軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百七十七話 魔剣の正しい使い方

朝食を食べ終えて、リビングで朝のコーヒーを飲みつつまったり。

フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイもコーラを飲みつつまったりしている。

「なぁ、今日はみんなに手伝ってもらいたいことがあるんだけど、いいか?」

『む、我は狩りに行きたいところなのだが、まぁいいだろう』

『儂も暇じゃし、いいぞ』

『俺も狩りには行きたいけど、お前がいないとどっちみち美味い飯が食えないからな。手伝ってやる』

『スイもいいよ~。あるじのお手伝いするー』

『で、何をやるのだ?』

「ええと、裏に生えてる木をな……」

みんなに 奴隷(従業員) を増やす予定でその家を造るために、木の伐採をして更地にする必要があることを説明した。

「実際の工事は、まだ先の予定なんだけど、時間のあるうちに早めにやっとこうかなと思ってさ」

後でなんて言っていると延び延びになっちゃいそうだし。

とは言え、裏に生えてる木は数にすると10本もないけど、その中に太い木が何本かあって、普通に切るとなるとかなり苦労しそうなのもあるんだよな。

『何だ、木を切ればいいのか? そんなもの魔法を使えばすぐに済むぞ』

『だな』

『うむ。一瞬で終わるぞい』

『スイもビュッてやって木を切るよー』

みんなにかかれば一瞬で終わるらしい。

あと、スイちゃんのビュッは切るじゃなくて溶かすでしょ。

ま、この分なら、そんなに時間もかからずに更地にできそうだね。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

フェルたちと共に、母屋の裏へとやってきた。

仕事を始める前のトニ一家やアルバン一家、元冒険者たちが何事かと集まってきた。

「騒がせてすまないな。実はな……」

フェルたちに説明したのと同じことを 奴隷(従業員) 一同に説明する。

「詰め替え作業が大変になってきてるだろ。コスティ君、もう少し卸す量を増やせないかって、ランベルト商会からも話が来てるんじゃないの?」

ランベルトさんのところとの折衝を任せてあるコスティ君に話を振ると、困り切った顔で「はい、実は何度かそういう話が……」と返ってきた。

だろうねぇ。

石鹸やらシャンプーやらもそうだけど、育毛剤も売れちゃってるもんねぇ。

「さっきも言った通り、工事はまだ先だけど、そういう予定はあるから、それまではもう少しここにいるみんなでがんばってくれな」

俺がそう言うと、 奴隷(従業員) 一同「もちろんです」と力強く頷いてくれた。

「それから、コスティ君もできる範囲で卸すようにすればいいからね。ランベルトさんのとこなら、無理強いするようなことはないと思うけど、強く言ってくるようなら俺に言ってな」

