軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百五十一話 ブリクストの街でお布施&寄付をしましょう(前編)

ここブリクストの街で過ごすのもあとわずか。

借りているこの家の返却期限である明後日には、カレーリナの街へと出発する予定だ。

今日は、トリスタンさんから聞いた情報を基に教会と孤児院巡り。

そして明日は、今日のお布施や寄付の報告も兼ねて神様たちへのお供えをと考えている。

実を言うと、昨日のうちに神様たちには連絡を取っていた。

というのも、若干1名(1柱?)えらく時間がかかりそうなお方がいたものでね。

テナントにドラッグストアが入ったことで、ますます美容熱が過熱してしまったあのお方だ。

情報収集にも余念がないし、何にするか選ぶだけでも時間がかかりそうな気配をひしひしと感じる。

そういうわけで、昨日のうちに神様たちへ連絡をとって、今日の夜にリクエストを聞くことになっているのだ。

その時にお布施や寄付の報告をとも考えたけど、リクエストを聞き出すのに多少時間がかかりそうなのもあって報告は明日お供えを渡すときにと考えている。

明日は、昼間はその神様ズのリクエストに則ってお供え物をまったり用意しつつ、それを夜に引き渡しという行程だ。

ただそうなると、神様たちにとってはお供え物が手元に届くまでにいつもよりも1日余計に時間がかかるわけで……。

昨日の夜に神様たちに連絡を入れて「いろいろと吟味したいお方もいると思いますので少し早めに連絡を」とやんわりと話をしたところ、ほとんどの神様たちがピンときたらしくOKしてくれたんだけど、お一方だけ頑なに反対したお方がいたよ。

言わずと知れた甘味大好きな残念女神様だ。

前回のお供え物の甘味は既に食い尽くしていたのか、時間が延びるのはダメだと言い張っていたよ。

でも、他の神様たちから『わがまま言うんじゃない。また創造神様から怒られるぞ』と諭され(脅され)て渋々承知したけど。

ま、残り少ないこの街での予定はそんな感じだ。

いつもなら何日かかかる帰り道のために、飯の作り置きをせっせと作っているころだけど、ゴン爺が自信満々に儂に任せておけって言うからそれもなしだ。

ゴン爺曰く、カレーリナの街くらいなら1日あれば余裕で帰れるそうだ。

ゴン爺が言うからには、ゴン爺の背に乗って帰るってことになるだろうから「そこのところは大丈夫なのか? 途中で落っことされたなんて言ったら洒落にならないからな」って何度も念押ししたら『もちろん大丈夫じゃ。そんなことにはならんから安心しろ』って。

信じているからな、ゴン爺。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「さてと、まずはここだな」

フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイを連れて教会巡り。

最初にやってきたのは、火の女神アグニ様の教会だ。

フェルにニンリル様の教会からって言われたけど、今日はたくさん回らなきゃならないから、近い所から順に回るってことで押し通した。

トリスタンさん情報によると、この街では3番目に多い信者数とのこと。

冒険者に信者が多く、戦神ヴァハグン様のところ(そう、この街には小さいけどヴァハグン様の教会もあるのだ)ほどではないにしても、なかなかの武闘派だという話だった。

併設されている孤児院からは、火の女神様の教会なので当然と言えば当然なのだが、優秀な火魔法の使い手を輩出するほか、優秀な槍使いも輩出しているそうだ。

そこそこの広さのある教会の中へフェルたちと入ると、古いがよく手入れされていることが見て取れた。

アグニ様の像が中央に置かれた教会の中には誰もいない。

「すみません、どなたかいらっしゃいませんかー?」

声をかけてみるが、何の返事もない。

『誰も出てこんぞ。もう金を置いて次に行けばいいのではないか?』

「フェルー、ニンリル様の教会を後回しにしたからっていい加減なこと言うなよな」

『主殿、あっちに人がいるようだ。声が聞こえるぞ』

ゴン爺の言葉に耳を澄ませると、「ヤァッ、ヤァッ」という子どもの掛け声が聞こえてきた。

俺たちは、その声が聞こえてきた方に向かった。

前方右側にあったドアを開けると、広い中庭に出た。

そこでは、大勢の子どもたちが一生懸命に槍を振るっていた。

「もっと足腰に力を入れて槍を振れ! そんなへっぴり腰ではゴブリンも倒せないぞ!」

仁王立ちした女性が子どもたちに喝を入れる。

「「「「「「ハイッ、シスターコリンナ!」」」」」」

え?

その武人みたいな女性がシスターなの?

