軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百九十八話 から揚げと聞いてハッスル

只今、絶賛ダンジョンの1階層(になるんだよな?)の湿地帯を巨大化したスイに乗り込んで探索中。

というのも湿地帯ということもあって、フェルが走破を拒否。

話し合いの中で、ゴン爺に乗る案も出されたけど、それだと魔物が出る度に着陸することになって却って面倒になるだろうということで巨大化したスイに乗ることでまとまった。

それから、とにかくだだっ広い湿地帯なので、飛翔できるゴン爺とドラちゃんのドラゴン組は先行して空の上からこれはと思う魔物を見つけたら知らせることに。

ちなみにだが、スイの横取りの件は、それはダメと説教して(前にも教えたんだけど、ダンジョンということでテンション上がってすっかり忘れちゃってたようだ)、“ アーク(箱舟) ”のみなさんにドロップ品の皮と牙を渡してごめんなさいして和解している。

まぁ、そんな感じで始まった湿地帯の探索だ。

水鳥っぽいのはちょこちょこ見かけるけど、俺たちが近付くとすぐに飛び立ってしまうし、ゴン爺とドラちゃんからも念話が入らないから小者なんだろう。

そして、進むことしばし。

途中でカピバラっぽいのもけっこう見たけど(俺の知っているカピバラの倍の大きさはあったけども)、これもゴン爺とドラちゃんから念話が入らなかったから、たいしたことはないのだろう。

『おーい、まぁまぁの獲物を見つけたぞ』

ドラちゃんからの念話だ。

『この先の川に小ぶりだがワニがけっこうな数おるのう』

ゴン爺からの補足。

「分かった。ゴン爺とドラちゃんは待っててくれ」

そう念話を返して、まずはフェルとスイへ確認だ。

「フェルとスイは聞いたな」

『うむ。ワニか。まぁいいだろう』

『ワニさん倒すー』

あとは“アーク”の面々に。

「この先に川があるみたいで、そこにワニの魔物がいるみたいです」

「そうか。なら皮と牙、あとは肉のドロップが期待できるな」

「けっこうな数いるみたいなんで、二手に分かれて狩りましょう」

「そうだな。合同とは言っても、やはりそれぞれでやったほうが連携も取れてやりやすいだろう」

さすがガウディーノさん分かってるね。

「お前らもいいな」

ガウディーノさんが、ギディオンさん、シーグヴァルドさん、フェオドラさんへと声をかけると、3人も真剣な面持ちで頷いた。

これぞ冒険者って感じだね。

やっぱうちとは違うわ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

川の手前でゴン爺とドラちゃんと合流。

しかし……。

「ワニ、いっぱいいるなぁ……」

川岸にも川にも、5メートル級のワニが数えるのも嫌になるほどたくさんいた。

ゴン爺は小ぶりって言っていたけど、全然小ぶりじゃないね。

ハハハ……。

「ほぅ、こりゃあレッドテイルカイマンじゃな」

この魔物を知っているらしいシーグヴァルドさんがつぶやいた。

その名の通り、確かに尻尾のほうが赤っぽい。

でも、カイマン?

俺が間違ってなければ、カイマンって比較的小さめのワニだった気がするんだけどな。

この世界じゃこれでも小さいってことなのかね。

まぁ、これまで見てきたワニの魔物の大きさを考えるとお察しだけどさ。

「レッドテイルカイマンか。肉も皮もいい値が付くな」

「ああ。3匹は仕留めておきたいところだ」

「いや、もうちっと欲しいところだぞい。儂もじゃが、お主らの鎧ももうそろそろ新調したほうがよいじゃろ」

「確かにな」

「そんじゃあ気張っていくか。初手はいつも通り、フェオドラだ。頼むぞ」

「分かってる」

“アーク”の面々の会話を横で聞いていて、これが普通の冒険者なのかって年甲斐もなくちょっとワクワクしちゃったよ。

「ムコーダさん、それじゃあ二手に分かれてな。心配無用だろうけど、気を付けて」

「はい。みなさんもお気を付けて」

そう返すと、声をかけてくれたガウディーノさんをはじめ、“アーク”のみんなが軽く手を挙げてから川岸にいたレッドテイルカイマンに向かっていった。

「それじゃ、俺たちも行くか」

『こんな雑魚相手ではやる気が出んな』

『そう文句言うなって。まだまだダンジョン探索も始まったばっかりなんだしよ』

『フェルの気持ちはわからんでもないが、序盤ならこんなもんじゃろう』

ブー垂れるフェルにドラちゃんとゴン爺が言い募る。

「そうだぞ。それに、肉はいい値がつくらしいから不味くはないんじゃないか。ワニ肉ならから揚げにしても美味いし」

そう言うと、フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイの動きが一瞬止まった。

そして……。

『かーらー揚ーげー!』

そう叫びながらレッドテイルカイマンに突進する巨大スイ。

「ちょーっ、スイーーー?!」

急に動き出したスイから落ちないよう、必死につかまる俺。

『から揚げになるというのなら、こうしてはおれん。我も狩るぞ!』

スイから華麗に飛び降りたフェルもレッドテイルカイマンに向かっていった。

『俺らは川の中にいるやつをって、川にいるやつを仕留めても、肉は川底に沈んじまうんじゃねぇか?』

『確かに。よし、儂が捕まえて川岸に落とす。ドラは順次仕留めるのじゃ』

『了解っ!』

えー、ゴン爺とドラちゃんのその連携は何?