俺がそう言うと、コスティ君はちょっとホッとしたのか「はい」と笑顔を見せた。

「さてと、それじゃあ始めるかな」

「あのっ」

「ん? どうしたテレーザ」

おずおずといった感じでテレーザが声をかけてきた。

「切り倒した木はどうされるのですか?」

「んー、そうか、そのままってわけにはいかないし、後始末があるんだったな……」

そういや切り倒したあとの木の始末は考えてなかった。

アイテムボックスにしまっておいて、後でどっか街の外の広い場所で燃やして処理するかな。

「あの、使う予定がないのであれば、いただけないでしょうか?」

「木を?」

「はい」

テレーザによくよく聞いてみると、なんのことはない。

石窯に使う薪として使いたいとのことだった。

トニが庭木の手入れで切った枝なんかを薪代わりに使ったりしているようだが、それだけではどうしても足りない。

足りない分の薪は今まで購入していたんだそうだ。

「そうだったのか。気が付かなくてゴメンなぁ。そうか、そうだよなぁ。石窯には薪が必要だよな」

テレーザからは何度も焼きたてのパンのお裾分けをいただいておいて、気が付かないとは主人失格だよ。

「切り倒した木は、遠慮なく全部薪として使っちゃって。ある程度の長さに切って、端っこに積み上げておけばいいかな? 細かく切っておいた方がよければそうするぞ」

「いえいえ、端に積み上げておいていただければ、あとはこちらでやります。ね、アンタ」

テレーザから話を振られた旦那のアルバンが、何度も頷いていた。

「分かった。じゃあ、そうしておくな」

そう話がまとまったところで、みんな今日の仕事をやるべく散っていった。

「で、お前らはなんでここにいるんだ?」

みんなが散ったあともこの場にい続ける元冒険者組の双子、ルークとアーヴィン。

「俺らは今日休みだから、暇なんすよ」

「そうそう。木を切り倒すって、フェル様たちがやるんすよね? 面白そうなんで見物っす」

「見物ってなぁ、お前らは。まぁ、いいけど、邪魔だけはするなよな」

「そんな、邪魔なんてしないっすよ~」

「そうそう、そんなことしないっす」

物見遊山の双子は放置して、俺たちは仕事に取り掛かることにした。

「それじゃあ、フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイ、それぞれ木を切ってほしいんだけど」

『うむ。我はこの木を切ろう』

フェルは右斜め前にあった太い木を切ることにしたようだ。

『儂はこの木を切ろう』

ゴン爺は左側にある太い木を選んだ。

『チッ、太い木を先に選ばれちまったぜ。しゃーない、俺はこれにする』

フェルとゴン爺が選んだ木よりは細いものの、それでもけっこうな太さのある木を選んだドラちゃん。

『スイはねー、これ!』

スイが選んだ木も、ドラちゃんが選んだ木と同じくらいはありそうだ。

「それじゃあみんな木を切り倒し…………、あーっ! たんま、たんま! まだ切らないでーっ!!!」

みんなに木を切ってもらおうとした直前、ものすごく重要なことに気付いた。

『なんだ、急に大声を出して』

「いいからみんな、いったんこっち集まって」

ブツクサ言いながらもフェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイが集まってくる。

「な、なぁ、みんな。それぞれの木って余裕でスパッと切れるんだよな?」

『当然だ』

『うむ、もちろんじゃな』

『あったりまえよ』

『スイも切れるー』

だよねぇ。

だからこそなんだけど……。

「木を切るときさ、その先にあるうちの塀までスパッといかない? ま、まぁ、うちの塀くらいならまだいいけど、うちの裏の家に被害が及んだりしたら非常に困るんだけど」

『む、そういうことか。普通にやったら、裏の家も真っ二つになるな』

『うむ、確かに。ということは、手加減してせねばならんということかのう。儂、手加減するのは苦手なんじゃが』

『あ~、お前が止めたのはそういうことかぁ。確かにどれくらい手加減すればいいかってのは難しいな』

『ビュッてやっちゃダメなの~?』

あかん……。

これはフェルたちにやらせたらダメだ。

強すぎることの弊害なのか、手加減が手加減にならない気がする。

確実に裏の家に被害が及ぶ。

「プクククク、強すぎるっていうのもあれだな」

「ブブッ、裏の家は被害が出たらえらい迷惑だな」

こら、アホの双子、笑ってるんじゃないよ。

「はい、フェルたちは下がって。手を出しちゃダメだよ」

『ぬ、木は切らぬのか?』

「切るけど、フェルたちがやったら、裏の家に被害が出そうだろ。だからダメ」

そう言うと、フェルたちから抗議の声が。

「ダメなものはダメ」

裏の家に被害が出たら大変だよ。

ということで、フェルたちは使えない。

なら誰にやらせるかといったら……。

「はい、ルーク、アーヴィン、こっち来て~」

「な、なんすか?」

「嫌な予感が」

「ええと、確かブリクストのダンジョンで拾った遺品の中に……、あった! ほい」

アイテムボックスからブリクストのダンジョンで拾った冒険者の遺品である大斧を取り出した。