シスターってもっとこう優しそうなイメージじゃないかな。

思い出してみると、ヒルシュフェルトのアグニ様の教会の方たちもしっかりしたガタイの人たちが多かったような気もする……。

ま、まぁ、ここは武闘派って聞いているから、これが普通なのかも。

そんなことを考えていると、武人みたいな女性もといシスターコリンナから声をかけられた。

「そこのお方、当教会に何か御用ですか?」

フェルやゴン爺を見て眼光鋭くしているが、驚くでもなく言葉も丁寧なあたり、相当な手練れなのではと感じる。

「ええ。実は……」

かくかくしかじかとお布施と寄付のことを説明する。

すると、シスターコリンナは満面の笑みを浮かべて「司祭様を呼んできますので、少々お待ちください」と急ぎ足で司祭を呼びに行こうとするが、子どもたちへの喝は忘れない。

「お前たちはそのまま訓練を続けろ! 弛んでいるならいつまでたっても訓練は終わらないからな!」

「「「「「「ハイッ、シスターコリンナ!」」」」」」

フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイと子どもが興味を引きそうな面々がそろい踏みだ。

手元の槍を繰り出してはいるが、興味津々な視線がこちらへと集まっていたからねぇ。

シスターコリンナの喝で、再び勇ましい声をあげながら真面目に訓練をしだす子どもたち。

そんな子どもたちの雄姿を見学しながら待っていると、シスターコリンナが白髪交じりの背の高い50代半ばくらいの男性を連れてきた。

「お初にお目にかかります。当教会の司祭、グレゴールと申します」

これまた背筋のピシッとした武人というような様相の司祭様だ。

襟と袖口に炎の模様が入った白地の神官服を着ていなければ、宗教関係者だとは絶対に気付かないと思う。

「私は冒険者の……」

「ムコーダ様ですね。お噂は聞いております」

おぅ、俺のこと知っていたよ。

冒険者に信者が多いって話だったもんね。

「はい、ムコーダと申します。シスターコリンナにはご説明したのですが……」

特に信者というわけではないけど、いろいろと役立ててほしいこと、特に孤児院の子どもたちのために使ってほしい旨説明すると、快く承諾してくれた。

「ええと、白金貨で申し訳ないのですが……」

白金貨3枚を司祭様に手渡した。

この街では教会と孤児院が併設されているところばかりらしいので、今回のお布施&寄付は合わせて一律金貨300枚(白金貨3枚分)とした。

そして、使うに使えない白金貨もここで放出。

といってもわずかばかりだけど。

白金貨、たくさん持ってるけど、ネットスーパーのチャージにしか使ったことないわ、ハハ……。

しかも、大分前にチャージした2枚分の残高が未だに残ってるし。

白金貨を見てさすがに司祭様もシスターコリンナも目を見開いて驚いていたけど、騒ぎ立てたりはしない。

あくまで冷静にお礼を言ってくれたよ。

是非とも教会の中や孤児院の様子を見ていってほしいと言われたけど、まだ他にも回らなくちゃいけないからと丁重にお断りした。

俺たち一行が教会を後にするときは、司祭様をはじめシスターやら関係者勢揃いで「火の女神様のご加護を」という言葉とともにお見送りだ。

(小)ではあるけどアグニ様の加護はもうあるんだけどね。

俺たちの姿が見えなくなるまでお見送りしてくれて、少しは役に立てたかなとイイ気分で次の教会へと向かうことができたよ。

そして次の教会は、この街で一番の信者数を誇る(というかこの国一番の信者数でもあるんだけど)土の女神キシャール様の教会だ。

「さすがにデカイな」

さすが一番の信者数を誇るだけあって教会がデカい。

それでも派手さはなく控えめなのが好感がもてる。

教会の中には熱心に祈りを捧げる信者もチラホラといたので、フェルたちには外で待っていてもらうことにして俺だけ中へと入る。

茶色い生地の質素な神官服に身を包んだ恰幅のいい大らかそうな白髪のお爺ちゃんが信者の方たちを見守るように立っていた。

あの人が司祭様なのだろうとあたりを付けて、声を掛けた。

「あの……」

ここでもかくかくしかじかとお布施と寄付のことを説明して、なるべく孤児院の子どもたちのために使ってほしい旨も言い添えておく。

すると、お爺ちゃん司祭様は感動したように俺の両手を握って「ありがとう、ありがとう」と何度もお礼を言うものだから、ちょっとした注目の的になって恥ずかしい。

お爺ちゃん司祭を連れて教会の隅に移動してから、白金貨3枚を贈呈。

今度は熱烈なハグをされたけど、何とか脱出して教会を後にした。

次にフェルたちを連れてやってきたのは水の女神ルサールカ様の教会。

ルカ様のところは、この街で2番目に信者数が多いという。

石造りの教会は古いけれどしっかりとした造りで、まるで神殿のように開放的だ。

中へと入ると、左手の通路の先にある中庭で子どもたちの青空教室が開かれていた。

計算の授業なのか教師のシスターが「一袋銅貨5枚の小麦と一袋銅貨3枚のジャガイモの代金を銀貨1枚で支払いました。さて、おつりはいくらになりますか?」なんて問題を子どもたちにだしていた。

