。

ちょっとー、デミウルゴス様、こんなのいらないって!

“賢者の石”って、なんてものよこすんですか!

これじゃあ褒美じゃなくって、罰ゲームでしょうがぁぁぁっ。

こんなの世に出せるわけないじゃん!

アイテムボックスに永久保存だよ!

って、どうしよう。

“賢者の石”、ヤバいなんてもんじゃないのに、“アーク”の面々にバレてるじゃん。

こ、ここは真摯にお願いするしかない。

「あ、あの、これは、見なかったことに。こ、こんなものは、宝箱から出なかった。最初から無かったんです。どうか、どうか、くれぐれもよろしくお願いいたしますっ」

土下座する勢いで頭を下げる俺。

そして、その俺のお願いに、青い顔で頷く“アーク”の面々。

「ハハ、俺は何も見てない、何も見てないぞ」

「フハハ、そうだ。“賢者の石”なんてものはまったく知らないぜ」

「そんな厄介なもの、儂は知らん。知らんったら知らんわい」

「何も無かった。私は何も見ていない」

ガウディーノさん、ギディオンさん、シーグヴァルドさん、フェオドラさん……。

すまぬ、本当にすまぬ。

デミウルゴス様の無頓着さが生んだ悲しい出来事だったんです。

もうちょっと考えてくださいよ、デミウルゴス様~。