そして、アホの双子に差し出した。

「「…………」」

「重い~。早く受け取れ~」

しょうがないといった感じで、大斧を受け取るアホの双子。

「それを受け取ったってことは、分かるな? その大斧を使って、木を切り倒してくれ」

「「やっぱりそうなるのかぁ~」」

「見物なんて言ってこの場にいたのが運の尽きだな。ハハッ」

「やります、やりますけど~」

「ご褒美、奮発してくださいよ~」

おねだりとは、こやつ等め。

「ま、ちゃんと仕事すれば考えてやらんこともないぞ」

「よし、やるぞ! アーヴィン!」

「了解だぜ、ルーク!」

俄然やる気を出す二人。

「まったく調子いいんだから」

ヤル気を出した二人は、早速とばかりに木を切り始めた。

コーン、コーンと小気味よい音が鳴り響く。

「さすが元冒険者。力があるなぁ」

って、俺も冒険者ではあるんだけどね。

でも、さすがにあの大斧は重すぎて振るうだけで一苦労だ。

『おい、手伝ってほしいと言うから付いてきたが、我らにやることはないのだろう?』

「悪い悪い。そうだね。みんな強すぎるから、影響が出ちゃいそうだし。今日のところは、解散だ」

『ふん、つまらん。芝生の上で昼寝でもする』

『儂もそうするかのう』

『俺もー』

『スイもお昼寝する~』

「今度埋め合わせするから」

フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイは陽当たりのいい母屋の前の庭の方へと去っていった。

さてと、双子ばかりにやらせるわけにもいかないし、俺もやるとするか。

そうは言っても、確か斧はあれだけしかないんだよな……。

後切れるものと言ったら、大斧と同じ遺品の剣か、スイが作ってくれたミスリルの剣か槍か。

槍で木を切るのは難しそうだし、それならばまだ剣の方がマシだろう。

とは言え、遺品の剣はこう言っては何だけど、切れ味はよくなさそうだし……。

スイ特製のミスリルの剣の方は、切れ味は抜群なんだけど、さすがに木を切るとなるとねぇ。

やってやれないことはなさそうだけど、刃こぼれしてひどいことになりそうだ。

うーむ、どうしよう。

………………あ、遺品の剣とスイ特製のミスリルの剣と槍以外にも、切れそうなものというか、切れ味だけならミスリルの剣以上なんじゃねってもの持ってるじゃん、俺。

使う機会というか、使おうとも思っていなかったからすっかり忘れてた。

「ええと、4本あるはずなんだよな。おお、あるある」

俺がアイテムボックスから取り出したのは、何を隠そう魔剣だ。

「まずはドランのダンジョンのダンジョンボスのベヒモスを倒して得た魔剣カラドボルグだろ~。あとは、ブリクストのダンジョンでゴン爺がため込んでいたお宝の中にあった魔剣フルンティングに魔剣グラム、そして魔剣エッケザックスだ」

取り出した4本をとりあえず持ってみる。

「カラドボルグは重過ぎるな。フルンティングはまぁまぁ持てるけど、切るっていうより突き刺すに特化した感じの剣だな。グラムは、うーん、刃の部分が長いけど悪くないかも。エッケザックスは……、なんか宝石がいっぱいついてて派手だな。まぁ、悪くはないけど……」

魔剣を手に持って、ちょいと振ったりなんかして具合を確かめていると、双子から声が上がった。

「ム、ムムムム、ムコーダさん?!」

「そそ、そ、その剣は?!」

アホの双子の驚愕に満ちた顔は、さらに二人をアホに見せていた。

「あー、これ、ダンジョンから出た魔剣。これはドランだろ、こっちはブリクストでゴン爺が集めたやつだ」

「な、なぁ、アーヴィンよ。俺の耳がおかしくなってないなら、魔剣って聞こえたんだが。確かにムコーダさんが持ってる剣は、見ただけでどれもただならぬ剣だってのはわかるけどよ、魔剣ってなぁ……」

「ルーク、俺にも魔剣って聞こえたぜ。ただよ、魔剣って国が厳重に保管してる国宝なんだぜ。そんなのを個人で持ってるなんて、なぁ……」

そんなことをつぶやきながら現実逃避をする双子。

「おーい、戻ってこい。現実だから。手に入っちゃったんだからしょうがないじゃん。こんなの冒険者ギルドで買い取りに出すわけにいかないしさ」

「ハハハハハ、アーヴィンよ。俺たちの主は本当に規格外だったようだな」

「ハハハハハ、ルークよ。まったくもってその通りのようだな」

乾いた笑いをするんでない。

ま、いいや。

続き続き。

「この4本の中じゃグラムがいいかな。よし、グラムを使おう」

魔剣グラム以外はアイテムボックスの中へと戻して、いざ。

「せーの、よいしょー!」

スパッ―――。

まさしく豆腐を切るように容易くグラムの刃は木の幹を通り抜けた。

「ちょぉぉぉぉぉぉっ!」

「何やってんのぉぉぉっ!」

アホの双子の絶叫を他所に、俺は魔剣グラムの切れ味のよさに感心していた。

そして大満足。

「いやぁ~、やっぱすごい切れ味だね。これがあれば、木を切り倒すのも簡単だね」

「ま、魔剣が……。俺は悪い夢を見ているんだ……」

「ま、魔剣で……。嘘だ、誰かウソだと言ってくれ……」

「「あの人絶対おかしい……」」

じゃかましいやい。