軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百十二話 休みもぎ取ったった

『あれー? さっきのおっきいお魚さんと違うみたいだよー』

『ホントだな。ってか、これ食えるのか? 見た感じすっげぇマズそうだけど』

ドラちゃんとスイが次なる獲物としてロックオンした背ビレの主は超巨大なサメだった。

その超巨大サメが、近付いていった俺たちを逆にロックオン。

鋭い歯がびっちりと生えた大口を開けて、今にも俺たちを食おうとしていた。

「ちょっとぉー! 呑気に話してないで、何とかしろぉぉぉっ」

迫り来る超巨大サメ。

「あわわわわわ」

腰砕けになり尻もちをつく俺。

そんな俺とは対照的に、フェルとゴン爺の二大巨頭はこんな状況でも微動だにしていない。

片目を開けてチラリと状況を確認したあと、フェルもゴン爺もまた寝やがった。

ちょっとー、この状況でなんで寝られるんだよー!

覚えてろよ、お前たちー!

『あるじー、大丈夫だよー! スイがやっつけちゃうんだから~。エーイ!』

そう言って、スイが超巨大サメの大口に酸弾を数発撃ち込んだ。

今にも俺たちを食おうとしていた超巨大サメの姿が一転した。

ザッパーン―――。

ザッパーン―――。

ザッパーン―――。

鋭い歯をむき出していた超巨大サメがその口を閉じ、尾ビレをしならせながら海面を打ち付ける。

「うわわわわっ」

もがき苦しみ暴れる超巨大サメ。

その影響で、海面が大きく揺れていた。

落ちないように必死にスイにしがみつく俺と“ アーク(箱舟) ”の面々。

『うわ~、ゆーれーる~。おもしろぉーい!』

キャッキャとはしゃぐスイ。

その大きく揺れる海面を作っている暴れる超巨大サメ。

シュールゥ……。

超巨大サメの動きが徐々に鈍くなっていった。

そして、最後には腹を上に向けてプカプカと浮いて動きを止めた。

『あーあ、終わっちゃった~』

残念そうにしているスイ。

『消えたー。うーんと……、取ーれた!』

スイの触手が海面から飛び出した。

『はい、あるじー』

「あ、ああ」

スイから受け取った超巨大サメのドロップ品。

細かいギザギザがある鋭い歯と大きめの魔石だった。

『てかよー、スイがまた倒しちまったじゃねぇかー。次は絶対俺だからな! スイは手出すなよ!』

『ええ~』

『えーじゃねぇの! スイばっかずっこいだろ!』

『も~、しょうがないなぁ。スイ、いい子だから次はドラちゃんに譲ってあげる~。でも、次の次はスイだからねー』

…………。

「あの、もしもし君たち。まだ、続けるつもりなの?」

『当然だろ。あの魚の身を手に入れるまでは続けるぞ』

『あるじー、美味しいのいっぱい獲るね~』

ドラちゃんもスイも続ける気満々だった。

「い、いや、カジキの身はもう手に入ったから、これでいいと思うんだ」

『何言ってんだよ。もっといっぱいあった方がいいだろ』

『美味しいのいっぱいがいい~』

『よし、また見つけるぞ!』

そう言ってドラちゃんが再び飛んだ。

『んーっと、お、いた! 左前方に背ビレ発見! スイ、行くぞー!』

『ハーイ!』

「いやいや、ちょっとちょっと、もう十分だからね!」

『こっちだ、スイー』

『分かったー!』

ドラちゃんの先導によって、意気揚々と白波を立てながら進んでいくスイ。

やる気満々で盛り上がるドラちゃんとスイには、俺の声はまるで届いていないようだった。

「ハァ~。ドラちゃんもスイも盛り上がっちゃって」

こりゃあ気が済むまで止まらないなと思い、“アーク”の面々に詫びを入れておこうと振り返ると……。

「エェ…………」

無言のまま、なにか悟りを開いたような穏やかな笑みを浮かべた“アーク”の面々がいたのだった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「ああ~、疲れた……」

本日の野営地の島に着いて、最初に出たのがこの言葉だ。

いろんな意味で疲れた一日だったよ。

ドラちゃんとスイの狩りというか漁は、結局夕方まで続けられた。

目当てのタイラントソードフィッシュがなかなかいなくてなぁ。

って、そもそもあんなものホイホイいるわけじゃないんだろうけどさ。

まぁ、そんなわけでドラちゃんもスイもなかなか満足しなくて、結局は丸一日を費やした感じだ。

そのおかげか、あれから2つほどタイラントソードフィッシュの身を手に入れたんだけど……。

それまでの道のりがそりゃあ大変だったよ。

さすがにドラちゃんもフェルやゴン爺みたいに気配で魔物を見つけてってことまではできないからねぇ。

背ビレを目視で見つけてからってことになる。

背ビレだけだからさ、その主がタイラントソードフィッシュとは限らないわけさ。

でっかいシャチみたいな魔物に食われそうになったり、クジラっぽいのに鋭い歯がびっしり生えた思いっきり肉食な魔物に食われそうになったり……。

いろいろとひどい目にあったよ。

そんなことがあっても、頼みのフェルとゴン爺は『ドラとスイなら大丈夫だろう』って、我関せずで昼寝を満喫しやがってたしさ。

“アーク”の面々なんて、立て続けにそういうことがあったもんだから、燃え尽きて真っ白になってるんだぞ。

ハァ~、とにかくえらい目にあった日だった。

こんな時は、すぐにも寝たい気分だが……。

『今日の飯は何だ?』

『さっきドラとスイが獲った魚かのう? 追加で獲れたようだし、量も十分じゃろう』

『いいな。美味いという話だったしな。そうしろ』

そうしろってねぇ、ぐぬぬぬぬ。

というかさぁ……。

「フェルもゴン爺も、寝ていた割にはしっかり話聞いてたんだなぁ~」

嫌味で言ってやったんだが、フェルもゴン爺もどこ吹く風で『当然だ。そのくらい聞こえている』とかドヤ顔で言ってくるし。

全然通じないんだから、このニブチンどもめ。

そんなことを考えながらやさぐれていると、フェルとゴン爺に加勢が。

『俺もさっき獲った魚食いたい!』

『スイもー!』

ドラちゃんとスイもタイラントソードフィッシュをご所望らしい。

「はぁ、分かりました。さっきの魚の身を夕飯に出せばいいんでしょー。お前らの希望を叶えるんだから、俺からも一つ希望言うぞ」

『お主の希望だと? 何だ?』

ぐぬぬ、フェルのヤツ目を細めて偉そうにして~。

「この辺で1日休みが欲しい! 毎日毎日海の上じゃあ疲れちゃうよ。明日一日、探索は休みってことでいいだろ?」

俺がそう言うと、“アーク”の面々がキラキラした目で俺を見てきた。

ガウディーノさんもギディオンさんもシーグヴァルドさんもフェオドラさんも、みなさん俺と同じく疲れてたんだね……。

『ふむ。まぁ、いいぞ』

ん?

なんか意外なほどあっさり許可が出たぞ。

『おいおいおい、先に進まなくていいのか?』

異を唱えたのはドラちゃんだ。

『ドラ、ちょっと黙っとれ。あとで理由を教えるぞい』

『理由?』

『いいから。ドラとスイにはあとで話すわい』

ゴン爺がドラちゃんを 窘(たしな) める。

何だか怪しい。

怪しいけど……、まぁいいか。

今は休みが取れたってことの方が重要だしね。

さぁて、明日はゆっくりするぞ~。