ドラゴンだから通じるものがあるっていうのか?

『えーーーいっ!』

ビュッ―――。

スイから伝わる振動。

「うわわわっ、スイ~」

巨体から大きめの酸弾を発射したスイ。

その酸弾がぶち当たったレッドテイルカイマンの横っ腹には大きな穴が開いていた。

「うへぇ」

そして、レッドテイルカイマンが消えた後に残されていたのは……。

『ぶぅ、お肉じゃなぁぁい』

残されていた皮にご不満のスイ。

「ほ、ほら、まだワニさんいるから、いっぱい倒せばお肉も落としてくれるよ」

『うーん。スイ、いーっぱいたーおーすー! えーいっ、えーいっ、えーーーいっ』

スイが、川岸にいたレッドテイルカイマンに片っ端から酸弾をぶち当てていった。

夢中になっているスイから、そっと降りる俺。

「スイちゃん……」

あの可愛かったスイはどこへ行ってしまったのだろうとちょっと物思いに耽る俺だった。

その先ではフェルが、こちらも手当たり次第に 爪斬撃(そうざんげき) を放ちレッドテイルカイマンを屠っている。

ゴン爺とドラちゃんは見事な連係プレー。少し大きくなったゴン爺が両方の前足で鷲掴みしたレッドテイルカイマンを次々と川岸に落とし、それをドラちゃんが氷魔法で仕留め、まるで流れ作業のようにレッドテイルカイマンを屠っていた。

そんな感じで、狩り尽くさんばかりにレッドテイルカイマンをドロップ品に変えていくフェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイの食いしん坊カルテット。

から揚げの一言でこんなことになるとは。

カオスだね……。

そして、そう時間もかからないうちにレッドテイルカイマンはいなくなった。

川岸には大量のドロップ品が散乱している。

「ハァ……。ダンジョン恒例のドロップ品拾い、やりますか。みんなも手伝えよー」

『当然だ。から揚げになるのだからな』

『うむ。肉は漏らさずに拾わねばならんのう』

『だな!』

『から揚げ~!』

フェルとドラちゃんにマジックバッグを預けると、フェルとスイ、ゴン爺とドラちゃんが組になってドロップ品を拾い始めた。

「さて、俺も拾うか。ったく、いつものことだけど多いよなぁ……。って、おいっ、お前ら肉ばっかり拾うなって。それ以外も一応拾っておくように!」

肉ばかり拾って、皮や牙は無視する食いしん坊カルテットに注意する。

「ったく、せっかく出たドロップ品なんだから、ある程度は回収しないともったいないだろうが」

ブツブツ言いながらも手を動かす俺。

肉に皮に牙、そしてまた肉、皮……。

黙々とドロップ品を拾っていく。

「あ~、腰に来るわ……」

おっさんくさく腰をトントン叩いていると、背後から声がかかった。

「ム、ムコーダさん……」

振り返ると“アーク”の面々が。

未だ散乱する大量のドロップ品に、唖然としている。

「い、いや、あの、みんなが張り切っちゃったもので……」

目をそらしながらそう説明する俺。

「俺らも4匹倒して、幸先が良いと思ってたんだけどな……」

ギディオンさん、遠い目をしてそんなことを言われても。

「え、ええと、大至急ドロップ品を拾っちゃいますので、ちょっと待っててください」

そう言って、原因を作った食いしん坊カルテットにも念話で指令を出して超特急でドロップ品を拾い集めていった。

「フゥ~、よ、ようやく終わった」

粗方拾い終わって安堵していると……。

『む、一匹残っていたな』

フェルの視線を追うと、川を悠々と泳ぐレッドテイルカイマンの姿が。

『ふむ、儂が獲ってこようかのう』

そう言ってゴン爺が飛び立った。

そして、泳ぐレッドテイルカイマンをゴン爺が掴み上げ上昇しようとした瞬間。

ザッパーン―――。

元のゴン爺から比べれば小さい姿とは言え、10メートル級のその体に匹敵するような巨大魚が水面から跳び出してきた。

バクリ―――。

問答無用でゴン爺の掴んだレッドテイルカイマンに食らいつく。

『儂の獲物を横取りするとは不届きな奴じゃのう』

そう言って、グヮシッと巨大魚の頭を鷲掴みして上昇する。

巨大魚が慌ててビチビチと尾を振るが、時すでに遅し。

というか、天下の 古竜(エンシェントドラゴン) にケンカを売った時点で命運は尽きていた。

巨大魚の頭にガッチリとゴン爺の爪が食い込み、川岸に着いたときには既に息絶えていた。

『ワニを獲るはずが、魚が獲れたわい』

そう言って俺の前に巨大魚を差し出すゴン爺。

ゴン爺、いやね、こんなの差し出されてもさ。

チラリと横を見ると、再び“アーク”の面々が唖然とした顔を晒していたのだった。