それを子どもたちが指を使いながら一生懸命考えている。

そんな微笑ましい光景を見ていると、子どもたちの一人が俺たち一行に気付いて「狼とドラゴンがいるよ!」と声をあげた。

その声で俺たちに気付いたシスターは青い顔をしてあわあわしだす。

それとは対照的に子どもたちはキラキラした目で俺たち一行というかフェルとゴン爺とドラちゃんとスイを見つめていた。

俺は苦笑いしながらシスターに「俺の従魔なので大丈夫ですよ」と声を掛けた。

シスターと話をするために中庭に出ると、一層キラキラした目を向けてくる子どもたち。

「シスターとお話があるから、俺の従魔たちと遊んでいてくれるかな?」

子どもたちにそう話すと、待ってましたとばかりに歓声を上げて一斉にフェルとゴン爺とドラちゃんとスイの下に駆け寄る子どもたち。

『お、おい、コラッ! お主、我等に小童どもの相手をさせる気かっ?!』

顔を引き攣らせながら念話でそう言ってくるフェル。

『そ、そうだぞ! 俺たちはそんな話聞いてねぇぞ!』

同じく顔を引き攣らせてそういうドラちゃん。

『何だ? 人間の小童など一捻りだろう。何をそんなに焦っているのだ?』

顔を引き攣らせるフェルとドラちゃんを見て不思議そうなゴン爺。

『ちょっとゴン爺! 一捻りって、子どもに手を出したら承知しないからな!』

『言葉のアヤだろう。小童に手など出さんわい』

『とにかく、俺はシスターと話してるから子どもたちのことはよろしくね』

子守は任せたぞ、みんな。

『何がとにかくだ! 我は子守ではないんだぞ! って、こらっ、小童ども毛を引っ張るでないっ』

『ちょーっ、ヤメロー! 腕を引っ張るなバカ~』

『ちょっ、お前たちいきなり乗るのか? ドラゴンの儂が怖くはないのか? ってイタタッ、翼を引っ張るな小童よ!』

『わーい、みんなと遊ぶの~』

スイだけが子どもたちと遊べて嬉しそうだったよ。

いやぁ、子どもはやっぱり元気が一番だね。

それから、しばらく後。

「ふぅ、終わったな」

シスターに寄付のことを説明して、司祭様を呼んできてもらい、お布施&寄付として白金貨3枚を贈呈した。

もちろん、なるべく子どもたちのために使ってほしい旨も伝えると、司祭様はえらく感動していたよ。

やっぱり孤児院の運営資金は足りていないのが現状みたいでさ。

話を聞くと、食べ盛りということもあって特に食費は相当苦労しているようだった。

空腹にさせるわけにはいかないから、量を確保することに重点を置いて、どうしても味は二の次になってしまい、その辺りは司祭様たちも苦慮していたらしいからね。

これで少しは美味いものを口にできる日が増えれば、俺としては寄付した甲斐があるってもんだ。

やっぱり食って大切だよ。

美味いものを食えば、元気になって頑張ろうって気持ちも出てくるもんな。

そんなわけで、お布施&寄付を終えてフェルたちの下へ向かうと……。

未だに子どもに揉みくちゃにされてグッタリなフェルとゴン爺とドラちゃんが。

そして、それとは逆に子どもたちと遊べてご機嫌MAXなスイがいた。

『も、もう、いいだろう……』

『主殿、助けてくれ……』

『俺、もうダメだわ……』

「フェル、ゴン爺、ドラちゃん……」

グッタリとした面々を見て、シスターが素早く子どもたちを回収。

ようやく子どもたちから解放されたフェルとゴン爺とドラちゃんに促されて、俺たち一行は足早にルカ様の教会を後にした。

『ふぅ、どっと疲れたわい。人間の小童とは、ああも厄介なものなのか……』

『フッ、ようやく奴らの実態が分かったか、ゴン爺。奴らは悪魔だぜ』

『うむ。ドラの言うとおりよ。彼奴の相手をするくらいなら、魔物を相手にする方が余程楽なものよ』

「まぁまぁ、たまには子どもの相手もいいもんでしょ」

『『『よくないわ!』』』

『スイは楽しかったけどなぁ。またみんなと遊びたいな!』

ポンポン飛び跳ねながら嬉しそうにそういうスイを見て、さらにどっと疲れたように項垂れたフェル、ゴン爺、ドラちゃんの面々だった。